どってきました。 「メアリ 1 ・ ポビンズ ! メアリ 1 ・ポビンス メアリ ー・ポビンス ! 」 だんろ そのうち、ジェインが、暖炉から目をあげて、窓をみると、あっと、ちいさく叫びました。 「ああ、マイケル、マイケル ! あすこよ ! そして、別の扉がある ! 」 マイケルは、ジェインの指さすほうを目で追っていって、ぽかんと、ロをあけました。 窓のそとがわに、もう一つの子ども部屋が、ちらちらと見えているのです。それは、十七番 かべ 地から、ラ 1 クさんの家の壁のあいだに、のびています。そして、ほんものの子ども部屋にある かがやヘや ものは、なんでも、その輝く部屋のなかに、うつっているのです。アナベルの、きらきらした だんろ べッドも、光でできたテ 1 プルもあります。暖炉の火も、空中まで燃えあがっていて、そして、 べっとびら すんぶん そこには、やつばり、別の扉がありました。ふたりのうしろにあるのと、寸分ちがわない扉で す。それは、光でできたわくのように、庭のむこうがわで、ちらちらしているのです。そのわ とびら すがた きには、じぶんたちの姿もうつっていて、その扉にむかって、空気の床のうえを、メアリ 1 ・ すがた ポビンズの姿が、軽々と歩いているのです。手に、じゅうたん製のバッグをさげて、マッチ売 はなたば りにもらった花束と、オウムのこうもりがさを、わきのしたにかかえています。ゆっくりと歩 いて、子ども部屋のうつっているなかを、古く見慣れた品々と同じものが、ちらちらしている まど まど べっとびら さけ とびら 352
ろうこっ ども部屋の暖炉に火をつけたのです。「なんかで、このわしの、ぞくぞくする老骨を、あたため いんき てくれなきや。ああ、また、あの陰気くさい風のやっ ! どこか、違うところでほえてくれな いもんか ! 」 「ヒュ いつのことだっていうんだ ? 」風が、桜の木を吹きぬけて、す すりなきました。 だんろ 子ども部屋の暖炉の火が、ばちばちいいながら、燃えあがりました。鉄格子のうしろで、あ まど かるい炎が、ちらちらして、窓ガラスにうつってかがやきました。ロ・ ートソン・アイは、朝 とだな リ・ー・ホヒ の一仕事のあとの休みをとりに、ほうき戸棚に、よろよろおりていきました。メア したく ンズは、いつものように、着るものに風をあてたり、朝ごはんの仕度をしたりで、かけずりま わっています。 ジェインは、だれよりもはやく、目を覚ましていました。風のうなりに、起こされてしまっ たのです。そして、いまは、窓ぎわの腰かけにすわって、おいしそうなトー ストの匂いに、鼻 すがたなが をくんくんいわせたり、窓にうつるじぶんの姿を眺めたりしていました。子ども部屋が半分、 かがや だんろ 庭のなかで輝いています。光だけで、できている部屋です。暖炉の炎は、背中にあたたかく感 はのお けん ぜられますが、もう一つの炎が、前にあって、赤表と燃えあがっています。二軒の家のあいだ のお だんろ まど まど ちが ほのお てつごうし せなか 314
しました。そこは、大きな屋根裏部屋で、木切れや、ペンキのかんや、にかわのびんなどが とりちらかっていて、部屋のすきまというすきまは、すべて楽器でうめつくされていました。 ープがすみのほうに立ててあるかと思うと、一方のはじには、ドラムが積んでありました。 ふえ トランペットやヴァイオリンがたくさん、たるきにかけてあって、フルートだのプリキの笛 つくえ たな 大工道具がち だのが、棚につめこまれていました。窓ぎわの、ほこりだらけの机のうえには、 らばっていて、長い仕事台のはじには、みがきあげた小さな箱がおいてあって、そのそばに、 小型のねじまわしが一本、ころがっていました。 床のまんなかには、できかけのオルゴールが五つならんでいましたが、塗ったばかりの鮮か な絵の具の色に明るく輝いていて、まわりには、 こがた と、大きな白い字が、白墨で板にかいてありました。 へやんたい もい香りがしていました。たった一つだ 部屋全体が、かんなくずや、絵の具や、にかわで、 け、見あたらないものがありましたが、それは、トイグリーさんでした。 ペンキ塗りたて かがや はくく ゃねうらべや がっき っ あざや
