放射線療法 - みる会図書館


検索対象: 医者が末期がん患者になってわかったこと
27件見つかりました。

1. 医者が末期がん患者になってわかったこと

ても、効果が得られない ( 延命できない ) という場面が必ず出てきます。その段階でも、 まだ患者さんに「闘え」と一一 = ロうのは無茶な話なのではないかと思うのです。 たとえば化学療法や放射線療法でも、患者さんによっては 現在、医学の進歩とともに、 劇的な効果を期待できるものと、そうでないものがあることがわかってきています。その しいくら化学療法や放射線療法を施しても、患者さんは副 効果が期待できない患者さんこ、 作用で苦しみながら、ほとんどべッドに縛りつけられて残りの人生を過ごさなければなら なくなる。そんな、明らかに効果が期待できないがんに対して、無理やり化学療法や放射 線療法を施す必要があるのだろうかということです。 私自身、放射線治療を選び取ったわけですが、専門家として納得して選択したにもかか わらず、それは非常につらい体験でした。それを、患者さんによく説明もしないで、とに かく「最後まで闘いましよう」と一言うのが、はたして医師として正しい道なのか 私は、けっして化学療法そのものが悪いというつもりはありません。抗がん剤の開発も 進み、確実に効果の上げられるタイプのがんもあるし、また、抗がん剤をどう組み合わせ て治療すれば一番いい結果が得られるかという研究もどんどん進んでいます。その研究努 力が切り開く可能性を信じて化学療法を選択する場合もあるでしよう。 しかし、だからといって、現状では実効性がないことが確実で、しかも患者さんに苦痛 7 86

2. 医者が末期がん患者になってわかったこと

そこで、私の場合、放射線療法を選択することにしました。再発を防ぐために、腫瘍を 取ったところに限定して放射線をかけようということになったのです。また、家も近いの で、通院で治療を続けることになりました。 しかし、それにしても、つらい選択であることは間違いありません。私は、前々から放 射線治療を受けている患者さんを見ては、『ああはなりたくない』と思ったものでした。実 際、放射線治療を受けるつらさは十分にわかっているつもりでした。 もちろん、放射線治療は目覚しい勢いで進歩しています。治療機器も格段に進歩してい ますし、腫瘍の種類によっては、放射線療法で見事に治ってしまうものも少なくないので す。いや、それどころか、ほとんどの腫瘍に対し、放射線治療でいい効果を上げることが できるのです。 しかし、こと私に襲いかかった種類の脳腫瘍だけは、なかなかその効果が期待できない のです。ですから、自分が放射線を受けることになったとき、医師でありながらも、 たまれない気持ちに駆られてしまいました。 ちなみに、放射線治療を受ける段階になると、患者本人にはも、つ他にやることがなく なっています。通院でも十分に可能ですし、大きな病院では入院を待っている次の患者さ んのためにべッドを空けなくてはなりませんから、病院側も退院を勧めたいという事情も

3. 医者が末期がん患者になってわかったこと

5 惨であり、手術、放射線、化学療法等すべて 含めて五〇— , ハ〇 G で延命効果ありとされ 組合わせても、依然として平均一年内外の生 ている ( 4 ) 。高齢者の場合は放射線療法のみの 存期間しか得られないのが現状である ( 写真場合もあるが、化学療法を併用することによ 1 ) 。効果が芳しくないが故に現在いろいろな り照射効果が増強される。七〇 G 以上の高線 治療法が試みられているが、それらについて 量療法や、腫瘍内照射等を行う施設もある。 簡単に述べてみたい。 7 , kn 一 fe * は今後の使用法如何によれば、かな ・放射線治療 り有効となる可能性を秘めている。 通常は外照射を行うが、局所および全脳を 7 ・ knife (radiosu 「 gery) : 二〇一個のコバルト の微小線源からの / 線を、各コリメーターを通し コンピュータで定めた焦点に集中的に照射しよう というものである。当初主に径三以下の脳動静 脈奇形に対して応用されてきたが、最近は小さい 脳腫瘍、例えば聴神経腫瘍、下垂体腺腫、あるい は転移性脳腫瘍さらには悪性脳腫瘍等にも試みら れるようになってきている。しかし合併症等に関 してはこれからの課題である。また、リニアック を用いたリニアーナイフも開発されている。本年 より保険適用となって患者の負担は減り、今後が 期待される。 写真 1 61 歳、女性、 C T ( 造影 ) 左前頭頭頂膠芽腫の症例。 3 カ月間でこ こまで大きくなった。部分摘出、放射線、化 学療法を行うも効なし。

