きたりしていました。 ゆりかごのなかが、すこし動いて、アナベルが目をあけました。 「こんにちは ! 」と、アナベルは、、 もました。「会いたかったのよ。」 「ほほう ! 」といって、ムクドリは、そばまで飛んでゆきました。 「思いだしたいことがあるんだけど。」と、アナベルは、まゆをしかめていいました。「教えて もらえると思って。」 ムクドリは、どきっとしました。黒いひとみが、きらきらしました。 いました。「こんな ? 」 「どんなふうなの ? 」と、やさしく、 そういって、かすれた声ではじめました。「わたしは、土と空と火と水 : : : 」 「ちがうわよ ! 」と、アナベルは、いらだたしそうにい、 もました。「もちろん、そんなんじゃな 「それじゃ、」と、ムクドリは、気づかわしげに、、 もました。「あんたの旅のことだね ? あん たは、海と潮からきて、空とーーー」 「まあ、へんなのやめて ! 」と、アナベルが叫びました。「わたしの旅ったら、けさ、公園まで 行って帰っただけよ。そんなんじゃないのーーーなにか、だいじなこと。なにか、〈ビ〉ではじまる もの。」 そして、ふいに、わあっとうれしそうに叫びました。 しお さけ さけ 172
ヴァレンタインは、につこりしました。「いいんだよ。ひびがはいったからさ。ほくにけがさ せる気はなかったってこと、知ってるよ ! 」 ジェインはハンカチを出して、ひざをしばってやりました。 「よくなったよ ! 」と、ヴァレンタインは、あいそよくいって、手綱をジェインにわたしまし あら ウィリアムとエヴァラ 1 ドは、頭をふりたてて鼻息を荒くすると、草原をつつきって飛ぶよう たづなすず に走りました。ジ = インは手綱の鈴をならしながら、あとにつづきました。 かたあし そのわきでは、ひざのせいで、片足は重く、もう一方は軽く、ヴァレンタインが走っています。 そして、走りながら、うたいました こ 0 ウィリアムとエヴァラ 1 ド ぎみ うるわしき花こそ、汝、 胸に留むるは、わがよろこび、 心より、汝をいとしむ ! 〉 むねと 〈いとしの君よ、甘くかぐわし、 なれ あま なれ の声が、コ 1 ラスになってきこえました。 たづな
それから、子どもたちが驚いたことには、気をつけをして、手をひたいにあげて、きちんと、 メアリー・ポビンズに敬礼しました。 「プルル、ルン ! 」と、ひろげたハンカチのなかへ、ラツ。ハのような音をたてて、 いました。 さらま、、 「帆をあげろ ! いかりを巻け ! とし子、さらば ! 」 そして、手をふっていきました。舗道のはじからはじへ、からだをふりふり歌をうたってゆき ます。 と、大きな、がらがら声で。 「どうして、ごきげんよう、っていったり、あなたのことを、いとし子なんて呼んだの ? 」と、 ていとくうしろすがた マイケルは、メアリ ました。 1 ・ポビンズとならんで歩いて、提督の後姿を、見送りながらいい そんけい 「それは、わたしのことを、たいへん尊敬できる人だと思っているからですよ ! 」と、メアリ 1 ・ポビンズは、てきばきいいましたが、目には、やさしい、夢みるような色をたたえていまし しんぞ ) ジ = インは、また、ふしぎと悲しい思いがしてきました。心臓がきゅっとしめつけられるよ、つ でした。 〈どんないい娘も、水兵さんがすきだ ! 〉 こ けいれい おどろ ほどう 334
