一つ - みる会図書館


検索対象: とびらをあけるメアリー・ポピンズ
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1. とびらをあけるメアリー・ポピンズ

寄りが、おたがい。 こ、許しあうのです。夜と昼も、ここで会いますし、北と南の極も、そうな のです。東が、西にむかってかたむいて、輪ができあがるのです。これが、その時とその場所 なのです、おふたかた ただ一つの時で、ただ一つの場所なのですーーーそこでは、だれでも、 すえ 末ながく幸福に暮らすのです。ごらんなさい ! 」 ねむひめ 眠り姫が、手をさしのべてみせました。 きんばっ ジェインとマイケルが、そっちをみると、三匹のクマが、ちいさな、金髪の女の子のまわり を、ぶきようにとびまわっていました。 ねむひめ せつめい 「ゴ 1 ルデイロックスです。」と、眠り姫が、説明してくれました。「あなたがたと同じよう に、ちゃんと安全ですわ。まあ、こんばんは、ヾ ンチ ! 赤ちゃんはど、つ、ジュディ ? 」 ねむひめ 眠り姫は、腕を組んで歩いてきた、ふたりの、鼻の長い人形に、手をふってあいさっしまし どうし た。「今夜は、愛しあった同志なのよ、すきまのなかですからね。あら、ごらんなさい ! 」 ひとかげ しばふ こんどは、眠り姫は、塔のように高くそびえる人影を、指さしました。大きな足が、芝生を、 こずえ どしんどしん踏んで歩いて、頭は、いちばん高い木の梢ぐらいの高さでした。たいへん大きい かた こんぼうを、つりあいよく肩にかついでいて、もう一方の肩には、男の子が、ちょこんと乗っ ていて、笑いながら大男の耳をひつばっていました。 わら ねむひめ ゆる とう かた びき 292

2. とびらをあけるメアリー・ポピンズ

あんそく 「いく日も、くる日も、いつも同じだ。いっときたりとも安息がえられない。」ロ・ うし ン・アイは、あくびをかみ殺して、帽子をジェインにもってもら、つと、そのそばを、ふらふら しながら歩いていきました。 メアリ 1 ・ポビンズは、大通りを行進してゆきます。時表、ショウ・ウインドウに目をやっ すがた て、うつったじぶんの姿にみとれるのです。 かなもの さいしょ 最初の買い物は、トリムレットさんのお店ですーー金具、金物、庭いじりの道具などのお店 です。 ハンクス夫人の 「ネズミとり一つ ! 」メアリー・ポビンズは、店の入り口からとびこむと、 買い物の書きつけから、読みました。 うし むらさき ほねふと トリムレットさんは、骨太の入で、大きな紫がかった顔をしていました。帽子をあみだにか ちょうかん ぶって、カウンタ 1 のむこうにすわっていましたが、朝刊を、中国の古いついたてのように、 ぐるりにたてまわしていました。 「一つつきりかね ? 」その入は、ついたてのかげから、ちょっと、メアリー・ポビンズのほ いじわる うをうかがって、ぶつきらばうにききました。「すまないが、おじようさん ! 」と、 ころ かなぐ ふじん 191

3. とびらをあけるメアリー・ポピンズ

ひつよう しておく必要がありましよう。 この本には、ほかの読みものや、童謡などのなかの人物や動物が、いろいろと出てきます。 しよう しよう めうし 第三章の、コール王やネコ、牝牛、ガチョウ、カエル、また、第七章では、ロビンソン・クル ーソーや眠り姫をはじめ、ハン。フティ・ダンプティ、赤ずきんとオオカミ、三匹のめくらのネ ズミなど、とくにたくさん出てきます。皆さんの知っているものもありましようし、いちいち 注をつけることはしませんでしたが、いずれも、イギリスの子どもたちに親しまれている童話 どうよう どうようしゅう や童謡、とくに、「マザー・グース童謡集」 ( other Goose Nursery Rhymes) のなかにあるもの が多いのです。いろいろ広く読んでいるうちに田 5 いあたることもあると思いますが、そういう ことが、また、本を読むことを、ひとしお楽しいものにしてくれるのです。 イギリスのお金のことも、すこし説明しておきましよう。 一ポンドが二〇シリングで、一シ いじよう もいます。日 リングが一二ペンスです。二つ以上のときはペンスですが、一つだと一ペニ 1 と、 本のお金になおすと、一ポンドが千円ぐらいですから、一シリングが五〇円、一ペニーが約四 たんい 円です。ほかに、クラウンという単位もあって、これは五シリングですから二五〇円、半クラ ぎんか げんざい ウンの銀貨が二シリング半で一二五円ぐらいになるわけです。本のなかの物の値段は、現在よ ちが り物価の安かった時代ですから、今とはかなり違っています。なお、原本に出てくる重さや長 ぶつか ねむひめ せつめい どうよ ) みな した ねだん びき どうわ やく 367

