先生 - みる会図書館


検索対象: 小公女
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1. 小公女

いただけるという気がしました。 セーラは、たいへんきれいな、なめらかなフランス語で、かんたんに話しはしめました。さ せいかく つきマダムには、わかっていただけなかったこと。自分はフランス語を正確にはーー・つまり本 では習わなかったけれども、 ハやそのほかにも、いろんなひとが、いつもフランス語で自分 に話していたこと。自分は、英語と同しように、フランス語を読みもしたし、書きもしてきた とい、つこと 。ヾパはフランス語がすきだったこと、だから自分もすきなこと。だいしなママは、 自分が生まれるとすぐ死んでしまわれたけれども、フランス人だったこと。先生がお教えくだ さることは、なんでも一生けんめいにお習いしようと思っていること。でも、さっきマダムに お話ししようと思ったのは、この本に書いてあることばは、みんな、もう知っているというこ たんご とだったのです。そういって、セーラは、その小さい単語の本をさしだしました。 いきお セーラが話しだすと、ミンチン先生は、はげしい勢いで立ちあがりましたが、またべったり こし おこ 腰をおろして、セーラが話しおえるまで、怒ったような顔つきで、めがねごしにセーラをにら んでいました。デュファルジュ先生は、にこにこしましたが、そのにこにこ顔は、先生が大ま んぞくをしたときの顔でした。自分の国のことばが、きれいな子どもらしい声で、こんなにも こきよう ぞうさなく、美しく語られるのを聞いていると、先生は、まるで自分の生まれ故郷にいるよう 霧のふかいロンドンのうす暗い日などには、そのふるさとは、 な気がしてくるのでした。 いっしよう ぎり だい

2. 小公女

「あなたならできましような、ミンチンさん。」 バロー氏はそういって、ちょっと、いんけ わら んな笑いかたをしました。「きっとおできになりますよ。では、ごめん ! 」 バロー氏はおしぎをしながら外へ出て、戸をしめました。 ミンチン先生は、しばらくそこへ とぐち つっ立って、しっと戸口をにらみつけていました。あの男のいったことはほんとだ、と先生は 思いました。どんなにしても、損害をとりもどすことはできないのです。看板生徒はあとかた むすめ もなくとけてしまって、あとに残ったのは、みよりのないこしき娘でした。自分がたてかえた お金はなくなり、とりかえすすべもありません。 先生が、自分のうけた損害のことを思って、息もつけずに立っていると、とっぜん、わっと ししつ いうにぎやかな声が聞こえてきました。それはお祝いの会場にあてた先生の私室からおこって きたのです。これだけでもやめさせてやろう、と先生は思いました。 ところが、先生が戸口に近づくと、その戸をあけたのはアメリア先生でした。アメリア先生 ぎようそう は、ただならぬ形相の姉の顔を見ると、おどろいて、ひとあしあとへすさりました。 「どうなさったの、おねえさま ? 」アメリア先生はさけびました。 ミンチン先生は、かみつきそうな声で、こういいました。 「セーラ・クルーはどこにいる ? 」 アメリア先生は、あっけにとられました。 そんがい のこ かんばんせいと 126

3. 小公女

た聞こえました。先生はかがんで、長くたれているテープルかけのひだをまくりあげました。 「よくもこんなところに ! 」と先生はさけびました。「よくもかくれていたね、さっさと出 ておいで ! 」 はいだしてきたのは、あわれなべッキーでした。帽子はつぶれて横っちょにぶらさがり、顔 は泣くのをこらえたために、まっかになっていました。 「あの、あの、わたし、先生、ーとべッキーはいいわけをしました。「こんなことをしてはい けないと思いましたのですけれど。わたし、お人形さんを見ていたんでございます。先生 そしたら、先生がはいっていらしたものですからーー・びつくりしてーーテープルの下にかくれ たんでございます。」 「ずうっとそこにいて、立ち聞きしてたんだね。」とミンチン先生はいいました。 「ちがいます、先生。」とべッキーは頭をさげながら、 しいわけをはしめました。「立ち聞き していたんしやございませんーーー先生に見つからないように、そっと出られると思ったんです それができなかったものですから、しかたなくここにおりました。でも、なんにも聞きは いたしませんでした。聞こうとなんか思いませんでした。でも、どうしても聞こえてきたんで わす べッキーはおそろしい婦人が目の前にいることも、急に忘れてしまったように、また新しく ふじん ぼうし 130

