夫人 - みる会図書館


検索対象: 帰ってきたメアリー・ポピンズ
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1. 帰ってきたメアリー・ポピンズ

うし やまたかうし 「帽子だ ! 」と、バンクスさんが歯をむいていいました。「わたしの、いちばん上等の山高帽子 ぼうし そして、階段をかけあがると、また、それをけおとしました。帽子は、床のタイルのうえで、 ちょっとくるくるまわりをしてから、おくさんの足もとでとまりました。 「それがどうかしたんですか ? 」と、 ンクス夫人は、おどおどしてききかえしましたが、じ ぶんでは、ご主人がどうかしたのではないかと思いました。 「みてみろ ! 」と、 ンクスさんが、おくさんをどなりつけました。 ぼうし ぼ ) し ンクス夫人は、身をふるわせながら、かがんで帽子をひろいあげました。帽子には、つやの とくべっ ある、ねばっこそうな大きなしみが、 、つばいついていて、なにか特別のにおいがするのに気が つきました。 ふじん バンクス夫人は、つばのあたりをかいでみていいました。 「くつずみのようなにおいだわ。」 「くつずみなんだとも ! 」と、 ンクスさんが、お、つむがえしにい、 もました。「ロ。 ぼうし アイが、わたしの帽子をくつのプラシでこすったんだー・ーっまり、みがいちゃったんだ。」 ンクス夫人は、ぞっとして口をとじました。 「このうちじゃ、なにがおこるかわからん ! 」 バンクスさんはつづけました。「なんでも、ちゃ むかし んといったためしがない 昔つからだ ! ひげそりのお湯があっすぎると思うと、朝のコーヒ ふじん ふじん かいだん ふじん トソン・

2. 帰ってきたメアリー・ポピンズ

「影も形もーーーありませんです ! 」と、ブリルばあやが、胸をはっていいました。「ひとことも このまえとおんなじです。キャンプ用べッドだって、じゅうた 3 いわなければ、お許しもなしに。 んのバッグだってーーーさつばり、いっちゃいました ! せめて、絵はがきのアルバムでもあれば、 田 5 い出にもなるってもんですが。そうでしようが ! 」 ふじん 、ました。「また、めんどうなことになった , 「まあ、どうでしよう ! 」と 、ヾンクス夫人がいも ジ なんて ジ ! 」と、ご主人のほうをふりかえりました。 なんて、思いやりのないー ジメアリー・ ポビンズが、またいってしまったんですって ! 」 ポピンス ? なに、ゝ 「だれが ? なに ? メアリ 1 ・ カまうもんか ! 新しい星ができたんだ ! 」 せんたく ハンクス夫人が、腹をたててい 「新しい星は、洗濯も、子どもの着がえもしませんよ ! 」と、 いました。 せんたく 「夜になれば、窓からみててくれるよ ! 」と 、ヾンクスさんが楽しそうに叫びました。「洗濯や 着がえより、よっぽどましさ。」 ぼうえんぎよう そういって、また、望遠鏡にもどりました。 きよう、 きせき 、ヾンクスさんは、星 「そうだろ ? わたしの驚異 ! わたしの奇跡 ! わたしの美よ ! 」と を見あげていいました。 ジェインとマイケルは、身をよせて、おと、つさまに、よりかかったまま、窓ごしに、夜の空を じっと見ていました。 かげ まど むね び ふじん さけ まど

