と思いました。 っ 山のように積まれた、ペンキ塗りの板ぎれのなかから、 ネ リー・ルビナとメアリー・ポビンズは、めいめい、葉の えだ ついた長い枝をとって、空中にとびあがっては、霜のおり えだ た裸の木の枝に、すばやく、それをつけたのです。枝をと いじよう めるのはやさしいとみえて、一分間以上はかかりませんで した。そして、一枝つけるごとに、ドジャ 1 おじさんがと びあがって、枝を木につけたところへ、緑色のペンキを一 はけずつ、てぎわよく、ぬりつけてゆきました。 さけ 「まあ、どうでしよう ! 」と、ジェインが叫びました。 ネリー・ルビナが、高いポプラの木のてつべんまで、軽く 浮かんでいって、そこへ大きな枝をつけたのです。けれど も、マイケルは、あまりびつくりして、ロもきけませんで 三人は、公園じゅうをやってゆきました。まるでばねで もついているように、いちばん高い枝までも飛びあがりま した。そして、たちまちのうちに、公園じゅうの木は一本 はだか えだ えだ えだ えだ えた いりはな 313
ぼうし メアリー・ポビンズが、ちょうど、そう思って歩いているとき、大きな雪の玉が、帽子のつば 2 をかすめて、鼻のあたまにあたりました。 「あっ ! 」と、マイケルが叫んで、両手を口にあてました。「わざとじゃないよ、メアリ 1 ・ ビンズ ! ほんとだよ。ジェインをねらったんだ ! 」 メアリ 1 ・ポビンズがふりむきました。つぶれた雪の玉のかけらがくつついていて、ものすご い顔でした。 、、ゝ、、つしよ、つけんめ 「メアリ 1 ・ポビンズ、」と、マイケルカも 、、いいました。「ごめんなさい。 まちがいなんだよ ! 」 ゆきがっ 「まちがいだろうと、なんだろうと、」と、メアリー・ ポピンズが、やりかえしました。「雪合 戦はやめです ! まちがいだなんて、なんでしよう ! ズ 1 ル 1 族のおぎようぎだって、まだま しです ! 」 メアリー・ポビンズは、首についた雪の玉ののこりをとって、毛糸の手袋をはめた手で、ちい しばふ さな玉にまるめました。そして、それを、雪にうもれた芝生のほうへ投げると、そのあとから、 むね 胸をそらせて、雪をふんでゆきました。 「あんなことしちゃって ! 」と、ジェインが、小声でいいました。 「わざとじゃないんだ ! 」と、マイケルが、ささやきかえしました。 せん さけ てぶくろ
ました。ところが、すこしつよくしめすぎたのでしよう、いきなり、ヾ ンという大きな音がして、 月がちちみだしたのです。 「ああ ! ああ ! これ見て ! 」マイケルは叫んで、ほとんど泣かんばかりでした。 月は、どんどん、どんどん、ちちんでいって、シャポン玉ぐらいになったかと思うと、こんどは、 きらっと光るだけになり、それからーーマイケルの手が、空をにぎっているだけになりました。 「ほんとの、お月さまってことじゃなかったんだね ? 」と、マイケルがききました。 ジェインは星くずのあいだをへだてて、太陽のほうに、たずねるように目をむけました。 太陽は、ほのおのような頭で、ふりむいて、ジ = インにやさしく笑いかけました。 「なにがほんとうで、なにがほんとうでないのでしよう ? あなたは教えてくれますか、わた しが教えられますか ? おそらく、わたしたちには、これ以上のことは、けっしてわからないで しようーーそれは、なにか考えることが、それをほんとうのものにするということです。だから もし、マイケルが、月をかかえていると考えていたらーー・それは、ほんとうにもっていることな のです。」 「それじゃ、」と、ジ = インは、まよいながらいいました。「わたしたち、今夜、ここにいるの、 ほんとなのかしら、それとも、いると思ってるだけなのかしら ? 」 太陽は、また、につこりして、すこし悲しそうにしました。 「子どもよ、」と、 もいました。「あまり、つきつめてはいけな、 さけ いじよう わら この世のはじまりから、人 246
