した。 「どうにも、よくわからん。」そう、ぶつぶついっていましたが、よろよろ歩いていく途中で、 道のくずかごにぶつかって、ひっくりかえしてしまいました。 うしろすがた ハンクスさんは、たいへんびつくりした顔をして、その後姿を、じっと見ていました。 1 ティーをやってる ? したいなんのこった ? 「タンポポのしたに、だれかいる ? まったく、スミスは頭がどうかしてるんじゃないかと思うことがあるよ。タンポポのしたでね わら 笑ったりうたったりか ! そんなこと、おききになったことありますか ? 」 リー・ポピンズは、上品にくびをふりながら、とりすまして答 え、ありません ! 」メア えました。 ほうし そして、くびをふったひょうしに、帽子のつばから、キンボウゲの花びらが一ひら、落ちまし ジ = インとマイケルは、その花びらが、ひるがえって落ちていくのをじっと見ていて、顔を見 あわせて、につこりしました。 「あなたの頭にも、一つついてるわ、マイケル ! 」 「ほんと ? 」マイケルは、しあわせそうにため息をついて えさんの見てみるから。」 なるほど、ジェインの頭にも、一つついていました。 こ 0 、、いました。「かがんでごらん、ね とちゅう 278
ところが、もう一さじたべようとしたとき、よくききおばえのある声が、通りのほうから、き こえてきました。 しゆっぱん ( 3 ) そういんかんばんしゅうごう リオ・グランデむけ、出帆だ ! 」 しかりをあげろ ! 「総員、甲板に集合 ! ていと ~ 、 それは、プ 1 ム提督が、散歩に出てきたのです。 うし ね 頭には、がいこっと、ぶっちがいの骨をかいた、黒い帽子をかぶっていました かいぞくかしら たたか 沖の、生きるか死ぬかの戦いのさいちゅうに、海賊の頭からぶんどったものです。 ひとめ マイケルは、一目みようと思って、前庭をつつきってとんでいきました。マイケルのなにより うし の望みは、じぶんも、いっかそういう帽子を手に入れたいと思「ていたからなのです。 とびら 「やつつけろ ! 」提督は、そう咆えながら、門の扉にもたれて、たいぎそうにひたいの汗をぬ ぐっていました。 あたた 秋の日は、暖かく、むしむししていました。太陽が、ゆうべふった雨を、空中に吸いあげてい るのです。 ぽ , し ていとく 「なんちゅうこった ! 」プ 1 ム提督が、帽子で顔をあおぎながら、叫びました。「熱帯性天候、 ていとくぼうし ゆる 許してはおけん。提督の帽子は、提督にはあっすぎるわい。持っててくれんか、 というやつだ リの河 大ミス あいばう、わしがもどるまで。わしは遠くへいかねばならんーー・ヨッホウ ! 越えだ ! 」 かいぞくぼ , し そして、ハンカチを頭のうえにひろげると、海賊の帽子をマイケルの腕のなかに押しこんで、 おぎ のそ ていと・、 さんに ていとく さけ うで ねったいせいてんこう ( 4 ) ファルマス あせ かわ 113
えいきゅう リタンをじいっとみつめました。ふたりのおもかげは、じぶんの心のなかから永久に消えること がないと思いました。 「覚えててくれれば、またきますよ ! 」フロリモンドカ きみら ? いくぞ ! 」 さけ 「いいよ ! 」弟の王子たちが、叫びました。 そして、王子は、ひとりずつ、身をかたむけて、メアリー・ポビンズにキスしました。 「ぼくたち、待ってますよ。」と、フロリモンドかい 「あんまり、待たせないでね ! 」と、ヴェリタンがたのみました。 ぼうし 「もどってきてね。」と、アモールが、笑いながらいいました。「帽子にチ だよ ! 」 メア丿 1 ・ポピンズは、まじめな顔をしていようとしましたが、とても、だめでした。かたい くちひるが、ふるえるよ、つに、 につこりして、三人の明るい顔をじっと見ました。