( 1 ) トプシー・タ 1 ヴィー トプシー・ターヴィ 1 ( ( 名 s ( v こは、英語で、〈あペこ・ヘ〉〈さかさま〉の意味。 えいご 148
ました。「うつるんだとは知らなかった。きみもかい ! えりにえってーーーまらまら、、、、、 じっとして ! 気をつけないと、棚のものをけとばすよ。こわしたら弁償しなけりゃならないん だから。おや、なにをはじめたんだい ? 」 はな こんどは、ジ = インによびかけたのです。ジ = インの足が、いきなりさっと、じゅうたんを離 れて、めまいがしそうなぐあいに、頭のうえにまわってきたのです。ぐるぐる、ぐるぐる、ジェ インがまわっていますーーーはじめに頭が空中にういて、それから足ーーーそして、とうとう、ター はんたいがわ ヴィーさんの反対側におりてくると、頭をしたにして立っていました。 「いいかね、」と、ターヴィーさんは、ジ = インのことを、げんしゆくな目でみつめて した。「これはまったくおかしなことなんだ。いまだかって、ほかの人にも起こるなんて、考えて もいなかった。神かけて、知らなかったんだ。どうか、気にしないでほしい。」 わら ジ = インは、頭をタ 1 ヴィーさんのほうへむけて、空中で足をふりながら、笑いました。 「とんでもない。い つも、頭をしたにして立ってみたいと思ってたんだけど、 いままでできた ためしがないの。とっても、 い気もち。」 「ふーむ、」と、ターヴィ 1 さんは、悲しそ、つにい、 ました。「すきな人がいるとは、ありがた こった。わしは、とてもすきとはいえん。」 「ぼくもすきだよ。」と、マイケルがいい ました。「一生、こうやっていたいくらいだ。なんで も、とてもすてきで、ちがってみえるよ。」 ペんしよう 127
ルの象も、おもちゃの水兵さんも、すっかり動かなくなりました。 どこをみても、たったいままで、みんな頭を下にして踊っていたなどとは、想像もっかないく らいでした。 ただタ 1 トレットさんだけが、まわりつづけています。部屋じゅうを、ぐるぐる、ぐるぐる、 頭をしたに足をうえに、楽しそうに笑ったりうたったりしています。 と、うれしそうな歌声がひびいています。 「ミス・タ 1 トレット ミス・タートレット ! 」ターヴィーさんは、みなれぬかがやきを目 にたたえて走りよりました。そして、まわりすぎようとする、タートレットさんの腕をつかまえ て、じぶんのそばに、ちゃんと両足で立つまで、じっとおさえていました。 「あなたは、じぶんの名まえを、なんておいいでした ? 」と、タ 1 ヴィーさんは、興奮して、 はあはあ息をしながら、 いました。 さささ かかか さささ ままま 〈町じゅうみんな、 わら おど そうぞう うで こうふん 141
タートレットさんは、みるまに顔をそめました。そして、はずかしそうに、ターヴィ 1 さんを 見ました。 ・タートレットです ! 」 「なんでしよう、タ 1 トレットです、だんなさま。ト。フシ 1 タ 1 ヴィ 1 さんは、その手をとりました。 けっこん ターヴィーにな 「では、結婚してくれませんか、ミス・タートレット ? そして、トプシー・ ってください。あべこべタ 1 ヴィーになって、わたしのたりないところをうめあわせてください たいへん楽しそうになったようだから、きっと、わたしの第二月曜をみのがしてくれるでしょ 「みのがす、ですって、ターヴィーさん ? どうしてでしよう、これほどの楽しみはないんで すのに。」と、ミス・タートレットは、、ました。「きよ、フは、世界をさかさまにみました。そし いままでなかった気もちがひらけたんです。きっと毎月、第二月曜がまちどおしいです そして、はにかんで笑うと、もう一ぼうの手を、ターヴィ 1 さんにさしのべました。ターヴィ わら 1 さんも、ジェインもマイケルも、うれしくなって、笑いました。 「もう六時すぎたから、ターヴィ 1 さんも、いつものようになれたんだね。」と、マイケルが ジェインにささやきました。 ジ = インは、へんじをしませんでした。じっと、ネズミを見ていたのです。もう鼻の先で立っ わら 142
