チュー - みる会図書館


検索対象: ミダレりゃいいだろ! : 青桃院学園風紀録
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1. ミダレりゃいいだろ! : 青桃院学園風紀録

190 そしたらオレも死なないといけないぞ、と。 ポートに引き上げた朱雀の顔をのぞき込んで、剣は半ペソだ。 「神様、もう弁当はいりません。捕れたての魚とか、島の朝ご飯とか、ゴージャスなフルコー スとかも食わなくっていーです。朱雀が死んじゃうと、きっと食欲落ちて、パニーニ三個くら いしか食えません」 どうか生き返らせてくださいとお祈りしつつ、もしかするとパンチかキックで生き返る ? そせいほう と蘇生法についての質問だ。 「いや、如月くん。パンチかキックでは逆効果なのだ」 こた みけんたてじわ 朱雀の脈を確かめる御霊寺が、眉間に縦皺でそう応えると、となりから伊集院が目を輝かせ てこうアドバイス。 「ふつふつふ ! 溺れるものは藁をもっかむ ! というコトは、如月くん。溺れる篁にはマウ スツーマウスが効果テキメンなのさつ」 「え、え、マウス ? マウスってゆーのはネズミのコト ? ごりよーし先輩、それしやネズミ 貸して」 「違うのだ、如月くん。マウスツーマウスとは、ロからロへと息を吹き込む蘇生法の一つ」 「ロからロ ? ってゆーのはつまりチューのこと ? あ、わかった ! チューだからネズミ ? 」 「そのとおり ! 鼻をつまんで〃ヒイヒイフウみだよ、如月くん。さあ、行きたまえつ」 わら

2. ミダレりゃいいだろ! : 青桃院学園風紀録

「それしゃあ、こいっかっ ? 」 「おや、ムッシュウ・ダイバ ナニを隠そう、尖ったモノは苦手なのさ。それに僕が消えた ら、モナムール・密が嘆きのあまりに即昇天」 「しゃあ、どいつだっ」 「チュチュッチュ、チュー ! 」 ′」うに 逞しいダイバーが業を煮やしてモリを振り上げた、そのとき。 「やめろ ! 」 どこからともなく鋭い声か聴こえてきた。 ついで、パシッ、と。モリを握ったダイバーの手を、飛んできた小石が打つ。 「ウッ卩」 狭い小屋にひしめく『邪頭』メンバーたちを押し分けるようにして、細身の人影があらわれ 振り返るヨコシマ・ダイバーたちがいっせいに、 や ・〃お頁みつ」 ダ「オレたちの、〃お頭〃 ! 」

3. ミダレりゃいいだろ! : 青桃院学園風紀録

よくわかんないけど、ウマいもん食ってるときと、同じ感し ? 「あーあ、朱雀といっしょにケンカしたいなー」 押し倒された格好のままで舌なめすりをする剣の上で、帝貴人はしばしのあいだ思案の顔色 である。 ややあって、 「目を閉して、タンポポくん」 そう言って剣に目を閉しさせると、ゆっくりと屈んで、チュッ、とキスをした。 「うひやっ卩」 びつくりして、鼻の頭に手をやる剣である。 「なんだなんだ ? ミカド先輩、どーしてオレの鼻にチューなんだ ? あいさっ 「これはね、国際的な挨拶なんだよ。親しくしたい相手に贈る〃今後よろしく〃の印だ」 ろ「え ? え ? それじや先輩は、オレとシタシクしたいのか ? 」 「そのとおりだ。よろしく頼むよ、これからも。時間をかけて、ゆっくりキミと親しくなろ ゃう」 レ につこり笑って、帝は身体を起こした。 ピリャード台の上から剣をやさしく抱えて下ろす。 「いい力い、タンポポくん。ここでしたことは、篁くんには内緒だよ。実は、彼とはちょっと