「ごきけんよう おどろ もい子にしてるんですよ ! 」と、驚くほど、やさしい声でいいました。 いっかくじゅう それから、メアリ 1 ・ポビンズは、オウムの頭のこうもりをあげて、一角獣のわきばらにふれ ました。 いっかくじゅう すぐに、一角獣は、その銀色の頭をおこして、角を空にむけました。 「覚えてて ! 」と、フロリモンドが、ハ ラの花をふりながら、叫びました。 おぼ おぼ わら ゞ、につこりして、約束しました。「、 、ました。 さけ やくそく 1 リップをつけて 204
ぎようじゅせんせし うしろからは、教授先生が、頭の毛をさかだてて、よろよろ歩いてきました。 もうふ さけ 「あなたでしたの、メアリー・ポビンズ ? 」ラークおばさんは、そう叫んで、頭から毛布をは ばん うばぐるま 風のひど ぎとって、乳母車のうえにほうりだしました。「なんて、すさまじい晩なんでしよう ! もこと ! あなたがた、吹きとばされなければいいんですけど ! 」 メアリ 1 ・ ポビンズが、まゆをあげて、見さげたように鼻をならしました。たとえ風が、だれ かを吹きとばすようなことがあったとしても、それはじぶんではないんだ、と、そう思っていた のです。 ていと′、 「どういうこってすなー・ーすさまじい晩とお 0 しゃ 0 たようだが ? 」プーム提督が、みんなの ( 2 ) うしろへ、おおまたに近づいてきました。ダックスフントのポンペイがあとについてきます。か すいへいふく ぜをひかないように、ちいさな、水兵服をきせられていました。 「このうえない晩ですわ、おくさん、波高き大海で暮らすには ! ・、うじやはこ 亡者の箱に、十六人 ( 3 ) ョ ホッ、ホウ ! それから、ラムを一びんだ。 七つの海を航海せねばいけませんな、ルシンダ ! 」 「まあーー死んだ人の箱なんかには、すわれませんわ ! 」ラ 1 クさんは、考えただけでも気が ばん ばん 283
「い「たとおりじゃない ! 」ジ = インは、かしこく、うなずきました。そして、頭を高く、じ っとさせて、花びらを動かさないようにしました。 えだ キンボウゲの木の、金色の花びらを頭にいただいて、ジ = インは、モミジの枝かげを、家にむ しず か 0 て歩いていきました。あたりは、す 0 かり静かで、日はもう落ちていました。本通りの闇が かがや まわりに立ちこめています。ところが、ちいさい公園の輝きが、ジ = インを、しつかり包みこん ジェインは、両方を、 いっしょに感じて でいました。いっぽうの暗さと、もひとつの明るさ 、ました。 「同じ時に、二つの場所にいるんだわ。」と、ジ = インが、低くつぶやきました。「あの入が、 いったとおりだわ ! 」 ジ = インは、おいしげ「た草むらのなかの、ちいさな空き地のことを、あらためて考えました。 ハーかちいさな ヒナギクが、また、のびてくるのが、ジ = インにもわかっていました。クロ 芝生を、おおいかくしてしまうでしよう。、ボール紙のテーブルやプランコは、こわれてしまうで しよ、つ。森がそのうえに、すっかりしげるでしよ、つ。 しかし、それでもなお、なんとかして、どこかで、また見つかるだろうということがわかりま きようと同じように、きれいで、楽しく、しあわせに。ただ、思いだしさえすればよい した のです、そしたら、またそこへ行けます。なんどでも、なんどでも、もどっていきましよう ぐう そして、その明るい一隅のふちに立って、けっ モウさんが、そういったではありませんかー しばふ ひく うち 279