1 がほえました。「それに、くっしたを 「その服は、みじかすぎます ! 」と、ミス・アンドリ はくもんです。わたしのころの女の子は、けっしてくっしたなしってことはなかった。母親にい っときましよ、つ 0 」 「くっした、すきじゃないんです。」と、ジェインがいも 、ました。「冬だけしかはかないんで 「なまいきな口をきくんじゃない。子どもは見てもらえばいいんで、意見をいうことはな 力しいました。 い ! 」と、ミス・アンドリ うばぐるま そして、乳母車をのぞきこんで、大きな手で、あいさつがわりに、ふたごのほっぺたをつまみ ました。 な ジョンとヾ 1 ヾラは泣きだしました。 おうどくけ 「ちょっ なんてしつけでしよう ! 」と、ミス・アン・ ト丿、 1 が叫びました。「硫黄毒消し 、、、なからメアリー・ ポビンズのほうをむきました。「しつ それを飲ませなきや ! 」と な おうどくけ わす けのいい子は、あんな泣きようはしません。硫黄毒消し。それも、たつぶり。忘れるんじゃない ひ 「ありがとうございます、おくさま。」と、メア リー・ポビンズが、氷のような冷ややかさで れいぎ 礼儀正しく、 もいました。「ですが、わたくしは、わたくし流にしつけをいたしますので、どなたか らもおさしずはうけません。」 ュ ュ さけ
ビンズのくるのをまっていました。 タクシーが一台、ゆっくり通りを走ってきて、十七番地 の門へ近づきました。そして、エンジンがとまったとき、 うな 唸り声とともに、がたがた音をたてました。それは、むり しやりん もないことで、車輪から屋根まで、重そうに荷物がつんで ありました。ほとんど車がみえないくらいに、屋根にもト りようがわ ランク、、つしろにもトランク、両側にもトランクでした。 まど スーツケースとバスケットが、半分、車の窓から顔をだ していました。帽子の箱がいくつか、ステッ。フにくくりつ うんてんしゅせき けてありましたし、旅行かばんがふたっ、運転手の席にす わりこんでいるみたいでした。 ラんてんしゅ やがて、運転手本人が荷物の下から姿をあらわしました。 まるできゅうな山をくだってでもいるように、そろそろと とびら 車をおりて、そして扉をあけました。 くつの箱がころがり出てきたとおもうと、ついで大きな 茶色の紙づつみ、そのあとから、こうもりがさとステッキ さいご をひもでむすびあわせたのがでてきました。そして最後に ぼうし すがた 0 0
きゅう 久につづくものは、ありません。」 ジェインは、ぎくりとして、目をあげました。 えいきゅう もし、なんにも、永久につづくものがないとしたら、それじやメアー 「なんにもない ? 」と、ジェインは、不安そうにききました。 「なんにも、ありません ! 」と、メアリー・ポビンズが、びしやっと 、、ました。 さっ たいおんけい そして、ジ = インの心のなかを察したかのように、暖炉のところへいって、大きな体温計をお ろすと、キャンプ用べッドの下から、じゅうたん製のバッグをひつばりだして、そのなかへ、ほ 、つりこみました。 いそいで、起きなおりました。 「メアリー・ ポピンズ、どうしてそんなことしたの ? 」 メアリー・ ポビンズは、ジェインにふしぎな目をむけました。 「それはね、」としかつめらしく、 いました。「せいとんしておくように、、 しつも教えられてい ましたからね。」そして、じゅうたん製のバッグを、べッド の下へもどしました。 しんぞう ジ = インは、ため息をつきました。、い臓が、きゅうっとして、胸が苦しくなりました。 「なんだか、悲しくって、心配だわ。」と、ジ = インが、ちいさな声で、マイケルに、、 「プディングのたべすぎだろ ! 」と、マイケルが、やりかえしました。 「ちが、フ、そんな感じじゃなくてーー・」と、ジェインはい、かけましたが、 入り口にノックの ふあん だんろ むね 丿ー・ポビンズだって もました。 328
ン・カロライン・バンクス〉という字が、大きな白い字であらわれました。 「あんたの名かね、わたしのアヒルっ子ちゃん ? 」と、風船ばあさんがききました。 ジェインはうなずきました。 風船ばあさんは、ジェインが風船をとって、空中ではずませているのを見て、かばそく、くっ くっと、ひとり笑いをしました。 「わたしも ! わたしも ! 」と、ジョンとヾ ーバラが叫んで、風船のお盆のなかへ、まるい手 をつつこみました。ジョンが、ビンク色のをひきだすと、風船ばあさんは、それをふくらませて、 につこりしました。まるい風船のうえに、はっきり字がかいてありました。〈ジョンとヾ ハンクスーーふたごだからふたりで一つ。〉 「だけど、」と、ジェインカしも 、、ゝ、、ました。「わからないわ。どうして、知ってたの ? まえに、 わたしたちのこと、見たことないじゃない。」 「ああ、かわいいアヒルっ子さん、いったじゃないかね、風船、風船なんだからって ! これ とくべっ は、ことさら特別なんだよ。」 「でも、おばあさんが、名まえ書いといたの ? 」と、マイケルがいいました。 わら 「わたしが ? 」と、おばあさんが、くすくす笑いました。「とんでもない ! 」 「じゃ、だれ ? 」 「ちがうことをきいとくれ、アヒルっ子さん ! そこに名まえがあるってことっきや、知らな わら さけ ぼん 271
