フラとメアリー・ ポビンズのほうへ、じっと目をそそぎました。 キング・コプラは、そこで、ジェインとマイケルのほうをむきました。ふたりは、身ぶるい 月さくて、かさかさして しました。キング・コプラの顔は、いままでに見たこともないほど、、 いました。ふたりは、ひと足、まえに出ました。キング・コプラの、きみような、おくぶかい 目を見ると、ひきよせられてゆくような気がするのです。長い細い目で、なんともいえない、 ものうげな色をたたえていましたが、そのつかみどころのない、ねむそうな目つきのまんなか で、一点の光が、はっきり目をあいて、宝石のように輝いていました。 「ところで、ここの子らは、だれなのかね ? 」コプラは、、ぶかしげにふたりを見つめて、 おだやかな、おそろしい声でいいました。 ンクスじようちゃんと、マイケル・ヾ ンクスばっちゃんが、おさしずをまっ ております。」ヒグマが、なかばおそれているように、しやがれ声でいいました。「あのかたの お友だちです。」 「ああ、お友だち。それなら、よろこんでおもてなししましよう。どうぞ、おすわりくださ い」 ジェインとマイケルは、ど、つやら、王さまのまえにでもいるような気もちでー・ーーライオンと ほうせき かがや 223
をつきだしました。マイケルは目をまるくしました。鼻のあたまに、しわをよせて、いやがり ました。 「ほしくない。ばく、、 らないよ。のむもんか ! 」 しかし、メアリー・ポピンズは、じっとマイケルを見つめていました。そして、すぐ、マイ ケレこよ、メアリ 1 ・ い、つことをきかずにはいられないとい、つことが ポビンズの目を見たら、 わかりました。メアリ ー・ポピンズには、どこか変わった、きみようなところがあったのです どこか、こわいような、それでいて、ひどくひきつけるようなところがありました。スプ ーンが近づいてきました。マイケルは、息をとめて、目をつぶり、グッとのみました。おいし した い味が、ロじゅうにひろがりました。舌をまわして、あじわいました。そして、のみこむと、 うれしそ、つに、につこり笑いました。 「ストロべリー・ アイスだ。」と、マイケル ( よ、、つつとりしていいました。「もっと、もっと、 もっと ! 」 しかし、メアリー ・ポピンズは、あいかわらず、きつい顔をして、こんどはジェインの分を ついでいました。それは、銀や緑や、黄色に光って、スプ 1 ンに流れこみました。ジェインは のみました。 わら
マイアは、キイキイした声をあげると、じぶんのからだをだきしめて、よろこびました。 「おお、ジェイン、よく気がつくわね ! とても、わたしだったら思いっかないわ。メロー ゴムのアヒルをちょうだい 青くて目のきいろいのがいいわ。」 店員は、つつみをしばりあげました。そのあいだじゅう、マイアは、まわりをとんで歩いて、 つつみ紙をつつついてみたり、ひもをひつばってみたりして、荷物がしつかりしているかどう かしらべました。 「これでいいわ。」と、マイアがい 、ました。「一つだって、おとすわけこ、ゝ マイケルは、マイアのことをはじめつから、目をさらのようにして見ていたのですが、この こわだか とき、メアリ ・ポピンズのほうをむいて、声高に耳うちしました。 「だけど、マイア、財布もってないよ。だれがおもちゃのお金はらうの ? 」 ました。 「あなたの知ったこっちゃありません。」メアリー・ポビンズは、そっけなくい 「それに、ないしよばなしは失礼です。」メアリ 1 ・ ポピンズは、ポケットに手をいれると、 せわしく、なかをさぐりました。 「なんていったの ? 」と、マイアは、びつくりしたように、目をまるくしてききました。 しつれい ー力ないでし 252