んゞ、あい ! 」と、マイケルが、うれしそうに叫びました。しかし、床のうえから、メアリ 1 ビンズににらみつけられて、だまっていればよかったとおもいました。 「ありがと、つよメアリ 1 」タ 1 ヴィ 1 さんは、ちっとも驚いたようすもなく、悲しそうに 、、ました。 「さあ ! 」と、メア リ 1 ・ポビンスがたたきつけるよ、つに、、 のは、これだけですよ。」 そして、お菓子のかんを、タ 1 ヴィーさんのまえにおきました。 ところが、かんは、すぐに、ぐらぐらっところがったかとおも、つと、さかさまになってしまい ました。そして、ターヴィ 1 さんが、なんどちゃんと立てても、そのたんびに、ひっくりかえし になりました。 「あ 1 あ、」と、ターヴィーさんが、やけをおこしたように、 いました。「わかってるはずじ オも。カ きようは、なんだってちゃんとはしない お菓子のかんだってもだ。底から切っ てあけなきゃなるまい。ちょっと、たのもうー・ーこ そういうと、頭をしたにしたまま、ふらふらと戸口のほうへ いって、扉と床のすきまから、大 声で呼びました。 「ミス・タートレット ! ど、つ ミス・タートレット ! めんどうかけてすまんが、どうか ぞーーーかん切りをもってきてくださらんか ? 」 さけ おどろ ました。「きよう、してあげる ゆか とびらゆか そこ 132
あな ているわけではなく、大きなお菓子のかけらを口にくわえて、いそいで穴のほうへもどってゆき ました。 メアリ 1 ・ポビンズは、飾り皿をひろいあげて、あらためてつつみにかかりました。 ぼうし そして、帽子をおなおしなさい。」と、てきはきいい 「ハンカチをひろってください 「さあ、それではーーー」メアリ 1 ・ポビンズは、こうもりがさをとって、新しい、ンドヾ を、こわきにかかえました。 「だって、まだ行くんじゃないんでしよ、メアリー・ポビンズ ? 」と、マイケルがいいました。 ばん 「あなたは、一晩じゅうそとにいるくせがあるかどうか知りませんが、わたしはちがいます。」 とメアリー・ポビンズはいって、マイケルを戸口のほうへおしやりました。 、、ゝ、、ましたが、ほんのおせじのようでした。 「ほんとに帰るのかい ? 」と、タ 1 ヴィーさん力 ミス・タートレットしか目にはいらないらしいのです。 あゆ しかし、タートレットさんのほうは、みんなのほうへ歩みよると、はれやかにほほえんで、カ 1 ルした頭をふりあげました。 あくしゅ 「どうぞ、またいらして。」と 、いって、みんなと握手しました。「ぜひどうぞ。ターヴィーさ んも、わたしも、」 「第二月曜には、かなら はにかんで伏目になると、顔を赤らめました ず家にいてお茶にしますわーーーね、アーサー ? 」 、ました。「出かけなけりや、うちだろうなーーーそりやた 「そうね、」と、ターヴィ 1 さんがいも かざざら ふしめ ました。 143
きみよう 、ました。「なにもかも、なんてすばらしく奇妙なんでしよう ! 「ああ、」と、ジェインがい べつの世界にいるみたい。ほんとに、きようきてよかった。」 ちょうし 「そうかね、」と、タ 1 ヴィーさんは、悲しみにしずんだ調子でいいました。「たいへん、田 5 い やりがあるってわけだ。手かげんのしかたを知ってる。ところで、この皿をどうしたもんか な ? 」 そういうと、手をのばして飾り皿をとろうとしました。すると、そのとき、お皿はちょっとは ねて、さかだちをしました。それが、たいへんすばやく、たいへんおかしかったので、ジェイン もマイケルも、笑いだしてしまいました。 「とても、」と、タ 1 ヴィ 1 さんは、みじめな声でいいました。「わたしには笑えるどころじゃ だが、そうなったら、 まったく。とめ金を、あべこべに仕上げちゃうにちがいないんだ そうなっただ。どうしようもないさ。」 そしてポケットから道具をとりだして、飾り皿をなおしました。仕事中、しずかに涙をながし ながら。 ました。「どうや 「ふん ! 」と、メア リー・ポビンズは、かがんでお皿をひろいあげながらいい ら、すんだ。さあ、行くとしましよう。」 それをきいて、ターヴィーさんは、さめざめと、すすり泣きをはじめました。 ました。「いつまでもいて、わたしの気もち 「そうですか、行きなさい ! 」と、つらそうにい、 わら かざざら かざざら さら な わら さら なみだ 129
