ネリウスが、大理石の頭をあげると、日の光が、ちいさな、かけた鼻にあたって、きらっと 光りました。 メアリー・ 「ねえ、下にいちゃいけよ、、 ポビンズ ? 」と、ネリウスがたのみました。「もす こし、下で、ジェインとマイケルと遊ばせてよ ! あの上にいるって、どんなにさびしいか知 しんけん らないでしよ、話をするのは鳥だけなんだもん ! 」大理石の目が、真剣になって、うったえま した。そして、「いいでしよ、メアリ 1 ・ポビンズ ! 」と、両手をにぎりしめて、そっと、 、 . し ました。 メアリー・ ポビンズは、ちょっとのま、考えこんで、じっとみおろしていました。心をきめ ようす ようとしている様子でした。やがて、その目が、やわらいできました。かすかなほほえみが、 口をつたって、片ほおのはしをくねらせました。 、、ゝ、、、ました。「こんどだけです 「じゃあ、きようの午後だけ ! 」と、メアリ 1 ・ポビンズカ よ、ネリウス 二度とさせません ! 」 やくそく 「二度としませんーー・約東します、メアリ 1 ・・ポビンズ ! 」ネリウスは、メアリ 1 ・ポビン ズに、、たず - らっぽく、にやっとしました。 「きみ、メアリ 1 ・ポピンズ、知ってるの ? 」と、マイケルがききました。「どこで、会った かた 155
と ? 」 メアリー・ポビンスま、オートミー ルのお皿を手にしてやってくると、ジェインとマイケル さら のあいだに立ちました。息をするたびに、エプロンが、ばりばり音をたてて、お皿から湯気が すがた 立ちのばっていました。だまったまま、メアリ 1 ・ポピンズは、ガラスにうつる自分自身の姿 なが まんぞくげ こ、につこり笑いました。 を眺めて、満足気。 それから、「ーーそれ、なぞなぞなの ? 」と、鼻をクスンといわせて、ききました。 「ちがうわ、メアリ 1 ・ ポビンズ。」と、ジェインが、しんけんにい、 ました。「ほんとに、 知りたいことなの。」 ちょっとのあいだ、ふたりは、メアリー・ポビンズをみていて、話をしてくれるのだと思い まど どはじぶんも、ジェインのそばにあがりこんで、となりの窓ガラスに息を吹きかけていました。 しました。「船をかいたよ。だけど、かいてるばく 「ほら ! 」と、マイケルが、得意そうにい、 のむこ、つに、そっくりのマイケルがいるよ ! 」 なまへんじ すがた 「ふん、ふん ! 」ジェインは、生返事をして、目もそらさずに、うつっているじぶんの姿を じっとみつめていました。それから、急にふりむいて、メアリー・ポビンズに呼びかけました。 「どっちが、ほんとのわたしなの、メア リ 1 ・ポビンズ ? なかにいるのと、あの、そとの わら さら 318
「なるほど、まあまあってとこだったろうさ ! 」と、キャリコおばさんは叫んで、ステッキ を一にぎり、つかみだしました。「馬がもらえないんだったら これじやどうだね ? せめ て、すこしは、助けになるよ。ビン一つで、一本ずつあげよう。」 ハミントの香りが、空中をみたしました。がまんをなくした四人の子どもは、身をかがめ て、服のどこかにビンがないかとさがしました。身をくねらしたり、こすったり、のぞきこん だり、ほじくったりしましたが、一本のビンもみつかりませんでした。 さけ 「ねえ、ど、つしましよ、つ、メアリー・ ポピンズ ? 」と、ジェインが叫びました。「わたしたち、 一本もないわ ! 」 「ないはずです ! 」と、メア リー・ポビンズが、鼻をきつくならして、答えました。「わたく しがめんどうみてる子どもなら、つくろいだって、ちゃんとできてます。」 ミス・キャリコの声は、うら悲しげな響きをもっていましたが、その黒い目は、メアリー・ ポビンズのほうにむけられて、いたずらっぽく、きらきらっと光りました。そして、ものでも たずねるように、ちいさく、うなずいてみせると、メア リー・ポビンスも、、つなずきかえしま した。 かお がな ひび さけ 202