じしやく マイケルは、アッ、といって、磁石をおとしました。 「メアリー・ポピンズ、メアリー・ ポピンズーーー助けて、助けて ! 」マイケルは、金切り声 をあげると、かたく目をつぶってしまいました。 マイケルは、よこゝ オーカにつつまれているような感じがしました、なにか、やわらかくて、あた たかいものです。ああ、いったい、なんだろう ? エスキモーの毛皮かしら、中国人の着物か かわ はねげ しら、それとも、インディアンの革の上着か、黒人の羽根毛かしら ? だれにつかまったんだ ろう ? ああ、なんてわるい子だったんだろう なんて ! 「メアリー・ ポピンズ ! 」マイケルは、空中をはこばれて、もっとやわらかいものにいれら れたような気がして、こう泣きさけびました。 「ああ、メアリー・ ポピンズ、だいすき ! 」 「はいはい、わかりました。わたしは、耳が悪くはありません。ふつうにいってもらえばけ っこ、つ どなるにはおよびません。」と、メア リー・ポピンズの、おだやかな声がきこえま きよじんすがた マイケルは、目を、片いつぼうあけました。磁石から出た、四人の巨人の姿は見えません。 かげ もう片いつほうの目をあいて、たしかめました。いない ひとりとして、影さえありません。 かた じしやく 134
と 「オー・ルヴォアール、ですって ? 」と、ブリルばあやは、となりの部屋から、キイキイ声 でいいました。「はて、その意味はーーーまってください、そういう外国のことばには、あまり や、ちが、つ。 お目にかかったことがないからねー - ー・。さあ、〈ごきげんよう〉でしたつけな ? まちがいです。ジェインじようちゃん、たしか、〈また会うまで〉って、ことでしよ。」 ジェインと、マイケル ( よ、顔を見あわせました。よろこびと理解が、ふたりの目のなかで輝 ていました。ふたりには、メアリー・ ポピンズのいう意味が、よくわかったのです。 いいや。」と、ふるえ声で マイケルは、ほっとしたように、ながいため息をついて、「まあ、 ました。「メアリー・ ポピンズは、いつも、するっていったようにするんだから。」そして、 . し むこうをむきました。 「マイケル、泣いてるの ? 」と、ジェインが、 ききました。 マイケルは、首をねじまげて、笑顔を見せよ 、つとしました。 「ううん、ばく、泣いてなんかいないよ。」 、いいました。「目だけだよ。」 な な えがお かがや 277
乙 いるべッドのうえにたわむれていました。 「どいてくれっていったら ! 目にはいるじゃないか。」と、ジ ョンが大声でいいました。 「ごめんよ ! 」と、日の光がいいました。「だけど、しようがな ( 力ないんだ 、よ。どっちみち、この部屋をよこぎらないわけによ、ゝ カら。いいつけは、まもらないわけにいかないのさ。わたしは、一 日のうちに、東から西へ動かなけりゃならないんだし、わたしの道 は、この子ども部屋を通るようになってるんだから。すまないね ! 目をつぶってくれよ。そうすりや、気になりやしないよ。」 金色の光のすじは、部屋をよこぎって、のびてゆきました。ジョ ンの気もちをくんで、できるだけはやく、動いているのがわかりま す。 わたし、 「あなたは、ほんとに、やさしくて、気もちがいし ! 大すき。」と、 ーハラがいって、あたたかい光のなかに、両手を さしのばしました。 181
メアリー・ポピンズは、ロをとじました。 さくらまちどお 「で、きっと、それで桜町通りを歩いてきたのね。」と、ジェインが、おだやかに、 をつぎました。 「そうだね。」と、マイケルが、小声でいいました。「星をさがしてたんだよ。」 メアリー・ポピンスよ、ゝ カらだをきりつとさせて、すわりなおしました。じっと、どこかを 見つめていたようすは、目からも、からだからも、きえうせていました。 「窓のところから、すぐおおりなさい ! 」と、ふきげんにい、 ました。「あかりをつけます ろいろなところへおちるのさね。おなじ野原に二つおちるのを、一生あてにしてるというわけ にはゆかないだろうさ。」 「それならーーーすこし、あちこちさがしてみたら、どうでしよう ? 」と、赤牛は、あか ねっしん 、、、ました。 るい、熱心な目の色になって 「わたしだったら、」と母がいったのです。「出かけて、さがすね。」 「そうしましよう。」と、赤牛は、うれしそうに、、、 ました。「ほんとに、そうしましょ まど ことば 106
