さび 包郵便で送るのさ。ばくたちだって、だれかは淋しがるーー・かもしれないなんてことは、考え てもみないらしいね。」そういって、ちょっと、のどをつまらせました。それから、おうような さけ 身振りで、頭をふりあげると、「でも、そんなこと考えるのはよそう ! 」と叫びました。「きみ らふたりがくるようになってから、ずっとよくなったんだ。おお、ジェイン、マイケル、ほく、 きみたちのこと、とてもよく知ってるんだよ ばくのきようだいみたいにさ。マイケルのタ かざざら 1 トソン・アイのこと コのことだって、磁石のことだって、それから、飾り皿のことや、ロヾ ね。ごはんにでるものだって知ってるんだ。ほくが、話をきいてるのに、気がっかなかった ? かたご おとぎばなしだって、肩越しに読んでたんだよ ! 」 ジェインとマイケルが、首をふりました。 「ばく、〈ふしぎの国のアリス〉、そらで覚えてるよ。」と、ネリウスが話を続けます。「〈ロビ ふじんんしょ ンソン・クル 1 ソ↓も、たいがいね。それから〈婦入全書〉、これはメアリー・ポビンズのお気 いろずまんが にいりだろ。でも、いちばんいいのは、色刷り漫画だね。ことに、〈おもしろ絵本〉っていうの。 今週は、トラのテイム公はどうしたろう ? モプシーじいさんのとこから、無事に逃げだせた かな ? 」 「新しいのが、きよう出るのよ ! 」と、ジ = インがいし 、ました。「みんなで読みましよう づつみゆうびん じしやく おぼ ノ に 158
の ? 」マイケルは知りたがりました。すこしやきもちをやいていたのです。 わら さけ むかし 「もちろん、知ってるさ ! 」ネリウスが、笑いながら叫びました。「昔から、おとうさんの友 だちだったんだもん。」 こうきしん 「おとうさん、名まえなんていうの ? どこにいるの ? 」ジェインは、好奇、いで、はれっし そうでした。 「ずっと遠く。ギリシャの島さ。みんなは、海の王って呼んでるんだ。」そういううちに、ネ リウスの大理石の目が、だんだん、悲しみにあふれてきました。 「おとうさん、なにしてるの ? 」と、マイケルがききました。「シティ 1 へ仕事にい うちのハハみたいに ? 」 「ちがうさー どこへもいかないんだ。海のそばの、崖の上に立っていて、三又のほこをも つのぶえふ って、角笛を吹いてるんだ。そばで、おかあさんがすわって、髪をとかしてて、弟のペリアス が、ふたりの足もとで、大理石の貝がらで遊んでるのさ。そして、一日じゅう、カモメが、み んなの大理石のからだの上に、黒い影をおとしながらとびかっていて、港で起こったことの話 わん をするのさ。ひるは、赤い帆をはった船が、湾を出たりはいったりするのを眺めていて、夜は、 くろ 下の磯にくだける、、、 フドウ酒いろに黒ずんだ、波の音をきいてるんだ。」 しゅ かげ がけ かみ なが みつまた くの 156
にゆうよくよう あみあ ぐっ ドミノ一組、入浴用のキャップ、絵はがきのアル・ハムがおいてありました。 編上げ靴一足、 子どもらは、あっけにとられて、がやがやと起きあがりました。 「だって、どうやってあんなかにはいってたの ? 」と、マイケルがききました。「そんなよう すなかったよ、きよう。エレンからかくれて、はいったから知ってるんだ ! 」 いじようしつもん けれどもマイケルは、それ以上、質問をつづけられませんでした。メアリー・ポビンズが ようす たいへん高ぶった様子にみえたので、ことばが口先で凍りついてしまったのです。メアリ 1 ・ ポビンズは、鼻をならすと、マイケルのそばをはなれて、フランネルの寝まきを一枚とってひ ろげました。 ジェインとマイケルー よ、顔を見合わせました。ふたりの目は、舌のいえないことを、すっか せつめい リー・ポピンズに説明してもらおうと思ったってだめだ、と、ふ りあらわしていました。メア たりは、ロをきかずに、話しあったのです。 ( しオカかしのよ ふたりは、メアリー・ポピンズが、寝まきの下で服をぬいでいる、こっナ、ミ と、ボタンがは亠 9 れます。さら、さらっ うな動作を、じっとみていました。。ハ と、ペチコート がすべります ! なごやかな気分が、子どもたちの胸をひたしました。そ して、それは、メアリ 1 ・ポビンズからきているのだということがわかりました。もごもご動 どうさ ノ こお した むね
