や マイケルは、ちちみあがって、カなく枕に背中をおしつけました。「でもーー・ーそんなふうに見 えたんだよーーー・そうだろ、ジェイン ? 」 ぎろん 「おやめ ! 」ジ = インは、首をふって、ささやきました。議論してもむだだということが わかっていたのです。 「いわないじゃいられないよ、メアリー・ポビンズ ばくたち、見たんだもん ! 」マイケ ルは、泣き声をだしました。「だって、花火から出たのが、あなたじゃなかったら、なんだった のよ ! 星なんか、一つもなかったもん ! 」 「ポン ! 」と、メアリー・ポビンズが、またいい ました。「花火から、ポン ! あなたは、と ぶじよく ンクスさん、ですが、こんどのが、いちばん、い きどき、わたしを侮辱します、マイケル・バ ポビンズ けません。これ以上、ポンとかーー花火とか . し うようだったらーーー」メアリー・ よ、ど、つする力とも、つことよ、、 もませんでしたが、マイケル。 ( こよ、それが恐ろしいことだとい 、つことがわかっていました。 「ビーチー ちいさな声が、窓のしきいのところからきこえてきました。年とったムクドリ 屋をのぞきこんで、やっきにな「てばたきをしていました。 いじよう まど まくらせなか が、子ども部
いいのがれは、よさんか、スミス。むだに、時 間をとらせておる ! 」市長は、もどかしそうに、頭 をふりました。「まず、わしは、はだかの子どもを探 しにこねばならんじゃった。その子は、きくところ ぎやくたい ふこう では、ある不幸な魚を虐待しとった。サケ、とミス・ いや、ヒラメだったかな ? ラ 1 クはいっとった 、ま、それでも足らんように、われらの ところが だいざ ちょうぞうさいこう 彫像の最高の価値あるものが、台座から消え失せて おるのがわかった。わしは、あきれはてて、あいそ しんよう がっきた。わしは、おまえを信用しとったんだぞ、 スミス。それを、このわしに、どうやって報いてく れたか、見るがい え、見るにはおよびませ 「見ております ! ん ! ああ、じぶんのいってることが、わからない ちょうぞう んです、閣下 ! ですが、彫像には、指一本ふれて かっか むく NELECS
むよう す した。「一シリングは、ご無用です。好きでやってるこってすから。」そして、子どもたちが見 ていると、目をあげて、公園から歩みでてきたメアリー・ ポビンズと、目まぜをしました。ト イグリ 1 さんは、力をこめてハンドルをまわしたので、曲の響きは、ひときわ、大きく速くな りました。 わす 「忘れな草を一つーーそれで、できあがり。」マッチ売りは、ぶつぶつひとりごとをいって、 はなたば くわ 花束に、一つ花をかき加えました。 「まあ、きれいだこと、 ト ! 」メアリー・ポビンズが、感嘆していいました。乳母車を さけ 押して、うしろまできていて、じっと絵をみていたのです。マッチ売りは、短く叫ぶと、すっ と立ちあがって、舗道から花束をつかみとって、メアリー・ポピンズの手に、おしつけました。 「とってくださいメアリー。 しました。「みんな、 あなたのためにかいたんです ! 」 「ほんとに、ヾ ート ! 」メアリ ー・ポビンズは、につこりしていいました。「まあ、なんと、 . し はなたま ってお礼をいったらいいんでしよう ! 」メアリー・ポビンズは、赤みのさした顔を花東のかげ にかくしました。子どもたちのほ、つに、ヾ ノラの香りが、ただよいました。 マッチ売りは、メアリ 1 ・ポビンズの燃えるような目の色をみて、いとおしそうに、につこ お どう はなたば 」と、マッチ売りは、はにかんだようにい、 あゆ ひび かんたん うばぐるま や 342
カらだを押しつけてきて、叫びました。すると、ほ、 「メアリー・ポビンズ ! 」ふたりは、ゝ じゅうぶん にはなにもいうことがないのに気がっきました。名まえだけで、十分なように、思われたので メアリー・ポビンズは、子どもたちの肩に腕をまわして、じっと、ふたりの目に見入りまし しんぞうおく するど た。長く、深く、鋭い目つきで、心臓の奥まで、まっすぐにとびこんでいって、なかまで見き わめるようでした。それから、ひとりほほえんで、むこうをむくと、乳母車から、オウムの頭 のこうもりがさをとりだして、アナベルを抱きあげました。 「もう、家へはいらなければなりません、ジェインとマイケル ! あとから、ふたりで、ふ たごをつれてきてちょうだい。」 ふたりは、うなずきました。踊ったあとで、まだ、はあはあいっています。 もい子でね ! 」と、メアリ 1 ・ポビンズが、おだやかにいい ったこと、みんな、覚えておいてね。」 ふたりは、だいじようぶというように、につこりしてみせました。なんて、おかしなことを わす いうんだろう、と、ふたりは思いました。まるで、忘れちゃおうとしてるみたい ! メアリー・ポビンズは、ふたごの巻き毛に指をいれて、しずかにゆすりました。そして、マ おぼ おど かたうで さけ うばぐるま ました。「わたくしのい 348