「なにか 起こるのかしら ? 」と、ジ = インは、い配になって、ひとりごとをいいました。そし うばぐるまえ て、乳母車の柄を押しているメアリ ー・ポビンズの手のうえに、じぶんの手を重ねました。その 手は、あたたかく、おちついていて、なぐさめてくれるような感じでした。 「なんて、わたし、はかなんでしよう ! 」と、ジ = インはしすかな声でいいました。「なにも起 こったりするはずないわ ! 」 うばぐるま そして、公園のほうへ、 くるくるころがってゆく乳母車のそばを、いそいで歩いてゆきました。 「もしもし、ちょっと ! ちょっと待って ! 」と、息をきらしていう声が、うしろできこえま 「おや、」と、マイケルが、ふりかえっていいました。「タートレットさんだ ! 」 「まあ、なんでしよう、ちがいますよ。」と、ミス・タートレット。ゝ、 カ息せききっていいました。 「ターヴィ 1 夫人です ! 」 そういうと、顔を赤らめて、タ 1 ヴィーさんのほうをふりかえりました。ターヴィ 1 さんは、 わら はにかんだように笑って、そばに立っていました。 「きようは、第二月曜だったかしら ? 」と、ジ = インがたずねました。ターヴィーさんが、ち ゃんと立っていましたから、そんなはずはないと思ったのですが。 「いや、ちがいますよ ! とんでもない ! 」と、タ 1 ヴィ 1 さんが、早口にい、 もました。 「わたしら ええー・ーちょっと、ごあいさつをも 、、にー」ーああ、こんにちは、メアー ふじん お 335
もんく 遠くしたのほうで、タートレットさんの声がしました。びどく文句をいっています。 ! 」と、部屋のなかで、大きなしやがれ声がしました。「チェッ、ばかな ! あの女に りこ、つなポリー ! ホリ 1 にやらせなさい かわいいポー めんど、つかけることはない ポビンズのオウム ジェインとマイケルが、頭をまわしてみると、驚いたことには、メアリー・ の柄のこうもりがさから声がしていたのです。かさは、そのとき、とんぼ返りをして、お菓子の ほうへ近よってゆきました。そして、頭をしたにして、かんのうえにおりると、二秒間で、くち あな ばしで大きな穴をあけてしまいました。 ーがした 「そら ! 」と、オウムの頭が、とくいそうに、ぎゃあぎゃあ声をだしました。「ポリ きよう びしよう よ ! 器用なポリー ! 」そして、うれしいまんぞくげな微笑を、くちばしに浮かべて、メアリ ゆか 1 ・ポビンズのわきの床に、頭をしたにしておちつきました。 「こりや、 たいへんごしんせつに ! 」タ 1 ヴィーさんは、お菓子の焦げた色の皮がみえるよう になったので、ゆううっそうな声で、おネをいいました。 そして、ポケットからナイフをとりだすと、一きれ切りとって、いきおいよく、ひとくちやり ましたが、ロからはなして、つくづくお菓子を見ました。やがて、とがめるような目つきを、メ ポビンズにむけました。 しわざ ちがうとはいわせない。 「あんたの仕業だね、メアリ 1 干しプドウ入りの菓子だったんだ。ところが、それがーー」 かし おどろ このまえあけたときは、ちゃんと、 こ かし 133
思ってるんだから。わたしのような身分のあるレディ 1 のいるところじゃありません。すぐさま、 おぼ おひまをいただきます。ターヴィ 1 さん、覚えといてください ! 」 タ 1 トレットさんは、怒って身をゆすると、戸口のほうへ行きかけました。 ところが、歩いてゆく間に、大波のようにふくらんだスカ 1 ト が、まるい足にむけてあおられ ゆか ると、タ 1 トレットさんを、からだごと床からもちあげてしまいました。 おどろひょうじよう 苦しそうな驚きの表情が、顔にひろがって、タ 1 トレットさんは両手をむやみにふりまわしま おろしてくだ 「ターヴィーさん ! タ 1 ヴィーさん、だんなさま ! つかまえてくださいー 助けて ! 助けて ! 」タ 1 トレットさんは、じぶんもまた、さあっと、とんば返りをは さけ じめたので、大声で叫びました。 「おお、おお、世界がひっくりかえる ! どうしましよう ? 助けて ! 助けて ! 」と、ぐる ぐるまわりながら、きいきい声で叫びました。 へんか ところが、まわって いくうちに、ふしぎな変化がおこりました。タートレットさんの顔から、 ひょうじよう 気むずかしい表情が消えて、にこやかなほほえみであかるくなってきました。ジェインとマイケ かみ ルが、びつくりしてみていると、 いままで、まっすぐだった髪の毛が、部屋のなかを、くるくる 渦をまいてまわるうちに、みるまにちちれてきて、たくさんの小さなカ 1 ルにまきあがりました。 5 そして、つぎに口をひらいたときには、まえのしやがれ声が、みつの花のように甘くかわってい さけ あま