赤ん坊 - みる会図書館


検索対象: ホンキでいくだろ! 青桃院学園風紀録
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1. ホンキでいくだろ! 青桃院学園風紀録

174 『いいえつ、牡丹さまの一粒種こそ、華麗なる伊集院家の跡取りつ』 「そうと決まったわけではない ! 』 『決まっていますっ』 『決まってない ! 』 『あっ、ナニをなさいますっ』 『あああっ、そっちこそ ! 』 うるわ 互いにべピーベッドからそれぞれの赤ん坊を抱き上げ、こっちが美しい、こっちのほうが麗 けたお しい、と見せびらかし、自慢し合っていた最中。自慢のしすぎがあだとなって、べッドを蹴倒 しての執事同士のケンカに発展した。 はず ケンカの弾みで、あろうことかポオンと赤ん坊が床に転落。 『ああああっ、牡丹さまのお子さまっ』 『ああああああっ、橘さまの赤ん坊さまっ』 叫んだときにはすでに遅く、ゴロゴロゴロと赤ん坊一一人は床の上を華麗に転がった。 転がりながら、時には右になったり、時には左になったり、上になったり下になったりだ。 「なんという悲劇でしよう ! 』 『まるで地獄絵図ですっ』 ようやく転がり終わった赤ん坊のもとへと、三笠山と畝傍山は息せききって駆けつけた。

2. ホンキでいくだろ! 青桃院学園風紀録

〃美赤ん坊みでいらっしゃいました。フリル波打っ絹のべピーベッドと綿素材の赤ちゃん布団 とに分かれてお休みでなければ、どちらがどちらかわからなくなるほどの似通いようだったの でございます : : : 」 それは、一一人の赤ん坊が生まれた翌日のこと。 うぶぎ 美青年ご入浴係がそれぞれの赤ん坊にお湯をつかわせたあと、産着を着せるまでの少しのあ いだハダカのままで昼寝をさせた。 そこにやってきたのが、菖蒲の世話をまかされた畝傍山と、同じく躑躅の世話をまかされた 三笠山。かねてから双子である牡丹、橘、それぞれに仕えていた二人は、互いに美青年執事と してライバル心を燃やす仲だった。 その日も、二つのべピーベッドのあちらとこちら。 はちあ 鉢合わせしたとたんに、一一人の心はメラメラと燃え上がった。 『ご覧なさい、三笠山。橘さまの美しい赤ん坊を ! なんというきめ細かい肌でしようつ』 ろ 『おや、畝傍山。あなたの目はフシアナですか ? ほら、牡丹さまのご子息といったら、まる でエーゲ海の真珠のようですよ』 ン『ふんつ。そちらが真珠というなら、橘さまの赤ん坊は二つとない輝きを放っダイアモンド またた ホ 『なんのつ。そちらがダイアモンドなら、こちらは夜空の星の瞬きにたとえますっ』 『なにを言う、三笠山つ。橘さまのお子さまのほうが、お美しいに決まっている ! 』 ぶとん

3. ホンキでいくだろ! 青桃院学園風紀録

が、しかし、 『 : ・・ : お先にどうぞ、畝傍山。橘さまのお子さまをしつかりとお抱きなさい』 しいえ、そちらこそどうぞ、三笠山。牡丹さまの赤ん坊さまを、遠慮なくガッチリと』 なまつばの 見合ってゴクリと生唾を呑んだ、一一人である。 牡丹の息子と、 橘の息子。 床の上のハダカの赤ん坊は双方まだ髪の毛も生えそろわす、まるきり瓜一一つで、どちらがど ちらだか、わからない。 『こ、こちらのはうがいささか頬の赤味が美しいような。牡丹さまのご子息は、まるで咲き初 めた薔薇のような頬をしておいででしたっ』 まっげ 『ま、睫毛の長さならば、こちらのほうがほんの一ミリの五分の一ほど長いような。橘さまの お子さまがニッコリ笑えば、まるで目もとから春風がそよぐようでしたから ! 』 ろ だ 『もしや、こちらが牡丹さまのつ ? 』 『いや、それともこっちが橘さまのつ ? 』 ン取っ替え引っ替え一一人の赤ん坊を観察したあげくに、 : この際、ジャンケンでどうでしよう』 『いいでしよう。望むところです、三笠山』 ほお