して、ゾウのアルフレッド、、ゝ、 カそのわきに、とびおりました。それから、おもちゃ戸棚のうえ から、サルのビニーと、例の青いアヒルが、軽々ととびおりました。 すると、金色のプタが、ロをきいたので、ふたりは、びつくりしました。 「だれか、すみませんが、ぼくのしつぼをつけてくれませんか ? 」プタが、かん高いきいき い声で、たのみました。 マイケルは、べッドをとびだして、暖炉にかけつけました。 「これで、 しし。」プタは、につこりして しいました。「クリスマスからこっち、とっても、 . し . し・・刀 プタのないしっぽみた ぐあいがわるかったよ。しっぽのないプタっていうのはね、 いに、ひどいもんだよ。さて、そこでと、」そう、ことばをつづけて、部屋をぐるっと見まわし ました。「みんな、用意はいいかな ? じゃ、いそいでくれ ! 」 そういって、ブタは、品よく、戸口のほうへ、はねていきました。アルフレッド、ピニーと アヒルが、つづきます。 「どこへ いくの ? 」と、ジェインが、目をまるくして、叫びました。 「すぐわかるよ。」と、プタが、こたえました。「さあ、いらっしゃい あっというまに、ふたりは、部屋着をひっかけ、部屋ばきをつつかけて、四つのおもちゃの へやぎ だん 5 さけ とだな 280
ゅう乗るんだ ! 」 そして、たしかに、メアリー・ポビンズのべッド のわきの、部屋のすみに立てかけられてい るステッキをみると、安心していていいようでした。だって、だれが、と、ふたりは、あさは かにも考えました。べたべたするおさとうの棒を四本、盗みたいなんて思うでしよう ? 今だ って、もう、ピンクと白のステッキは、子ども部屋の家具の一部のように、みえているのでし どうし ステッキは、四人の誠実な友だち同志のように、柄を組みあって、いっしょにもたれていま す。どの一本も、びくっともしません。ほかの、どんなステッキとも同じように、持ち主と散 歩に出るのを、ほこりつほい片すみで、おとなしく待っているのでした : ミントのステッキの匂いが、子ども部屋にいっ 午後がすぎて、寝る時間になりました。ペ。ハ ばいになっています。マイケルは、お風呂からでると、いそいでやってきて、鼻をくんくんい わせました。 「だいじようぶだよ ! 」と、マイケノカ レ、、ゝ、よいってきたジェインに、ささやきました。「だけ ど、今夜は起きていて、なんにも起こらないように、見てたほうがいい こ 0 ね せいじっ かた にお と思うな。」 ぬしさん 219
「ぬれてるよ ! 」と、マイケルは、びつくりして、 ジェインが、、つなず - きました。 さけ 「これも、ほら ! 」と、ジェインは叫んで、じぶんたちの部屋ばきを、べッドの下からひっ ばりだして、メア リー・ポピンズのくつを、箱から出しました。 部屋ばきは、ぐっしより露にぬれて、しみがついていましたし、メアリー・ポビンズのくっ の底には、ぬれた、草の葉の切れつばしが、くつついていました。夜、公園で踊ったりしたら、 きっとくつにつくだろうと思われるものです。 わら マイケルは、顔をあげると、ジェインをみて笑いました。 ま、、つれしそ、つに、、 「やつばり、夢じゃなかった ! 」マイケル ~ ジェインも、につこりして、、つなずきました。 こころえがお しんだい ふたりいっしょに、 マイケルの寝台に腰かけると、心得顔にうなずきあって、ことばにでき ない秘密の話を、だまったまま、語りあいました。 やがて、メアリ ー・ポビンズがクランペットをもって、はいってきました。 ふたりは、くっと部屋ばきごしに、メアリー・ポビンズをみました。 メアリー・ ポビンズは、クランペ トの皿ごしに、ふたりをみました。 そこ ひみつ こし もいました。 もました。 310
声で、叫びました。「それはーーああ、いそいで、いそいで ! みつけなくちゃ ! 」 ふるえる手で、ふたりは、ふたごを引張りだして、門をぬけて、びきずっていきました。玄 かいだん 関の戸をけやぶるようにあけて、階段をかけあがると、子ども部屋に、とびこみました。 ふたりは、部屋をじっとみて、うろたえました。なにもかも、いつもの通りに、おだやかに、 てつごうし おちついていました。火は、鉄格子のおくで、ばちばち燃えていて、アナベルは、べッドのな かに気もちよくくるまれて、しずかに、くうくう声をたてていました。朝、お城に使ったれん 1 ・ポビンズの、た がは、すみのほうに、きちんとつんでありました。そのそばには、メアリ いせつなドミノの箱が、おいてありました。 「あ 1 あ ! 」ふたりは、はあはあ、をきらしながら、なにもかも、いつもと同じなので、 驚いて、なんだかわけがわからなくなりました。 なに , もか、も ? ・ 一つ、なくなっているものがあります。 さけ 「キャンプ用のべッドだ ! 」マイケルが、叫びました。「あれが、ない ! リ 1 ・ポビンズは、どこだろ、つ ? 」 ふろば マイケルは、お風呂場へかけこむと、出て、おどり場へいってみて、また、子ども部屋へも おどろ かん さけ ひつば いって、メアリ 1 ・ポビンズを それじゃ しろ メア げん 351
