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検索対象: 文藝春秋 2016年7月号
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1. 文藝春秋 2016年7月号

ロシアをよく描けていると思いましは、軍と切り離せないのでしよう。 た。ソ連時代のように世界の覇権を 握ろうとしているわけではない。た ロシアの本性は過剰防衛的 だ国の安全を守りたい。「絶対国防 山内ロシアが軍事大国になるの 圏 . というか「生命線」というか 譲れない線をキープしようと懸命には「宿命」で、そこには三つの理由 なっている。そういう普通の国としがあると指摘されています。一つは てのロシア。でも国境線がとてつも侵略され続けてきた過去の歴史があ ~ 一なく長くて、普通に守ろうとするとるため、潜在的な恐怖感が消えない リミア併合も、 Z<E-«O の東方拡大 こと。侵略国家の印象が強いロシア 自動的に軍事大国にならざるをえな ですが、古くは東からモンゴル、西に脅威を感じていたロシアにとって いロシア。しかし多くの日本人は、 どうしてもソ連時代のイメージでいからポーランドやスウェーデンに攻は、本能的な自然な行動に過ぎない。 まだにロシアを眺めているのではなめられ、十九世紀にはナポレオン、本書でも強調される視点ですね。 山内サンクトペテルプルクの建 いですか。そこを修正してくれる大二十世紀半ばにはナチス・ドイツに 設などロシアの近代化を進めたピョ も侵攻されています。 2 作ですね。 ートル大帝が、徴兵制をはじめとす 井上時折、武器や組織の名前が片山口シアの本性は侵略的では 。列挙されて挫折しそうになりましたなく過剰防衛的なんですね。十三世る西欧の軍事的制度を取り入れたこ 0 とが第二の理由です。これによっ が ( 笑 ) 、日本人なら母の日に贈る紀にモンゴルに侵略された「タター Z, カーネーションが、ロシアでは従軍ルのくびき」が、防衛線を先へ先へて、ロシア社会と軍とは不可分な関 経験者に贈られるなんていうエピソと進めておかないと、必ずやられる係になりました。そして三つ目とし という強迫観念を作り出した決定的て、ソ連崩壊後のロシアにとって、 ードも混じっていて、飽きさせない Z 工夫がありました。ロシアの文化体験だったのでしよう。この前のク軍事や戦争の記憶が重要なアイデン ゲスト 今月の のうえしよういち 井上章一 ( 国際日本文化研究センター教授 ) ( 395 )

2. 文藝春秋 2016年7月号

境界線に近い人たちから発症しにしたがってレグも弱まったの前からその薬を服用して e レグを活 たと考えられます。 は、ヤジロべェでいえば、一方のお性化させ、花粉の季節が過ぎればも つまり、アレルギーの発症を抑えもりが軽くなったから、もう一方もう飲まなくてもよいことになりま るには、レグの量を増やして活性軽くしてバランスを保ったのと同じす。これまでの対症療法的な薬とは 化させればいいことになります。 です。逆に、攻撃する細胞の力を強根本的に異なるものです。研究が順 実は、レグを一気に増やすことめれば、 e レグの力が強まる。しか調に進めば、このような薬は、四、 は不可能ではありません。リンバ球もヤジロべ工と同じで、両方のおも五年先に実用化が期待できると私は を取り出し、試験管のなかで増やしりがどっしり重いほうが、より安定予想しています。多くの人を悩ませ てまた体内に戻すといった方法で的になる。免疫系は筋肉と同じで、 ていた花粉症が、身体への負担も、 す。技術的にはすぐにできることで負荷をかけて鍛えることができるの経済的な負担も少なく、投薬だけで です。 すが、コストは相当かかります。 治療できる時代になるのです。 臓器移植のあとに起こる拒絶反応すでに実用化されている例では、 レグがコントロールできるよう ( や、重篤な喘息など命にかかわる病一昨年保険適用で話題となった、アになれば、アレルギー治療にとどま 気を治療するためなら、それだけのレルギーの抗原を少量ずつ摂取するらず、医療の可能性はさらに広がり コストを払うことも考えられますスギ花粉の舌下免疫療法。さらに二ます。 が、花粉症の治療としては現実的と〇二〇年頃の実用化を目指している アレルギー治療とは逆に、レグ はいえません。 スギ花粉症治療米も、同じメカニズの働きを抑えれば、免疫反応を高め では、どのような治療法が現実的ムで e レグが活性化すると考えられて病気を治すことができます。実は かといえば、レグを少しずつ活性ます。 レグだけを活性化させるよりも、 化させていく方法で、免疫システム さらに、レグを全体的に活性化活動を抑えるほうがコントロールし の " バランを利用します。細菌させる薬剤の研究も進んでいます。やすいことが研究でわかっていま などを攻撃する免疫細胞が弱くなる実現すれば、花粉症シーズンの少しす。

