ご馳走 - みる会図書館


検索対象: フジュンじゃないだろ! 青桃院学園風紀録
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1. フジュンじゃないだろ! 青桃院学園風紀録

186 ホールに人が入ってくるぞと教えられて、スペアリプとは悲しみの別離を余儀なくされてし ま、つ ほうび 「うひやっ ? それしや、ご馳走は ? 金ピカ薬玉のご褒美は ? 「あとで伊集院先輩が来るの待って、いっしょに食わせてもらえま ) ( しーだろ」 秘密作戦がバレたらそれもできないせと諭されて、しぶしぶいったんご馳走のまえからは退 三人して人目を避けて、青桃館の庭へと引き返す。 先はどよりは、集まる父兄の姿もいささか多くなっているようだ。 伊集院が来るまでどうして待とうかと、剣と朱雀が顔を見合わせたところで、 「悪いけど、僕はこれで失礼するよ。ひとりでゆっくり薬玉の割れ具合を見守りたいんだ」 凡波が急に立ち止まって、そう言った。 「えっ ? いっしょにご馳走食わないのか ? なか 「うん。あんまりお腹もすいていないし」 「そーなのか ? ローストピーフもスペアリプもいらないのか ? 」 「よければ僕のぶんもキミにあげるよ 「ひやあっ。やさしーぞ。それしや、おまえのぶんまで食っとくぞ。お礼に、今度ウチに遊び むろぶし もち に来たとき、室伏の作った焼き餅食わせてあげる。あっ。室伏ってゆーのは、しよっちゅうウ さと

2. フジュンじゃないだろ! 青桃院学園風紀録

「えへへ、もう終わりそう。でもって、そしたらすぐにご馳走」 「死ぬはど面倒くせー」 金ピカ薬玉を吊るし上げ、ロープを柱にぎゅうぎゅうと結びつければ、天井の高い優雅なホ ールのほば真ん中に、ギラギラと悪目立ちする伊集院の〃一発みがお目見えだ。 「おーしつ ! 終わったぞ。あとはご馳走食うだけだぞ。うひやー、すんごくウマそー。あれ ってサラダ ? 向こうはサンドイッチ ? 」 好きなだけ食ってもいいのかなと、すでに銀色の皿に盛りつけられているパーティー・メニ ューを見渡して、剣は突撃準備である。 そそくさとホールを出ようとしていた凡波をつかまえ、一緒に食おうぜとテープル近くまで 引きすっていき、 「あ、あ、ローストビーフに、でつかいエピ ! でもさー、ここってヘンタイの先輩さえいな 引かったら、けっこーいい学校かもしれないぞ。朱雀はいるし、ご馳走食えるし。えへへ、凡波 って、なんとなくフツーそーだな。これからたくさん遊ばーな」 トカゲ先輩のこと見ても正気でいるから珍しいぞ、と。ズラリと並んだスペアリプを、目を や輝かせながら一本わしづかみにしようとしたところで、 オ 「人が来るぜ」 ぐいつ、と朱雀に手をつかまれた。

3. フジュンじゃないだろ! 青桃院学園風紀録

司なんかがあったら真っ先に食っちゃうぞ。えへへ」 「つつーか、目の前にいるヤツに食いっきたいぜ」 剣と朱雀が、伊集院の登場待ちだった。 きた 来るべきご馳走タイムに思いを馳せて、目を輝かせている剣。 面倒な〃秘密の一発作戦みにつき合わされて、朱雀はもはやウンザリの顔色だ。 「そーいえは、凡波ってどこの寮だか訊いたつけ ? トカゲ先輩のとこにいたから九重寮 ? さんじようりよう 三条寮だったら、オレといっしょだぞ」 「どっちでも構わねー」 「にしても、ちょっと変わったヤツだよな 5 。ご馳走食うより、〃一発みのほうが好きなんて 「オレも好きだぜ」 くさ 「そーいえば、凡波に訊かれたぞ。この学園が腐ったりなくなったりしたら、どー思うかっ て。えへへ。そしたら、今度はおまえと一緒に転校だな。でもって絶対に、すんごく学食の美 味しいとこ」 おまえと食いもんがあったら、どこでもいいぞ、と。とびきりの笑顔で剣に言われて、朱雀 はしばし無言だ。 そこで、どうやら空腹に耐えかねたらしい剣のお腹が、キュウウーと請求の声を上げる。

