学園高等部。 いちのみやりようさんじようりようここのえりよう 生徒たちが暮らす寮は、一宮寮、三条寮、九重寮の三つ。 ろ おもむき それぞれ趣ある造りのそれらの寮のうち、一年生が多く暮らす三条寮の玄関で、掲示板のま ほおこうちょう えに集まる生徒たちが頬を紅潮させて声を上げている。 で かいそう キ「見て ! 〃即効性海藻エステ、本日限り受けつけ〃だって。どうしよう」 ホ 「明日が一次審査なのに、お肌の調子がいまひとつなんだ。悲劇だよ ! 」 おこた 興奮した様子の彼らの手には、片時も容姿チェックを怠らないための手鏡。一心不乱に見つ せいとういんがくえん 青桃院学園は、森のなかである。 つど けんらを」うか そもそも良家の子弟ばかりの集う、由緒正しく絢爛豪華な学びの園である。 おごそ そしてそこは、陸の孤島に厳かに咲く、全寮制の男子校である。 してい ゆいしょ その

たという証拠の記録。陸の孤島ともいうべき青桃院学園に眠る埋蔵仏であれば、わたし好みの 地味な研究材料であると、最初は思ったのです。古文書をひもとき、関係史料を読みあさり、 さび ついにこの本を寂れた古本屋の蔵から探し出したときには、胸が震えました。ですが、この話 をアレに聞かせたのがますかったのです。よく聞いてください、みなさん。我が息子である菖 蒲 : : : 彼が狙うのは、仏像発掘を利用しての青桃院学園の大騒動 ! さらに、ひいてはこの伊 集院家を乗っ取ることなのですっ」 菖蒲の目的は、青桃院学園を大騒動に巻き込むこと。 そして、伊集院家を乗っ取ること。 ひるがえ 黒マントを翻した橘が、力を込めてそう打ち明けた。 「おや、乗っ取りに巻き込み ? 」 「え ? え ? のり巻き ? うまっ」 「秘密の埋蔵金ということになれば、面白半分に飛びつくマスコミもあるでしよう。しかもそ の埋まっている場所が良家の子弟ばかりの集まる学園の敷地内となれば、興味本位でどんな記 事にされるかわかりません。また悪いことに、躑躅くんは学園を守るべき青桃会副会長にし て、学園長の孫。学園運営で失態があれは責任を間われる立場です」 事が明るみになれば、伊集院家の名誉にも関わる問題。 学園長である伊集院家の当主は、体面のためにも、跡取りである孫の行く末について考え直

「 : : : 毛ガニは迫ってきてねーだろ」 いったいどういうことだと注目する一同に向かって、三笠山が肩を震わせながら告白した。 ねら 「じ、実は、まことに申し上げにくいコトながら、この学園を狙うとある人物があるのでござ います」 学園を狙う人物が、と。 思いもよらないその知らせに、特に表情を険しくするのは青桃会会長の御霊寺だ。 「この学園に敵がっ ? 」 問われて三笠山がコトの次第を詳しく語る。 「はい。その敵の年齢、性別、背格好、動機などは : : : ふ、不明なのでございます。しかしな がら、彼はこの青桃院学園のどこかに眠るナゾの宝を狙っておりますとか。一刻も早くなんと つど かしていただかなければ、良家の子弟のみなさまがたの集われる清らかな花園が、土足で踏み にじられるようなことになりかねません : : : 」 せりふ だまさに悲劇でございます、とさめざめ涙を流しはしめる三笠山の台詞に、今度は伊集院がい ち早く反応した。 で 々「おや、宝と言ったかい ? 三笠山」 つつじ 「はい、 躑躅坊ちゃま。それはそれは珍しい宝が隠されているのだとか」 「むむ。確かに我が青桃院は由緒正しく歴史ある学園。敷地のそこここに数々の伝説が残され