4. とびらをあけるメアリー・ポピンズ

す。ォルゴ 1 ルが一つ、お巡りさんが石のように落ちてきたので、いきなり、にぎやかな歌を うたいだしました。 と、うたっています。 じゅんさ まわ 「助けてくれ ! 助けてくれ ! わたしですーー巡査三十二番が呼んでおります ! 」お巡り さんは、やにわに呼子をつかんで、やかましく吹きならしました。 まわ 「お巡り ! 」と、クランプさんがどなりました。「することはしておくれ、でないと、あんた お うった も訴えるよ。降りて、この女をつかまえなさい ! 」そういって、太い指を、メアリ 1 ・ポビンズ つぎだ てつごうし に突出しました。「おまえさんを、鉄格子んなかへぶちこんでやる。おまえをーー・あれまあ ! わたしをまわすのは、やめとくれ ! 」怒ったのと、驚いたので、クランプさんの両眼が、大き きみよう くひらきました。というのは、奇妙なことが起こっていたからです。 クランプおばさんが、立っていたその場で、ゆっくりとまわりはじめたのです。ォルゴ 1 ル 〈ディジ 1 一アイジ 1 いとしいあまりに、心が乱れる ! 〉 よびこ どうか返事をしておくれ ! みだ おどろ よ りようがん

5. とびらをあけるメアリー・ポピンズ

ました。「メアリー・ポビンズに会うために、もとにもどすように願わなければならんかった ! ところで、メアリー、 用があるんだったな ? 」 さくらまちどお ふじん ちょうりつ 「・ハンクス夫入が、ピアノの調律をしていただきたいんです、フレッド。 ' 公園の向かい側です。」と、メアリー・ポピンズが、しかつめらしく、 「ああ ! ハンクス夫人かね。すると、この子らはきっと もたちのほうへ手をさしむけました。 「バンクスのとこの、ジェインとマイケルです。」メアリー・ポビンズよ、、ゝ , をも、カに・もい・や」、つ せつめい な目つきでふたりを見て、説明しました。 「これはうれしい。このうえない光栄ですな ! 」トイグリーさんは、おじぎをして、両手を さしあ さしのべました。「なにか食べるものを差上げたいと思うが、なにしろ、きようは、ごたごたし てるもんで。」 フレトが、はなやかに、屋根裏部屋に響きわたりました。 「これはなんだ ? 」トイグリ 1 さんは、二、三歩、あとずさりをしました。上をむけて、さし さら のばした両手に、ピーチ・クリー ムのお皿が、一つずつのっていたのです。 トイグリ 1 さんは、目をまるくしました。そして、モモのかおりをかぎました。 ふじん ゃねうらべや こうえい ひび ねが ? 」トイグリーさんは、子ど しいました。 桜町通り十七番地、

6. とびらをあけるメアリー・ポピンズ

亜十一月五日 その朝は、わびしく、冷え冷えとしていて、冬の近いことを思わせる、そういう朝の一つで さくらまちどお かげ した。 > 桜町通りは、しずかにひっそりとしていました。もやが、影のように公園にたれこめて います。家は、どの家も灰色の霧につつまれて、まったく同じようにみえました。てつべんに ぼうえんぎよう ていとく 望遠鏡のついた、プ 1 ム提督のところの旗ざおも、まるで見えませんでした。 ぎゅうにゆうはいたっ 牛乳配達が、角をまわって通りにやってきましたが、さつばり行く先がわかりません。 みよう ぎゅうにゆう ていとく 「牛乳、下におきまーす ! 」と、提督の戸口の前で呼びました。そして、その声が妙にうつ ろにひびいたのでひどくぎよっとしました。 きり どこ歩一 「霧がはれるまで、家へ帰っていよう。」と、ひとりごとをいいました。「ヒャー とっん かたっ いてんだ ! 」もやのなかから、突然、人の姿が浮かびあがって肩に突きあたったので、つづけ ていいました。 「バブプ、プププ、プルルン。」おだやかな、くもった声がいも ぎゅうにゆうはいたっ 「ああ、あんたかい ! 」と、牛乳配達は、ほっとしたようにい、 かど ひ はいいろきり び はた すがたう よ 、ました。 ました。

7. とびらをあけるメアリー・ポピンズ

声で、叫びました。「それはーーああ、いそいで、いそいで ! みつけなくちゃ ! 」 ふるえる手で、ふたりは、ふたごを引張りだして、門をぬけて、びきずっていきました。玄 かいだん 関の戸をけやぶるようにあけて、階段をかけあがると、子ども部屋に、とびこみました。 ふたりは、部屋をじっとみて、うろたえました。なにもかも、いつもの通りに、おだやかに、 てつごうし おちついていました。火は、鉄格子のおくで、ばちばち燃えていて、アナベルは、べッドのな かに気もちよくくるまれて、しずかに、くうくう声をたてていました。朝、お城に使ったれん 1 ・ポビンズの、た がは、すみのほうに、きちんとつんでありました。そのそばには、メアリ いせつなドミノの箱が、おいてありました。 「あ 1 あ ! 」ふたりは、はあはあ、をきらしながら、なにもかも、いつもと同じなので、 驚いて、なんだかわけがわからなくなりました。 なに , もか、も ? ・ 一つ、なくなっているものがあります。 さけ 「キャンプ用のべッドだ ! 」マイケルが、叫びました。「あれが、ない ! リ 1 ・ポビンズは、どこだろ、つ ? 」 ふろば マイケルは、お風呂場へかけこむと、出て、おどり場へいってみて、また、子ども部屋へも おどろ かん さけ ひつば いって、メアリ 1 ・ポビンズを それじゃ しろ メア げん 351