3. 文藝春秋 2016年7月号

勘」と呼んでいるが、こうした背景繰り返し述べた。脅迫あるいは内政的だ。研究者の世界でも、私がかっ を知っておくことが現代の情勢分析干渉すれすれの言葉だが、「イギリて留学したように、イギリスの大学 スは、あくまでヨーロッパとアメリ でも重要なのである。 や研究機関は魅力的だ。いずれも大 、こ力をつなぐバイプ役になれ」という陸ヨーロッパとの地理的、政治経済 一方、「プリグジット」で大し。 困ることになるのは、アメリカだろドライなイギリス観が表れていた。的な結びつきによって、イギリスの しかし、これを意識したのか、あ価値が高められていたのである。 う。かってド・ゴールが指摘したよ うに、「トロイの木馬 . たるイギリのトランプが五月中旬、英テレビの「プリグジット」をめぐる今回の動 スを通じてヨーロッパに影響を与えインタビューで「私が英国人ならきによって顕在化した世界秩序の多 ていたアメリカは、その足場を失残留は望まないだろう」と語って極化傾向は、仮に国民投票で「残 いる。ウォール街も割れているのだ留」が決まったとしても、今後も国 う。すなわち、イギリスの離脱によ 際社会を揺がし続けるだろう。 って欧州大陸がアメリカの影響圏かろうか。 当然ながら、日本にとっても、 例えば、イギリスは中国が主導す ら離れ、ドイツの比重が大きくな り、地政学的にはロシアに引き寄せ「プリグジット」は他人事ではすまるアジアインフラ投資銀行 られてしまうことになる。それは、 されない。まず短期的には、アメリ p) への参加をいち早く表明した が、これも「プリグジット」問題と アメリカがもっとも怖れている事態力と同じように日本のヨーロッパに だ。経済的にも、アメリカが主導すおける「足掛かり」を失ってしまう背中合わせの関係にある。 というのも、アメリカ一極のグロ ことが大きい。 るドル基軸体制や金融・貿易ルール ーバル社会では世界銀行やアジア開 のグローバル化に従わない、脱米的イギリスは、ヨーロッパにおける ほば唯一の英語圏である。日本企業発銀行 (<Qn) といった特定の機 な経済圏に変質してゆこう。 がヨーロッパに進出する際はイギリ関にとかく機能が統合されていく。 オバマ大統領が四月に訪英した 際、テレビの記者会見で「からスに拠点を置き、報道各社が欧州総それに対して、中国があえて「機能 離脱したイギリスは優遇しない . と局をロンドンに構えているのが象徴がかぶってもかまわないではない ( 168 )