良家の子息が集う私立学園は、全寮制 のアヤシイ男子校。学園の初夏を彩る『美少 年フェスティバル』の一大イベントである、 『美少年コンテスト』を翌日に控え、生徒たち は準備に大忙し。そんな中、伊集家の執事 が慌てふためいて空からパラシュートで現れ た。なんでも学園の敷地内に眠っている埋蔵 金を狙って、ある人物が学園に潜入しようと しているらしいのだが卩男子校コメディ , 恋気分いっぱいの夢豊小説誌 ! 朝 t 1 月、 3 月、 5 月、 7 月、 9 月、 1 1 月の 18 日発売 隔月刊ですので、お求めにくしにともありま当 あらかじめ書店にこ予約をおすすめします 集英社

190 「よーしつ。掘るぞっ , 「そのまえに御霊寺先輩探して、地図の解読だろ」 「あのつ : : : 躑躅先輩つ。僕、掘るだけしかできそうにない如月なんかとは違った意味で、先 輩のお役に立てると思うんですつ。優秀な学内報委員一年生の僕としては、やみくもに穴を掘 した るより学園史料をひもといてみてはどうかと思うんですつ。それに : : : 一途に先輩をお慕いす かがみ る美少年の鑑として、コンテストへの参加も欠かせませんつ」 第一校舎まえの花壇のなか。 鹿ヶ谷だけがそこからは別行動だ。 伊集院が百合柄リュックからスコップを取り出して、剣に一本、朱雀に一本。 うるわ いよいよナゾの仏像と対面さ、と麗しい微笑を浮かべるのへ、朱雀があまり興味もなさそう に質問する。 「それはそーと、先輩 , 「なんだい、篁 , あやめ 「伊集院菖蒲っていうイトコ、見つけたらどーするんです ? 」 「おや、イトコというのはもしかして、美しい僕の麗しいソックリさんのことかい」 「つつーか、そもそもイトコがいるって、どーして言わなかったんです ? 」 「ふつふつふつ、それは簡単。だって、きれいさつばり忘れてたから」

ひとやまあてぞう 『美青年探険家一山当蔵探険記』とか。それから実家に帰ったときテレピでも : : : 『お茶の間 みぞう びぼう スペシャルっいにナゾの埋蔵金に迫る ! 美貌の隊長に未曾有の危機がリ』っていう一一十一一 時間番組とか」 けつきよく美青年探険家も美貌の隊長も、埋蔵金は見つけられすしまいだったけれど、と紅 茶ポットを片手に竹千代。 「でもロマンチックだなあ。そんな由緒ある仏サマが僕たちの学園のどこかに眠ってるなん て ! しかも、一一体もつ。だから、この学園は僕たちの平和な花園なんだね、如月」 「そーかなー」 りやく 「もしもその仏像を掘り当てたら、ご利益で素敵な先輩とご縁があるかもしれないよっ」 「そーかな 5 」 「でも、まんがいち仏像発見のニュースが派手に流れたりしたら、平和な学園が急に騒がしく なっちゃったりするのかな ? ろ 〃驚愕 ! 人里離れた学園の敷地から、ナゾの仏像出現ー または、 で キ〃衝撃 ! ついに発見された埋蔵金。華麗なる美少年の園にいまカメラが ! 〃 ホ 、もーレノ \ は、 ク突撃取材 ! 金の仏像とともに秘密の森で暮らすナゾの美少年集団の正体に迫るー