4. ミダレりゃいいだろ! : 青桃院学園風紀録

「あっ、あっ、お弁当 ! ミカド先輩のお船で作ってもらったウマそーなャッ ! 」 「むむつ、なんと ? 如月くん、それは確かか ? 」 っふつふつふ ! もちろん明るいなかでのアレコレも大上手つ」 「チュチュー ! 」 ′」りようじ 〃ミカド先輩〃と聞いた御霊寺が慌てて式神ネズミに確かめ、ネズミが「チュー」と鳴いて報 告した。 「そこにおいでになるのは、もしゃ前会長っ卩」 「ああ、御霊寺くん。無事かい」 「うひやっ、ミカド先輩 ? ってゆーコトは、やつばしさっきのキックは朱雀 ? 」 「無事かよ、如月」 ケンカの相手は、『邪頭』ではなく、味方。 だ御霊寺が、荒ぶるダイバーたちを急いで止めた。 「彼らは我々の友人なのです ! 悪のシンジケートではありませんつ」 や 丘マクドナルドの手の者ではないと知らされて、ダイバー一同は戦闘休止である。 ダランプの明かりがつけられて、 「良かった、タンポポくん」 ゆとりの足取りで近寄った帝が、ますは優雅に剣を抱擁した。 167 ほ、つよう

5. ミダレりゃいいだろ! : 青桃院学園風紀録

「こんなに育っては売り物にならないからと、匸マクドナルドに返品されて、帰るあてもな く、仕方なしにこの島に暮らすことになりました。島に住めなくなったら、オレたちはおしま いですっ」 「アアッ、〃お頭みあああああああっ。帰ってきてください どこへ行ったんですか ! と彼らの悲痛な叫び。 話を聞いた剣は、グスグスともらい泣きで、 「な、なんだか、かわいそーな話だな。こんな美味しい島に住めなくなったら、すんごく悲し いだろーな」 あわ 「むむ ! 聞けば、哀れな物語なのだ。我々も学園を失ったらと思うと、いささかの同情を禁 じ得ない」 「チュー」 ろ 「アアッ、それに : : : 大きな声では一一一一口えないが、匸マクドナルドはヘンタイなんだっ。もし も、〃お頭みが一人で乗り込んでいったんなら、いまごろ口にできないような仕打ちをアレコ や レとっ」 而えられないっ ! オレたちの〃お頭みが、あんな目やこんな目に ! 」 ダ「イヤだっ、す 「くそうッ ! 〃お頭みのしなやかなカラダや、キレイな顔が、あのヘンタイ・マクドナルド の汚い手につ ! 」 163 お

6. ミダレりゃいいだろ! : 青桃院学園風紀録

最後までそのままで構わない。下手に縄を解いて自由を与えれば、かえってこちらに危険が及 ぶのだ」 「チュー」 手を縛る縄を式神に齧らせて、あとは力を入れればブツリと切れるくらいの細さに。敵に隙 が見えたなら即座に逃げ出さなければと、機会をうかがう御霊寺である。 小屋のなかには見張り番の黒ダイバーが三人。 三人ともが大柄で、見るからに強そうな体つきだった。 代わる代わるこちらの近くに立って、そのたびにジロジロと鋭い視線をよこしていたが、 「ほんとに、美少年だな」 つぶや なかの一人が、ふと剣の顔をのぞき込んで、そう呟いた。 まっげ 「キレイな顔をしてる。小さくって、細くって、肌なんかツルツルだ。睫毛が長くて、目が大 きい。やつばりこういうのを、本物の美少年というんだな」 「うひやっ ? なんだなんだ ? 」 「おや。彼はキミのコトを〃美少年だみと言ったのさ、如月くん」 つけ加えれば、僕は当然ながら美青年、と。 かれい 伊集院の華麗なる通訳で、黒ダイバーとのしばしの語らいだ。 「おまえたち、どこから来たんだ ? へた ほど

7. ミダレりゃいいだろ! : 青桃院学園風紀録

したが、もしや、他にも乗り合わせる方々などが ? そそう ′」りよ、つじ まんがいち他の客への粗相などがあっては大変と、剣の夏休みの課題を抱えた御霊寺は、 そっ 率責任者らしいむ配顔。 対して、雅が、 「いえ。貴人さまは、如月さまの : : : 失礼、あなたがたのために特別なクルーズ・プランを用 意なさっておいでです。次の寄港地までの『プライム・エンペラー号』は、あなたがたのみの ために航海をいたしますので」 お客さまは三人さまのみです、と。 みけんたてじわ 教えられて、御霊寺は眉間の縦皺をいささか浅くした。 「むう。とはいえ、帝前会長への失礼があっては、現青桃会を預かるものとして申し訳が立た わしきがみ おんみよう ない。我が式神よ。これより先は、陰陽のカのなかなか及ばない地へと旅することになるが、 ちつじよ 正しい秩序のために力を尽くして働いてくれたまえ」 「チュー」 っ ふところ コソコソと彼が呼びかけるのは、灰色詰め襟制服の懐のなか。そこには、黒い式神ネズミが 一匹忍び込んでいる。 そんな御霊寺の心配をよそに、剣は港の景色に夢中だ。 「うわっ、うわっ、朱雀朱雀朱雀っ ! あそこに海賊船つ」 えり

