が一匹、ひれをばたばたいわせながら、やってきました。「ちょうど、ガーデン・ あくしゅ まにあったよ。」そういうと、ひれを差出して、子どもたちとひとりずつ握手をして、ふたりの あいだを、よちょち、歩いていきました。 よくするんですか ? 」と、マイケルがききました。じぶんも、海 「ガ 1 デン・ に住んでいたいと思っていたのです。 「いやあ、とんでもない ! 」と、アザラシが答えました。「たまに、高潮のときがーーーおい おまえさんは、招ばれてるのかい ? 」アザラシは、ふいにことばを切って、大きな灰 いろすがたよ 色の姿に呼びかけました。「クジラはいれてはいかんと、 にゆうじようこと 「出てけ ! 出てけ ! クジラは入場お断わりだ ! 」たくさんの魚の声が、ロをそろえてい いました。 きょだい クジラは、その巨大な尾を一ふりして、二つの岩のあいだを、通っていきました。大きな、 さびしげな顔と、大きな、もの悲しげな目をもっていましたが、その目を子どもたちのほうへ 向けました。 「いつも同じだ。」と、クジラは、頭をふりふり、 くさん食べすぎるって、みんなが、い びき 0 、 さしだ しいました。「わたしが、大きすぎて、た みと れいがい うんだ。例外を認めてくれるように、みんなに、 いいっかってるんだ ! 」 たかしお 0 、 ノ 242
メアリー・ポビンズに、片目をつぶってウインクしました。「わしの流儀の城だ、クランプさ ん ! それから、わしの流儀の。ハイですぞ ! 」 ドラムのひびきが、部屋じゅうにとどろきました。 クランプおばさんは、メアリー・ポビンズをみて、かちほこったよ、つに、ほほえみを、つかべ ました。 「そーらごらんね ! 」と、クランプさんが、いやにきどっていいました。「いわないこっちゃ なも ! 」 ところがもし 、もおわらぬうちに、そのほこらしげな微笑が、うすれてきました。そして まぎれもない恐怖の色に変わりました。 それは、クランプさんが、大きなふとった人でなくなってきたのです。その、はちきれそう なからだが、どんどん、しぼんできたのです。きいきい床をならしてまわっていた両足も、一 まわりごとに細くなってゆきました。 「なんなんでしよう ? 」と、クランプさんは、まをつめました。「まあ、どうしたっていうん ほね でしよう ? 」腕も足も、短く、骨ばってきて、からだの大きさも、半分ぐらいにちちまってき ました。 うで きようふ りゅうぎ かため か びしよう りゅうぎしろ 0 8
もんぎんにい、 しました。それから、ふたりは、やさしく抱きあって、踊りながら、人ごみのな かへ、はいっていきました。 いっかくじゅう 「こどもら、今夜は、おぎようぎよくしてますか ? 」一角獣が、そういって、しなびたおば あさんにきいているのが、きこえました。おばあさんは、踊りながら、すごく大きいくつをひ つばっていましたが、そのくつには、きゃあきゃあ笑って、男の子と女の子が、たくさん乗っ ていました。 さけ 「ええ、とてもいい子にしてるよ ! 」と、おばあさんが、陽気に叫びました。「いちども、む ちなんか使わないからね ! ジョー ジ・ポーギーのおかげで、女の子たちは、たいへん助かる よ。みんな、今夜は、キスしてもらうってきかないんだよ。男の子た ちときたら、まさに、これはまた、おとなしくっていい子さ。ほら、 どうやって、 赤ずきんが、オオカミに抱きついてるの、ごらんな ! 晩のごはんをたのんだらいいか、教えようとしてるのさ。おすわり、 マフェット。しつかり、つかまってるんだよ ! 」 おばあさんは、ちいさな、かわいい女の子のほうへ手を振りました。 せなか ねっしん その子は、くつの背中にすわって、大きな黒いクモと、熱心に話をつ わら おど 289