4. 文藝春秋 2016年7月号

さない市民の会 ) に対する巨額の賠チ対策法」が成立した。 場の人物の神格化運動と時を同じく 償命令 ( 約千一一百万円 ) が確定した ネット右翼と保守運動は、現時点して、民主党という「共通の敵」が のはつい最近のことであるが、類似で、みじん切りのように更に分裂と存在した「黄金時代一は、そう簡単 の判決は数知れず下されている。民矮小化を繰り返している。ネットをに再現されないのだ。 間の対応も始まっている。ニコニコ見て驚くのは、この段に至っても デマと差別を撤き散らす、あまり 動画を運営するドワンゴは、在特会「田母神有罪」と「田母神無罪」のにも右に行き過ぎたネット右翼と保 のチャンネルを閉鎖。ューチュープ両派が激しくつばぜり合いをしてい 守運動は、保守的な傾向を持っ現政 は、差別的な動画を大量に投稿してると言う点である。何でも「無罪権下でも、明らかに煙たがられてい 広告収入を稼ぐ魑魅魍魎のごときュ派」の言い分は、田母神逮捕は反社る。田母神が舛添に勝てなかった都 ーチューバー等から広告権利を剥奪会的勢力やの陰謀なのだとい知事選挙と、続く同年衆院選挙にお しはじめたし、ヤフージャパンは、 う。こうなってくると、日本帝国のける次世代の党 ( 田母神公認 ) で、 同社のニュースに大量に書き込まれ敗戦解釈をめぐって「勝ち組」とその全国的趨勢が明らかになったこ る民族呪詛のコメントをチェック・ 「負け組」に分裂した先の大戦直後とにより、政権与党は彼らを有意な 削除する体制を構築・運営すると発の南米日系人社会を髣髴とさせる混票田とみなさなくなった。肝心の保 表した。 乱状態である。 守政権から見放されたネット右翼と 特定の民族への差別的な言動をネット右翼と保守運動は、分裂とその周辺は、常識的で穏健な保守勢 「差別ではなく区別」などと主張し矮小化を続けながら収縮していく。 力によってますます社会の片隅に追 て憚らないネット右翼への社会的制田母神の次に彼らのスターとなる人いやられるだろう。二〇二〇年に 裁は、このように日を追うごとに明物がいたとしても、それは田母神のは、おそらく、保守運動がまだまだ 瞭になる。今年五月二十四日には、劣化コピーであって、田母神と同等ー日陰者であった一九九〇年代後半の 罰則こそ無いものの「ヘイトスピーではない。元空幕長という社会的立地位にまで、逆コースのように後退 ( 330 )

5. 文藝春秋 2016年7月号

日本は海と陸を構成する四言葉が安易に使われている る。私などは、どんなに大き 枚のプレート ( 太平洋プレー が、防災の英訳は、実は熊本城の復旧に な地震がきても崩れるはずは ト、ユーラシアプレート、フィ Disaster Prevention( 破局的向けて ないと思いこんでいた。その おわだてつお リピン海プレート、北アメリカ大災害防止 ) である。四枚の 石垣が崩れたのである。それ 小和田哲男 プレート ) の合流点の上に生プレートの合流点の上にいる ( 静岡大学名誉教授 ) 表紙の一一 = 〔葉 まれた国家である。四つのプ日本国はいつでも大破局寸前 レートのせめぎ合いの上に生のところにいる。大破局から「築城の天才」とか主木の「天の川」 まれ、存在しつづけた日本の逃げて逃げて逃げまくること」などといわれる加藤清一万年前の人々は宇宙とい 国土は本質的に安定状態にはで生きつづけるというのが、正が七年がかりで完成させたう概念抜きで、頭上にある光 ない。いつでも変動している日本人の宿命的生き方である熊本城は日本三名城とうたわの粒をどう見ていたのでしょ ( エネルギー的に、位置的に ) 。 ( 過去においても未来においてれ、天守は明治十年 ( 一八七うか。夏の夜空を見て、漠然 その変動幅がある限界を超えも ) 。そういう意味において七 ) の西南戦争のときに焼失と大きな力を見ていたのかも ると、災害が起きる。 熊本地震は日本人みんなにこしてしまったが、宇土櫓などしれません。東洋では夏の大 「これまでの研究から活断層の宿命を思い起させるものだ十三棟の建物が国の重要文化三角形を巡り、様々な伝説が の近くでしか大きな地震は起ったといってよいだろう。財として指定され、わが国をあります。一年に一度だけ、 きないということはある程度そして、オバマの訪日と熊代表する城として人気が高七夕に織姫・彦星夫婦が会う ことを許されたという、何と 言えるようになりました。だ本地震によって呼びさまされ から活断層の近くに住んでいたことは、我々を常にとりま特に、石垣は下の方がゆるも残酷で美しい空の物語。天 る人は、万一のとき死なない いている二つの大破局 ( 人為やかな曲線を描き、上にいくこー 。月が流れ、そこに感情を映 いにしえ ように準備する必要がある。的破局と自然的破局 ) があほど直線となり、しかも反りし取っていた古の人々にも 実際の防災としてはそれしかり、それを逃れるためには文のある武者返しの手法は「扇会える気がしました。 明の方向転換しかないというの勾配」といわれ、清正流の ありません」 ( 桑原氏 ) 松村公嗣 いまの日本では防災ということだろう。 石垣としても広く知られてい ( 79 )

