ケルも、じぶんの目で見ていたのですから。 ファニーとアニーカ ゞ、はしごを地面にたてて、しつかりと、空にたてかけたようなぐあいに すると、コリーおばさんは、まちかねたように、スカートをつまみあげて、いっぽうの手には けと、もう一つの手にのりのバケツをとりあげました。そして、はしごの一ばん下の段に足を かけると、のばりだしました。メアリー ・ポビンズも、かごをもったまま、も、つ一つのはしご をのばりました。 それから、ジ = インとマイケルは、まったくおどろくべき光景を見ました。コリーおばさん トベトしたものを、ピ は、はしごのてつべんにつくやいなや、はけをのりのなかにつけて、べ ポピンズは、それにつづい シャリピシャリと、空につけはじめました。いっぽ、つ、メアリー・ て、かごのなかから、なにか光るものをとりだして、のりのうえにはりつけました。そして、 ポピンズが、ジンジャ 手をはなしたときに見ると、ふたりは、メアリー・ ・。ハンの星を、空 にはりつけているのだということがわかりました。一つ一つ、ちゃんとしたところにつけられ かがや ると、キラキラした金色の輝きをはなって、いきおいよく光りだすのでした。 「あれは、ばくらのだよ ! 」と、マイケルは、息もつけなくなって、 ね の星だよ。ばくたちが寝てると思って、はいってきて、もってったんだよ ! 」 こうけい もいました。「ばくら だん 175
たような音がして、だれか階段をいそぎ足でおりてくるのがきこえました。やがて、マイケル があらわれました。顔をまっかにして、ハアハアあらい息をついていました。 「見て、ジェイン、見てごらん ! 」と、マイケルはさけんで、片手をつきだしました。見る じしやく とそれは、メアリー・ ポピンズのもっていた磁石で、マイケルの手のひらでふれ動くたびに、 まるい盤が、針のまわりを、くるったよ、つにぐるぐるまわっていました。 「磁石が、どうしたの ? 」ジェインは、そういって、マイケルの顔を見ました。 な すると、マイケルは、わっと泣きだしました。 ました。「も、つ、すっかり、ぼくのに 「ばくにくれたの。」と、マイケルは、泣きながらいい なにかがおきるんだ。いままて していいんだって。ああ、きっと、なにかおかしいんだ ! なに一つ、くれたことないんだもん。」 「きっと、ただしんせつにしただけよ。」と、ジェインはなぐさめるようにい、 心のなかでは、マイケルとおなじように、不安になるのがわかりました。メアー が、しんせつのために時間つぶしなどしないということは、よく知っていましたから。 ポビンズはひとことも、おこ しかも、おかしなことには、午後のあいだずっと、メアリー・ ったロをきかなかったのです。というより、ほとんどひとことも、ものをいわなかったようで じしやく ばん かいだん な ふあん かたて ましたが、 丿ー・ポビンズ 264
ドで、ボタンが二つあって、とても気のきいたくつでした。 ジェインとマイケルは、メアリー・ / し ポビンズのあとをくつついて歩きながら、 つになったら買い物の書きつけが終わるんだろうと思っていました。けれども、メアリー・ ピンズの顔つきを見ると、きくわけにもゆきませんでした。 メアリー・ポピンズは、通りの左右をじっと見て、思案しているふうでしたが、やがて、き ゅ、つに決、いがついたよ、つに、ぶつきらぼ、つに、、ました 0 うばぐるま 「魚屋 ! 」そして、乳母車をまわして、肉屋さんのとなりの店にはいりました。 ( 3 ) 「ドーヴァ・カレイ一つ、ヒラメ一ポンド半、クルマエビ一。ハイント、イセェビを一つ、 ださい」と、メアリー・ ました。たいへんはやくちで、こんな注文になれて いる人ででもなければ、ききとれないくらいでした。 魚屋さんは、肉屋さんとちがって、せいの高いやせた人でした。あんまりやせているので、 りようがわ まるで両側だけあって、はばがないみたいでした。それに、たいへん悲しそうな顔をしていて、 たったいままで泣いていたか、それとも、 、まにも泣きだすのかと思われるほどでした。ジ = わか インのいうところでは、それはなにか人にいえない悲しいことがあって、若いころからなやん でいるせいだということでした。マイケルの考えでは、魚屋さんが子どものころに、おかあさ ポピンズは、、 しあん 151