イケルの上着のボタンを首までかけて、ジ = インのえりをびんとなおしました。 「さあ、わたしたちは、とっとといきましよう ! 」と、陽気に、アナベルにむかって、叫び ました。 それから、足どり軽く、庭の門をはいっていきました。赤んばと花東と、オウムのこうもり げんかん がさを、軽々と抱きかかえて。玄関の上り段を、きどって、きちんとした姿でのぼっていきま まんぞく す。このうえなく、自分自身に満足しているといったふうに、さっそうと歩いていきます。 1 ・ポビンスが、玄 「ごきげんよう、メアリー・ポビンズ ! 」踊っていた人たちは、メアリ 関のところでたちどまったとき、口々に叫びました。 かた メアリー・ ポビンズは、肩ごしにふりかえって、、つなずきました。すると、 しら げんかんとびら ポピンズの、つ 1 ディーが、あまい調べを高らかにかなでて、そして、玄関の扉が、メアリ しろでしまりました。 おんがく ジ = インは、音楽がやんだとき、身ぶるいしました。きっと、空に浮く霜のせいで、ジ = イ ンが、そんなさびしい気がしたのでしよう。 「みんなが、 、ってしまうまで待っていて、それから、家へはいりましよう。」と、ジェイン 力もいました。 かん うわぎ さけ だん はなたば すがた しも さけ げん 349
メアリ・ 1 ・ ポビンズは、色とりどりの字をみて、につこりすると、「すてきなあいさつね、 1 ト」と、やさしく、 てぶくろ マッチ売りは、メアリ 1 ・ポビンズの黒い手袋をはめた手をにぎりしめて、じっとみつめま した。「木曜日に会える、メアリー ? 」と、ききました。 メアリ ・ポピンズは、うなずいて、「木曜日ね、 ート」と しいました。それから、子ど もたちのほうに、身のちちむようなまなざしを向けると、「ぐずぐずしてないでください ! 」と 命令して、道の向こう側の十七番地へ追いたてました。 ンクスさ 二階の子ども部屋では、アナベルが、首のぬけそうなほど泣き叫んでいました。バ げんかんま んのおくさんは、なだめるような言葉を呼びかけながら、玄関の間をせわしく歩いていました。 子どもたちが、正面の扉をあけたとき、おくさんはメアリ 1 ・ポピンズを一目みて、くずれる ように階段に腰をおとしました。 「ほんとに、あなたなの、メアリー・ポビンズ ? 」と 「そうです、おくさま。」メアリー・ポビンズは、しずかにいい めいれい かいだんこし がわ とびら もいました。 、いって声をのみました。 さけ ました。
まわして : : : まわして・ : : ・まわ : 「しつかり、つかまえてて、メアリー・ ポビンズ ! 」マイケルが、ねむい声でつぶやいて、 メアリー・ポビンズの、気もちのいい腕をもとめて、手さぐりしました。 返事は、ありませんでした。 「いるの、メアリ 1 ・ポピンズ ? 」マイケルは、あくびをしながらいうと、ゆれる海にもた れました。 やはり、返事はありません。 そこで、目をとじたまま、また呼ぶと、海が、こだまをかえしたように思われました。「メア リ 1 ・ポビンズ、なにかいって ! メアリ 1 ・ポビンズ、どこにいるの ? 」 「朝のこの時間に、、 もつもいるところにいます ! 」メアリー・ポビンズが、怒った声で、そ つけなく答えました。 「ああ、なんて、すばらしいダンスなんだろう ! 」マイケルは、ねむそうにい、 ひきょ して、メアリ 1 ・ポビンズを、引寄せようとして、手をのばしました。 なんにも、さわりません。さぐっているうちに、指にさわったのは、あたたかくて、やわら うで おこ もました。そ 265
長い、長いあいだ、理解しあ 0 た目つきが、三人のあいだでかわされました。ふたりがわか リー・ポビンズが知っているとい、つことがふたりにわかりました。 ったことを、メア ポビンズ ? 」と、マイケルが、ききました。 「きよ、つは、新年なの、メアリー・ 「そうですよ。」メアリ 1 ・ポビンズは、おだやかにそういって、お皿をテープルのうえにお きました。 マイケル ~ よ、まじめな顔で、メアリ 1 ・ポビンズをみました。すきまのことを、考えていた のです。 、いきなり口をきって、ききました。 「ばくらも、そうなの、メアリー・ポビンズ ? 」と 「ばくらも、なんなんですって ? 」メアリ 1 ・ポビンズが、鼻をならして、ききかえしまし ねっしん しました。 「末ながく幸福に、暮らすの ? 」と、マイケルが、熱、いにい、 くちもと 半分悲しげで、半分やさしげな、ほほえみが、メアリー・ポビンズのロ許で、かすかに、ち らっきました。 「たぶんね。」メアリー・ポビンズが、考え深く、 「なんになの、メアリ 1 ・ポピンズ ? 」 すえ いました。「よりけりです。」 さら 311