メアリー・ポビンズは、窓のほうへ、とんでいきました。 「おいき、このスズメっ子 ! 」と、メア リー・ポピンズは、どなりつけました。そしてムク もうふ ト丿が飛び去ると、あかりを消して、べッドにとびこみました。そして、毛布をひきあげなが ら、怒った声で、「ポン ! 」とつぶやいたのが、きこえました。 やがて、おだやかな、気もちのよいしずけさが、部屋を包みました。そのなかで、みんなが しんだい 眠りかかったかと思うころ、ジェインの寝台から、ごくかすかな声がきこえてきました。 くば 「マイケル ! 」と、ジェインが、気を配って、ささやきました。 マイケルは、注意してからだを起こすと、ジェインの指さすほうに、目を向けました。 暖炉のわきの部屋のすみが、かすかに明るくなっています。よくみると、オウムのこうもり がさのひだに、色とりどりの星が、たくさんついているのですーーーちょうど、花火が空ではじ けたときに見えるかと思うような星なのです。そしてふたりは、オウムが頭を下にむけたのを ぎようてん きぬ みて、びつくり仰天して、目をまるくしました。オウムの頭は、絹のひだについた星を、一つ 一つ、くちばしでむしりとって、床にほうりだしているのです。星は、ちょっとのあいだ、金 や銀に光っていましたが、すぐうすれて、消えてしまいました。やがて、オウムの頭は、柄の 、つえに、まっすぐに立って、メアリ 1 ・ポビンズの黒いこうもりがさが、部屋のすみに、じっ ねむ だんろ まど
クラン。フさんは、。 きこちない手つきで、 そのバイを切りはじめました。 そのとき、オルゴールの箱が、回転を ゃねうらべや とめました。音楽はやんで、屋根裏部屋、 はしずかになりました。 トイグリ 1 さんは、箱をとびおりて 金のお城のところに走りよりました。そ して、うれしそうに叫んで、お城をひろ いあげると、なかの光景をじっと見ました。 「うまくやったぞ ! まったく、われながらおめでたい。 これで、あといるものは、一ペニ どうか 3 ) かいすいよくじよう 1 銅貨の入れロだけだ。そしたら、プライトンの海水浴場で、うまいことやれるぞ。一ペニー たったの一ペニー、さあ、みなさん ! デブのおばさんが。ハイをたべるのをごらん ! さあ、 寄っといで ! 寄っといで ! たったの一ペニー トイグリーさんは、お城をかざしながら、陽気に、部屋をとびめぐりました。ジェインとマ イケルは、箱をとびおりると、あとを追いかけて、フロックコート の両裾を、めいめいっかま しろ さけ こうけい しろ しろ かいてん りようすそ
「だって、ばく、目を覚ましていたいんだ、メアー てるんだ ! 」 「見ているやかんは、けっして沸かない ! 」メアリー て、思いださせました。「横になって、マイケル、そのべ " せん ! 」 そして、大きく鼻をならすと、あかりを、ばちんと消して、怒ったような、ちいさな、カチッ という音をさせて、子ども部屋の扉をしめて、出ていきました。 「なんていわれたって、見てるんだ。」と、マイケルは、メアリー・ポビンズが出ていくや、 いました。 ちょうし 「わたしも。」ジェインも、断固とした調子で、すぐ、賛成しました。 もいませんでした。ぐっすりねこんでいたのです。しかし、マイケルは ふたごは、なにも、 まくら 頭が、横ざまに枕のうえに倒れるまでに、すくなくも、十分間は、がんばっていました。そし て、ジ = インのまっげが、ほおに舞いおちるまでには、たつぶり、十五分ありました。 あんてい 四つの羽根ぶとんが、子どもたちの、安定した呼吸につれて、上り下りしていました。 しず 長い時間、子ども部屋の静けさをみだすものは、なにもありませんでした。 たお だんこ とびら こきゅう さんせい 丿ー・ポビンズ、そして、新年のくるの見 ・ポビンズは、そのことわざを口にし ひとことゆる トでーーーそして、あと一言も許しま 277