をしていただきたいんです ! 」 どうやら『美少年コンテスト』における有利な採点のために、教師を買収しようという現場 であるらしい 「おやおや、掘り出すまえから小判がたくさん ? 「なあーんだ。オヤッしゃなかった」 : この際、穴のなかじゃなくてもかまわねー」 なか うんざりだぜ、と朱雀がつぶやき、剣は「そろそろお腹が減っちゃった」と訴える。伊集院 は百合柄作業着姿で「おかしいね」と仏像未発見をいぶかしむ顔だ。 きんばく 三条寮を出てからいままでに見つけたのは、森のなかで金箔仕立て水着を試着中のとある一 年生。 それから、フィギュア同好会の模擬店に並んだク麗しの歴代青桃会会長スペシャル・フィギ ろ ュア『美少年フェスティバル』記念純金モデル〃数十体。 仏像探知失敗のたびに、剣は空腹感が増すばかりである。 ぞうに 「なあなあ、朱雀う。ブッゾーってゆーのは、雑煮にして食える ? 」 ン「食えねーだろ」 「それしやマイゾーキンってゆーのは、きんとんにして : : : 」 「食ったら腹こわすだろ」
こもんじよ 手にしたカバンを開けて、なかから一冊の古文書を取り出しつつ、 「しかし、三笠山。電話でも少し話したとおり : : : あの仏像は一筋縄ではいかない〃悲劇の埋 蔵仏〃なんだよ」 で、 青桃院学園。 カフェテリアを出た剣たちは、伊集院の号令で〃愛の穴掘りみへと出発するところである。 「それで、先輩。掘るってゆーからには、なんか手がかりあるんですか ? たかむら 「おや、手がかり ? そんなものは必要ないのさ、篁」 だったら、オヤツのブッゾーどーやって見つけるんだ ? 「えつ、えっ ? 広い学園の敷地で、これから仏像発掘。 しらゆり なのに、手がかりはまるでなし、と胸を張る伊集院は、白百合模様作業着スタイルだ。 三笠山から渡された百合柄リュックを広げ、ゴソゴソと取り出すのはなにやら怪しげな道具 「はら。コレさえあれば、どんな金ピカのお宝でも即発見ー ひとすじなわ
図書館方面へと走り去る運動部長と別れて、ついに御霊寺みすからシャベルを握ったところ ようき 「む。この妖気はつ」 「ひ すさ おかん 「むむむつ。凄ましい震えと、押し寄せる悪寒っ , ム ル・密っ ! 」 つ。きえええ 「しきま どこからともなく聞こえてきたその声に、御霊寺はもつれ絡まった長い髪を気合いとともに 一気に逆立てた。 第一校舎の方角から華麗なるツーステップで駆けてきたのは、誰あろう百合柄作業着の伊集 宀元。 ろド - 手にはスコップ、 背には百合模様リュック、 ン うしろに従えているのは穴掘り要員の剣と朱雀だ。 おさななじ ホ 一直線に駆けてきたかと思うと、愛しい幼馴染みのまえでピタリと立ち止まり、 「ああっ、会いたかったよ、モナム・ ~ 2 ルっー 穴のそばで別れてからは、すいぶんと時間が へ、 から
104 「つつーか、どー見てもフツーの部屋なんですけど」 百合柄作業着姿の伊集院は華麗なるステップを踏みつつ、剣が「ここだ」と指し示す部屋へ と突入だ。 ついで剣も鼻を動かしながら、あとを追う。 朱雀は「面倒くせー」とばやいて、最後から。 バタン、とその部屋のドアが派手な音を立てて開かれると、 「きゃあああああああっ ! 」 すさ とたんに凄ましい悲鳴が響き渡った。 ザヾツ、と派手な水音がしたかと思うと、目のまえにあるバスタブのなかから何者かが起立 する。 いつ、伊集院先輩っ ! 」 「きゃあ : : : あっ ? もうもうと立ち込める湯気のなかに立つのは、どうやら仏像ではなく生徒のようだ。 「なんと、これはどうしたコト ? 」 ふろ 「うーんと、あれつ ? えへへ。匂うのは、お風呂のお湯みたい ? からだ つつし クンクンと剣がバスタブに近寄っていくと、慎み深くバスタオルを身体に巻きつけた生徒 ほお が、頬を赤らめて自己申告する。 「いつ、伊集院先輩 : : : こんなところに突然いらっしやるなんて、まるで突然の激しい夏の嵐