メアリー・ポビンズは、編み針でそっちを指して、公園番が、その目ざわりなごみをびろいあ げて、くずかごになげこむまで、とがめるような目を、じっとむけていました。 「もし、あの人がわしだったら、」と、公園番が、ひとりごとをいいました。「公園なんどは、 ぼうし さばく ありはせん。こざっぱりした、砂漠にでもなるのがおちさ ! 」そういって、帽子で顏をあおぎま した。 「いずれにせよ、」と、声をあげていいました。「わしのせいではないわ。わしは、公園番オ んらい たんけんか 本来なら、探険家になってるところだった、遠い外国でな。わしの道を進んでおったら、こんな ひょうざんこし ところにおりはせん。シロクマといっしょに、氷山に腰でもおろしていただろうさ ! 」 まひるゆめ 公園番は、ため息まじりにそういうと、杖によりかかって、真昼の夢を追っていました。 「ヘン ! 」と、メアリ 1 ・ポビンズが、大声でいいました。頭のうえの枝のなかで 羽、びつくりして、羽ばたきをしました。 羽根が一枚、ゆっくりとまいおちてきました。ジェインは、手をのばして、それをうけとめま した。 「くすぐったくって、 ルい気もち ! 」ジェインは、うすずみ色の羽根のさきを、鼻の頭にす・ヘ らせながら、ひくくつぶやきました。それから、羽根をひたいにあてて、リポンではちまきをし ました。 しゅうちょうむすめ 「わたしは、インディアンの酋長の娘よ。さざめく水のミネハハ , 日をくだっているの。」 えだ ミ ) 0
うたいながら、どしどし歩いていってしまいました。 ねぼうし マイケレよ、・ゝ、 力もこっとぶ 0 ちがいの骨の帽子をぐ 0 とっかんで、興奮で胸をどきどきさせなⅡ がら、頭にかぶりました。 「ちょっと、通りを歩いてやろう。」マイケルはそういって、通りの人がみんな、すばらしい宝 もの と思いました。帽子は、歩くたびにおでこにぶつかっ 物をかぶっているのを、見てくれればい、 まど マ て、上をむくと、ぐらぐらしました。しかし、それでも、窓という窓のカーテンのかげに かくしん ほれぼれとみとれる目が、ひそんでいるのでした。 イケルは確信していました すぐ家へもどるという時に、マイケルは、ラークおばさんのところの大に気がっきました。二 がき ひきの犬は、庭の生け垣のすきまから頭を出して、びつくりしたように、マイケルのほうを見て 、ました。アンドリ = ーは、おぎようきよくしつほをふっていましたが、ウイロビ 1 は、こ。こ、 目をまるくしていました。 「おひるですよ ! 」と、ラークおばさんの声が、さえずるようにひびきました。 そして、ウイロビーは、その声にこたえて起きあがったとき、マイケルにウインクして、くす くす笑いました。 わら 「ぼくのこと笑うなんてこと、あるのかしら ? 」と、マイケルは思いましたが、そんなばかな ことはないと思いなおして、二階の子ども部屋へ、ぶらぶらあがっていきました。 あら 「手、洗わなくちゃいけない、メアリー・ポビンズ ? とても、きれいなんだけど。」マイケル わら ぼうし まど こうふんむね たから
けど、ねえ、」 ジェインは、フロリモンドの、につこりした目を、思い浮かべました んなに、ほんとだとばっかり思っていたのに ! 」 かた なぐさ ふたりは、慰めあうように、手をとりあって、おたがいの肩に頭をもたせて、三人の晴れやか ようせし すがた 、、つしょに歩いていきました。 な姿と、おとなしい妖精の馬のことを考えながら ゆくにつれて、あたりが、うすぐらくなってきました。木の枝が、影のように、頭にかぶさっ ています。ふたりが、大門のところへきたとき、あかりがついたはかりの、通りの街燈の光の輪 のなかにはいりました。 ゞ、、ました。絵にかいた王子たちの 「もいちど、みんなのこと見ましようよ。」と、ジ = インカしも こころあたた 顔を見るのは、悲しいことかもしれませんが、また、心暖まることかもしれません。