8. とびらをあけるメアリー・ポピンズ

ろうこっ ども部屋の暖炉に火をつけたのです。「なんかで、このわしの、ぞくぞくする老骨を、あたため いんき てくれなきや。ああ、また、あの陰気くさい風のやっ ! どこか、違うところでほえてくれな いもんか ! 」 「ヒュ いつのことだっていうんだ ? 」風が、桜の木を吹きぬけて、す すりなきました。 だんろ 子ども部屋の暖炉の火が、ばちばちいいながら、燃えあがりました。鉄格子のうしろで、あ まど かるい炎が、ちらちらして、窓ガラスにうつってかがやきました。ロ・ ートソン・アイは、朝 とだな リ・ー・ホヒ の一仕事のあとの休みをとりに、ほうき戸棚に、よろよろおりていきました。メア したく ンズは、いつものように、着るものに風をあてたり、朝ごはんの仕度をしたりで、かけずりま わっています。 ジェインは、だれよりもはやく、目を覚ましていました。風のうなりに、起こされてしまっ たのです。そして、いまは、窓ぎわの腰かけにすわって、おいしそうなトー ストの匂いに、鼻 すがたなが をくんくんいわせたり、窓にうつるじぶんの姿を眺めたりしていました。子ども部屋が半分、 かがや だんろ 庭のなかで輝いています。光だけで、できている部屋です。暖炉の炎は、背中にあたたかく感 はのお けん ぜられますが、もう一つの炎が、前にあって、赤表と燃えあがっています。二軒の家のあいだ のお だんろ まど まど ちが ほのお てつごうし せなか 314

9. とびらをあけるメアリー・ポピンズ

ました。そして、おたがいのからだに腕をまわして、星に願いをかけました。 ジェインとマイケルはやさしい気もちが胸いつばいになってきたので、息をこらしました。 わす ポビンズを忘れないよ、つに、とい、つこと ふたりのかけた願いは生きている限り、メアリ 1 ・ もいことでした。ふたり でした。どこで、どうして、いつ、なぜーーーそんなことは、どうでも、 かぎ しつもん の知る限りでは、こういう質問には、答えは得られないのです。ふたりの上の空をすべってゆ えいえん ひみつ すがた く、きらきらした姿は、永遠に、その秘密をあかさないでしよう。けれども、これからの、夏 ポビンズを思いだして、いわれたことを考え の日々、冬の長い夜毎に、ふたりは、メアリー・ 鳥も獣も、 ることでしよう。太陽も雨も、ふたりに、彼女のことを田 5 い起こさせるでしよう、 きせつうつか ・ポビンズ自身は、飛んでいってしまいました。しかし、残し 季節の移り変わりも。メアリ 1 しついつまでも、失われることはないでしよう。 た贈りものの数々は、、 わす メアリ 1 ・ ポビンズ ! 」ふたりは、空を見上げて、つぶやきました。 「けっして忘れない、 とちゅう すがた メアリー・ポビンズの、きらきらした姿が、飛んでいく途中で、ちょっととまって、答える すがたつばさ ように、ゆれました。すると、闇が、その姿を翼でかこんで、ふたりの目から、隠してしまい ました。 「消えた ! 」と、 ハンクスさんが、ため息まじりでいって、星のない夜空を、じっとみつめ ねが かぎ うで うしな かのじよ むね ねが けもの 360

10. とびらをあけるメアリー・ポピンズ

る、すばらしいものを、いろいろと考えました。 もんく 「だって、木ののびる音はきこえないでしよ。」と、マイケルが文句をいいました。「そんな 音楽ってないんじゃない ? 」 ! 」と、トイグリーさんがもどかしそうにいいました。「むろん、あるとも ! にだって音楽はあるんだ。地球のまわる音を、きいたことはないかね ? うなりごまみたいな がわ きゅうでんえいこくこっか 音をさせるよ 。バッキンガム宮殿は〈英国国歌〉をかなでるし、テームズ河は、ねむ気のさすよ うなフルートさ。そうともー この世のものはなんでもーー木や、岩や、星や、人間やーーーな んでもみんな、じぶんのほんとうの音楽をもってるんだよ。」 そういいながら、トイグリーさんは、部屋を舞うように横切っていって、オルゴールを一つ よびこ 巻きました。すぐに、上のちいさな盤がまわりだして、なかから、おもちゃの呼子の音のよう な、明るい、かん高い、笛の音がきこえてきました。 「これが、わしのだ ! 」と、トイグリーさんは、得意そうにいって、首をかしげて耳をすま せました。それから、もう一つのオルゴールを巻きましたが、ちがう節が、空中に流れだしま した。 ぼくの大好きな歌だ ! 」と、マイケルが叫びました。 「これ、〈ロンドン橋が落ちる〉だ ! ふえ ばん さけ