きました。 「これは、王さまのところへお目にかかりにいかなければ。」と、くびをふって、決心しま した。 いきかせまし そこで、赤牛は、子どもの牛にキスをして、おとなしくしていなさいよ、と、 た。そして、子牛にわかれると、踊りながら草原を出て、王さまに話をしに出かけてゆきまし いけがき 赤牛は、ゆくとちゅうも、ずっと踊っていました。ときどき、生垣から、青葉の小枝を、む しりとってはたべながら。そして、ゆきかう人は、みんなおどろきの目をみはりました。しか し、だれにもましておどろいていたのは、赤牛自身でした。 ぎゅうてい そうして、とうとう、王さまの住んでいる宮廷につきました。赤牛は、鐘についたつなを口 でくわえてびいて、門があくと、踊りながらこれをくぐって、庭のなかのひろい通路を通り、 ぎよくざ だん ついに、玉座にのばる段のところまで、やってきました。 ぎよくざこし ほうりつ 王さまは玉座に腰をおろして、いそがしそうに、びとそろいの新しい法律をつくっていまし ほうりつ しよぎかん た。王さまの書記官は、王さまが法律を考えつくと、そのたびに、一つ一つ小さな赤い帳面に ていしんじじよ 書きつけていました。いたるところに、廷臣や侍女がいて、みんなきらびやかな服をきていま こ 0 おど おど おど かね こえだ
1 トソン・アイに、だまって出ていってもらいたいもんだ。また、くつを片いつぼうだけみが いて、もう一つのほうは、ほったらかしだ。まるで、ふつりあいじゃないか。」 「そんなこと、どうでもいいじゃありませんか。」と、おくさんがつづけました。「それより ケティーばあやのことを、どうしたらいいのか、きかしてくださいません ? 」 ンクスさんが答えまし 「消えてなくなったものを、どうしようもないじゃないか。」と、 た。「もし、おれだったら いや、わたしだったらーーそうね、だれかにたのんでモーニン ンクスーーーおか グ新聞にだしてもらうね。ジェインと、マイケルと、ジョンと、 あさんのことはいわなくても、 カーーそういう子どもたちのせわ役に、だれか、一ばん安く だいしきゅう しがんしゃ て一ばん上等な人が大至急ほしいといってね。そうすれば、志願者がぞくぞくと門の前につめ まわ かけるよ。交通はとまるし、お巡りさんにはやっかいをかけるし、一シリングも進呈しなけり ゃならないとなれば、さぞ腹もたっことだろう。さて、出かけるよ。ホウ、なんて寒いんだろ ほっきよく う。まるで北極だ。風はどっちかな。」 ていとく ンクスさんは、そ、つ いいながら、窓から首をだして、通りのさきの角にある、プーム提督 さくらまちどお の家のほうをながめました。ブーム提督の家は、桜町通りで一ばん大きな家でした。しかも、 じまん、、 まるで一そうの船のようなかたちに建っているので、通りの人たちの自慢のたねでした。庭に ていと , 、 まど ノ ノ ノ しんてい
マイアは、キイキイした声をあげると、じぶんのからだをだきしめて、よろこびました。 「おお、ジェイン、よく気がつくわね ! とても、わたしだったら思いっかないわ。メロー ゴムのアヒルをちょうだい 青くて目のきいろいのがいいわ。」 店員は、つつみをしばりあげました。そのあいだじゅう、マイアは、まわりをとんで歩いて、 つつみ紙をつつついてみたり、ひもをひつばってみたりして、荷物がしつかりしているかどう かしらべました。 「これでいいわ。」と、マイアがい 、ました。「一つだって、おとすわけこ、ゝ マイケルは、マイアのことをはじめつから、目をさらのようにして見ていたのですが、この こわだか とき、メアリ ・ポピンズのほうをむいて、声高に耳うちしました。 「だけど、マイア、財布もってないよ。だれがおもちゃのお金はらうの ? 」 ました。 「あなたの知ったこっちゃありません。」メアリー・ポビンズは、そっけなくい 「それに、ないしよばなしは失礼です。」メアリ 1 ・ ポピンズは、ポケットに手をいれると、 せわしく、なかをさぐりました。 「なんていったの ? 」と、マイアは、びつくりしたように、目をまるくしてききました。 しつれい ー力ないでし 252
「だって、どうしてメアリー・ポピンズはおばえていられて、ばくらにはできないの ? 」と 、ました。 ジョンカ 「ああ、そりゃあね ! あのひとは別さ。それこそ、とびきりの別格なんだ。あんなわけに ( いかないさ。」ムクドリは、そ、つい、つと、ふたりにむかって、につこりしました。 ジョンと、、 ーヾラは、だまってしまいました。 せつめい ムクドリは、説明をつづけました。 とくべっ も力い、あのひとは、ごく特別なのさ。もちろん、顔かたちのことじゃないよ。その点 じゃ、うちの生まれたてのひょっこだって、メアリー・ ポピンズよりは、ましなんでーーー」 「この、でしやばりや ! 」メアリー・ ポピンズは、おこって、さっと走りよると、エプロン まど で、ムクドリのいるところを、ピシャッと払いました。しかし、ムクドリは、とびのいて、窓 くちぶえ わくのうえにまいあがると、ぜんぜん手のとどかないところにとまって、いたずらつぼく口笛 をふきました。 「てつきり、やつつけたと田 5 ったでしように、おあいにくさま ! 」と、ムグドリは、ゝ って、メアリー・ポピンズのほうに、つばさをふってみせました。 メアリー・ポピンズは、あらあらしく、せきばらいをしました。 べっ べつかく カらカ 190