「新しい年。」マイケルが、しんばう強く、返事をしました。 「十二時が、打ちおわったときです。」メアリー・ポビンズは、短く鋭い鼻音をさせて、答え ました。 「そう ? じゃ、あいだはどうなるの ? 」と、マイケルがききました。 「なんのあいだです ? もっと、ちゃんとした物いいは、できないんですか、マイケル ? どくしんじゅっこころえ わたしが、読心術を心得てでもいると思うんですか ? 」 ももたかったのです。まさに、マイケルは、そう思っていたので マイケルは、そうです、と、 すから。しかし、とてもいえまいということは、わかっていました。 「打ちはじめと、打ちおわりのあいだのこと。」と、マイケルはいそいで、説明しました。 メアリー・ポビンズが、ふりむいて、マイケルを、にらみつけました。 「面倒が面倒をおこすまで、面倒の面倒をみないでください ! 」メアリー・ポビンズが、し いってきかせました。 かつめらしく、 めんどう 「だけど、ぼく、面倒の面倒なんか、みてるんじゃないよ、メアリー・ポビンズ。ほくは、 リ . ー・。ホヒ ただ、知りたいんでーー、」と、そこまでいって、急に、ことばをきりました。メア けんあくひょうじようう ンズの顔が、たいへん険悪な表情を浮かべていたからです。 めんどう めんどう めんどう めんどう めんどう するど せつめい 273
や マイケルは、ちちみあがって、カなく枕に背中をおしつけました。「でもーー・ーそんなふうに見 えたんだよーーー・そうだろ、ジェイン ? 」 ぎろん 「おやめ ! 」ジ = インは、首をふって、ささやきました。議論してもむだだということが わかっていたのです。 「いわないじゃいられないよ、メアリー・ポビンズ ばくたち、見たんだもん ! 」マイケ ルは、泣き声をだしました。「だって、花火から出たのが、あなたじゃなかったら、なんだった のよ ! 星なんか、一つもなかったもん ! 」 「ポン ! 」と、メアリー・ポビンズが、またいい ました。「花火から、ポン ! あなたは、と ぶじよく ンクスさん、ですが、こんどのが、いちばん、い きどき、わたしを侮辱します、マイケル・バ ポビンズ けません。これ以上、ポンとかーー花火とか . し うようだったらーーー」メアリー・ よ、ど、つする力とも、つことよ、、 もませんでしたが、マイケル。 ( こよ、それが恐ろしいことだとい 、つことがわかっていました。 「ビーチー ちいさな声が、窓のしきいのところからきこえてきました。年とったムクドリ 屋をのぞきこんで、やっきにな「てばたきをしていました。 いじよう まど まくらせなか が、子ども部
、、こ、きましよ、つ ! 」 ころへも ひぎ ラークおばさんは、二匹の犬をしたがえて、大さわぎで行ってしまいました。ウイロビーは、 とことこ歩一きながら、イルカにむかって、ぶさほ、つにウインクをしました。 「それから、きものをきるようにいってちょうだい ! あれで、かけまわってたら、日焼け をします ! 」ラークおばさんが、いそぎ足で遠ざかりながら、きいきい声でいいました。 ネリウスは、ふきだして、草のうえに、ころがりました。 わら 、、いました。「ねえ、メアリー・ポビン 「日焼けだって ! 」と、ネリウスが、笑いにむせて ズ、だれも、ばく大理石でできてるって思わないのかしら ? 」 あら 「ふふん ! 」と、メアリ 1 ・ポビンズは、鼻息を荒らげて、答えました。ネリウスが、もた えがお ずらつぼい笑顔をむけました。 ゞ、、ました。「あいつらは、岩のうえに、 「アシカのいうとおりいってら ! 」と、ネリウスカも すわってて、夕日にむかって、〈ふふん ! 〉っていうよ ! 」 「そうですかね ? 」と、メアリー・ポビンズかかみつくように、、いました。ジェインと つぎかなら マイケルは、ふるえあがって、次に必ずやってくるものを待っていました。ところが、何ごと おう も起こりませんでした。メアリ 1 ・ポピンズは、いたずらっ気に応ずるような顔つきをしてい け 165
じんたいじ し力なる王を見ておるのか、まさに知らんようだわ ! 」 けものよ、なんじは、、ゝ 「王さまというのは、みんな、似たりよったりです。」と、ネコがいし 「そのような王ではないわ。」と、王さまは怒っていいました。「わしほどに、ものを知って を」ようじゅ おる王が、ひとりでもいたら、名をいってみい。そうとも、教授どもは、地球のはてからやっ さいこうきゅう てきては、わしの意見を半時間もきくのじゃ。わしの宮廷は、最高級の人物でできておる。巨 人退治のジャックが、わしの庭園を掘っておる。わしの家畜の世話をするのは、だれあろう、 ( 2 ) ボウ・ピープその人じゃ。わしの。 ( イには、すべて、二十と四羽のクロドリがはいっておる。 うてみい、王 別にみるべきものもないとは、なんたることか ! そういうなんじは何者だ、い にむかってそのようなことばをはくとは ! 」 「ああ、ただのネコです。」ネコが答えました。「足が四本、しっぽが一つと、一対の、ほお 「そんなことは、見ればわかる ! 」と、王さまがきめつけました。「なんじの様子などは、ど うでもよろしい。わしの知りたいのは、なんじがどれほど物を知っとるかということじゃ ! 」 「ああ、なんでもです。」と、ネコは、しずかにいって、しっぽのさきをなめました。 さけ ばくはっ 「なんじゃと ! 」王さまは、怒りを爆発させて、せきこんで叫びました。「これこれ、ひとり ひげ。」 に きゅうてい かちく わ 、ました。 ようす 109