まっくろ 「あなたと、深い緑の目、いかにもね ! それより、ごじぶんの真黒な顏をよくみて、ごは んまでに、きれいにしてくださいよ ! 」メアリ 1 ・ポビンズがいつものように、鼻をならし ました。 「きっと、もどってこないんだよ ! 」と、マイケルがいも 、ました。王さまを見たネコだった だんろ ら、とマイケルは考えました、暖炉のうえなんかで、日を送りたいなんて思わないだろう。 「あら、そんなことないわ・・ーー帰るでしよ、メアリ 1 ・ ポピンズ ? 」ジ = インの声は、不安 にあふれていました。 こうきようと 「なんでわたしにわかるもんですか。」と、メアリー・ ポビンズがきめつけました。「公共図 しよかん 書館じゃあるまいし ! 」 ぎろん 「だって、あれマイケルのネコだし , ーーー」ジ = インが、議論をはじめようとしたとき、おか あさまの声が、さえぎりました。 「メアリ ー・ポピンズ ! 」その声は、階段の下から呼んでいます。「ちょっと、手をあけて くださらない ? 」 子どもたちふたりは、 何事かと、顔をみあわせました。おかあさまの声が、おどろきのため に、うわずっているのです。メアリ 1 ・ポビンズは、、 ルそいで部屋をでてゆきました。マイケ かいだん ふあん 134
「それに、プタのもってたフルートは、どこなんでしよう ? 」と、ジェインが叫びました。 「それと、あなたのアコーディオンは ? 」 こんどは、メアリー・ポビンズが、目をまるくする番でした。 「わたしのーーなんていったんですか ? 」と、そう、メアリ 1 ・ポピンズがききましたが、 ひょうじようう けんのんな表情が浮かんでいました。 「アコーディオンよ、メアリ 1 ・ポビンズ ! ゅうべ、公園でひいてたじゃない ! 」 だんろ メアリー・ ポピンズが、暖炉をはなれて、ジェインのほ、つへ近よりました。目が、ぎらぎら しています。 「も一度、いっていただきましよう ! 」その声は、おだやかでしたが、ひどく恐ろしく響き ンクス、わたくしが、ゆうべ、公園で、な ました。「こうおっしやったんですね、ジェイン・ がっき にか楽器をひいていたんですって ? わたくしが ? 」 ゅうかん 「だって、そうだもん ! 」と、マイケルが、勇敢にいいはりました。「ばくたち、みんないた もん。あなたと、おもちゃと、ジェインとばくたよ。ぼくたち、すきまのなかで、おとぎばな れんちゅう しの連中と、踊ってたんだ ! 」 うたが メアリ 1 ・ ポビンズは、耳を疑うように、ふたりをじっとにらんでいました。みるからに、 おど さけ お ひび 308
にゆうよくよう あみあ ぐっ ドミノ一組、入浴用のキャップ、絵はがきのアル・ハムがおいてありました。 編上げ靴一足、 子どもらは、あっけにとられて、がやがやと起きあがりました。 「だって、どうやってあんなかにはいってたの ? 」と、マイケルがききました。「そんなよう すなかったよ、きよう。エレンからかくれて、はいったから知ってるんだ ! 」 いじようしつもん けれどもマイケルは、それ以上、質問をつづけられませんでした。メアリー・ポビンズが ようす たいへん高ぶった様子にみえたので、ことばが口先で凍りついてしまったのです。メアリ 1 ・ ポビンズは、鼻をならすと、マイケルのそばをはなれて、フランネルの寝まきを一枚とってひ ろげました。 ジェインとマイケルー よ、顔を見合わせました。ふたりの目は、舌のいえないことを、すっか せつめい リー・ポピンズに説明してもらおうと思ったってだめだ、と、ふ りあらわしていました。メア たりは、ロをきかずに、話しあったのです。 ( しオカかしのよ ふたりは、メアリー・ポピンズが、寝まきの下で服をぬいでいる、こっナ、ミ と、ボタンがは亠 9 れます。さら、さらっ うな動作を、じっとみていました。。ハ と、ペチコート がすべります ! なごやかな気分が、子どもたちの胸をひたしました。そ して、それは、メアリ 1 ・ポビンズからきているのだということがわかりました。もごもご動 どうさ ノ こお した むね