6. 文藝春秋 2016年7月号

い。だからこそ、広範な支持を集め潮流の一部であることを強く感じ融機関である。 ているのだ。 る。アメリカのトランプ旋風にも通背景にあるのは、諸国で進ん 他に離脱派のスター的存在としじるものがあるのだ。実際にジョンでいる一連の金融規制だ。リーマン て、元保守党党首でこの三月までキソンは離脱反対派から「イギリスのショックを経験して、サププライム トランプ」と呼ばれており、ポサポローンに象徴される投機的な金融取 ャメロン内閣の労働・年金相だった ィアン・ダンカン・スミス ( 彼の曾サの金髪を振り乱して扇情的な演説引が大陸諸国とりわけ独仏で強い反 祖母は日本人 ) や、英国独立党を行う姿も、どこかドナルド・トラ発を呼び、金融取引や役員ポーナス に対する規制強化が唱えられた経緯 の党首で演説の名手としてンプに重なって映る。 がある。 名高いナイジェル・ファラージュが世界的な外交専門誌『フォーリ イギリス国内で金融界の存在は大 ン・アフェアーズ』 ( 三 / 四月号 ) の特集は「反格差、反緊縮の動向にきい。そのイギリスのの一二 トランプ旋風に通じるどう応えるか」というテーマだった。 今やこれが、どこの国でも最大のテ とはいえ、彼らを支持し、草の根ーマとなり、世界秩序の中心問題に勺 る せに広がるサイレントマジョリティとなってきた。当然、「プリグジッ ト」とも密接に関わっているのだ。 なって離脱派を形成しているのは、 界教育水準のあまり高くない庶民層のしかしもう一つ、離脱派を支える 世 人々である。あるいはグローバル化代表的な勢力がある。それは、皮肉◆一 物する経済構造において、成長から取にも、経済格差を生み出す象徴とさ り残された人々と言い換えることもれるグローバル時代の申し子、ヘッ 廣榮堂本店 ジファンドに代表される「ニュー 英できるだろう。 私は、ここに今回の問題が世界的マネー」と呼ばれるシティの新興金 備前岡山 安政三年創業 岡山市中納言角 電話 6 ^ 六 ) ニセニー一三六 ^ ( 165 )

7. 文藝春秋 2016年7月号

十一議席 ) を二十九議席も割りこ上昇している。「共に民主党ーを離ちに最終的などありうるのか」「日 み、左派系最大野党の「共に民主脱し二月に新党「国民の党ーを結成本大使館前の少女像こそ不可逆的だ 党」 ( 百二十三議席 ) にも一議席及ばした安哲秀氏が一一一 % で一位、前回 ( 撤去できない ) 」といった発言で、 ず、第二党に転落した。選挙直後のの大統領選挙で朴大統領に惜敗した日韓慰安婦合意の核心ともいえる 大統領の支持率調査では、就任後最「共に民主党」の文在寅前代表が一「最終的かっ不可逆的」という言葉 低となる二九 % を記録。惨敗の責任七 % で二位。二人には少し遅れを取を批判した。 こうした強い反発の為に、朴槿恵 を取って、知日派で前駐日大使も務ったものの、朴元淳ソウル市長も六 めていた李丙琪大統領秘書室長が辞 % で四位につけている。この三人は政権は合意後約半年が経った今も、 任するなど、既にレイムダック化が野党の「」と呼ばれ、有力合意の履行に向けた具体的行動に踏 始まっている。 な次期大統領候補とされている。み出すことができないでいる。 の誰かが政権を取れば、 そのため、次期大統領が与党からの誰が大統領になろうとも、 出る可能性は限りなく低い。ギャラ日韓関係が大きく揺れ動くのは間違まず手を付けるのは慰安婦合意の破 棄もしくは再交渉だろう。そしてそ ップコリアによる最新の世論調査でいない まず、慰安婦問題だ。三人は昨年れは、誕生したばかりの新政権の支 は、昨年まで次期大統領候補のトッ プを走っていた与党代表の金武星氏末に電撃的に結ばれた日韓慰安婦合持率を一気に押し上げることに貢献 の支持率が三 % まで下落。若年層に意に対して批判的だ。安哲秀、文在するはずだ。 人気がある呉世勲前ソウル市長が七寅の両氏は朴槿恵政権が国会の同意 「脱韓国」現象 % の支持で辛うじて三位に入ったもや慰安婦被害者らの了解を得なかっ のの、彼自身が今回の総選挙で落たため、合意自体が「無効ーだと主 新政権が最初に直面する大イベン 選。与党の次期大統領候補としては張し続けている。朴ソウル市長は、 トが一八年二月九日から二十五日ま いつものごとく曖昧な言葉で明言は 心もとない。 一方、快勝した野党陣営は人気が避けながらも「お婆さんたちの気持で平昌で行われる冬季五輪だ。閉会 ( 282 )