さび 包郵便で送るのさ。ばくたちだって、だれかは淋しがるーー・かもしれないなんてことは、考え てもみないらしいね。」そういって、ちょっと、のどをつまらせました。それから、おうような さけ 身振りで、頭をふりあげると、「でも、そんなこと考えるのはよそう ! 」と叫びました。「きみ らふたりがくるようになってから、ずっとよくなったんだ。おお、ジェイン、マイケル、ほく、 きみたちのこと、とてもよく知ってるんだよ ばくのきようだいみたいにさ。マイケルのタ かざざら 1 トソン・アイのこと コのことだって、磁石のことだって、それから、飾り皿のことや、ロヾ ね。ごはんにでるものだって知ってるんだ。ほくが、話をきいてるのに、気がっかなかった ? かたご おとぎばなしだって、肩越しに読んでたんだよ ! 」 ジェインとマイケルが、首をふりました。 「ばく、〈ふしぎの国のアリス〉、そらで覚えてるよ。」と、ネリウスが話を続けます。「〈ロビ ふじんんしょ ンソン・クル 1 ソ↓も、たいがいね。それから〈婦入全書〉、これはメアリー・ポビンズのお気 いろずまんが にいりだろ。でも、いちばんいいのは、色刷り漫画だね。ことに、〈おもしろ絵本〉っていうの。 今週は、トラのテイム公はどうしたろう ? モプシーじいさんのとこから、無事に逃げだせた かな ? 」 「新しいのが、きよう出るのよ ! 」と、ジ = インがいし 、ました。「みんなで読みましよう づつみゆうびん じしやく おぼ ノ に 158
「なんて、すてきなんでしよう ! 」と、ジ = インが叫びました。「でも、どうして、みんなと わか 別れたの ? 」 ジ = インは、じぶんだったら、両親とマイケルを、ギリシャの崖のうえに、おいてきぼりに したりはしないだろうと思いました。 ちょうこく 「いやだったんだけど、」と、大理石の少年がいいました。「彫刻が、人間に対してなにがで きる ? 人間が、しよっちゅう、ほくたちのことを見にきてたんだーーーのぞきこんだり、じろ むかし じろみたり、ひざをつねったりするんだ。みんなの話だと、ほくらは、ずっと昔に、とても有 いちょうこくか 名な彫刻家が作「たんだ「て。それで、ある日、だれかがいったのさ、ーー〈これにしよう ! 〉 こなけりゃならなかったんだ。」 そして、ほくのことを指さしたんだ。それで ネリウスは、しばらく、イルカのひれのかげに、目をかくしていました。 「それから、どうしたの ? 」と、ジ = インがききました。「どうやって、この公園にきた 「荷箱にはいってさ。」と、ネリウスはいって、ふたりのびつくりした顔をみて笑いました。 「ああ、ほくらは、いつも、そうやって旅行するんだよ。ぼくたちの一族は、とても、みんな はくふつかん がほしがるんだ。公園や、博物館や、庭園なんかに要るんだね。だから、ぼくらを買って、小 の ? 」 さけ がけ わら ゅう 157
「ありがとう。」と、公園番に、きどっていいました。 公園番は、ワイシャッ一枚になって、そのまえに立ったまま、途方にくれた大のように、首 をかしげていました。 「あんたは、なんのこったか、すっかりわかってるんでしような ? 」と、公園番が、うらや ましそ、つに、、ました。 「そのつもりです。」と、メアリー・ いじようひとこと そして、それ以上、一言もいわずに、乳母車をちょっと押すと、公園番のわきを、ころがし うしろすがた ていきました。公園番は、じっと、後姿を見つめて、頭をかきながら、みんなが公園の門から 出ていくのを、見ていました。 じむしょ 、ンクスさんが、事務所からの帰りがけで、みんなが通りをわたろうとしているのに気がっ くちふえ いて、ロ笛をふきました。 「やあ、メアリー・ポビンズ ! 」と、メアリ 1 ・ポビンズに、あいさっしました。「青と赤の うわぎ きゅうせいぐん 上着で、なかなかスマ 1 トですな。救世軍にはいったんですか ? 」 しんちゅう すがた れた、真鍮のボタンに、じぶんの姿がうつって、得意そうに、笑いかけてくるのがわかりまし こ 0 こころえがお ポビンズが、心得顔に答えました。 うばぐるま お わら 182