ろうか メアリー・ポビンズは、へんじもせずに、みんなの先にたって甲板のような廊下を歩いてゆき ましたが、はり札のさがっているところまできてとまりました。それには、こう書いてあります。 「半分ノックって、どうするんだろう ? 」と、マイケルが、ジェインに、、 月声でいいました。 ! 」と、ジ = インはいって、メアリ 1 ・ポビンズのほうに、あごをしやくりました。そ の意味は、ロでいうのとおなじくらし 、、はっきりしていました 「これから、冒険がはじまる ところよ。なんかきいたりして、ぶちこわさないで ! 」 メアリ 1 ・ポビンズは、はり札のうえにさがっているノッカ 1 をつかんで、壁に三度、ぶつけ てぶくろ ひとさしゅびひん ました。それから、手袋をした親指と入差指で品よくつまむと、ほんのすこし、ごくわずかに、 ちいさく、そっと、たたきました。 こんな、ぐあいです。 ドン するとすぐに、まるで耳をすませて、その合図を待ちかねてでもいたように、建物の屋根が、 ドン 〈三回と半分、ノックすること〉 ふだ ドン ふだ かんばん かべ ぼうけん たてもの 296
夜はよっぴて、 暮れから朝まで、 子ャギが三びき、 星のまきばで草をはむ。 どの子の鼻もきらきら光る、 どの子のしつほもきらきら、び 1 か 1 る ! 〉 三びきの子ャギは、いちばんおしまいのことばを、メー ッという声で、長くのばして、踊りな がら出てゆきました。 「つぎはなに ? 」と、マイケルが、ききました。しかし、オリオンが答えるまでもありません じようき りゅうえんぎじよう でした。もう、竜が演技場に出ていて、鼻のあなから蒸気をふきながら、二つの、ひれのような しつぼで、星くずを、まきあげていました。 そのあとから、カストルとポルックスがきました。ふたりして、大きな、白く輝く球で、かす 、もよう かに、山や川の模様のかいてあるのを、はこんでいます。 、ました。 「お月さまみたい ! 」と、ジェインがいも 。ゝ、、ました。 「もちろん、月です ! 」と、オリオンカもも りゅう 竜はいま、後足で立って、ふたごが、その鼻のうえに、月をのせようとしています。月は、ち あとあし かがやたま 233
としのひと、 ないてはいけない、い あなたはかしこい、そして、 わしもそうだよ 、いとしのひと ! 〉 ね 道化は、さげすむように手をふるって、ウシの骨のお手玉を、おきさきに投げおろしました。 そして、王さまを軽くおして、先へとすすませました。 どうけ 王さまは、すそをもちあげて、走りました。道化が、そのあとを、すたすた追います。あかる 色とりどりの道を、ぐんぐん、あがってゆきます。やがて、雲が、ふたりと地面のあいだに でてきて、おきさきの目には、もう、ふたりが見えなくなってしまいました。 で笑いました。ふたりは、、つしょに、 上へ上へとあがってゆきます。ぐんぐん、虹をのほりな から。 なにか、曲がったものが、きらきらしながら、おきさきの足もとに落ちてきました。みると、 それは曲がったしやくで、すぐあとから、王さまの冠も、落ちてきました。 あいがん 手をさしのべました。 おきさきは、哀願するように、 けれども、王さまの答えは、ただ歌だけでした。かんだかく、声をふるわせて歌っています。 わら どうけ 〈さようならをお いとしのひと、 かんむり にじ 203
「赤ちゃんですよ、軍艦じゃありません ! 」 「男の子 ? 」と、マイケルがききました。 しえ、女ですーー名まえはアナベル。」 マイケルとアナベルは、じっと、目をあわせました。マイケルは、指を一本、手のなかにいれ てやると、アナベルは、しつかりにぎりしめました。 ポビンズのひざに、 「ほくのお人形ちゃん ! 」と、ジョンがいって、メアリー・ からだをおし つけました。 「わたしのウサちゃん ! 」と、 した。 「ああ ! 」と、ジェインは、風のカールした髪の毛をなでながら、息をひそめていいました。 「なんて、ちいちゃくて、かわいいんでしよう ! 星のようよ。どこからきたの、アナベルちゃ ん ? 」 きかれたのが、たいへんうれしくて、アナベルは、また、話をはじめました。 「わたし、闇のなかからきたの 」と、やさしく、、った、つよ、つにい、 もました。 さけ ジェインは、笑いました。「おかしな、かわいい声ったら ! 」と叫びました。「ロがきけて、話 してくれるといいのにね。」 アナベルは、びつくりしました。 わら ぐんかん ーバラはいって、アナベルの、肩にまいたきれをひつばりま かみ かた 166
