てっぽう 「鉄砲でうつの ? 」と、マイケルがききました。 メアリー・ ポビンズは、さげすむように鼻をならしました。 ひやっかじてん 「わたしをなんだと思ってるんです ? 百科事典ですか ? なんでもかんでも、知ってるって いうんですか ? 」メアリー・ポビンズは、ふきげんに問いつめました。「どうか、きて、お茶にし まど てくださいな ! 」そして、ふたりをめいめいのいすのほうへおしやって、窓のプラインドをおろ しました。「ばかなはなしはおしまい。わたしは、いそいでいるんです ! 」 そして、たべるのを、たいへんせかせたので、ふたりとも、のどにつまりはしないかと思いま した。 ・「もうひときれだけ、ちょうだいね ! 」と、マイケルがたのんで、 ト 1 ストのお皿のほうへ手 をのばしました。 「いけません。もう、じゅうぶん以上、たべました。ジンジャ 1 ・ビスケットを一つ、そして、 すぐ、ねます。」 「だってーーー」 「だって、だっては、おやめなさい。でないと、後悔しますよ ! 」と、メアリ 1 ・ポビンズは、 てきびしく、たたきつけるようにい、 もました。 しようかふりよう 「消化不良おこしちゃうよ。きっと、そうさ ! 」マイケルは、ジェインに、そう、 いましたが、 ほんのささやくほどの声でした。それは、メアリ 1 ・ポビンズがそんなようすでいるときは、な いじよう こ 5 ・カ、 さら 214
「そりや、だれだって、あんたにそうはいえないでしようからね ! 」と、メアリ 1 ・ ました。 は、そっけなくいい 「あはあ、」と、その見知らぬ人が笑いました。「それが、大ちがいですよ ! わたしもいつも いそがしい。なにもしないでいるってのは、たいへん時間をとるもんですよ ! 要するに、しょ っちゅうってことですからな ! 」 メアリー・ ポビンズは、ロをすぼめて、へんじをしませんでした。 わら そのおかしな人は、おもしろそうに、くすくす笑って、「さて、もういかなけりや。」と、 ました。「また、いっか ! 」 ぼうし くちぶえふ すず そして、鈴のついた帽子のふちを、指先でかすめて、ロ笛を吹きながら、ぶらぶらとぶしよう らしく立ち去りました。 ジ = インとマイケルは、見えなくなるまで、じっと見ていました。 「のらくらもの ! 」 はきだすようにいう、メアリー・ポビンズの声が、うしろでしました。ふたりが、ふりかえっ うしろすがた てみると、メアリー・ポビンズもまた、じっと後姿を見ているのでした。 「あの人、だれ ? メアリー・ポビンズ ! 」と、マイケルが、興奮して、べンチのうえでとん だりはねたりしながら、ききました。 しました。「あ ま、、ったでしよ、つ。」と、メアリー・ポピンスがたたきつけるよ、つに、、 わら こうふん ポビンズ 181
ふきげんにさえならなかったらーーーあんなにふき カづよい手が、ジェインをぐんぐんひつばって ゆきます。やがて、あたたかい日の光がほおに感 するど じられて、ひきずって走る足を、草の葉が鋭くか とっぜん すめました。すると突然、二本の腕が、鉄のたが のようにジェインにまきついて、からだをもちあ げると、空をきってゆすぶりました。 「ああ、たすけて ! たすけて ! 」と、ジェイ ンは叫ぶと、気ちがいのようになって、腕をふり ほどこ、つと身をもがきました。負けるにしたって あばれてやるぞと、めちやめちゃにけとばしまし 「お願いですから、」と、ききなれた声が、耳もとでしました。「これは、わたしのいちばんい わす スカ 1 ト で、夏じゅう、もたせなきゃならないんだということを忘れないでください ! 」 ジ = インは目をひらきました。青い、けわしい二つの目がジ = インの目を見すえています。 しつかりと、ジ = インをだいていたのは、メアリー・ポビンズの腕でした。あんなに、はげし ねが 、ツィ さけ うで うで 106