ンクス ! 」 まちがいなく、マイケル き、好きなだけ気分が変えられますよ ふあん ポビンズのことを見ました。どういうつもりで、そ マイケルは、不安になって、メアリ 1 ・ んなことをいうんだろう。 ポビンズ。気分を変えたいなんて、ちっとも 「じよ、つだんに、 いっただけだよ、メアリー・ いつまで ただ、あなたにいてもらいたいだけなんだ 思ってやしないんだ、ほんとだよ ! すると、急に、マイケルには、お姫さまなんてものは、ひどく ひいきするようなことはないと思われました。 ポビンズは、ふきげんにいって、 「ふふん ! 」と、メアリー・ ほうりだすようにおきました。「なんだって、 んなことは、考えないほうがいいですよ、おほっちゃま ! 」 じしん 「あなたは別だけどね ! 」マイケルは、自信ありげに、そう、 く、にやっとしました。 ひょうじよう ー・ポビンズの顔にうかびました。けれども、マイケルは、気がっ ふしぎな表情が、メアリ きませんでした。ジェインのしていることが、目のすみにはいっていたのです。そして、こん ひめ ト 1 ストをテープルの、つえに、 いつまでも持ってるわけにはいきませんーーそ いかえすと、いたずらつぼ 、ばかげたもんで、なんにも か 317
、、こ、きましよ、つ ! 」 ころへも ひぎ ラークおばさんは、二匹の犬をしたがえて、大さわぎで行ってしまいました。ウイロビーは、 とことこ歩一きながら、イルカにむかって、ぶさほ、つにウインクをしました。 「それから、きものをきるようにいってちょうだい ! あれで、かけまわってたら、日焼け をします ! 」ラークおばさんが、いそぎ足で遠ざかりながら、きいきい声でいいました。 ネリウスは、ふきだして、草のうえに、ころがりました。 わら 、、いました。「ねえ、メアリー・ポビン 「日焼けだって ! 」と、ネリウスが、笑いにむせて ズ、だれも、ばく大理石でできてるって思わないのかしら ? 」 あら 「ふふん ! 」と、メアリ 1 ・ポビンズは、鼻息を荒らげて、答えました。ネリウスが、もた えがお ずらつぼい笑顔をむけました。 ゞ、、ました。「あいつらは、岩のうえに、 「アシカのいうとおりいってら ! 」と、ネリウスカも すわってて、夕日にむかって、〈ふふん ! 〉っていうよ ! 」 「そうですかね ? 」と、メアリー・ポビンズかかみつくように、、いました。ジェインと つぎかなら マイケルは、ふるえあがって、次に必ずやってくるものを待っていました。ところが、何ごと おう も起こりませんでした。メアリ 1 ・ポピンズは、いたずらっ気に応ずるような顔つきをしてい け 165
した。 と、ジェインは田 5 いました。しかし、よくみると、そのあかりは、 光 ちょうちんかしら ! しばふ を出す魚でした。海草のつるを口にくわえてつりさがっていて、からだから出る光で、芝生を 照らしていたのです。 音楽は、、 もまや、ますます、強くなってきました。ちいさな、サンゴのテラスからきこえて いるので、そこでは、カニが、何匹か、ヴァイオリンをひいていました。ヒラメが一匹、ほお ハウオが、銀色のラツ。ハを吹いてい をふくらませて、ホラガイを吹いています。さらに、ラッ ひょうし えんそうしゃ ス・ドラムで、拍子をとっています。演奏者のまわりを、きらきらし て、スズキのバスかハ ちょうし た海の生物が泳いでいて、岩とサンゴのあいだを矢のように行ききしながら、音楽の調子にあ しんじゅくびかざ わせて、とんだりはねたりしています。真珠の首飾りをつけた人魚たちも、魚たちのあいだを、 優美に泳ぎまわっていて、つやつやした銀色のしっぽやひれが、そこここで、きらめいていま 「おお ! 」と、ジェインとマイケルが、ロをそろえて叫びました。これ以外に、い とばは、ないよ、つに田 5 えました。 うな 「やあ、ようやくきたな ! 」ぶーんと唸るような声がして、大きな、あかがね色のアザラシ て なんびき さけ びき 、つべきこ 241