ジ = インは、 マイケルの手から本をとって、よく知っているべ 1 ジを開きました。 たんけん 「そうよ ! 短剣は、アモ 1 ルがさしてるわ。」と、ジ = インがつぶやきました。「いつものと おりだわ。」それから、絵のほかのところに、目を移してゆきましたが、急に、うれしそうな叫び 声をあげました。 「ほら、マイケル、ごらん ! 夢じゃなかったのよ。わかってたわ、ほんとだっていうこと、 わかってたわ ! 」 「どこ ? どこ ? はやく見せて ! 」マイケルは、ジェインの指さきを追いました。 、いました。そし 「おお ! 」と、マイケルは叫んで、息がつまりました。そして、「おお ! 」と さけ うつ えだ かげ さけ わ 214
まわ 「一都市 ! 」お巡りさんが、目をまるくして、叫びました。「頭に、ちょいと角のはえてるだけ 1 のウマがかね ! 」 どうしよくひたい はくしよくお きようじゅ とくちょう 「特徴はーーこ教授が、早口に、よみあげました。「からだは白色、尾も同色、額がひろく、そ こに角が一本ーー」 「そうですとも、先生。」と、ラークさんが、ロをはさみました。「見ればわかりますよ。 ていただくまでもありません。問題っていうのはーーあれを、どうしたらいいかってことなんで すわ ! 」 きようじゅ オオ一つです、お 「どうするですと ? 」教授は、めがねごしに目をむけました。「することは、こ、、こ ええーー・はくせいにせねばなりません ! 」 くさん。手はずをととのえて いっかくじゅ ) ふあんげ 「はくせいです「て ? 」ラークおばさんが、は「と息をのみました。そして、不安気に一角獣 いっかくじゅう のほうを見ますと、一角獣は、とがめるような目つきで、ラ 1 クおばさんのことを、じ「と長い こと、にらみつけていました。 さけ 「はくせいですって ! 」ジ = インが、おびえた声で叫びました。 かなき 「はくせいだ「て ! 」マイケルも、金切り声でくりかえしました。思うだけでも、たえがたい ほどでした。 きようじゅ きんばっ 王子たちは、金髪の頭をふりました。教授にじ「とむけられた目は、重々しい、あわれみの色 さけ
けると、鼻の、つえに、しつかりとかけました。 きようじゅ ごふじんはいけん 「え 1 と なんでしたつけな、御婦人、拝見しなけりゃならんのは ? 」教授は、何のために わす めがねをさがしていたのか、す「かり、忘れてしま「ているようでした。 ラークおばさんが、ため息をつきました。 いっかくじゅう 「一角獣ですよ ! 」と、がまんづよく、答えました。 きようじゅ 教授は、目をしばたたいて、頭をめぐらしました。 フーム これは、ふしぎ ! 」 「エよほ、つ、にほ、つ いっかくじゅう そして、よく見ようとして、身をのりだしました。一角獣は、頭をひとふりして、角のさきで、 きようじゅ 教授をつつつきました。 きようじゅ 「おっしやるとおりです ! 」教授は、よろめいて、あとずさりしました。「まったくーーーああ いっかくじゅう フーム 一角獣ですわ ! 」 「もちろん、そうでさ ! 」公園番が、ひやかすように、いいました。「それだけのニースをう ) 」じん ぼうし べつに、紙の帽子をかぶった御仁に、おいでをいただくこともありませんな。」 、カ。力、つのに、 かくだいきよう きようじゅ 教授は、てんで耳もかしません。も「ていた本のページを繰「ては、拡大鏡をふりまわしてい ました。 でんせってきどうぶつ : 〈イタ〉、〈イチ〉、〈ィッ〉。ああ、ここだ ! そう。伝説的動物。人 「え 1 と、〈ア〉、〈イ〉 : あたい せじよう ごくまれ。世上、一都市に値するといわ の目にふれることは たとえ、あったとしてもー 183