3. 帰ってきたメアリー・ポピンズ

かいだん がきましたが、 やめてもらわなければなりませんでした。それは、キグリーさんが、毎朝、朝ご はんまえに三時間ずつ、音階のおさらいをしたからで、 ハンクスさんは音楽がすきでなかったの です。 「そしてそれから、」と、 ンクス夫人はハンカチをあてて、すすりあげました。「ジェインが き さくら かにかかる、お風呂場の湯わかし器が破裂する、桜の木が霜でだめになる、そして : : : 」 りようりばん 「もし、おくさま ! 」 ノンクス夫人が顏をあげると、料理番のブリルばあやが、そばに立って いました。 しず 「お台所の煙突が燃えだしたんです ! 」と、プリルばあやが、沈んだ声でいいました。 ふじんさけ 「まあ ! なんてこと ! 」、、 ハンクス夫人は叫びました。「ロヾ ートソン・アイにいって消させ なさい。。 とこにいるんです ? 」 「ねてますよ、おくさま、ほうき置場で。そして、あの子がねてるときたら、なんだって起こ じしん せやしませんよ , ーー地震が起こって、太鼓がとどろいたって ! 」プリルばあやは、台所のほうへ ふじん 階段をおりてゆくバンクス夫人のあとを追いながら、 いました。 どうやらふたりで、火を消しとめることができましたが、それでもまだ、ヾ ノンクス夫人のなや みのたねはっきませんでした。 おひるのごはんをすませたかすませないかというとき、ガチャンという音と、つづいてどしん という大きな音が、二階からきこえてきました。 えんとつも ふろば ふじん おぎば ふじん はれつ ふじん 0

4. 帰ってきたメアリー・ポピンズ

ンクス夫人は、お金を、ひきだしのうえにおきました。 メアリー・ポビンズは、なんともいわずに、ただ、クスンと鼻をならしました。 ふじん 「ああ、そうでした ! 」と、 ンクス夫人は、きゅうに、なにか思いだしました。「メアリー・ うばぐるま ートソン・アイカ ポビンズ、きよ、つは、ふたごは歩かせなくちゃ。ロ・ 、、 : ナさ、乳母車のうえに 腰かけてしまったんです。ひじかけいすとまちがえたんですって。だから、直しにやらなければ ならないの。なしでだいじよぶ ? アナベルをだいて ? 」 メア リー・ポビンズは、ロをあけて、また、びこっととじました。 「わたしは、」と、とげとげしくいいました。「なんだって、だいじよぶです / も 。三、じよぶ以上 です、その気になれば。」 「そうーーーそうですわね。」と 、ヾンクス夫人は、すこしずつ入り口のほうへ近よりながら、 いました。「あなたは、わがやの宝ですーー申しぶんのない宝ですーーー絶対にすばらしい、このう かいだん えなく似つかわし、、 したかーー」いそいで、階段をおりていったので、とちゅうから、声がきこ えなくなりました。 「だけど だけどーーー時々、あの人が、そうでなければいい と田 5 うわ ! 」ノ ヾンクス夫人は、 おうせつま しようぞうが 応接間のはたきがけをしながら、ひいおばあさんの肖像画にむかって 、いいました。「あの人のま こむすめ えでは、じぶんがちいさくって、おばかさんのような気がするんです。まるで、小娘にもどった ふじん みたい。そうじゃないのに ! 」・ ンクス夫人は、さっと頭をもたげて、暖炉のうえの、まだら牛 に ふじん たから ふじん たから 懸ったい だんろ なお ふじん いじよう 258

5. 帰ってきたメアリー・ポピンズ

ました。 「行っちゃったよ ! 」と、マイケルがいい ふじん 「なんですって , ーー行っちゃった ? 」。 ンクス夫人は、たいへんびつくりしたようでした。 「いたくないみたいだったわ。」と、ジェインカし ふじん バンクス夫人は、まゆをひそめました。 「どういうことなんです、メアリ ー・ポビンズ ? 」と、ききました。 「なんとも申しあげかねます、おくさま、ほんとうに。」と、メアー 丿ー・ポビンズがおちついて もいました。 きようみ まるで、興味がないといった顔つきで、じぶんの新しいプラウスに目をやって、しわをのばし ました。 ふじん ハンクス夫人は、みんなの顔をみくらべて、首をふりました。 「なんてまあ、おかしなことでしようー さつばりわからないわ。」 とびら あ ンクスさ ちょうどその時、門の扉が、かすかにカチリとなって、開いてまた閉まりました。ヾ んが、しのび足でやってきます。もじもじして、みんながふりむくのを、心配そうに、つまさき 立ちでまっていました。 「どう ? きたかい ? 」と、 ンクスさんは心配そうに、声をしのばせていいました。 「きて、行ってしまいました。」と、 、ました。 ンクス夫人がいも ンクスさんは、目をまるくしました。 ふじん 。ゝ、、ました。