4. フジュンじゃないだろ! 青桃院学園風紀録

る。 「逮捕時に押収した証拠品は、いまのところ分析中なんだ。しかし、家系が家系だけに伝統の 技術を駆使して、強力な爆発物を作り上げているに違いない」 「なあなあ、朱雀う。それって、アレか ? 凡波が作ってたク秘密の一発し 「かもしれねー」 、」。〃ツ。、ンってなんだ ? ヒレカッとかハムカッとかと似たよーなも 「、んつ、えっ剣イノ、み 訊かれて、剣と朱雀が伊集院の二発作戦〃について解説をする。 こぶし 一部始終を聞いた室伏が、拳を握ってまっすぐに青桃館を睨みつけた。 「くうつ ! ということは、敵はすでにバクダンを設置済みなのかっ」 ツ。、ミジン つまり、このままいくと当十園ごとがコ かいむ 緊張感皆無の調子で、面倒くせー、と朱雀がつぶやいたあと、四人はそろって立ち上がっ ろ 「よおーし ! オトコ室伏つ、断固として学園爆破を阻止し、逃走犯をガッチリ逮捕。一件落 や着のついでに、晴れて司に告白だっ」 ちそう オ 「えへへ。ご馳走、ご馳走 ! ィッパッ発見のついでに、腹ごしらえ ! 」 「えへへへ。ローストビーフに、スペアリプ。でつかいエピも楽しみだなー」 ん ? 」

5. フジュンじゃないだろ! 青桃院学園風紀録

こた 訊かれて、あっけらかんと剣が応えた。 「えつ、ここ ? うーんと、そしたら、もういっぺん編入試験 ? 」 せいとういん 「伝統ある青桃院学園が、きれいさつばり消えてなくなるんだよ。美少年も美青年も一人残ら ず解散で、死ぬほど寂しいだろう ? 」 いいけど、食堂のご馳走がもったいない感じ ? 「うーんうーん。ビショーネンはどーでも 「かわいい制服とも、今日限りお別れだとしても ? 」 「あっ、あっ、そーすると、朱雀もお別れか ? 困るぞ。ご馳走のつぎに悲しいぞ」 「 : : : キミ、変わってるんだね」 なにやら不満げに凡波がつぶやくのを眺めて、朱雀がポソッとひとこと、 「なんか妙だぜ」 そこへ、バスルームのはうから派手な水音が聴こえてきた。 どうやら、華麗なる入浴タイムがたったいま終了した模様。上機嫌な鼻歌とともに流れてく ろ るのが、優雅なピアノの調べだ。 る したた 「おや。思わぬところで、水も滴る美青年がピアノを弾いている ? と思えば、ナニを隠そ ゃう、この僕だったのさ。いつもなら器用なモンプチたちが、あっちゃこっちやを隈なく拭いて オ くれるハズなのに。きさっ : : : きさっ : : : ロ 女月くん、ふえーっくしよっ : : : 風紀委員のキミ したい あこが Ⅲに、全青桃院生潼れの名誉職を与えてあげよう。遠慮はいらない。さあっ、美しい僕の肢体を

6. フジュンじゃないだろ! 青桃院学園風紀録

157 オヤジがくるだろ ! 「『美顔術』」 「えへへ。オレんとこは、ヒガシグモ先生の『学園史』」 しののめ 人気教師東雲教諭の『学園史』は、遅刻をするとムチのお仕置きが待っている。急がないと 大変だぞと慌てながら、剣は凡波に向かって「おまえは何組 ? 」。 かんべき 「 : ・ : ・僕のことは気にしないで。もう少し仕事が残っているから。これを完璧に仕上げてから 授業に出るよ。キミたちは、授業参観を楽しんできて」 〃最後の授業参観を % 手にしたタイマーのスイッチの入り具合を確かめながら、ばそ、と凡波が小声でつけ足し た。どうやらその言葉を、剣も朱雀も聞かなかったらしい ちそう 「んしや、行こーぜ、朱雀。にしても楽しみだなあ、プトーカイのご馳走 ! 和食かなー、中 華かなー。あ、あ、凡波。また、あとで ! 」

7. フジュンじゃないだろ! 青桃院学園風紀録

180 「あっ、早いぞ。もう戻ってたのか。なあなあ、すんごく賑やかな授業だったな。ヒガシグモ 先生なんかいつもより厳しめで、ムチがピシピシ鳴ってたぞ」 いじゅういん ここのえりよう 九重寮三階の伊集院の部屋。 おおくすだま つるぎすざく 剣と朱雀が戻ってみると、凡波がすでに大薬玉を抱えて待っていた。 とうかい 「さあ、急がないと。舞踏会の始まる時間までには、薬玉を会場に持っていかなくちゃ。父兄 ーティーだから、そのあいだに」 たちは、ホールが開くまでお庭でガーデン・ そう言って、金ピカ大薬玉をこちらに渡してよこす。あとから自分で大事そうに抱えるの は、隠し玉のほうだ。 早く早く、と凡波に急かされて、剣は「よ 5 し」と返事で、朱雀はひとこと「面倒くせー」。 ちそう 授業を終えてますます腹が減っちゃったぞと、剣はご馳走への期待が増して、やる気まんまん である。 「えへへ。会場って、用意できてるのかな ? だったらテープルに食い物がいつばい ? にぎ