8. ミダレりゃいいだろ! : 青桃院学園風紀録

、つノ、、メ っナ。・ - をノ ナの々 に 0 / の イや > 。ナな 育みノ、が第第 > 歩 ラみ「 .2 メ - 立、 メ > 、 4 イでメ 、ナ 縄に、すでに我が式神に齧らせてあるのだ。力を入れれは、オ 伊集院、キミの縄もこれからすぐに齧らせる。わたしが合図をしたなら、一一 りに、せえの、で飛びかかってくれたまえ」 そののち小屋から逃げ出し、とにかく敵の包囲のなかから脱出を。 島は木々で覆われている様子であったから、朝まで隠れて、夜が明けたならしかるべき方洋 で「プライム・エンペラー号』への合図を送る。 のろし 「我が式神に船まで泳がせるもよし。烽火を挙げて救出を請うもよし。とにかく売り飛はさ だいしゅうぶん ては一巻の終わり。青桃院はしまって以来の、恥すべき大醜聞 ! 」 それだけは避けなければならないのだと、御霊寺が厳しく宣一一一一口する。 チューと鳴いた式神ネズミが、伊集院の縄をコリコリコリと猛スピードで齧り、 「おやつ。不思議と手が楽に。コレも日ごろの行い ? 」 「さあ、行くのだっ、伊集院に如月くん。せえの : : : つ」 「えへへつ、ハダカでケンカだぞっ ! 」 ダ〃脱出するのだみという御霊寺の合図とともに、剣と伊集院は猛ダッシュ。 一一人の見張りダイバー目がけて、三人が一気に殺到した。 いまこそモナムールと愛の大漂流 ! 」 「ふーっふつふつふー おお 4 つ、

9. ミダレりゃいいだろ! : 青桃院学園風紀録

島のダイバーたちが泳ぎまわって、たくさんの魚を捕ってきた。 その日のお昼は、『プライム・エンペラー号』サンデッキを借り切っての、船上シーフー ーティー ーベキュー にお 美味しそうな匂いが海の上まで漂って、ジュージューと捕れたて魚介の焼ける音が、みんな の食欲を刺激した。 かしら 〃お頭みの傷は思ったよりも浅く、疲れはあるものの、プールサイドのデッキチェアに腰を下 ろ ろしてのパーティー参加に支障はなし。 「〃お頭〃、オレの捕ってきた魚ですつ。あーん」 や 「〃お頭〃っ ! オレの貝も食べてくださいつ。はい、あーん」 うれ ダ入れ替わり立ち替わりダイバー仲間に口を開けさせられて、苦笑顔ながらも嬉しげな様子だ 「本当に、あんたたちにはなんとお礼を言ったらいいのか。今度また近くを通るときには、ぜ 195

10. ミダレりゃいいだろ! : 青桃院学園風紀録

150 とうやら無理だったみたいだ。こうなったら朝ま 稼いで借金が返せないものかと頑張ったが、・ でのあいだ、せめて彼らをもてなそう。怖いはつかりの島だったなんて、オレは言われたくな いからな」 オレたちの島しゃあないか、と〃お頭みが言えは、逞しいダイバー一同が声をそろえての男 泣き。 ほどなく火が焚かれて、捕れたて魚介類がジュージューと美味しそうな音をたてて焼けはじ めた。 この島、すんごく新鮮でウマい島だぞ 「ひやーっ ! 魚だ、魚だ ! ん 「むう。確かに美味なのだ」 ばんさん 「ふつふつふ。もしかしてコレが、最後の晩餐にして、僕たちの華麗なるウェディング・ディ ナーかい ? 」 焼きたての魚に、剣はもちろん、御霊寺と伊集院までが大喜びである。 悪のシンジケートと人質とがいっしょになっての、即席シーフード・ ダイバーたちは時おり涙を拭きながらの大食いで、 「〃お頭みあ、美味いですっ」 「〃お頭〃の捕った魚は、やつばり最高だ ! 」