240 おかあさんは、いそがしく手をたたいて、 「さ、おまえたち、上へ、早く二階へ。 「なぜさ。」と、スーザがききました。 「足をちちめるんだよ。」 「なぜさ。」と、ミ 「おまえたちのおむこさんをにがすといけないからだよ。おまえたち、目がないのかね。」 「あるよ。」ミンタが、ふくれていいました。「だけど、あたし、わからないよ。」 「おや、おまえにはわからないのかい。だけど、わたしにはわかるよ。わたしには、おまえ の足が大きくって、スーザの足も大きいってことがわかってるんだよ。そして、さっきのくっ は、見たこともないくらい小さかったってことがね。だから、おまえたちが、どうやったって、 そのどたどたの大足をあのくつの中につつこめないってことが、わたしにはわかるんだよ。」 おやゅび 「だけど、おかあちゃん、あたしの足の親指、とてもふといってこと、知ってるくせに。」 あわれな道具たち ンタカしし どうぐ 、ました。 いいました。
222 声をあげて、いすの上にたおれかかると、「ああ、ああ、もうくたくただ。」 しいました。 スーザも、べつのいすに、ドシンとこしをおろして、 「そんなら、あたしはどうだっていうの ? あたしの足は、見たこともないほどふくれちま 、、ンタも、ふたりのまねをしました。 「あたしは、じぶんの足だかなんだか、わからなくなっちゃった。すっかりむくれちゃった んだよ。」 ていせい 「むくむ。」と、おかあさんが訂正しました。 「でも、おかあちゃん、あたしのは、むくれちゃったんだよう。」ミンタが、鼻をならしな がらいいかえしました。 「おまえのロごたえがすんだらね、きっとこのご婦人が、わたしたちの長ぐっをとってくだ をしいました。 さるだろうよ。」おかあさんよ、 「あたしのが先 ! あたしのが先 ! 」むすめたちは、そろってきいきい声をあげました。 「おまえたちは、あと ! 」おかあさんは、むすめたちをにらみつけて、じぶんの足をぬっと 出しました。 エラは、おかあさんのまえにひざをついて、重い雪ぐっをぬがせにかかりながら、おずおず おも ふじん はな
275 こうじよ とし ) つ、 そんなざんこくなことにはならないでしよう。皇女さまは、このうえないおちつきと しかいしゃ 威厳をもって、いすにつかれましたので、司会者は、心うきたち、思わずうたいだしました。 ショクベニ皇女のこの魅力 このスタイルをなににたとえん。 このおん生まれこの血すじ でんれいかん けれども、伝令官はただ、くつは、くつは、この人の足にあうだろうかと考えただけでした。 魅力もスタイルも、生まれも血すじも、足が大ぎすぎたら、なんになるでしよう。だめだ。い れいじよう え、あう。だめだ。だめだ、だめだ、だめだった、と、令嬢がたは、うかれました。 「ショクベニさまのために、鐘は、チンともカンとも鳴らないんだわ。あたしもだめだし、 あなたもだめ。あのくつにあう足は、一つもなし。」 王子さまは立ちあがりました。さあ、これで、ともかく、すんでしまったのです。 ハタ、、ハタという音がしたと思うと、かけこんできお けれど、おや、ドアのほうで、ザワザワ、 、、ンタとスーザでした。ふたりは、家からここまでずっとかけとおし、首をそろえて たのは、 とびこんできたのでした。 みりよ′、 げん こうじよ みりよ ~ 、 かね
お勝手の外、ふる雪の中では、 「コケコッコ ! 」と、おんどり がないていました。 / お勝手の中、せまいべッドの上で もうふ は、エラが、うすい毛布を耳のとこ ろまでひきあげて、とりのなき声を もうふ きくまいとしていました。毛布は、 うすいことも、うすかったのですが、 みじかいことも、みじかかったので、 もうふ エラが、毛布で頭をかくしてしまうの と、かわいい足は、まる出しになりお ました。エラの足は、きれいだった かって かって お勝手の中 かって
271 称賛のことばをうたいあげようと、まちかまえていました。 れいじよう とうとう、のこる令嬢は六人になりました、そのさいしょの人を、ひざまずく王子のまえに でんれいかん だんしやくれいじよう みちびいたとき、伝令官は、「ならぶものなきヤクミ男爵令嬢さま ! 」とアナウンスしました。 しかいしゃ 司会者は、もうがまんできなくなって、うたいはじめました。 でんれいかん ・カ 「しかし、くつは、くつは、おみ足にあうだろうか。」伝令官はつぶやきました。 れいじよう だんしやくれいじよう 令嬢がたは、首をのばしてのそきこみました。男爵令嬢の足は、じっさ、 し、小さい足でした。だ る け その足にくつをはかせようとしたとき、王子の手はふるえました。 ああ、だめだ。あ、はけそうだ。いや、だめだ。だめだ、だめだ、だめだった。いままでにつ れいじよう しつばいした令嬢がたは、なかまどうしで、がやがやいいあいました。 っ けっこんしきかね 「あの背のたかいおじようさまにも、結婚式の鐘は鳴らないし、ウェディング・ケーキも出 2 ないし、お祝いのお米をまくこともないんだわ。」 しようさん ヤクミヤクミ カラ、、、ヤクミ 背たかくきりりとしまったおすがた きずひとつなく玉のよう。