6 わるい火曜日 それから、 いくらもたたないころでした。ある朝、マイケルが目をさましてみると、ふしぎ な気ぶんがしていました。マイケルは、目があいたときから、なにかおかしいと思ったのです が、なんだか、はっきりはわかりませんでした。 もうふ ポピンズ ? 」と、マイケルは、かけていた毛布をおしやりな 「きようは何曜日、メアリー・ がら、ききました。 、、ゝ、、ました。そして、マイケル冫 こ起きるよ、つす 「火曜日です。」と、メアリー・ポピンズカも 、、、こしました。 がみえないので、「いって、おふろのお湯をおだしなさい。はやく ! 」と もうふ マイケルは、ねがえりをうって、毛布を頭のうえまで、びつばりあげました。すると、ますま すふしぎな気ぶんがつよくなってきました。 「きこえないんですか ? 」と、メアリー・ポビンズが、つめたい、はっきりした声でいいま け・いカ、 した。それはいつも、警戒をようすることなのです。 いまやマイケルし ~ こま、じぶんにどういうことがおこるのか、わかりました。いけない子にな 109
「ははあ ! 」ムクドリは、ふいにそういうと、ふりかえって、さぐる ポピンズの ような目つきでメアリー・ポピンズを見ました。メアリー・ おだやかなまなざしが、ムクドリの目と、じっとあいました。 やがて、ムクドリは、さっと飛びたっと、ジョンのべッドのほうへ飛 んでいって、かこいのヘりにおりました。ジョンは、大きな、毛のもじ こひつじ やもじゃした子羊をもって、しつかり腕にかかえていました。 「わたしの名は ? わたしの名は ? わたしの名まえはなんでしたっ け ? 」ムクドリは、かん高い声で、不安そうにさけびました。 「エアーアンフ ! 」と、ジョンはいって、ロをあくと、毛もじゃの羊 かたあし の片足をつつこみました。 ムクドリは、ちょっと首をふると、顔をそむけました。 「やつばりーーーそうなんだね。」と、しずかに、メアリー・ もいました。 メアリー・ポビンズは、、つなずきました。 ムクドリは、ちょっとのあいだ、がっかりしたように、ふたごを見ま ふあん ポピンズ ひつじ 198
「なにがなんだか、さつばりわからないわ。」と、ジェインがい たんじようび の誕生日なんでしよう ? 」 「さあ、こっちですよ、おふたりさん、こっちですよ。あいさつにいらっしやりたいでしょ たんじようび うね。なにしろ、お誕生日なんだから ! 」ふたりのうしろで声がしました。ふりむくと、人り きつぶ ロで切符をくれたヒグマが、立っていました。 「ええ、もちろんよ ! 」ジェインは、こういえば、一ばんまちがいがないだろうと思ってこ たえましたが、だれにあいさつにゆくのかも、さつばりわかりませんでした。 ヒグマは、ふたりのうしろから、腕をまわして、路をすすんでゆきました。ふたりは、あた たかくてやわらかい毛がからだにさわるのが、わかりましたし、ヒグマがものをいうたびに、 おなかのなかがゴロゴロいうのが、きこえました。 たてもの 「ここです、ここです ! 」ヒグマは、そういって、一つの小さな建物のまえで、とまりまし まど た。その家は、窓という窓が、たいへんあかるく輝いていて、もしも月夜でなければ、日が照 っているのかと思うほどでした。ヒグマは、戸をあけて、ふたりの子どもを、そっとなかへ押 しやりました。 はじめは、あかるくて目がくらむようでしたが、だんだん、目がなれてくると、そこは、ヘ まど うで かがや みち ました。「、つこ、、。こ て お 220