もいました。 「ほんとかね ! 」と、 るかな。」 そして、電話をきりました。 二階では、メアリー・ポビンズが外とうをぬいでいました。それを、子ども部屋の扉のかげの しんだい 洋服かけにかけると、こんどは、帽子をとって、寝台の柱の頭に、品よくかけました。 ジェインとマイケルは、なっかしい動作をじっとみつめていました。なにもかも、前に しん みていたとおりです。いなくなっていたなどとは信じられないくらいでした。 メアリー ・ポビンズが、身をかがめて、じゅうたん製のバッグをあけました。 たいおんけい なかはからつほで、ただ一つ、大きな体温計がはいっていました。 「それ、なんのためなの ? 」と、ジェインが、ふしぎがってききました。 、ました。 「あなたがたのためです ! 」と、メアリー・ポビンズがいし 「だって、わたし病気じゃないわ ! 」と、ジェインがもんくをいいました。「はしかは、ふた月 まえになおったわ。」 、ました。その声で、ジェインは、いそいで、目を 「あけて ! 」と、メアリー・ポビンズカも たいおんけい とじて口をあけました。体温計がロにはいりました。 ハンクスさんが、電話のむこうのはじでいいました。「じゃ、わたしも帰 ぼうし とびら
ました。 「風船、風船、わたしのかわいいアヒルっ子 たち ! 」うしろで、があがあいう声が叫びまし ふりかえると、風船ばあさんが見えました。 お盆はからっぽで、おばあさんのまわりには、 風船は見あたりません。しかし、それなのに、 おばあさんは、まるで、目にみえない風船が百 もあつまってひいているように、空中をとんで 進んでいました。 「のこらず売りきれ ! 」と、おばあさんは、そばを通ったとき、叫んでいました。「わかりさえ すれば、だれにも、風船が一つずつ。みんないい のをとった、みんなゆっくり選んだ ! それで、 すっかり売りきれ ! 風船、風船 ! 」 そして、おばあさんのポケットが、すぎてゆくとき、じゃらじゃらと、ゆたかな音をたてまし た。ジェインとマイケルー よ、空中に立ちつくして、ちいさな、しなびた姿が、ゆれ動くゴム風船 そうりだいじん のあいだを、矢のように飛び去るのを、じっと見ていました。総理大臣や市長をかすめて、メア すがた リ 1 ・ポピンズとアナベルのそばをぬけて、ちいさな姿が、もっとちいさくなって、とうとう や ぼん さけ すがた えら さけ 282
「こんばんは ! 」と、魚がいって、ばたばた、わきを通るとき、ていねいにジ = インに頭をさ こうぎよう ばん 晩です ! 」 げました。「興行には、、、 しかし、ジ = インがへんじをするひまもないうちに、いそいで行ってしまいました。 、ました。「こんな動物って、見たことも 「なんて、ふしぎなんでしよう ! 」と、ジ = インがい ないわ ! 」 「なんで、ふしぎだっていうの ? 」と、うしろで声がしました。 ふたりの子どもが、どっちも男の子で、ジ = インよりすこし大きいくらいでしたが、にこにこ ぼうし うわぎ して立っていました。きらきらした、長い上着をきて、とがった帽子のさきには、まるい毛糸の ふさのかわりに、それぞれ、星がついていました。 れいぎ いました。「だけど、ねえ、わたしたち 「ごめんなさい。」と、ジェインが、礼儀ただしく、 ここの動物たちは、星でできているよ あのうーーー 毛皮や根になれているでしよ。それなのに、 うに、みえるんですもの。」 「だって、もちろん、そうなんだよ ! 」と、はじめの男の子が、両眼を大きくあけて、い、 した。「ほかのなんで、できてるわけがある ? みんな、星座なんだから ! 」 : 」と、マイケルが、ロを開きました。 「だけど、おがくずだって金の : もひとりの男の子が、笑いました。「星くず、ってことだろ ! きみ、サ 1 カスって、行ったこ とないの ? 」 さかな わら りようがん 223