ました。 「行っちゃったよ ! 」と、マイケルがいい ふじん 「なんですって , ーー行っちゃった ? 」。 ンクス夫人は、たいへんびつくりしたようでした。 「いたくないみたいだったわ。」と、ジェインカし ふじん バンクス夫人は、まゆをひそめました。 「どういうことなんです、メアリ ー・ポビンズ ? 」と、ききました。 「なんとも申しあげかねます、おくさま、ほんとうに。」と、メアー 丿ー・ポビンズがおちついて もいました。 きようみ まるで、興味がないといった顔つきで、じぶんの新しいプラウスに目をやって、しわをのばし ました。 ふじん ハンクス夫人は、みんなの顔をみくらべて、首をふりました。 「なんてまあ、おかしなことでしようー さつばりわからないわ。」 とびら あ ンクスさ ちょうどその時、門の扉が、かすかにカチリとなって、開いてまた閉まりました。ヾ んが、しのび足でやってきます。もじもじして、みんながふりむくのを、心配そうに、つまさき 立ちでまっていました。 「どう ? きたかい ? 」と、 ンクスさんは心配そうに、声をしのばせていいました。 「きて、行ってしまいました。」と、 、ました。 ンクス夫人がいも ンクスさんは、目をまるくしました。 ふじん 。ゝ、、ました。
こがたたいじゅうけい 小型の体重計が、棚からカラカラ落ち うんてんしゅ てきて、運転手にぶつかってひっくり かえらせました。 「気をおつけ ! 」ラツ。ハのような大 声が、タクシーのなかからどなりまし た。「たいせつな荷物なんだから ! 」 うんてんしゅ 「だが、わしもたいせつな運転手で さあ ! 」と、タクシー屋さんがしつべ 返しをして、立ちあがって足首をさ わす すりました。「お忘れじゃありますま 「さあ、道をあけて、あけて ! 出るんだから ! 」大声がまた叫びました。 そしてその時、子どもたちがみたこともないような大きな足が、車のステッ。フにあらわれて、 つづいて、ミス・アンドリューのほかのところも出てきました。 毛皮の襟のついた大きな外とうにくるまれて、男用のフェルト帽が頭にのつかっていましたが、 その帽子から、長い灰色のヴェーレ のひだをもちあげて、 ノがなびいていました。片手でスカート もう一ぼうの手には、格子縞のきれでつつんだまるいものをぶらさげていました。 ぼ , し えり こうしじま かたて さけ たな
ビンズのくるのをまっていました。 タクシーが一台、ゆっくり通りを走ってきて、十七番地 の門へ近づきました。そして、エンジンがとまったとき、 うな 唸り声とともに、がたがた音をたてました。それは、むり しやりん もないことで、車輪から屋根まで、重そうに荷物がつんで ありました。ほとんど車がみえないくらいに、屋根にもト りようがわ ランク、、つしろにもトランク、両側にもトランクでした。 まど スーツケースとバスケットが、半分、車の窓から顔をだ していました。帽子の箱がいくつか、ステッ。フにくくりつ うんてんしゅせき けてありましたし、旅行かばんがふたっ、運転手の席にす わりこんでいるみたいでした。 ラんてんしゅ やがて、運転手本人が荷物の下から姿をあらわしました。 まるできゅうな山をくだってでもいるように、そろそろと とびら 車をおりて、そして扉をあけました。 くつの箱がころがり出てきたとおもうと、ついで大きな 茶色の紙づつみ、そのあとから、こうもりがさとステッキ さいご をひもでむすびあわせたのがでてきました。そして最後に ぼうし すがた 0 0
電文を読みました。そして、顔色をかえました。 「返事は、いらん ! 」と、ぶつきらほうにいいました。 「六ペンスもですか ? 」 「むろんだ ! 」と、 ンクスさんは、はきだすよ、つに、、 もました。 でんぼうはいたっ ざんねん 電報配達は、うらめしそうな目つきをして、残念そうに行ってしまいました。 ふじん 「まあ、なんなんでしよう ? 」と、 ノンクス夫人がききました。「だれか病気ですか ? 」 「それどころじゃない ! 」と、 ノンクスさんは、みじめな声をだしました。 ふじん 「お金がみんな、なくなってしまったんですか ? 」そのうちに、ヾ ンクス夫人も、まっさおに なって、たいへん心配そうでした。 もよう かみなり 「もっとひどい 晴雨計に、雷とでてなかったかね ? 天気くずれる模様、ってことだった な ? まあ、おきき ! 」 ハンクスさんは電報をのばして、読みあげました。 さんじよう ひと月の予定で参上。きよう三時つく。寝室に火いれておかれたし。 ューフェミア・アンドリュ 「アンドリュ 1 ですって ? まあ、 よてい でんぼ ) ノ しんしつ かていきようし みようじ ハの家庭教師と同じ苗字じゃない ! 」と、ジェインがい 4 ・
