カリスマ - みる会図書館


検索対象: ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録
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1. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

「そのタンポポを、わたしにくれるかな」 みかどっるぎ 手をさしのべた帝が剣に向かってそう声をかけたとたん、カフェテリアのなかに、すさまし あびきようかん い阿鼻叫喚の声が響き渡った。 「いやあああっ ! 帝の君がっ」 せいとういん 「信じられない。夢だよ、これは。〃青桃院のカリスマみが、外部からの編入生なんかに」 「どうして ? どうして、僕じゃ駄目なんですか ? 帝先輩 , しんくじフたん ひたんあえ 真紅の絨緞に花を投げ出し、一年生たちは悲嘆に喘ぐ。 ろ 剣は、きよとん、と目をまるくしつつ帝の顔を見上げるばかりだ。 る なか す「うーんと、えへへ、もしかして先輩もお腹すいちゃったとか ? 「いいや」 「それじやコレって、もしかして『お声がかり』ってやつなのか ? 」 「そのとおりだよ」 きみ

2. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

西日の色のなかに浮かぶ、稚児ヶ島。 「んしや、行こーぜ ! 朱雀つ、ごりよーじ先輩卩 つるぎすぎく 剣、朱雀、御霊寺は、網男と別れた磯から、伊集院救出に向かって出発した。 ウ剣はヤル気しゅうぶんにポキポキと指を鳴らし、朱雀は黒服から奪ったボウガンを手にさげ ている。 とな 御霊寺はブップッと唱えごとをしつつ、自分たちの行く末を占うらしい これは恋だろうか、と。 とつじよ 〃青桃院のカリスマみからの予想外のご下間に、執行部メンバーは突如として激しい呼吸困難 おちい こカ旧っこ。 あとじさ ョロヨロとドア近くまで後退り、顔面蒼白のまま激しくくびを左右に振る。 たわむ 「かっ、会長っ ! お、お、お、お戯れをつ。いけませんつ。そのようなお言葉を口にされて みぞう は、学園しゅうが未曾有のパニックにつ」 そうはく

3. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

カフェテリアの玄関に、噂の〃帝の君みが姿をあらわした。 ようぼううるわ 真紅の絨緞に足を乗せた帝前青桃会会長は、スラリと背が高く、大人びた容貎の麗しい〃青 桃院のカリスマ〃と呼ばれたのもうなすける美青年。 集まる一年生すべての注目を集めるそのひとが、ゆっくりと一歩一歩、絨緞の上を歩いてく 白薔薇、黄薔薇を通り過ぎ、 ーリップに流し目をくれ、 珍種のチュ ほほえ 早咲きのヒマワリに微笑みかけ、 アマゾンの花に目をはそめたあげく、 「うひや ? 」 立ちどまったのが、剣の真正面だ。 一年生たちがいっせいに、ええつ、とどよめく。 こちらを見下ろす帝の顔を、泥付きタンポポを握ったままの剣は、ついついまともに見上げ てしまい 「えへへ。なんだかさすがに、トカゲ先輩と、ごりよーじ先輩の、先輩って感しだぞ。なあな あ、朱雀。このひと、ちょっとだけ、おまえに似てるかも ? おまえのこと大人にして、賢そ ーにして、髪切って、金持ちそーにしたみたい ? る。 うわさ

4. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

あつば 「む。天晴れだ、如月くん。それこそ青桃院生にふさわしい、譲り合いの精神」 ・ : 死んでもかまわねー」 瞬間的に幸せだぜ、と。 ばそっ、とつぶやく朱雀が、剣から受け取るフタの水を残らす飲み干した。 おまけに、水筒のフタで間接キス。 今度は本物がしたいぜ、と。 みす 無表情ながらもこれまでにない喜びを噛み締める彼の心中を見透かしたかのように、くす、 と笑った帝前青桃会会長が、 「なるほど。手に入らない貴重な花が学園の庭に咲いているのは、実に喜ばしいことだ」 ひとりごとを口にしつつ、海水入りの水筒を片手に椅子から立ち上がる。 そのまま、窓際に立っ剣のそばまでツカッカと歩み寄って、 「では、タンポポくん。またぜひ会おう」 ろ いきなりその肩を引き寄せて、頬にチュッと軽いキスを贈った。 す ン 「うひやっ卩」 ウ白い詰め襟制服姿の〃青桃院のカリスマみは、つかの間あたためた椅子を離れて、ふたたび 青桃会室を去っていく。 すっかり疲れ果てた御霊寺現青桃会会長は、フラフラと手近な席に腰を下ろして、しはしの

5. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

彼らが夢中で髪を梳かし、制服のリポンを結び直すあいだに、スタスタと校舎への道を歩き すざく だす剣と朱雀だ。 ここのえりよう 九重寮第一別館、青桃会室。 えり 自家用機が間もなく到着という知らせを受け取った帝貴人は、今日も白い詰め襟制服を一分 くつろ の隙もなく着こなした姿で、一一階の部屋に寛いでいた。 昨年はこの部屋の主であった、〃青桃院のカリスマ〃 さすがに馴れた居心地の良さを楽しむ様子なのだが、周囲の現役執行部メンバーは気が気で お茶をいれたり、お ~ 果子を出したり、読み物をすすめたり、話し相手をつとめたり、と。 緊張はなはだしく、前会長のお世話にかかりきりである。 きさ、りせ、 「帝会長。ただいま御霊寺会長、伊集院副会長ならびに、一年生の如月剣くん、篁朱雀くん が、こちらへ参ります」 窓から部屋へと初夏の爽やかな風が入り込んでくるなか。 ウ灰色詰め襟の執行部一一年生が持ってきた知らせに、ふと乱れた髪をかきやりながら、帝は目 をほそめて微笑した。 そこに、 すき さわ たかむら いちぶ

6. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

こともあろうに如月くんがつけ込んで』 ックリ僕たちのカリスマっ』 『カムバ さんレトでつりよう 三条寮も九重寮も大騒ぎで、ショックのあまり実家に帰る生徒まで出る始末。彼らを落ち着 かせるためにも理由をうかがいたいのですが、と執行部メンバーは決死の覚悟での質問だ。 ほほえ と、ニッコリ微笑んだままの帝が、 「ああ、彼といっしょに不老不死に : : : か。それも、なかなかにいい案だ」 思わぬその返事に、執行部メンバーは目を白黒させる。 しま、なんと ? 会長 . つい聞き直してしまった彼には、背を向ける格好。ふたたび夕暮れの景色に目をやりなが ら、ひとりごとの口調で語りだす、帝貴人だ。 ぜいたくきわ 「人というものは、強欲にできている。実に、贅沢極まりないことだが : : : 望むものがすべて ろ 簡単に手に入ると、かえって望むということがどういうことなのか、わからなくなってしまう る ンらしい。〃恋い焦がれる〃という気持ちを、恵まれた日々の向こうに遠く忘れ果てるわけだ。 ウあげく、欲しいけれど手に入らないという、もどかしい状况に、かえって産れを抱くようにな る。どうぞどうぞ、と贈られる鉢植えの美しい花よりも、道端にしつかりと根を張って健気に ・ : たやすく 顔を起こした小さな花に、気をひかれる気持ちが、キミにもわかるだろう。そう : そこに、 こ

7. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

さしでがましいことながら、と恐る恐るすすみ出た執行部メンバーが、ごくごく遠慮がちに 質問した。 「うかがっても、よろしいでしようか ? 会長が『花摘み』に参加されたのは、なぜでしょ うわさささや う。一年生のあいだでも、いろいろと噂が囁かれています。会長が、そのう : ・ : なぜ珍種のタ おくそく ンポポを選ばれたのか、と。加えて、彼に与えた課題についても、目下さまざまな憶測が」 聞くところによると、伝説の不老長寿の水を探させているのだとか。 あこが 尊敬し、憧れてやまない〃青桃院のカリスマみ帝前青桃会会長がナゼ、と。 一年生たちは、ただいま大混乱の最中である。 きみ 『ねえ、キミ ! いったい、なんでだと思うつ ? どうして帝の君は、よりによって編入生の きさ、り、 如月なんかにお声をかけたのかな ? 』 『ナゾでナゾで仕方がないよ。彼よりも僕たちのはうが絶対に美少年なのにつ』 『聞いたかい ? 不老不死の水だって。ああっ、まさか帝の君ともあろうおかたが、成績サイ アクの如月なんかといっしょに不老不死につ卩』 『い : : : 嫌だ。嫌だよっ、僕、耐えられないっ』 『わかった ! きっと帝会長は僕たちみたいなカワイイ子に囲まれすぎて、一時的に美的感覚 ししようきた に支障を来されたのさつ。美少年のなんたるかが、おわかりにならなくなってるに違いない。

8. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

とつじよ と、隅のほうに固まっていた生徒たちのあいだから、突如として悲鳴が上がるのが聞こえて ノ \ る みかど 「ええっ ! 帝先輩がっ ? 」 きみ 「なんだって ? 帝の君が『お声がかり』に参加なさるって卩」 すると、それを聞いた一年生たちがいっせいにどよめいた。 「きつ、聞いてないよっ」 「そんな ! 参加される〃お兄さまみたちは、十七名きりだっていう情報だったのにつ」 「ひどい : : : 帝の君がいらっしやるなら、お好みに合わせた花にするんだった」 悲鳴は、またたく間にカフェテリアしゅうに広まっていく。 持ってきた花を投げ出さんばかりにして声を上げる一同をまえに、ついいましがたホールに 到着したばかりの剣は、当然ながらあっけにとられた顔。 「なあなあ、朱雀。〃ミカンの黄身みがどーとかって、言ってるぞ ? 」 ろ 「 : : : かったり る すまるで興味なしの朱雀の向こうから、竹千代が悲鳴混しりの説明をよこしてくれた。 ケ「あのねつ、如月。帝先輩っておっしやるかたはね、昨年の青桃会会長でいらした先輩なんだ あてひと ざいばつおんぞうし ポ よ。帝貴人先輩 : : : 有名な帝財閥の御曹司で、在任中はク青桃院のカリスマ〃もしくは〃青桃 院の帝王みなんて呼ばれたかたで」

9. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

190 ハタバタと階段を駆け上がってくる騒々しい足音がして、バタン、と派手に扉が開かれた。 勢いよく先頭で飛び込んでくるのが、剣である。 「ああ、元気のいいタンポポだ」 帝前青桃会会長がにこやかに迎えるところへ、あとから御霊寺、伊集院、最後に朱雀が入っ てきた。 「ただいま戻りました、帝会長。会長のお指図どおり、稚児ヶ島まで行ってまいりました。 少々の苦難はありましたが、このとおり無事に : : : 」 無事に帰りました、と報告しようとした御霊寺のそばから、いきなり伊集院がツーステップ ですすみ出る。 帝の姿を見るやいなや、はつ、と驚き、 ゅうが 「おや。そこに僕と同しくらいに長い足を優雅に組んで座っているのは、もしかしてムッシュ うるわ たた ウ帝 ? 僕が〃学園の麗しき白百合〃と讃えられるのと同しように、〃学園のカリスマみなど と呼ばれる人気者の上級生。仮に僕をナルキッソスにたとえるとしたなら、さしすめムッシュ ウはアドニス。僕をトキにたとえるとしたなら、ムッシュウはイリオモテヤマネコ。僕がガラ ハゴスオオトカゲなら、間違いなくゾウガメ・ : という、前青桃会会長であるムッシュウ帝 ひそか が、ナゼここに ? ・ 、ツ、まさかマイ・スウィート、 ・密 ! 前青桃会会長と現青桃会会 しま

10. ボウケンするだろ! : 青桃院学園風紀録

〃青桃院のカリスマ〃とまで呼ばれる帝に、剣が目をつけられたと知ってからは、内心穏やか でない様子の朱雀だ。 そんな朱雀の心配をよそに、剣は三つ目の弁当箱に取りかかり、御霊寺は帝から預けられた ひたい じゅもん 古地図を額に押し当て、しきりに呪文を唱えだす。 そうこうするうちに、飛行機はしだいに高度を落とし、そろそろ着陸体勢へ。 「うまっ、うまっ。あれつ ? デサートまで食う時間なし ? しようがないからケーキと果物 は、ナントカ島に着いてから ? 」 なごりお 帝家の乗務員にシートベルトをぎゅうぎゅうと締められ、剣は名残惜しい顔で弁当箱をリュ とのぞき ックへとしまい込む。となりに座る御霊寺が開いている稚児ヶ島の地図を、ひょい、 込み、 「ねえねえ、ごりよーし先輩。これって、これから遠足に行く島の地図 ? えへへ、なんだか ろ 変なかたちの道があるみたいだぞ ? 」 る す「む。如月くん、よく聞いておきたまえ。この地図は、単なる島の地図ではなく、稚児ヶ島に どうくっ ある地下洞窟のかたちを記したものなのだ」 「どーくっ ? ドーナッしゃなくって、ちょっと惜しい感じ ? 」 たまらんどう 「そのとおり。見たまえ、洞窟〃玉蘭洞みのなかのこの場所に、昔話に語られた秘密の泉があ しま