144 「こうして出会ったからには仕方がないよ。〃ニセモノみ ! 」 〃ニセモノ〃と。 まっすぐ指さす相手は、はかでもない百合柄作業着姿の伊集院。 宝石のような瞳をいささか見開いて、指さされた伊集院は茶色巻き毛をかき上げる。 「おや、〃ニセモノ〃だって ? 「そのとおりさ。なぜって、ホンモノは僕だから。こうしてはるばるやってきたのは、長年に ゆいしょ わたってのさばった〃ニセモノみをきれいさつばり退治し、由緒正しい大金持ちの跡取り息子 間もなくキミの持ち物 に返り咲くため ! ふつふつふつ : : : 覚悟しておくれ、〃ニセモノ〃 は、ぜんぶ残らす僕のモノつ」 というコトは、もちろん密もキミのモノ ? 」 「なんとー ふらち つ、不埒な言いぐさつ。許してはおけないつ、伊集院ー 「む 「黙れ、〃ニセモノ〃 ! 」 「ふつふつふつ。黙らないよ、密」 「ううむむむう。この際、本体も分身もまとめて退治っ。去れつ、大災厄つ。きええええ 御霊寺陰陽道の気合い一発。 すさ あたりにゴウゴウと凄ましい風が巻き起こる。
112 なんどき を記した地図のもう半分が渡っているとなれば、いっ何時、学園の平和が崩壊しないとも限ら オし 「ふつふつふ、きっとそのとおりだね。御霊寺くん」 「よしつ。我々もいよいよシャベルを手に発掘作業に乗り出そう、伊集院。運動部諸君および のろ 式神、そして我々二人とで分担し、それらしき場所を片端から掘って掘って、ついにク呪いの 仏像みを掘り当てるのだっ」
その頭にはヘルメット、背には大きなスコップだ。 ヘルメットにはライトがついていて、どこからど、つ見ても良家の子弟が集まる学園にはふさ わしからぬ、労働スタイル。着ているものも灰色詰め襟制服ではなくて、総白百合柄の作業着 と呼ぶべき衣装である。 みかさやま あとから三笠山も駆けてきた。 「はあはあ、坊ちゃまっ。素晴らしいお姿でいらっしゃいますつ。はあはあはあっ」 その三笠山も同じく、なにやら大荷物。 剣はイヤな予感にお腹をおさえ、思わすギャルソンに向かって「パニーニもう五個追加でお 願いします」と注文だ。 「ふつふつふ。ふーっふふふ ! 見たまえ、キミたち。これこそ華麗なる〃穴掘りコスチュー ム〃なのさ。密と僕のビューティフル・ライフを守るため、いまから喜び勇んで仏像探しに出 発だよ ! ああ、燃える : : : 燃えるねつ、三笠山つ」 だ「さようでございますね、躑躅坊ちゃま。さて、如月さまに、篁さま。こちらがお一一方のため のヘルメットにスコップでございます。わたくしからこのように申し上げますのもなんでござ で キいますが、由緒ある伊集院家の跡取りでいらっしゃいます坊ちゃまは、お小さいころから白百 ホ 合の花より重いものは持ったことがおありになりません。それなのに、やむを得す穴掘りなど を : : : そう思いますと、この三笠山、つい涙がっ」 えり