んだん大きくなりました。やがて、いきなり、輝く光の波がさしこんで、ふたりは、目がくら みました。もう、うすぐらいトンネルの出口にきていて、ふたりの目のまえには、、 ままで見 こうけし まみどり たこともないような、すばらしい光景がひらけていました。真緑の海草の、なめらかな芝生を すな ちりばめた、広い海の庭がひろがっていて、そのあいだを、金色の砂の小道が縫うように走り、 すな あらゆる色の花が、点々と散らしてありました。砂のうえには、サンゴの木がのびていて、長 、羽根のような海シダの葉が、ゆらゆらと水になびいていました。暗い色の岩は、たくさんの しんじゅがい かがや きらきらした貝がらで輝いていて、そのなかで、いちばん大きな岩は、一面に真珠貝でおおわ おく れていました。その岩の奥は、深くて暗いほらあなになっていて、月のない夜空のように、黒 黒としていました。そして、そのずっと奥深いところに、かすかな光が、深海に輝く星のよう に、きらきらとまたたいていました。 ジェインとマイケル ( よ、トンネルのはじからおもてをみて、うれしさに息をのみました。 こうけい その、かがやかしい光景のなかでは、じっとしているものは一つもありませんでした。岩で さえも、はてしない水のさざめきのなかで、前後左右にゆれているようにみえました。ちいさ な魚が、ゆれ動く花のあいだを、チョウチョウのように、ひらひらしていました。そして、サ ンゴにかけわたした海草の花づなからは、千にものばるあかりが、つりさがって、ゆれていま かがや しんかい かがや しばふ 240
寄りが、おたがい。 こ、許しあうのです。夜と昼も、ここで会いますし、北と南の極も、そうな のです。東が、西にむかってかたむいて、輪ができあがるのです。これが、その時とその場所 なのです、おふたかた ただ一つの時で、ただ一つの場所なのですーーーそこでは、だれでも、 すえ 末ながく幸福に暮らすのです。ごらんなさい ! 」 ねむひめ 眠り姫が、手をさしのべてみせました。 きんばっ ジェインとマイケルが、そっちをみると、三匹のクマが、ちいさな、金髪の女の子のまわり を、ぶきようにとびまわっていました。 ねむひめ せつめい 「ゴ 1 ルデイロックスです。」と、眠り姫が、説明してくれました。「あなたがたと同じよう に、ちゃんと安全ですわ。まあ、こんばんは、ヾ ンチ ! 赤ちゃんはど、つ、ジュディ ? 」 ねむひめ 眠り姫は、腕を組んで歩いてきた、ふたりの、鼻の長い人形に、手をふってあいさっしまし どうし た。「今夜は、愛しあった同志なのよ、すきまのなかですからね。あら、ごらんなさい ! 」 ひとかげ しばふ こんどは、眠り姫は、塔のように高くそびえる人影を、指さしました。大きな足が、芝生を、 こずえ どしんどしん踏んで歩いて、頭は、いちばん高い木の梢ぐらいの高さでした。たいへん大きい かた こんぼうを、つりあいよく肩にかついでいて、もう一方の肩には、男の子が、ちょこんと乗っ ていて、笑いながら大男の耳をひつばっていました。 わら ねむひめ ゆる とう かた びき 292
( 3 ) サルジニアーー・イタリア半島の西にある地中海で二番目に大きな島。 じっざい しゆっぱん ( 4 ) エレガント諸島ーーイギリスで出版されている大きな地図の本にも出ていないので、実在しない地名かと思わ れる。 しよ」、・ 138
がわ はるか、地球の向こう側から、大きな、青い月が、ゆ ったりとのぼってきました。公園の上に、通りの上に、 明るい、青い光を、まきちらしています。天空の絶頂に かかって、眠る世界のランプのように、輝いていました。 ミス・キ その光のなかを、コウモリの群れのように、 ャリコのひきいる馬の列が、飛ぶように走っていきます。 大きな青い月を横切って通るとき、その輝きのなかで、 一瞬、きらりと光りました。やがて、疾走するべヾ トのステッキが、遠い、明るい空のかなたに走り去って いきました。むちの音も、だんだん、ちいさくなって、 ミス・キャリコの声も、遠く、かすかになってゆきます。 とうとう、ミス・キャリコも、馬たちも、月の光のなか すがた に、姿を消してしまったように思われました。 さいこうきゅう 「すべて、最高級さとう製 ! 」 さいごの、ちいさな、こだまが、ただよいながらかえ いっしゅん ねむ しっそう かがや かがや 懸っちょ ) 225