とくがわ 一一体で一対。なにやらひしように由緒あるものだとか。一説によりますと、かの有名な徳川幕 府埋蔵金の一部とも目され : : : とにかく、下手に世に出ますとマスコミがこぞって詰めかける こもんじよ しろもの ような代物なのでございます。その隠し場所を記した古文書が先日さるかたのもとから奪わ れ、敵の手に渡ってしまいました」 学園のどこかに隠されている宝とは、マスコミも注目の〃金の仏像〃 〃埋蔵金みと聞いて、即座に剣は、 「マイゾーキン ? なあんだ、雑巾しや食えない。雑煮だったら好き好き」 「この三笠山が推察いたしますには、敵の狙いは仏像の発掘 ! 学園が『美少年フェスティバ にぎ ル』で賑わいますこのときに、いわくある金の仏像を掘り出し、世間に騒ぎを知らせ、学園の こんたん せいじゃく 静寂を乱そうという魂胆に違いありませんつ。よろしゅうございますか、坊ちゃま ! 敵の横 暴を許してはなりません。これは坊ちゃまのお立場さえをも危うくしかねない、一大事なので ございますよっ」 うるわ 三笠山にそう言われて「ふうん」と麗しくうなすく伊集院だ。 「なんとなく面倒くさそーだぜ」 キポソッ、と朱雀がつぶやき、 「えへへ。ブッゾーも雑巾も、腹いつばいにはならなそー」 食欲つながりを見いだせない剣は、〃学園の危機みにも興味なし。 ぞうきん へた ぞうに

に運動部長、学園内の様子はどうか」 「はい、会長 ! 明日の一大イベント『美少年コンテスト』に向けて、フェスティバルもしだ いに盛り上がりを見せております」 「む。誉れ高い伝統行事をつつがなく催すためにも、死力を尽くして学園の平穏を守り通すの のだ ! 」

しんどうたっき こんにちは、真堂樹です。 せいとういん 『青桃院学園風紀録ホンキでいくだろ ! 』をお届けいたします。 ゴージャスでプリリアントで、ちょっぴり ( ? ) おかしな青桃院学園。美少年 & 美青年ぞろ いの花園で繰り広げられる、華麗な物語でございます。 はじめてお手に取られるかたも、どうぞ読んでみてくださいね。この巻からでもお楽しみい ただけるサイズのお話なので、だいしようぶ , さてさて、『ホンキでいくだろ ! 』。 ここへ来てホンキを出すのは果たして誰なのか ? というタイトルであります ( 笑 ) 。 カ ひそか いじゅういん と つもク密〃にホンキ一直線。 伊集院は言うまでもなく、い ちつじよ ↓めごりさつじ 御霊寺も学園の秩序のために、つねにホンキ一筋。 つるぎ 剣もひたすら食欲に従って OO ー 、あどか医、 かれい

月亠ノこ。 いた . ら 「よくよく聞いてくれたまえよ、伊集院。たとえ呪われた運命の悪戲でそうと定められたにせ よ、仮にもキミは、会長であるわたしとともに我が学園を治めるべき、青桃会副会長なのだ。 伝統ある『美少年フェスティバル』の最中に、清らかな学園の秩序が乱されるようなことにな れは、わたしは当然みすから会長職を辞する覚悟。キミも同しく副会長の座をおわれることに なるだろう ! 」 「ふふふ。というコトはやはり、手に手をとって一一人は仏前ケッコンを ? 」 「むうつ。輝かしい学園の歴史に泥を塗ったものとして、わたしはすみやかに実家へ戻り、一 から修行のしなおしをするつ」 「ああっ ! というコトは、田 5 いもよらない僕とキミとの愛の危機っ ? 」 「さようでございますとも、躑躅坊ちゃま ! 」 あとじさ 麗しい腰つきで、伊集院がフラリと後退る。 ろ 執事の三笠山がすばやくそれを、はっしと横からサポートだ。 「ふふ : : : ふーっふつふつふ ! 僕とキミとが仏前破局と聞いては、さすがにピックリなの で きさらぎ たかむら キさ、モナムール。であるからには、忠実なる風紀委員である如月くんに篁。キミたちは当然、 ホ仏像探しに即出発。僕と密の愛の園を、ムッシュウ仏像ドロポーから守るのさつ」 〃すみやかに仏像を掘り当て、学園を危機から救うのさ %