6. 帰ってきたメアリー・ポピンズ

「公園にみんながおりましたので、おくさま、」と、メアリー・ポビンズは、ヾ うをむいていいました。「つれて帰りました ! 」 「では、いてくださるつもり ? 」 「はい、当分は。」 「ですが、メアリー・ ポビンズ、まえにいてもらったとき、前ぶれもなしに行ってしまったわ ね。こんどはそんなこと、しないでしようね ? 」 「さあどうですか、おくさま。」メアリー・ ふじん ンクス夫入は、ちょっと、めんくらったふうでした。 「でもーーーでは、もしかしたらまた ? 」と、あやふやにききました。 「なんとも申しあげかねます、おくさま。」 「そう ! 」とだナ、ヾ ンクス夫人がいも 、ました。とっさに、なんにも考えがうかばなかったか らです。 そして、驚きからさめた時には、もうメアリ ・ポビンズは、じゅうたん製のバッグをさげて、 子どもらをせかせて二階へあがってゆくところでした。 ハンクスのおくさんは、みんなの後姿をじっと見ていましたが、子ども部屋の戸がしずかに閉 まる音をきくと、ほっと息をついて、電話にかけよりました。 ふじんじゅわぎ 「メアリ 1 ・ポビンズが帰ってきましたよ ! 」 ンクス夫人は受話機にむかって、うれしそう おどろ ふじん うしろすがた ポビンズは、おちついていいました。 ノンクス夫人のほ ふじん

7. 帰ってきたメアリー・ポピンズ

1 さんのところへいくところなのです。ターヴィーさんの商売は、メアリー・ポビンズがハンク スさんのおくさんに話したところによると、物をなおす仕事なのです。 「そうね。」・ ンクス夫人は、ややうたがわしそうに、そういったのです。「じようずにやって くれると いいけど。なおるまでは、キャロリン大おばさんに、あわせる顔がないんですから。」 キャロリン大おばさんは、ヾ ンクス夫人がまだ三つのときに、それをくださったのです。もし それがこわれでもしたら、キャロリン大おばさんが、例の大さわぎをするだろうということは、 みんなに知れわたっていたことなのです。 「わたしの身内のものは、おくさま、」と、メアリ ・ポビンズは、鼻をならしていいかえしま した。「いつでも、じようずにやります。」 そのとき、メアリ 1 ・ポビンズが、あまりけわしい顔つきをしたので、 ハンクス夫人は、ひど く気分がわるくなって、すわって、ベルをおしてお茶をたのんだほどでした。 ビンヤッ ! ジェインが、水たまりにとびこみました。 「足もとをよくみてください ! 」と、メアリ ー・ポビンズがきめつけました。そして、かさを しんぞうわ ふったので、しずくがジ = インとマイケルにとびました。「雨だけで、心臓が割れそうなんですか ら。」 「もし割れたら、タ 1 ヴィ 1 さんがなおしてくれる ? 」と、マイケルがききました。ターヴィ ふじん ふじん ふじん 115