4. 医者が末期がん患者になってわかったこと

岐部より上にカテーテルをあげ、マニトール、 ・化学療法 ニカルジピンなどの BBB を開くといわれてい 脳には血液脳関門 (BBB) が存在し、薬剤 る薬剤を併用しながら投与する ) する方法も が標的細胞に到達し難いという難点がある。こ あるが、芳しい成績は得られていない のような意味では、脂溶性薬剤で n ぎ rosourea 系 o ・ BRM 療法 の BCNU (cannustine) あるいは ACNU (nimustine B RM ( biological response modifiers) とは、生 hydrochloride) が有用である。しかし腫瘍の組 織多様性、薬剤耐性、 cell cycle との関連性も体内の防御反応を強化することで腫瘍の発育 を抑えようというものである。有名なものに あり、多剤併用療法が一般的である。代表的 下記に示す使用が研究されている。 なものとして、 p 「 oca 「 bazine (PCZ) 、 vinc 「 isttine : ウイルス増殖を抑制 (VCR) 、 etoposide ()P ・ (6) 、最近では cisplatin する蛋白質として発見され、現在は遺伝子工 (CDDP) あるいは ca 「 boplatin 等の組み合わせが 学的に大量生産されている。全身投与ばかり 多い 方 ACNU あるいは vincristine (VCR) などは腫でなく、局所投与もされる。手術中にフィブ の瘍の cell cycle を G2M 期 ( 分裂前期—分裂期 ) リン糊に包埋した一 FN 、を腫瘍内に留置し、 最 徐放効果を狙うというような方法もある。 に同調させる働きがあるとされ、この時期に これを細胞周 療放射線をかければ効果が高い。 LAK 療法 (lymphokine ・ activaled kille 「 ) 者自身の e 細胞を invitro にて活性化し、再び 蕩期同調化学療法といい、現在の治療法の主流 脳 となっている。 戻す方法。 TNF (tumour necrosis factor) : : : 腫瘍に出血 また ACNU 他を動注 ( 内頸動脈の眼動脈分 信

5. 医者が末期がん患者になってわかったこと

境界もはっきりしており良生なことが多く、 瘍そのものの外科的な減圧を考慮せねばなら 脳内 (intra-axial) の場合は悪性を疑わねばな ない。また二次的に水頭症をきたしているよ らない。また臨床的な脳腫瘍の悪性度という 、つな例ではまず脳室腹腔短絡術 (v-p shunt) 等 を一一丁、つ。 ことを考えた時には、病理組織学的な悪性度、 発生部位、大きさ、浸潤性か否か、放射線あ 腫瘍の減圧に関し腫瘍が悪性の場合は、手 るいは薬剤の反応性等も含めて判断すべきで 術にて神経脱落症状が出現しない範囲内でま ある。これにより、治療方針は同じ組織の腫ず腫瘍細胞数を可能な限り減らしたうえで、 瘍でも変わってくることがある。 組織診断の結果を踏まえ、化学療法、放射線 最近では、同じ腫瘍でも M 一 B ニあるいは〕 H. 療法等の補助療法を考慮する。治療の目的は、 い力に useful 一一 fe を長期間得るかにあり、寝た thymidine 等の labeling index を用いて増殖能を 推定し、悪性度 ( 再発の予想 ) を論ずること きりの延命では意味がない。考え方、医療費 もある の形態が異なる諸外国では、悪性と思われる 脳腫瘍に対しては生検のみで後療法は行わな 脳腫瘍治療の基本的な考え方 いことのほ、つかむしろ多一い 通常何らかの症状が出現し発見された場合 これに対し組織学的に良性の腫瘍に関して は、腫瘍は既にある程度の大きさを有し、ま は、できる限り摘出を ( 行、つが、これも神経 た周囲の脳浮腫も伴い頭蓋内圧亢進症状を有 脱落症状を出さぬように行うことか原則であ していることが多い。放置すれば致命的にな る。この辺は脳神経外科医の技量の見せ所で ある。 るものもあり、このようなものに対しては腫

6. 医者が末期がん患者になってわかったこと

第ーーー七月三一日 ( 木曜日 ) 綾乃の誕生日。ついに、退院した。一応、合併症はほとんどないが、焦点が合い 、外にしばらくいるとクラクラする。味覚のほうは相変わらず。母の「エ 1 テ、エーテ、食べや 1 」の言葉が妙に心に残る。本日は退院。綾乃の誕生祝いも含 めて、外苑焼肉へ。ビビンバが食べられる限界の味。なんで、もう少しくらい戻っ てこないのであろうか 退院後の治療をどうするのか、化学療法あるいは放射線療法をやるのかやらないのか、 という話になったとき、私は、とりあえず少し様子を見させてくださいと頼みました。 じつは、退院してから、大学のほうへ休職届を出そうか、どうしようかという話になっ ていました。それまで、病欠ということで、私の仕事をほかの人たちがカバーしてくれて 第いたわけです。 はない」という言葉が重い 度目の退院 199