286 ィノク 0 なりました。けれども、やがて、そのさえず りもやみ、つばさはとびさりました。すると、 金色のいすの上には、・ほろ服をまといカみ は・ほう・ほうのエラが、小さなはだしの足を、 金色の足のせ台にのせて、すわっていました。 そして、そのまえには、王子がひざまずいて いました。王子は、エラを見あげ、エラは、 おどろきとよろこびの色をうかべて、王子を 見おろしていました。 「ここにいるのは、ほんとにあたしかし ら ? ーエラはたずねました。 「そこにいるのは、ほんとにあなたです。」 「そこにいるのは、ほんとにあなたかし ら ? エラは、 かがみこんでたずねました。 「あたし、夢を見てるのではないかしら ? 「あなたの目は、はっきり、大きくあいて ふく
はつめい じゃぐち 「ああ、なんてことでしよう。」と、エラは、またため息をつきました。「蛇ロなんてものが、 発明されなければよかったのに。」 じゃぐち 蛇ロは、返事をしませんでした。 エラは、足を両方とも、ゆかの上におろすと、立ちあがって、こしのまわりにペチコートを まきつけました。 「ちゃんとしたくつがあればいいんだけど : エラはいいました。 けれども、エラには、小さいつめたい足をつつむくっしたもなく、おまけにくつは、やぶれ ふく み たサンダルでした。そこで、もめんの服を頭からかぶってしまうと、エラの身じたくは、おわ りです。エラが、手のひらでかみの毛をなでつけていると、部屋のすみで、ほうきがおどりだ しました。 ほ一つキ」にはこ」 ほうきにはたき よごれた部屋には はく手がほしい。 へんじ りようほう
224 ふく 「あなたの服、みなさんがほめました ? 」 えんかい 「ほめられたかって ? 」にたにたわらいをうかべながら、スーザがいいました。「宴会は、 こおり この服のことでもちきりだったよ。でも、ぶるるる。あたしのあんよは、まるで氷のかたまり だ。さあ、どんどんこすって ! 」 エラは、スーザのとても大きな足を、いっしようけんめいにこすりました。 「ごちそうは、りつばでした ? 」 こうして、ききだせることは、どんなことでも、すこしはなぐさめになるでしよう。 「りつばなんてものじゃなかったさ。」いじのきたないスーザがいいました。「おまえなんか、 いかれないで、たいへんなもの食べはぐったよ。クジャクの肉が、あとからあとから出てくる んだから。山ほどのトライフル・ケーキも、あとからあとから出てくるんだから。それから、 イノシシーー見たこともないほどイノシシの肉がたくさん。」 「そして、王子さまときたら ! 」といって、ミンタが、にたにた、わらいました。 ↓のっというまに、エラは、 ミンタの足もとにうつっていました。 「王子さまは、どうでしたの。どうでした ? ・」 エラは、三足めのくつをひつばりながら、たのむようにききました。 「ああ、おもしろいなんてもんじゃなかったよ ! 」と、ミンタは、思いだしわらいをしまし ふく にく
223 とたずねました。 ぶとう・カし 「じゃ、やつばり、舞踏会はあったんですわね ? 」 、ました。「なんだって、舞踏会が 「あいたっ ! 」最初のくつがぬげると、おかあさんはいし あったかって ? ゅうべ一晩、わたしたちが、どこへいってたと思うのさ。もちろん、舞踏会 はあったさ。」 ねっしん 「そうでしたわね。」エラは、熱心にあいづちをうって、二つめのくつをひつばりました。 「たのしい会でしたか。 「あいたっ ! 」と、またおかあさんはいって、あくびまじりにつぶやきました。「まるで夢 ぶとう・かい みたいな舞踏会さ。」 エラは、 がっかりした顔になって、ききました。 ゅめ っ 「夢 ? 」 いや、そんなに強くでなく、もっとそっと。そんで 「わたしの足をおさすり、もっと強くー A 」 なにそっとでなく : こういいかけて、おかあさんは、まるでおきているのにあきた子ネコほ のように、いきなり、ねむりこんでしまいました。 っ や 「さ、シンデレラ。」と、あくびをしながらスーザがいって、足をつき出しました。 エラは、いそいでスーザのそばにいって、くつをぬがせにかかりました。 さいしょ ひとばん ぶとうかい ぶとうかい
274 「片足はいて、片足ぬいで、ニッケイさまも、やつばりだめ。」 たいこうじよ たいこうじよ ニクズク大公女さまのご運は、ほかの人よりうまくいくでしようか。大公女が、王子さまの うつく しかいしゃ まえのいすにかけて、絹のくっしたにつつまれた美しい足をさしだすと、司会者は、とろんと した目で、この人をながめ、 こ。うじようつー、 けだかき公女の美しさ めがみ 女神たちにもたちまさり おみ足はしかと地をばふまるる。 でんれいかん 「だが、くつは、くつは、おみ足にあうだろうか。」と、伝令官は異議をもうしたてました。 れいじよう しいえ、あわないわ、と、令嬢たちは、手をたたきました。ああ、あう めだ、だめたった。 「なんのごほうびも、なんの名誉も、どんな王子も、なんのなんにもニクズクさまには出な いんだわ。」 王子さまは、内心いらいらしながら、それでも、ほっとため息をつきました。あとひとりで さいごです。ショクベニ皇女さまです。まさかこの人が、いちばん小さな足をもっているなど かたあし ないしん かたあし きぬ こうじよ うん めいよ 0 、 しや、だめだ。だ