8. フジュンじゃないだろ! 青桃院学園風紀録

189 オヤジがくるだろ ! こ、つぼく つ。市民の安全を守る公僕として、あってはならない職務規程違反だ。ああっ、それにして たま も、司 : : : 交番勤務のころから制服姿が堪らなかった。いや、中高時代の学ランも、負けず劣 らずラブリーだった」 「なあなあ、室伏い。腹が減りすぎてフラフラしてきたぞ。もう限界かも知れないぞ。うーん ぎようざ : これって、おまえの耳 ? それとも餃子 ? えへへ : : : ワンタン、しゃなかったら、ラ ピオリってゆーご馳走かも知れない ? 」 なんだかよくわからないけどウマそーだぞ、と。 舌なめすりしたとたん、司は室伏の耳に、がぶり、と噛みついた。 つつ : ・・ : 司っリ」 「うつー 「ひやひやつ。あんまひ、ウマくない ? 」 っ ! オトコ室伏、とうとう限界つ。ポスつ、至らぬ部下 をお許しくださいっ ! 」 「うひやっ ? 」 こちらは、司たちの潜む場所からさほど離れていない、同し木立のなか 「なあなあ。トカゲ先輩が来たら、なにから最初に食う ? やつばしローストピーフかなー 、いけ・ど、寿 ハンもし それともエピのでつかいャツかなー。デザートなんかも出てると思う ?

9. フジュンじゃないだろ! 青桃院学園風紀録

188 「なあなあ、室伏し 、。小柄なビショーネン、ちっとも見当たらないな」 つかさ 相変わらす制服姿のままの司と室伏とが、凡波追跡に精を出していた。 そろそろ腹が減ったぞと弱音をこばす司は、だいぶエネルギー切れが近い様子。室伏はとい えば、よほど授業参観での〃肩車〃が効いたとみえて、先ほどからしきりに込み上げる良から ぬ情熱を抑えることに懸命のようである。 ーティーの開始まで、もうそんなに時間がない。もしかすると、敵はオレたちの 「ノ、、つ、つ 0 捜査に気がついて、逃亡をはかったあとかも知れないな」 、、すどなー。そしたら、 「そーかなー。だとしし ( ーティーのご馳走食って、署に帰るだけだけ どな」 あとの捜査を担当者にまかせて、自分たちは帰還。けれど、そのまえに、と : : : 一一人ともが それぞれの希望を、勝手に思い描くらしい 木立のなかで、くん、と鼻を動かした司が、 にお 「えへへ、肉の匂いだ。うひやっ、こっちは魚 ? デミグラス・ソースにホワイトソースに : : : うーん、ニンニクとタマネギの香ばしいャッ ! あ、あ、これってスペアリフ ? ええっ と : : : ェビに、ローストピーフに、こし餡だ ! 」 もんもん そのとなりでは室伏が悶々と、 「しつかりしろ、オトコ室伏つ。非番ならともかく、 いくらなんでも勤務中には許されない

10. フジュンじゃないだろ! 青桃院学園風紀録

にこやかに談笑する狼と赤頭巾のそばを通り、黒忍者を避けて、金ピカ薬玉とともに剣たち は青桃館へと近づいてい ちょうど人の出入りが途絶えたホールの入り口へと、すばやく三人して飛び込み、 「いまのうちだよ。忍び込んで薬玉を」 「よおーし ! ご馳走だぞっ」 準備万端、飾り付けまで済まされたパーティー会場のなかに、大薬玉を運び入れた。 「うーんと、どこに置けばいいんだ ? 凡波」 「あそこだよ。あのシャンデリアの下に吊るすんだ」 「えつ、えつ、吊るす ? あ、はんとだ。二発〃にちゃんとヒモがついてる。なあなあ、朱 雀。このヒモあそこにかけてみて」 「かったり 薬玉に繋がれたロープの端を朱雀が勢いをつけて振り回し、そのまま器用にシャンデリアの ろ る 上へと引っ掛ける。 落ちてきたロープの端を剣がっかんで、ヨイショとカまかせに引き上げた。 けっこー大変だぞ。これって、もしかしてロミオとジュリオのタタリ ? 」 や「ひやああー けんめい オ 剣たちが薬玉吊るしに懸命になっているあいだに、凡波はひとりホールの隅に並べられた料 理テープルのほうへと接近するようだ。庭へと張り出したテラスにもわざわざテープルが出さ つな