「上にいても、あなたがいないとさびしいのよ ! 」と、ジ = インもい「て、メアリー・ポビ ンズのほうへ、両手をさしのべました。「ねえ、なにかおかしいことを考えてちょうだい ! 」 ひつよう 「いや、そんな必要はないのさ。」と、ウィッグさんは、ため息まじりにいいました。「あの わら 子は、こようとおもえばあが「てこられるんだよ、ぜんぜん笑わなくってもねーーそして、じ しきもの ぶんでもそれを知 0 ているのさ。」そうい「て、ウィッグさんは、下の暖炉のまえの、敷物の ところに立っているメアリー・ ポビンズのことを、ひとにわからないように、ふしぎなまなざ しで見つめました。 「そう。」と、メアリ 1 ・ ました。「なんてみつともない、ばかげたことでし よう。だけど、あなたがたが、みんな、そんな上のほうにいて、とてもおりてこられそうもな いのだから、わたしのほうから、あがっていったほうがいかしら。」 メアリー・ポピンズはこういうと、ジ = インとマイケルがおどろいたことには、両手をわき につけたまま、笑い声一つどころか、ぜんぜん、ほほえむけはいさえもないのに、いきなり空 中をのばってきて、ジェインのわきにすわりました。 「いったい、なんどいったらいいんでしよう。」と、メアリー・ポピンズは、つ「けんどんに わら ポピンズはい、 だんろ
、、ました。「西風の天気だ。あかるくて、さわやかで、外とう た。「やつばり、そうだ。」と はいるまい」 やまたか・はうし ンクスさんは、かばんと山高帽子をとりあげて、いそいでシティーにむかい そ、つい、つと ました。 うで きなり、ジェインの腕をとりました。 「おとうさんが、いったのきいた ? 」マイケルは、、 いました。 ジェインは、うなずきました。そして、「風は西。」と、ゆっくり、 ふたりは、それつきりなにも、 いませんでした。しかし、それぞれの胸のなかには、ある考 えが浮かんでいて、消そうと思っても、消すことができませんでした。 わす それでも、やがて、そのことは忘れてしまいました。なにもかも、いつものとおりでしたし、 それに、春の日の光にてらされて、ふたりの家もたいへんきれいに見えたので、ペンキのぬり ひつよう なおしや、壁紙のはりかえが必要だとは、とても思えませんでした。それどころか、ふたりと さくらまちどお も、桜町通りで一ばんりつばな家のような気がしていました。 しんばい しかし、心配は、おひるごはんがすんでから、はじまりました。 。、、ツカダイ 1 トソン・アイと、畑をほっていました。ちょ、つと ジェインは庭に出て、ロ ' れつ コンのたねを、一列まきおわったときでした。子ども部屋のほうで、なにか大さわぎがおこっ かべがみ むね 263
のを手つだってもらいました。 とくべっしんごうとう 「おとうさんに、あれがいいや。」と、マイケルはいって、特別の信号灯のついた、ぜんま いじかけの汽車をえらびました。「おとうさんがシティ へいノときには、ばノ、がかわりに世 話をやいてあげるよ。」 「おかあさんのは、これにするわ。」と、ちいさな人形の乳母車を押しながら、ジェインが いました。たしか、おかあさんが、まえからほしがっていたものだと思いました。「きっと、 ときどき貸してもらえると思うわ。」 それから、マイケルは、ふたごに一つずつヘアビンのたばをえらび、おかあさんには鉄の組 き力い エレンにめがね、 立おもちゃ、ロ・ P . し ートソン・アイに機械じかけのカプト虫、すてきに目の、 いつも部屋ばきをはいてるプリルばあやに編みあげのくつひも、などをみつけました。 ジェインは、しばらく考えていましたが、けつきよく、白いロハが、おと、つさんに何より、 いと臥いましたし、また、ふたごが大きくなったら読むようにと、ロビンソン・クルーソーの 本を買いました。 「ふたりが、読めるようになるまで、わたしが読んでもいいわ。」と、ジェインはいいまし た。「きっと、貸してくれると思うわ。」 うばぐるまお 241