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検索対象: ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録
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1. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

「ほら、ご覧。この柔らかな髪。ギリシャ神話の青年神もかくやという美しさなのさ。それに うるわ そまっ 引き替え、ムッシュウ : : : その黒タワシは、お粗末極まりないスタイルだよ。あそこで麗しの タンゴを踊る、密のつややかなロングへアーを見習いたまえ」 「くつ、黒タワシですって ! あたしの究極の五分刈りに、なんてことっ」 「それに、丸太のような首もイケナイよ。美青年の首筋というものは、白く滑らかで、透き通 るように美しくあるべきさ」 たくま そうぼうきん 「まっ ! 冗談じゃないわっ。発達した僧帽筋から三角筋にかけての、この美しくも逞しいゴ ールデン・ラインが見えないっていうのつ卩 さこっ 「おや。美青年の上半身といえは、なんといっても黄金の鎖骨。誘惑の午後 : : : 青桃会室でう つかりうたた寝をした僕の、わすかに上下する魅惑的な肩や胸。そうして、無造作にはだけら しんぼうたま えり かいま れた詰め襟のあいだからふと垣間見えた鎖骨に、マイ・ディア・密は辛抱堪らず大胆に顔をう ずめつ : : : ああ ! 」 ろ る 「なんてことつ。カンベキに間違ってるわっ ! 美青年っていったら断然、筋肉よっ」 す ン 「いや、骨さ」 ツ、筋肉よー ウ「キイ ポ っふつふつふつ、だれがなんと言おうと骨なのさつ」 「ふ ここで証明してみせようと、伊集院がシマシマ水着を脱ぎはしめる。

2. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

158 十分、 十五分、と。 時計の針が、ゆっくりすすんでいく。 たま そのうち堪りかねた老漁師が、 「網男。おまえの気持ちは、わしらにだってわかる。だけど、こりゃああんまり : 「そうだよ。隣村まで呼びに行ったお医者さまには、まるで原因不明だからと言われたしゃな いか」 あきらめて安らかに見送ってあげようしゃないかと、なかのひとりが網男の肩に手を置きか と、 「いや、待ってくれ」 別のひとりが、よっこいしよ、と立ち上がる。 「なあ、みんな。い っしょに祈ってやらないか」 仲間に向かってそう言いだした。 ついで、またもうひとりが口を開く。 「わしも、そう思うよ。効くか効かないかはわからんが、とにかく網男が一生懸命になって島 から水を取ってきたっていうんだ。だったら、せめて効くようにと、みんなでいっしょにお願

3. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

154 たまらんむら そろそろ日暮れが近い、玉蘭村。 海をあいだに挟んでいるとはいえ、目と鼻の先ほどに近い稚児ヶ島から、一隻の漁船が猛ス ピードで飛び出していた。 きようだいまる 船の腹には大きな文字で『兄弟丸』と書いてある。 あみお 乗っているのは網男だ。 波を蹴散らし、海鳥を驚かせ、出せるかぎりの速度を出して港へと一直線に向かっていく。 「おい、ありゃあ網男んとこの船しゃないか ? 」 「はんとだ。しかし、あんなに急いでどうしたんだろう」 さんばし たた 桟橋近くで腰を叩きながら網の手入れをしていた漁師たちが、その急ぎぶりにくびを傾げつ つ見守るなか、 「あ、危ない ! 」 「こりゃあ、ぶつかるぞ。逃げろっ はさ しま かし

4. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

その夜。 つるぎ 玉蘭村の集会場の大宴会に招かれた剣たちは、文字通りタイやヒラメの熱烈歓迎を受けたの さち 並んだ皿の上には新鮮な海の幸。 宴会場の舞台では、魚に扮した老漁師たちの舞い踊り。 剣がついに「お腹いつばいだぞ」とギブアップするまで、それらは途切れることなく出しつ 引っけられた。 ふなお ゃあ あみお うれ 嬉しそうな網男のとなりには、病み上がりにしてはやけに元気そうな兄の船男の姿。稚児ケ る びしようねんのいずみ ン島から持ち帰られた〃美少年之泉みの水と、村じゅうのお祈りのおかげで、見事に目が覚めた ケ ウ AJ い、つ 「網男のヤツに、とても良くしてくださったそうで : : : おかげさまでオレもこうして、もう一 とこのどなたかは詳しく存しませんが、はん 度生きてみようかという気力が湧いてきました。・ しま たまらんむら 0 なか ふん

5. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

むじやき オレンジ色の夕日のなか、崖を登るとちゅうで剣が無邪気に言った。 「だってさー、おまえが死んだら、オレひとりでケンカしててもつまんないもん。だったら、 いっしょに天国行って死ぬまでケンカ ? うーんと、あれ ? もう死んしやってるワケだか ら、天国行ったら飽きるまで ? なあなあ、それはそーと : : : オレたち死んだら、泉とか湧く のかな ? 剣を見上げる格好であとから崖を登ってきていた朱雀が、ピタリ、とそこで手足の動きをと める。 : 別のもんがフッフッ湧くぜ」 「つつーか : せりふ 剣の台詞への返事がわりに、ばそっ、とひとりごとである。崖のとちゅうしゃ押し倒しよう がないぜ、と無表情ながらも悔しい様子だ。 たてじわみけん 行く手に見えた砂浜を指さした御霊寺が、深い縦皺を眉間に刻んで宣言した。 たかむら 「む ! 如月くんに、篁。決戦の場所があそこに見えたぞ。戦いのまえにキミたちに言ってお こう、これは伝統正しく名誉輝く青桃院学園高等部生としての、勇気と自尊心をかけた重大な ひきよう ン戦いなのだ。決して臆することなく、卑法な水ドロボウたちに断固として立ち向かいたまえ。 ウそうして、つねづね大悪霊に取り憑かれており、いまいましくも青桃院学園青桃会副会長であ ちつじよ しきま せいじゃく るところの色魔を見事に救出し、学園に平穏と静寂と清らかな秩序を取り戻そう ! 」 うれ 頑張りたまえ、と励まされて、剣は嬉しそうにペロリと舌なめすり。 がけ

6. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

玉蘭村の港である。 だいぶ日が高くなって、海からは朝の漁を終えた漁船が戻りはしめていた。 あみお 「おや、網男しゃないか。こんな時間からどこへ行く気なんだ ? 」 船から降りて仕事の後始末をする漁師たちが、これから船に乗ろうとしている少年に向かっ て声をかけた。 「いま時分からしゃあ、沖へ出ていったってロクな仕事にはならないだろう。うちで兄さんの 看病をしてたほうがいいんじゃないか ? 暮らしに困るようなら、みんなで少しすつでも助け ろ てやるから」 す無理をするなと気づかう声をかけられたが、美少年漁師の網男は船を出す支度をやめようと ケはしない ポ 「おいおい、網男。こんな時間じゃあ、魚だっていやしないぞ」 「いいんです。あんまり休んでば「かりだと漁の宛も転「ちゃうし。兄貴が目を覚ましたとき たまらんむら

7. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

言いながら水筒を持ち上げた。 震える手でフタを開ける。 入っているのは、伝説の不老長寿の水。 こんなことになるまでは、ただの昔話だと気にもかけなかった。あるはすのない現実離れし た言い伝えだと、ロクに耳を傾けもしなかったのに。 びしようねんのいずみ たまらんどう 玉蘭洞から汲んできた〃美少年之泉みの水を、一滴もこばさないようにフタの半分ほどまで それを見て、 「おい。なんだって ? 」 「なあ、みんな。いま網男のやつは、島へ行ってきたって言ったのか ? 」 「ということは、飲ませてるのはもしかして : : : 」 だって、ありゃあ物語のなかの話だろう」 「まさかー ろ ささや る見守る老漁師たちがいっせいに囁き合う。 からだ ン重い兄の身体をどうにか抱き起こして、網男はそのロに水を近づけた。 ケ ウ こほれて無駄にしないように、用心深く、少しすっ、兄のロのなかへと泉の水を流し込む。 そうしてあとは、ただジッと待つ。 五分、

8. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

168 面倒くせー、とつぶやきながら朱雀も戦闘態勢だ。 崖の上から見下ろす砂浜には、黒服たちが集まっている。 グルリと彼らに取り囲まれた真ん中には、木に縛りつけられた格好のシマシマ伊集院。 大柄な黒ポスがひときわ目立つ。 どうやら彼らは、海にタ日が沈むのを待っているらしい 大きな太陽はすでに半分はどが水平線の向こう。 黒光りするライダーズ・スーツに身を包んだポスの腕が、ゆっくりと合図のために上げられ 伊集院は絶体絶命。 ともしび 命は風前の灯火だ。 いままさに黒服の手下たちが、いっせいに手にした武器を構え直し : 「待ちたまえっ ! 」 そこに、御霊寺が鋭く声を上げた。 黒服たちの武器が、今度はいっぺんにこちらを向く。 シマシマ水着の伊集院が、遠目にもわかるほどに顔を輝かせ、 ひそか 「ああっ ! 密っ ! キミだねっ ! ふたたび会えて嬉しいよっ。おや、というコトはもしか してキミもお祭りに参加 ? 」 る。

9. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

120 「知ってるぞ。港にいたピショーネンだ ! 」 つるぎ あみお ササの葉をかき分けてあらわれた網男を見て、剣がそう声を上げた。 いじゅういん 黒服たちから逃げたあと、森のなかで伊集院救出作戦を練っていた剣たちのまえに姿を見せ たまらんむら たのは、玉蘭村の美少年漁師だった。 シャツにジーンズという格好。 せいとういんせい 髪は相変わらすバサバサなのだが、あらためて見ても青桃院生なみの美少年。 その網男が、突然あらわれてこう言った。 「助けてあげようと、思って」 思わぬ人物からの思わぬ申し出に、剣たち三人はそろって、えつ、と驚く顔である。 しま 「あんたたち、稚児ヶ島の伝説の泉を探しにきたんだろ ? 港で話してるのが聞こえたんだ。 オレ、このあたりには詳しいから、カになれるんじゃないかって田 5 って。それに、ここのとこ ろ黒服の男たちがウロウロしてて : : : たぶん、あいつらも泉が目当てだと思う。村が迷惑して

10. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

うつくすぎ 「でもってさー、あそこの島の端っこに見えるのが〃美し杉みってゆー木かな ? その下がド すざく ークツの入り口で、そっから入るのか ? でもさ、なあなあ朱雀、見て見て。ここって壁にな ってるだろ ? それだと、おへソとか腰の下あたりで行き止まりだろ ? 」 波の上のインチキ号。 気持ちの良い追い風を受けて、イカダは順調に目指す稚児ヶ島へと接近しつつあった。 たまらんどう つるぎ オールを使う必要がほとんどないので、剣はのんびり古地図観察である。玉蘭洞の見取り図 どうくっ を見下ろして、待ち受ける洞窟探険のための予習に余念がない。 ろ 「うーんと、これだと〃ピショーネンの泉〃のほうまで行けないもんな。もしかして秘密の入 る すり口とかあるのかな ? 」 ′」りようじ ひね ケ どうすれば目指す場所まで行き着けるだろうと、しきりに首を捻る剣に向かって御霊寺が、 ウ ポ 「む。おそらく、ただの壁に見えるところに抜け穴でもあるのだろう。なにしろ、かなりむか しに描かれた古地図であるだけに、なかに入ってみないことには確かなことはわからない」 しま