146 そんな風はものともせずに、伊集院が御霊寺に向かって突撃する。 その伊集院に向かって、菖蒲が真っ向から勝負をかけた。 お祓い棒一一本を構える御霊寺を真ん中にして、ファッション・センスの異なる一一人のク伊集 院〃がガッチリと組み合う。 「うひやあー、すんごくイヤな眺め」 : ヘンタイ一一刀流って感じだぜ」 しび 「素敵ですっ、躑躅先輩 ! 痺れますっ、僕つ」 カ 「ふーっふつふつふ。ひ モ セ おかんさいな むむむむむつ、どちらが本体でどちらが幻つ。この御霊寺、激しい悪寒に苛ま 「む めまい : 紛うことなき れ、眩暈に苦しみ、もはや霊力も限界つ。おのれえ、伊集院っ : : : やはり : っ ? ・ : 学園の敵にして大色魔 : : : つ。きええ : 御霊寺をなかにして、グルグルとまわるダブル伊集院。 百合柄作業着と菖蒲柄リュックとが、入れ替わり立ち替わり華麗に回転する。 どちらが伊集院躑躅でどちらが菖蒲か、もはや判別不可能な状態だ。 「うええ、目がまわってきたぞ ? 」 フラフラするぞ、と剣までが〃伊集院酔いみを覚えたところで、悲劇的な悲鳴が第一校舎ま ノ
ごを」どうだん いすれにせよ、許すべからざる言語道断の怪奇現象っ ! 」 悪鬼退散、と。 じゅもん ひしよう 力を込めて呪文を唱えるところに、天高く飛翔した伊集院が華麗なる垂直落下を決める。 っ ! ああっ、密、密、密っ ! 恥すかしがりや 「ひく 5 ~ 〉 ~ ~ 5 、そく 4 ( , 〉 ~ く ~ か のモナムールっー ついに念力で身代わりを生み出してしまうほど、やつばり僕を愛していた ついに結はれるときには、正真正 んだねつ。だけど駄目なのさ、わからすやのマイ・ハニー だって、キミと僕とは互いに〃愛の伴侶みと呼び合う、切っても切れない仲だ 銘この僕とー からっ」 勢い余ってズボッと穴のなかへ。 は けれど、すぐさま這い上がって、御霊寺のもとへと迫る。 いざホンモノ同士で本格的に結ばれよう、と愛しい幼馴染みに向かって百合柄作業着の腕を 広げるが、対する御霊寺は徹底抗戦の構え。 ろ 「なんたる不可思議 ! なんたる不自然 ! なんたる忌まわしい白昼夢っ ! むう、この御霊 寺密つ、さては仏像探しの疲れが高してオソロシイ幻にとらわれたかっ卩」 ン去れ、悪霊。 ホ 醒めろ、悪夢、と。 激しくお祓い棒を振って、御霊寺は伊集院の追撃を辛くもかわす。 はんりよ から
132 。だったら、ためしに呼んでみよーっと。トカゲせんばああ 「えへへ みは 涙に濡れた大きな目を瞠って、鹿ヶ谷が「え ? 」と振り返る。 茂みの向こうで華麗なる発掘ステップを踏んでいた伊集院が、スコップを手に、ひらりつ、 とターンを決めた。 「おや。おやおやおやつ。すいぶん早いね、如月くんに篁。こんなにスピード解決で、しつか ふつふつふ : : : こう見えても、キミたちのラブ・チャンスを邪魔して り満足できたのかい ? ふんいき はいけないと、雰囲気を盛り上げる情熱ダンスを踊ってあげたのさ。それで篁、首尾のほうは どてつ ? ・」 「 : : : 失敗です」 こた 朱雀の応えに、伊集院が「それは残念」と憂い顔で溜め息をつく。 茂みのなかでは、鹿ヶ谷が凍りついたように棒立ちだ。 剣は、百合柄作業着姿の伊集院のそばまで走り寄り、 「うーんと、やつばしトカゲ先輩みたいだぞ」 いつもどーりのヘンタイだぞ、と鹿ヶ谷に向かって報告である。 愕然と立ち尽くした鹿ヶ谷は、見開いた目を一一度三度と手でこすって、 「ゆ : : : 百合だっ : : : 間違いなく、い つもの伊集院先輩だっ。僕の : : : 麗しい白百合。憧れの : つつじせんばああああ アポロン。ヴィーナスも真っ青でキューピッドも真っ赤の : : : つつ : がくぜん うれ