8. 文藝春秋 2016年7月号

リンも、ここに淵源を持つ。シリア不 「信頼性」は国際政治の安定にとって 米国はいま、モデル危機に直面して 介入を外交政策支配層が総攻撃したと不可欠な「予測可能性」の基礎であ いる。イラク戦争、リーマンショッ き、彼らの " プレーブック。に対する る。中国が好むような、そしていま、 ク、トランプ・サンダース現象によっ オバマの不信感は頂点に達した。 トランプが唱導するような「予測不可て、米国の政治、経済モデルに疑問符 がっきつつある。シリコンバレーにし オバマの次席補佐官のべン・ローズ能性」を武器とするゲリラ外交は大国 の表現を使えば、このワシントン外交がそれを行った場合、国際政治を著し ても、ディスラブション ( 攪乱 ) は得 政策支配層こそ、インクが紙に零れ落 く不安定にする。 意でも、安定的な世界秩序ビジョンを ちたときの「シミ ( —。 ) 」のよ 戦後の長い平和を支えた国際秩序描くのは苦手のようである。 うな存在である。彼らの問題は、国際 9 レトンウッズ体制 ) を構想したのは 米外交政策支配層は戦後、ベトナム 政治学者のスティープン・ウォルトに国際感覚を持ち、世故に長け、実務能戦争とイラク戦争という一一つの悲劇的 ・ 1 ・ 1 よれば、「信頼性中毒 ( 力のあるウォール街の金融家だった泥沼を生み出した。世界の地理と歴史 し、彼らと協同した弁護士、学者、ジ に対する無知、つまり地政学的洞察の ャーナリスト、シンクタンクだった。 っていることである。危機にあたっ 欠如がそれをもたらした。しかし、彼 て、米国がちょっとでもひるむ姿を見 この支配層はまた、戦後の日米関係らが戦後、維持してきた「開かれた国 せると、米国の信頼性が損なわれ、世も超党派で支えてきた。冷戦後、日米益」の思想と行動は世界の平和と安定 界の平和と安定の基盤が崩れるとの強同盟が漂流し始めたとき、冷戦後の同 に寄与してきたし、日本は世界のどこ 迫観念から逃れられない。 盟の使命と役割を再確認し、再定義よりもその恩恵を蒙ってきた。 たしかに「信頼性中毒」は硬直的か し、その後の同盟強化に貢献したの 戦前の大不況で米国がモデル危機に っ現状維持的な外交姿勢をもたらしゃ は、ジョセフ・ナイ ( 民主党 ) とリチ陥った時、日本の米国への憧憬が一気 学すい。しかし、このような外交政策支ャード・アーミテージ ( 共和党 ) であ にしばみ、政治的には親米派勢力が大 地配層叩きが行き過ぎると、米国が戦り、彼らの後を継ぐカート・キャンべ きく後退した。それを繰り返してはな らない。い ル ( 民主党 ) とマイケル・グリーン まこそ、米外交政策支配層 後、培 0 てきた超党派的な国際主義へ の支持基盤を突き崩す危険がある。 ( 共和党 ) だった。 を支え、励ます時である。 ( 229 )