4. ホンキでいくだろ! 青桃院学園風紀録

176 勝ったら好きなほうの赤ん坊を選びましようと、三笠山と畝傍山はうなすき合った。 ジャンケンポンと掛け声をかけ、三度のあいこのすえに勝ったのは三笠山。 『えええーいつ。それでは、こちらが牡丹さまの赤ん坊さま ! 』 思い切って抱き上げたのが、いまの伊集院躑躅。 「 : : : その後、橘さまは奧さまと、経済観念の不一致からご離婚。幼い菖蒲さまを連れて、と うとう伊集院のお屋敷を出られました。執事の畝傍山は橘さまのあとを追って、同しく伊集院 てんぶく 家を離れ : : : おそらくただいまは菖蒲さまとともに、青桃院学園転覆計画を ! 」 と三笠山が床にひれ伏した。 申し訳ございませんでしたー みは ひとみ こ、伊集院は宝石のような瞳を驚きに瞠る。 いま初めて明かされる出生秘話。 じようず 「なんと ! というコトは、生まれたときから僕は転がり上手 ? 」 そう言ったきり、華麗なる驚愕ポーズ。 しいん、と静まり返った〃美青年城〃の玄関で、剣、朱雀、鹿ヶ谷の三人は思わす顔を見合 わせる。 「うーんと、うーんと、つまり、トカゲ先輩はエーゲカイから来たトカゲだった ? 」 「そーゅー間題じゃないだろ」 「スゴイつ。やつばり僕の麗しい白百合はお生まれになった瞬間から頬が薔薇色で、睫毛は春 風を起こすくらいに長かったんですねつ」

5. ホンキでいくだろ! 青桃院学園風紀録

計算合ってる ? と剣は朱雀に確認で、朱雀はごくごくぶつきらばうにひとこと「正解だ ろ」と返事。 せきばら ゴホン、と咳払いをした三笠山が、神妙な面持ちですすみ出た。 「わたくしからご説明申し上げましよう。坊ちゃまのおっしやるとおり : : : 坊ちゃまのお父上 さまでいらっしゃいます牡丹さまは、伊集院家にはあり得べからざる双子でいらっしゃいまし た。弟さまの橘さまとそろって、生まれたときからそれはそれはお美しい赤ん坊。まるで鏡に 映したようにそっくりな美幼児にお育ちあそばされ、愛らしいペアルックなどをお召しでいら っしゃいました。ところが、長しられるにしたがいまして、橘さまのはうのご様子が変わって まぶ こられたのです。もちろん美少年ぶりは眩しいはどでいらっしゃいましたが、お好みのはうが 多少 : : : 地味に」 牡丹の弟、すなわち躑躅にとっての叔父にあたる、伊集院橘。 彼は少年の年ごろになるにつれて風変わりな性格に育ったのだと、汗を拭き拭き三笠山が語 りだした。 「そもそも伊集院家の血筋のかたは代々決まって、美しいものをこよなく愛される実に貴族的 まが なご性質でいらっしゃいました。牡丹さまも、躑躅坊ちゃまも、紛うことなくそのお血筋。で すが、橘さまはどうしたことか、いつのころからか美しいものに見向きもされなくなってしま われたのです」

6. ホンキでいくだろ! 青桃院学園風紀録

178 地図を受け取る朱雀が、ごくごく面倒そうに、 「つまり、伊集院先輩のクニセモノみがいるかも知れないから、そいつより先に仏像探せって コトですね」 聞いた剣が目をまるくして、 〃ニセモノみ ? ニセトカゲってゆーと、第一校舎の花壇でグルグルまわっ 「えっ ? えっ ? てたアレなのか ? 」 「なんだって ? 許せないっ ! 清らかで美しい躑躅先輩の〃ニセモノみなんて、僕が必殺の こじか 美少年パンチもしくは子鹿キックで追い返しますっ」 伊集院菖蒲と、執事畝傍山。 彼らの悪だくみから青桃院学園を守るための仏像掘り。 コトの次第と目的とがハッキリして、多少の認識のズレはあるものの、一同はようやく一致 団結の気配だ。 「ふふ : : : ふーっふつふつふ ! 僕をこよなく愛するモンプチ諸君 ! たとえエーゲ海のダイ アモンドであろうとハダカの赤ん坊であろうと、僕の美しさのまえでは真っ青なのさつ。秘密 の地図とやらが手に入れば鬼に金棒 ! いよいよナゾの穴掘りに精が出て、密との仏前ケッコ ンは目と鼻の先だよっ」 さようでございますとも、と三笠山が涙ぐみ、伊集院牡丹はレース編みに夢中で、伊集院橘