4. 小公女

の生徒の運命が変わったことを、話さなくてはなりますまい セーラは、もう、どうしても、学校には、もどさないのです。インドの紳士は、このことだ けは、はっきりと心をきめていました。セーラは、このまま、いまいるところにおいておくの 、にいってくれることにな です。ミンチン先生のところには、カーマイクル氏が、自身で、会し りました。 「帰らないでいいなんて、ほんとによかったわ。」と、セーラはい、 しました。「先生、どんな にお怒りになるでしようね。先生はわたくしがおきらいなんですのよ。でも、それは、わたく しがわるいせいかもしれませんわ。だって、わたくしも、先生がきらいなんですもの。」 せいと ところが、ふしぎなことに、 ミンチン先生のほうから、生徒をさがしにくることになって、 おかげで、カーマイクル氏は、でかけないでもい いことになりました。先生は、なにか用があ って、セーラのゆく先をたずねると、びつくりするようなことを聞かされました。ひとりの女 ちゅう うわぎ かってぐち 中が見たところによると、セーラは上着のしたに、よこ、 オ。力、かくすようにして、勝手口からそ げんかん っと出ていったというのです。そして、おとなりの玄関の石だんを上がって、家のなかへはい ったというのでした。 「どういうつもりだろう ? 」先生は大声でアメリア先生にいいました。 「ぜんぜんわかりませんわ、おねえさま、ーと、アメリア先生は答えました。「おとなりのか せいと うんめい しんし じよ 365

5. 小公女

そのデュファルジュ先生は、それから、まもなく教室にやってきました。たいそう感しのよ ちゅうねん 頭もよさそうな、中年のフランス人でした。おぎようぎをよくして、かんたんなことばの ねっしん 本を熱心に見ようとしているセーラが目にはいると、それが先生の注意をひいたようでした。 「このおしようさんは、わたしの新しい生徒なのですか、マダム ? 」デュファルジュ先生は、 ミンチン先生にむかってそうたずねました。「いい生徒さんだといいんですがね。」 「この子の父親はーーークルー大尉というのですが この子に、たいへんフランス語を習わ せたがっているのです。ところがこの子は、フランス語に、子どもつばい反感をもっているよ うなんでございますよ。さつばり習いたいというふうが見えません。」と、ミンチン先生はい いました。 「それはざんねんですな、マドモワゼル、」デュファルジュ先生は、セーラにむかってやさ しくそういいました。「きっと、 しっしょに勉強をはしめれば、フランス語がうつくしいこと ばだということがわかりますよ。」 せき 小さいセーラは、自分の席に立ちあがりました。なんだか、はずかしめられたような、もう、 どうしようもないというような気もちになっていました。セーラは、あの大きなみどり色の目 で、まっすぐデュファルジュ先生の顔を見あげましたが、それは、、、 し力にもあどけなく、なに かうったえたいというようなまなざしでした。お話ししさえすれば、この先生には、わかって たいい せいと

6. 小公女

でしようか ? 」 そんなことをいうのは、田 5 いきってのことでした。ミンチン先生は、思わずとびあがりそう かんばんせいと になりました。それで、めがねをあてて、気もちをそこねたように看板生徒の顔を見つめまし 「べッキーをですか ! 」先生はさけびました。「まあ、セーラさん ! 」 セーラは、ひとあし先生のほうへ進みでました。 「べッキーも、おくりものが見たいだろうと思いますので。あのひとだって、小さい女の子 でございますから。」 ミンチン先生は、ひどく、 いやしめられたような気がしました。そしてセーラとべッキーと を見くらべました。 じよちゅう 「セーラさん、ーと先生はい、 しました。「べッキーは台所女中ですよ。台所女中などというも のは , ーーそれは小さい女の子というものではありません。」 しっさい、先生は、台所女中が女の子だなどと考えたことは、一どもありませんでした。そ せきたんばこ れは、先生にとっては石炭箱をはこんだり、火をおこしたりするきかいなのでした。 しました。「おくりものが 「でも、べッキーは小さい女の子でございますわ。」とセーラはい、 見られれば、きっとよろこぶと思います。どうぞ、ここにいさせてあげてくださいまし。きょ 8

7. 小公女

セーラは、ちょっとためらって、それからこう答えました。 わら しつれい 「笑ったのは、おわびいたします、それが失礼なのでしたら。」そういってから、「でも、考 えごとをしていたことは、わるいとはいません。」といいました。 「なにを考えごとしていたんだ ? 」と、先生はきっとなって聞きました。「考えごとだなん て、ずうずうし い。なにを考えていたのかというんだよ。」 せいと ジェッシーは、くすくす笑って、ラヴィニアとふたりで、ひしをつつつきあいました。生徒 はみんな本から顔をあげて、きき耳をたてました。まったく、ミンチン先生が、セーラにくっ てかかるのは、みんなにとっては、ちょっとおもしろいみものでした。セーラは、かならずな にか、変わったことをいいます、それに、すこしも、こわがるようすなどはみえませんでした。 「わたくしは、」と、セーラはわるびれずに、しかも、いんぎんに答えました。「先生は、ご 自分のなすったことが、おわかりになってないと考えておりました。」 「わたしが自分のしたことが、わかってないだって ? 」ミンチン先生は、まったく息がとま りそうでした。 「そうでございます。」セーラはい、 しました。「それから、もしも、わたくしが王女さまで、 そのわたくしを、先生がおなぐりになったのだったら、どういうことになるのだろう、と考え ておりましたーーーわたくしは、先生にたいして、どうすればよいかということをです。それか 222