した。 と、ジェインは田 5 いました。しかし、よくみると、そのあかりは、 光 ちょうちんかしら ! しばふ を出す魚でした。海草のつるを口にくわえてつりさがっていて、からだから出る光で、芝生を 照らしていたのです。 音楽は、、 もまや、ますます、強くなってきました。ちいさな、サンゴのテラスからきこえて いるので、そこでは、カニが、何匹か、ヴァイオリンをひいていました。ヒラメが一匹、ほお ハウオが、銀色のラツ。ハを吹いてい をふくらませて、ホラガイを吹いています。さらに、ラッ ひょうし えんそうしゃ ス・ドラムで、拍子をとっています。演奏者のまわりを、きらきらし て、スズキのバスかハ ちょうし た海の生物が泳いでいて、岩とサンゴのあいだを矢のように行ききしながら、音楽の調子にあ しんじゅくびかざ わせて、とんだりはねたりしています。真珠の首飾りをつけた人魚たちも、魚たちのあいだを、 優美に泳ぎまわっていて、つやつやした銀色のしっぽやひれが、そこここで、きらめいていま 「おお ! 」と、ジェインとマイケルが、ロをそろえて叫びました。これ以外に、い とばは、ないよ、つに田 5 えました。 うな 「やあ、ようやくきたな ! 」ぶーんと唸るような声がして、大きな、あかがね色のアザラシ て なんびき さけ びき 、つべきこ 241
むよう す した。「一シリングは、ご無用です。好きでやってるこってすから。」そして、子どもたちが見 ていると、目をあげて、公園から歩みでてきたメアリー・ ポビンズと、目まぜをしました。ト イグリ 1 さんは、力をこめてハンドルをまわしたので、曲の響きは、ひときわ、大きく速くな りました。 わす 「忘れな草を一つーーそれで、できあがり。」マッチ売りは、ぶつぶつひとりごとをいって、 はなたば くわ 花束に、一つ花をかき加えました。 「まあ、きれいだこと、 ト ! 」メアリー・ポビンズが、感嘆していいました。乳母車を さけ 押して、うしろまできていて、じっと絵をみていたのです。マッチ売りは、短く叫ぶと、すっ と立ちあがって、舗道から花束をつかみとって、メアリー・ポピンズの手に、おしつけました。 「とってくださいメアリー。 しました。「みんな、 あなたのためにかいたんです ! 」 「ほんとに、ヾ ート ! 」メアリ ー・ポビンズは、につこりしていいました。「まあ、なんと、 . し はなたま ってお礼をいったらいいんでしよう ! 」メアリー・ポビンズは、赤みのさした顔を花東のかげ にかくしました。子どもたちのほ、つに、ヾ ノラの香りが、ただよいました。 マッチ売りは、メアリ 1 ・ポビンズの燃えるような目の色をみて、いとおしそうに、につこ お どう はなたば 」と、マッチ売りは、はにかんだようにい、 あゆ ひび かんたん うばぐるま や 342
「ああーー千年に一度か、そんなもんだ。一生に一度ーー運がよくてだ ! 」と、ふきげんに いました。そして、黒たんの杖を、ゾウの足におしこんで、トネリコのステッキを腕にかけ て、シティーへでかけていきました。 メアリー・ポビンスよ、ヾ ンクスさんのでてゆくのをみながら、につこりしました。それは、 奇妙なわけありげなほほえみだったので、子どもたちは、なんのことだろうといぶかりました。 かいだん ンクス夫人が、台所の階段を、ばたばたかけあがってきました。 メアリー・ 「まあ、ど、つしましよ、つ ! ポビンズ、とんでもないんです ! ラークさんのと うばぐるま このウイロビーが、 、まはいってきて、乳母車のタイヤを、一つ、かみとっちゃったんですっ 「そうですかおくさま。」と、メアリー・ ポビンズが、しず - かにいい なにをしたところで、驚くにはあたらないというふうでした。 ふじん まにも、泣きそうでした。 ヾンクス夫人は、、 「でも、買い物は、どうなるんでしよう ? 」ノ 「さあ、なんとも、 しいカねますが」メアリー・ ポビンズが、頭を一ふりしました。犬だって うばぐるま 乳母車だって、別に知ったことではないという様子でした。 「ねえ、買い物にいかなきゃいけないの ? 」と、ジェインが、不平そうにい、 ふじん おどろ ようす ました。ウイロビーが、 な もました。 うで 189