9. 文藝春秋 2016年7月号

いう保守とは、右翼的思想を持っ急継となって関東にも地歩を築いたと泉進次郎の運命を最も大きく左右す 進派からマイルドな構造改革支持層すれば、維新の勢いが全国的に高まるのも、安倍総理ということになる でしょ , つ。 までを含みます。〇九年の政権交代る可能性があります。 は、構造改革支持層が自民党を見限とはいえ、当座は自民党が日本政 って民主党に投票して実現したので治の中心にあり続けるという前提で 父親同様のジレンマ すが、後継の民進党はそのことを理論を進めれば、ものをいうのは自民 解できずにいます。一一〇年に向けて党内の力学です。それは一言で言え安倍政権は権力維持の仕組みが実 の民進党は社会党化しながら分裂をば、清和会の天下ということ。現在によくできています。ライバルとな 繰り返し、次第に存在感を低下させの派閥はかってのそれではないと言りうる同世代の大物には禅譲の淡い てい / 、でしょ , つ。 われることもありますが、公認権と期待を抱かせ、閣内で飼い殺しにす 他方で、私が橋下徹という政治家選挙資金を握る総裁派閥の権力は増る。次世代を担いうる政治家は徹底 と彼が起こした「維新」という運動しています。 的に干されている。安倍政権の下で に着目するのは、彼が乱世に強いタ しかも、清和会の天下は一日にしは四 5 五十代の政治家はほとんど活 イプだからです。しかも、有権者のてできたものではありません。過去躍せず、脅威とならない長老や能吏 七割が保守であることを前提とする五回の衆議院選挙のうち自民党が大タイプが重用されています。例外 と、日本における二大政党制とはす勝した四回 ( 〇三年、〇五年、一二が、客寄せ的に使われている何人か なわち保守系二大政党制です。「維年、一四年 ) はすべて清和会の総裁の女性閣僚と小泉氏です。 新」は、保守的なイデオロギーを自 ( 小泉純一郎氏と安倍氏 ) の下で戦わ安倍政権での小泉氏は、党青年局 民党と共有しながら「反官僚」、「地れました。 長、復興政務官、そして農林部会長 方重視」の改革政党として対抗軸を 二〇年時点の日本の政権が、事実を歴任しています。青年局長として 示し得る存在です。彼らが地盤とす上の安倍派である清和会の強い影響の彼は政権奪還前後の自民党の応援 団長的存在であり、選挙の顔として る関西に加え、例えば舛添都政の後下にあることは確実です。当然、 ( 242 )

10. 文藝春秋 2016年7月号

在する。実は密やかな動きはすでに〈検索レーダーで捕捉した爆発物をとオペレーションを同時にやろうじ 〉はやないか」。現在こそ、海外におけ 始まっている。と陸上自衛隊積載した小型ヘリコプター の特殊部隊「特殊作戦群 . との " 任そのまま " ドローン・テ尸に応用るリエゾン ( 渉外情報担当官 ) が主任 務分担。が伊勢志摩サミットで極秘可能で、海外調達の検討が急ピッチ務だが、将来的には、戦後日本で最 に実戦配備された。そのイメージで始まった。現在の音探知捕獲シス初となる、海外諜報部員の派遣を目 は、テロリストが国会に侵入して議テムでは、ロスしてしまう危険性が指す。 員を無差別銃撃すると同時に、秋田あり、塩酸などの化学物質を上空か単に情報収集だけではない。 " テ 口を起こさせない。オペレーション 県能代港から重武装で上陸して地元ら暴露されるリスクがあるからだ。 警察官を殺害しながら首都を目指さらに期待される " 日本の治安のを目指すかどうかを検討中だ。テロ ニュートラライズ す。さらにスカイツリーで中国の観歴史的な変化。がある。昨年末、外リストを " 排除。するオペレーシ ョン、つまり究極のテロ対策だ。そ 光客を人質にとるという同時多発テ務省に「国際テロ情報収集ュニット 口が発生した時のシーンだ。、 ( ュニットと略 ) 」が設置された、とれは、サイバーテロ対策でも同じ と特殊作戦群がエリアを分担して同報道された。オフィスこそ外務省にだ。これまでのように技術的に " 守 時攻撃を行うー四年後にはさらに置かれているが、実態は、内閣総理る。だけではなく、まったく新しい 大臣直轄の中央情報局を目指した機概念のインテリジェンスが進むだろ 具体化しているだろう。 また新たな装備も必要だ。新幹線関である。外務省の元に置いたのう。すでに欧米の情報機関では密や の対テロ政策で、膨大な全乗客の全は、外交の一元化に拘る外務省の顔かに始まっている。それらのために 荷物検査は現実的でない、とされてを立てたに過ぎない。指揮系統は外は、海外での身分を隠しての活動は 本いるが、それを解決するため、冒頭務省の管轄外だ。設置に最も尽力しイリーガルになる可能性が高い。国 で紹介した、 " c-ng-k 的な発想。によた内閣官房副長官の杉田和博氏が、民がそれを許容するかどうか。四年 る警備資機材のリストが金庫の奥か準備室の時の会議で他省庁幹部たち後に向け、日本の治安は、今、歴史 ら引っ張り出された。その中で、を前にして放った言葉は「情報収集的な転換点を迎えている。 ( 引 5 )