8. 小公女

くだと知っていたからなのでしよう。 「これからあなたは、人形であそぶひまなどはないのですよ。」と先生はいいました。「よく はたらいて、仕事がしようずにできるようになって、役にたつ人間にならなくてはなりませ ん。」 セーラは、例の大きな、かわった目つきで、しいっと先生を見すえたまま、ひとことも口を ききませんでした。 「これからは、なにもかも、いままでとはちがってくるのですよ。」先生はなおもつづけま した。「アメリア先生がわけをお話しになっただろうと思うけれど。」 な 「はい、ーとセーラは答えました。「ハハが亡くなって、わたくしに残してくださるお金はす こしもなかったのです。わたくしは、びんばうになりました。」 しいながら、いろんなことを 「おまえは、こしきになったんだよ。」ミンチン先生は、こう、 はら 思いだしてしまって、むしように腹がたってきました。「おまえには、親類も家もないらしい し、だれひとり、せわをしてくれるものもないようだからね。」 セーラのやせた青い顔は、びくっとひきつりましたが、でも、やつばり、ひとこともいいま せんでした。 「なにを、しろしろ見ているんです ? 」先生は、しやけんにいいました。「わたしのいうこ のこ しんるい

9. 小公女

けんり いくら代理人だからといって、無礼なことをいう権利はないはずです。 ちょうし 「失礼でございますが、バ ローさん、ーと先生はきつい調子でいいました。「おっしやること がわかりかねます。 「たんしよう日のおくりものにこんなものを。」とバロー氏は、あいかわらずつめたい調子 ろうひ でいいました。「それもたった十一歳の子どもにですよ ! きちがいしみた浪費というもので ミンチン先生は、ますます、手きびしくつめよりました。 こうざん 「クルー大尉はお金もちでいらっしゃいますよ。ダイヤモンド鉱山だけでも バロー氏は、くるりと先生のほうへむきなおりました。 「ダイヤモンド鉱山か ! 」ふいにバロー氏はさけびました。「そんなものはありません ! どこにもなかったのだ ! 」 ミンチン先生は、、 しすからとびあがりました。 「なんでございますって ! 」先生はさけびました。「それは、どういういみでございます ? 」 「ともかくも、ーとバロー氏はいしわるそうにいいました。「そんなものはなかったほうが、 どんなによかったかしれないのだ。」 「ダイヤモンド鉱山がなかった ? 」ミンチン先生は、いすの背につかまりながら、さけびだ しつれい たいい 119

10. 小公女

ざん うすれま、、、 。しし力などと、聞いてる場合ではないのです。 アメリア先生は、目がまっかになるまで、ハンカチでこすりました。それから腰をあげて、 もうなんにもいわずに、へやを出ていきました。ねえさんが、いまのようなけんまくで、もの をいったときには、ひとこともさからったりしないで、いわれたとおりにするのが、一ばんか ほ - フほ、つ しこい方法でした。ミンチン先生は、へやの中をいったりきたりしながら、自分では気がっか こ、つ ずに、大きな声でひとりごとをいいました。この一年間というもの、先生は、ダイヤモンド鉱 山の話をきいて、どんなことでもできそうな気がしていたのです。鉱山のもちぬしのたすけが けいえいしゃ ざいさん あれば、学校の経営者だって、株でひと財産つくれないものでもありません。それが、いまと なっては、お金もうけののぞみどころか、いままでなくしたお金のことをふりかえってみなく てはならなくなったのです。 「セーラ王女か、なるほどね、ーと先生はいいました。「あの子は女王さまみたいに、ぜいた くざんまいにやってきたんだ。」 はら そういいながら、先生は腹だたしそうに、へやのすみにあるテープルのそばを、あらあらし く通りました。すると、なにか、すすりなくような声が聞こえたので、先生は、びくっとしま した。その声は、テープルかけの下から聞こえてくるようでした。 「なんだろう ? 」先生は、おこったようにさけびました。その大きな、すすりなきの音はま かぶ こし