8. 帰ってきたメアリー・ポピンズ

ごこち 「あのう 居心地よく、 いていただけるといいんですが、ミス・アンドリュ 。」と、あいそ じしん もいましたが、どうやら、自信をなくしかけているようでした。 「ふーん。たいしたうちじゃないね。」と、ミス・アンドリ = 1 が答えました。「しかも、ひど い荒れようだ どこもはげおちて、いたみほうだい。大工の手がいるね。それに、このあがり なお 段の塗り直しは、いっしたんです ? ひどく、よごれてる。」 ンクス夫人は、くちびるをかみました。ミス・アンドリ = ーのおかげで、すみごこちのい すてきなわが家が、なにか、みすほらしい、けちなものに変えられてしまったようで、たいへん みじめな気もちになりました。 「あした、やらせますわ。」。 ンクス夫人が、おとなしくいいました。 「なぜ、きようにしないんです ? 」と、ミス・アンドリ ーがせめました。「現在にまさる時は なし、ですよ。それにまた、どうして戸を白で塗ったんです ? こげ茶 , ーー戸はこれにかぎりま す。安いし、よごれもめだたない。あの、ぶちぶちはなんです ! 」 そして、まるい荷物を下におろして、玄関のドアについた点々を指さしました。 「そこ ! そこ ! そこにも ! いたるところ ! なんてぶざまな ! 」 ふじん 「すぐに、手入れをさせます。」バンクス夫人は、カなくいい あんない ・こ案内しましよう。」 だんぬ した。 ふじん や ふじん げんかん ました。「さあ、二階のお部屋へ げんざい

9. 帰ってきたメアリー・ポピンズ

すの ! 」 「ばかばかしい ! たわごとはおやめ ! あんたは、わからずやだね。あんたの子どもらも、 ぶさはう ひどく不作法だし ことに小僧ったら。」 ミス・アンドリ 「まあ、マイケル、まさかー ューに失礼をしたんですか ? すぐおわびしな ふじん うしな さい。」 ンクス夫人は、ひどく度を失って、心配になってきました。 しつれい 「ちがうよ、ママ、失礼なんかしないよ。ほく、ただ・ーー」マイケルがいいわけをはじめまし たか、ミス・アンドリューが大亠尸でさえぎりました。 ぶれいせんばん ぎしゆくしゃ 「この子は、無礼千万でした。」と、きめつけました。「すぐ、寄宿舎つきの学校へ送りなさい。 かていぎようし ひつよう わか 女の子は、家庭教師をつける必要がある。そして、あんたが子どもたちをみさせてる、あの若い そっこく 子だがーーー」といって、メアリ 1 ・ポビンズのほうにあごをしやくりました。「即刻、ひまをとら ぶさにう むのう ぜんぜんしんよう せなさい。不作法で、無能で、全然、信用なりません。」 ふじん ンクス夫人は、ただもう、あきれかえりました。 「まあ、それはなんといってもおまちがいですわ、ミス・アンドリュ わたくしども、こ のうえない人と思っていますのに。」 「あんたはなにもわかってない。わたしは、絶対にまちがいません。ひまをとらせなさい ! 」 ミス・アンドリュ 1 は、すそをひるがえして入り口にむかいました。 ノンクス夫人は、いそいであとにしたがいましたが、たいへんこまって気をもんでいるふうで ふじん こぞう ったい しつれい

10. 帰ってきたメアリー・ポピンズ

「なんでしよう、こんどは ? 」バンクス夫人は、なにごとかと思って、いそいでとびだしました。 さけ 「ああ、わたしの足、わたしの足が ! 」と、女中のエレンが叫びました。 かいだん せともの エレンは、まわりじゅうに瀬戸物のかけらをちらかして、階段にすわりこんで、大声でうめい ていました。 ハンクス夫人が声をとがらせてききました。 「足がどうしたの ? 」と、 ました。 「折れたんです ! 」と、エレンは手すりによりかかったまま、おそろしそうにいい 「ばかをいいなさい、エレン ! 足首をくじ いたんでしよ、それだけよ ! 」 けれどもエレンは、また、うめいただけでし ど、つしましよ、つ ? 」そ、つ 「足が折れた ! な って、なんどもなんども、泣き叫びました。 かなき そのとき、ふたごたちの金切り声が、子ども 部屋からひびいてきました。ふたりは、青いセ ルロイドのアヒルをとりつこしていたのです。 さけ その叫びも、ジェインとマイケルの声からみる と、かほそくきこえました。ジェインとマイケ ふじん ふじん 、一 0 お さけ