「よいご旅行をつてことです ! ちゃんと歩かないと、のせてあげられませんよ ! 」と、メア リ 1 ・ポピンズがきめつけたので、マイケルは、いそいであとを追いました。 音楽は、もうだいぶ大きくなっていて、空中を、ぶんぶん、どんどんったわってきて、みんな をひきつけるようにひびいていました。 メアリ 1 ・ ポビンズは、ほとんど走らんばかりにして、乳母車を、公園の門のところでまわし かけました。ところがそこで、舗道のうえに、ならべてかいてある絵が目にはいったので、ふし に、足をとめました。 「こんどは、なんでとまったんだろう ? 」と、マイケルが、怒った声で、ジ = インにささやき ちょうし ました。「こんな調子じゃ、着きやしないよ ! 」 ほどうげいじゅっか くだもの 舗道の芸術家は、い まちょうど、果物をひと山、色チョークでかきおわったところでした リンゴとナシとスモモとバナナが、一つずつかいてありました。 そのしたに、せっせと字をかいていました。 「エヘン ! 」と、メアリー・ポビンズが、貴婦人ふうのせきばらいをしました。 ほどうげいじゅっか 舗道芸術家は、びよんと立ちあがりました。すると、ジ = インとマイケルには、それが、メア 〈ひとつおとりください〉 ほどう ぎふじん うばぐるま おこ 337
きゅう 久につづくものは、ありません。」 ジェインは、ぎくりとして、目をあげました。 えいきゅう もし、なんにも、永久につづくものがないとしたら、それじやメアー 「なんにもない ? 」と、ジェインは、不安そうにききました。 「なんにも、ありません ! 」と、メアリー・ポビンズが、びしやっと 、、ました。 さっ たいおんけい そして、ジ = インの心のなかを察したかのように、暖炉のところへいって、大きな体温計をお ろすと、キャンプ用べッドの下から、じゅうたん製のバッグをひつばりだして、そのなかへ、ほ 、つりこみました。 いそいで、起きなおりました。 「メアリー・ ポピンズ、どうしてそんなことしたの ? 」 メアリー・ ポビンズは、ジェインにふしぎな目をむけました。 「それはね、」としかつめらしく、 いました。「せいとんしておくように、、 しつも教えられてい ましたからね。」そして、じゅうたん製のバッグを、べッド の下へもどしました。 しんぞう ジ = インは、ため息をつきました。、い臓が、きゅうっとして、胸が苦しくなりました。 「なんだか、悲しくって、心配だわ。」と、ジ = インが、ちいさな声で、マイケルに、、 「プディングのたべすぎだろ ! 」と、マイケルが、やりかえしました。 「ちが、フ、そんな感じじゃなくてーー・」と、ジェインはい、かけましたが、 入り口にノックの ふあん だんろ むね 丿ー・ポビンズだって もました。 328
「こういうのはね。」 「サ 1 カスはみんな、おんなじだよ。」と、はじめの子がいも よりきらきらしてる。それだけさ。」 「だけど、きみたち、だれなの ? 」と、マイケルがききました。 ( 2 ) 「ふたごさ。これがポルックスで、ほ くかカストルだ。ほくたち、いつもいっしよさ。」 「シャムのふたごみたいに ? 」 いじよう 「そうだよ。だけど、それ以上さ。シャムのふたごは、ゝ カらだがくつついてただけだけど、ば あいて くらは、ふたりで、心が一つ、頭が一つなんだ。ふたりして、めいめい相手の考えを考えるし、 めいめい相手の夢をみるんだ。だけど、こうして話してもいられない。用意しなくちゃ すがた また ! 」ふたごは、はしっていって、カ 1 テンのかげの出口から姿を消しました。 えんぎじよう 「こんにちは ! 」演技場のなかから、いんきな声がきこえました。「あんたがた、まさか : フド ンをポケットに持っちゃいまいね ? 」 りゅう じようき 大きな、ひれのようなしつぼの二つある竜が、鼻のあなから蒸気をふきだしながら、どたりど たりと、ちかづいてきました。 「わるいけど、ないわ。」と、ジ = インがいも りゅう 「ビスケット、 一つ二つも ? 」と、竜が、がつがっしていいました。 ふたりは、首をふりました。 ウ・ 、ました。 、ました。「ここの動物は、ほかの 224