のもなければ、盤もありません、ただ、床のうえでまわりだしたのです。床板が、上をおも はんこう たいからだでまわられたので、反抗するように、きいきい、大きな音をたてました。 「さて、あんたはそれでよし ! 」と、トイグリーさんが叫びました。 じよげん と、上きげんなきいきい声で、助言してやりました。 あみあ ぐっ クランプさんは、その大きな黒い編上げ靴を動かそうとしてみて、ぞっと身震いしました。 からだをねじったり、もがいたりしました。身をくねりもしました。しかし、両足は、にかわ でつけたように、床にびったりついています。 わしには、田 5 いもよらんかった ! 」メア 「うまくやったぞ、メアリー ! 誇らしく思ったトイグリーさんは、ほればれして笑顔をみせました。 れいけつどうぶつ しわざ 「おまえさんの仕業だねーー・この、いじわるの、わるの、冷血動物め ! 」クランプさんは、 おこ 怒ってどなると、メアリ 1 ・ポビンズにつかみかかろうとしました。「だけど、きっと仕返しは クランプのおかみさん ! 〉 〈とびあがってごらん、 ばん えがお さけ ゆかいた みぶる リー・ポビンスを
しました。そこは、大きな屋根裏部屋で、木切れや、ペンキのかんや、にかわのびんなどが とりちらかっていて、部屋のすきまというすきまは、すべて楽器でうめつくされていました。 ープがすみのほうに立ててあるかと思うと、一方のはじには、ドラムが積んでありました。 ふえ トランペットやヴァイオリンがたくさん、たるきにかけてあって、フルートだのプリキの笛 つくえ たな 大工道具がち だのが、棚につめこまれていました。窓ぎわの、ほこりだらけの机のうえには、 らばっていて、長い仕事台のはじには、みがきあげた小さな箱がおいてあって、そのそばに、 小型のねじまわしが一本、ころがっていました。 床のまんなかには、できかけのオルゴールが五つならんでいましたが、塗ったばかりの鮮か な絵の具の色に明るく輝いていて、まわりには、 こがた と、大きな白い字が、白墨で板にかいてありました。 へやんたい もい香りがしていました。たった一つだ 部屋全体が、かんなくずや、絵の具や、にかわで、 け、見あたらないものがありましたが、それは、トイグリーさんでした。 ペンキ塗りたて かがや はくく ゃねうらべや がっき っ あざや
ました。「いつも、こんどはじぶんじゃないかって、心配してるのさ。」 ジ = インは、朝ごはんにスケソウダラを何度も食べたのを思いだして、なんだか、もうしわ けないような気もちになりました。 「ごめんなさいねーーー」と、ジ = インがいいかけたとき、大きな、荒つぼい声が、さえぎり ました。 「動いた、動いた ! 海の道をふさがんでくれ ! なんで、ひれをきちんとしとけないん だ ! 」たいへん大きなタラが、みんなのあいだを、肩でわって通りました。 ーティ 1 に、おくれるで 「こんなふうに、大洋をごたごたさせおって ! けしからん ! ~ なもか ! 」タラは、怒って、子どもたちのほうをみました。「それにしても、あんたがたは、 だれだ ? 」と、ききました。 ふたりが、も 、まにも、名を名乗ろうとしたとき、海マスがタラのそばへ、冰ぎよって、耳もと で、なにかささやきました。 「おお、そうかね ! だが、入場料をはらう金は、もっとるんだろうな ! 」 「あの ホケットをさぐりました。 」ジェインは、。、 むちゅう 「チッ、チッ、チッ いつもこんなだ。夢中になると、手がつけられん。それ ! 」タラは、 にゆうじようりよう あら 237