「こういうのはね。」 「サ 1 カスはみんな、おんなじだよ。」と、はじめの子がいも よりきらきらしてる。それだけさ。」 「だけど、きみたち、だれなの ? 」と、マイケルがききました。 ( 2 ) 「ふたごさ。これがポルックスで、ほ くかカストルだ。ほくたち、いつもいっしよさ。」 「シャムのふたごみたいに ? 」 いじよう 「そうだよ。だけど、それ以上さ。シャムのふたごは、ゝ カらだがくつついてただけだけど、ば あいて くらは、ふたりで、心が一つ、頭が一つなんだ。ふたりして、めいめい相手の考えを考えるし、 めいめい相手の夢をみるんだ。だけど、こうして話してもいられない。用意しなくちゃ すがた また ! 」ふたごは、はしっていって、カ 1 テンのかげの出口から姿を消しました。 えんぎじよう 「こんにちは ! 」演技場のなかから、いんきな声がきこえました。「あんたがた、まさか : フド ンをポケットに持っちゃいまいね ? 」 りゅう じようき 大きな、ひれのようなしつぼの二つある竜が、鼻のあなから蒸気をふきだしながら、どたりど たりと、ちかづいてきました。 「わるいけど、ないわ。」と、ジ = インがいも りゅう 「ビスケット、 一つ二つも ? 」と、竜が、がつがっしていいました。 ふたりは、首をふりました。 ウ・ 、ました。 、ました。「ここの動物は、ほかの 224
んにもいわないでいるほうがりこうだっていうことは、わかっていたからです。ジェインは、し ー・ビスケットをゆっくり、かじりながら、プラインドのすき らん顔をしていました。ジンジャ まから、きらめく夜の空を注意ぶかく、のぞいていました。 「十三、十四、十五、十六 「ねるって、 ませんか ? 」ききなれた声が、うしろでしました。 いいましたか、いい 「↓よ、、十 6 、 しきますよ、メアリー・ポピンス ! 」 ふたりは、きゃあきゃあいいながら、寝室のほうへ走ってゆきました。メアリー・ すぐあとを追いましたが、まさに、すごい顔つきでした。 半時間もたたないうちに、みんな、べッドにいれられました。メアリ 1 ・ポビンズが、ぶりぶ しぎふ もうふ ットレスのしたにおしこんで、めいめい りしながら、すばやく手を動かして、敷布と毛布を、マ しつかりくるんでしまいました。 「さあ ! 」と、メアリー・ポビンズは、はきだすよ、つに、、、 ました。「今夜は、これでおしま 、ませんでしたが、顔つきが、いうへ もし、ひとことでもきこえたらーーー」そこまでしかい きことをすっかりいっていました。 「めんどうなことになりますよ ! 」と、マイケルが、あとをいいたしましたが、大きな声でい もうふ ったら、どんなことになるかわかっていたので、毛布に口をあてて、息をころして、低い声でい ました。メアリ 1 ・ ポビンズは、のりのきいたエプロンの音を、かさかさ、ばりばりとさせな しんしつ ひく ポビンズも、 215
1 さんは、なんでもこわれたものをなおしてくれるのか、それとも、きまったものしかなおさな いのか、それが知りたかったのです。 「あと、ひとこといったら、」と、メアリ 、ました。「うちへ帰しますよ ! 」 「ただ、きいただけだよ ! 」と、マイケルが、ふくれていいました。 「じゃ、きかないで ! 」 メアリ 1 ・ポビンズは、怒った鼻音をたてて、さっさと角をまがると、古い鉄の門をあけて、 たてもの ちいさな荒れはてた建物のとびらをノックしました。 「タップ、タップ、トントン ! 」ノッカーの音が、うちのなかでうつろにこだましました。 「どうしましよう、」と、ジェインがマイケルにささやきました。「お留守だったらいやね ! 」 しかしそのとき、重い足音カ 。、、ばたんばたんと近づいてきて、大きなガチャリという音がする と、戸があきました。 顔の赤い、まんまるな女の人がひとり、人間というよりも、リンゴを二つ重ねたようなかっこ かみ うで、入り口のところに立っていました。まっすぐな髪の毛が、頭のうえでこぶのようにたばね ひょうじよう てあって、うすい口のあたりには、むつつりした気むずかしい表情をうかべていました。 「おやおや ! 」と、その人は、じろじろ見ながらいい ました。「なんだ、あんたですか ! メア リー・ポビンズ」 女の入は、メアリ 1 ・ ポビンズに会って、とくにうれしそうでもありませんでした。メアリ ー・ポビンスカもも かど るす 116