7. 医者が末期がん患者になってわかったこと

。線 ■ーーー五月一六日 ( 金曜日 ) 療射 冶放 ついに rad 一 a ( 一 on のプランニング。 L 一 nac で 6()GY 予定ということになった。以前よ ( り、「 adia ( 一 on を受ける患者にだけはなりたくないと思 0 ていたのに、こんなことに放械 c リ一つ 9 = 行 なるなんて。ともかく不安感が強い。 0 を c 療 この日、今後の治療についての話し合いが行われました。脳腫瘍の場合、可能であれば、 まず手術を行い、その後、抗がん剤による化学療法や放射線療法を行うのが一般的となっ ています。しかし、化学療法の場合、悲惨な結果に終わることが少なくないのです。体力 を消耗したり、合併症で亡くなるケースが多くなります。また、点滴も毎日、かなりの量 ルを入れなければなりません。 阜ーー・・・・ー・・五月一五日 ( 木曜日 ) 惻 ともかくどうにもならない不安感、焦燥感が強く、発作的に su 一 cide してしまいそ うな雰囲気もある。残された時間 ( 頭も働き、体も動く期間 ) は三、四か月。五〇 歳の誕生日にはどうなっているかわからない。規子や綾乃と、こんなに長く一緒だっ たことは、これまでなかったなあ 1

8. 医者が末期がん患者になってわかったこと

しかし、そのときは、結局、再々発は見つかりませんでした。かすかに希望が拡がる結 果だったのです。 一一度目の手術のあと、化学療法、放射線療法はやらず、様子を見ることにしていました が、仕事への復帰はある程度あきらめなければならないことはわかっていました。もちろ ん、医師として完全復帰を果たしたいという夢はもっていましたが、それはもう体力的に も無理なことでした。 また、実際、規子に付き添ってもらって、大学の外来の仕事もするようになりましたが、 大学が新しい病棟に移り、コンピューターシステムに変わったことも、職場復帰を困難に させるもう一つの問題でした。なかなかコンピューターの扱いが身につかず、自信をなく してもいたのです。仕事一筋に現場とともに生きてきた私にとって、現場復帰の夢を捨て 去ることは、まさに断腸の思いでした。 これまで、それだけを目的に生きてきたのです。《妻またぎ》と自称しながら懸命にやっ てきたのも、常に医療現場の第一線にいたい、そこで認められたい、また多くの患者さん : そんな思いに貫かれていたからでした。 を助けたい : しかし私は、もうその夢を追うことが許されていないことを、自分自身に納得させなけ 靴ればならない時期を迎えていたのです。 幻 5

9. 医者が末期がん患者になってわかったこと

第七章再発 いても感動できない状態になっていました。なぜか、今回の手術か、前の手術のときより正 る も怖くて仕方ありませんでした。 ■・・ーー七月ニ一日 ( 月曜日 ) す ついに再入院。新棟・耳鼻科病棟の院長床 ( 5619 号 ) 。星先生の段取りで緊急間 分 入院という形になった。段取りは朝よりスム 1 ズではなく、悪いパターンである。何 っ 0 兄弟たちも来てくれ、昼には吉宗の皿ウドン。入院してからは、岩尾夫妻がウナギ切 を持ってきてくれ、堀内 Dr も来室。 ope は明日午後から。本日、マーキングを行い、 を O ぶ W CT 、線撮影。明日、出血時間、 ECG 等を行い、 ope に突入。今回はラストチャン瓦 間分 スだ。 出常 そもそも最初に腫瘍の病理的診断がついた瞬間に、脳外科医が見れば、そういう結末は 思い浮かぶものなのです。定番のコースがあって、何か月か後に来るであろう最後の姿も 見えていました。取っても取っても出てくるし、もちろん、化学療法も放射線療法も多少 は効きますが、がん細胞を完全になくすことはできないのです。 それでも、私は手術という道を選びました。それは、少しでも長く意識を保っためであ

10. 医者が末期がん患者になってわかったこと

5 歳、男児、 CT ( 造影 ) 267 写真 4 ( 9 ) packer, R. J. , et ai. : J. Neurosurg. , 81 : 690 , 円 94. ( 8 ) 松谷雅生 : 脳腫瘍 ( 第 2 版 ) , 篠原出版 . 東京 . 1996 , P281. ( 7 ) 倉津純一 : Clinical Neuroscience, に : 646 , 円 94. ( 6 ) O' Reilly, S. M. , et al. : Eur. J. cancer. 29A : 940 , 1993. ( 5 ) culver, K. W. ,et al. : Science. 256 : 1550 , 1992. ( 4 ) walker, M. D. , et al: J. Neurosurg. , 49 : 333 , 1978. ( 3 ) Franzini. A. , et al, : Neurosurgery, 35 : 817 , 円 94. system. Springer-VerIag. BerIib. 1993 , p. 5. ( 2 ) Kleihues, P.. et al, : HistologicaI typing of tumours of the central nervous ( 1 ) 佐野圭司 : Clinical Neuroscience, 12 : 570. 1994. 〔文献〕 主体とする化学療法が著効した症例。 を施行後、腫瘍摘出。放射線および ca 「 bop in を 髄芽腫。著明な水頭症を認め、脳室腹腔短絡術