4 射撃姿勢の基礎知識 受動的運動器官 骨とその結合とは , 骨格と呼ばれる人体 の堅固な基幹を構成する。骨格は , 身体の 基本的構造をつくり , 貴要臓器を保護する ほか , 筋の収縮によって相互の位置を変換 する運動器である。 大部分の骨は相互に可動的に結合されて いて , このため , 骨と骨との間の関係位置 の転移が許されるようになっている。つま り , 骨格に付着している筋が収縮すること によって , 骨格の特定部位があるいは固定 され , あるいは運動に導かれることにな こうして , 人体の空間における各種の る。 ポーズや態勢の保持といろいろの身体運動 は , 骨格・筋系の働きによって行なわれる のである。 人体には 200 を越える骨があり , それら の骨はいろいろな形でたがいに結合しあっ ている ( 図 54 ) 。骨格の基幹をなすものは , 個々の椎骨から成る脊椎である。脊椎には 胸部 , 腰部 , 仙骨部の各弯曲があって , れが脊椎に一定の柔軟性と弾力性をあたえ ている。 上背部には 2 個の扁平な骨 ( 肩甲骨 ) が あり , 筋肉のみによって椎骨と肋骨とに結 びつけられている。各肩甲骨は鎖骨に連結 し , 鎖骨はその一方の端末でもって胸骨に 連結している。肩甲骨と鎖骨は胴体上部に 帯がけして , いわゆる上肢帯を形づくって いる ( 図 55 ) 。 下肢帯を形成するものは , 仙骨と尾骨お よび仙骨に固定結合された 2 個の寛骨とか ら成る骨盤である。 肩甲骨と寛骨にはいずれも円形の凹部が あって , そこに上腕骨頭と大腿骨頭がそれ それ嵌入されるようになっている。 骨の結合には固定結合 , 小可動性結合 , 60 可動性結合の別があり , 大部分の骨は可動 式に , つまり関節で結合されている。 小可動性結合は , 骨と骨との間にある弾 力性の軟骨性挿入物によって , 骨と骨の関 係位置の小さな転位を可能にしている。 の軟骨性挿入物のよい例は椎間円板であ る。椎骨のいずれかの側の筋が収縮する と , 椎骨と椎骨との間にある軟骨層がその 側で圧縮を受け , 椎骨と椎骨との間隔がほ んのわずかながら接近するようになってい る ( 図 56 ) 。そして , この椎間円板によって 各椎骨間の関係傾斜角度が変わることは , 全体としての脊椎に大きな可動範囲をあた え , 前方 , 後方および側方に脊椎を大きく 屈曲することを可能にしている。なお , 脊 椎は上記の柔軟性と同時に , 大きな堅牢性 をもあわせもっていて , 脊椎が圧縮された この堅牢性はとく 状態におかれたときに , に顕著となる。 育椎がもつ柔軟性と堅牢性 , そして上肢 帯が主として筋肉の働きに依存して胸骨と 椎骨とに結着されているという構造上の特 性を考えるとき , おのずからそこに合理的 な射撃姿勢に対する指針が導き出されてく るはずである。たとえば , ライフルの立射 姿勢で , 8kg 近い重さのライフル銃を上 肢帯の筋の緊張だけに頼って保持すること は , 明らかに不合理である。この場合の合 理的なポーズは , 銃と上体との重心をでき るだけ脊椎の上に移し , 脊椎が圧縮された 状態のもとでちょうど 1 本の柱として働く ようなものでなければならない。こうすれ ば , 銃を保持するのに必要な筋の緊張度は きわめて小さくてすむことになるしそれ が非常に有利な立射姿勢であることは , 後 述するところにより , 明白な事実だからで ある ( 図 57 ) 。 骨の最も可動的な結合は関節である ( 図
・ヒ・ストル速射射撃 センターファイア ア・ヤシンスキー ゲ・ウオリンスキー ペ・クリへリエヌ・ポンダレフ エム・ウマロフ イエ・ハイドウロフ く図 183 > 両足の関係配置を示す痕跡図。点線で輪郭をとり中を空白にしたものは 精密射の射撃姿勢 , 実線で輪郭をとり中に斜線をえがいたものは同一人の速射の 射撃姿勢を示す。 ・肩関節での右腕の固定が主として筋の 射手の射撃姿勢がその進歩完成の過程を異 にしているとはいえ , そのめざすところは 働き ( より緊張した ) によって行なわ すべて同じであって , ひとしく最高の成績 れる。 の獲得 , 世界記録の樹立を念願としている そして , このセンターファイア・ヒ。スト のである。射手としての最高位への到達 ル速射射撃姿勢の特色はまた , 各射手が自 は , たゆまぬ研究と努力によってはじめて 分に最も適したその種目の射撃姿勢を探求 可能となる。そして最高位に達した名射手 し , 練磨し , 完成していくための指針でも の射撃姿勢を見るとき , それが全体的には なければならないのである。 合理性の上に立脚し , 細部では本人の個性 ( 体格的特徴 , 身体の発達度 , 神経系の特 指導的射手が採用しているそれそれの射 性 , 性格 , 好み等 ) によく適応するように 撃姿勢の間には , 多くの本質的な共通点が 構成されていることを知るであろう。 存在するが , 同時にまた細部の点について はかなり大きな相違点がある。そして , 各 201
•O(D<DQ(D 00000 サイトの選定 50m 標的 300m 標的 2.0 0.75 距離小 強し , 接目良 照射極めて 2 .25 照射好適 2.75 眼距離小 照射強し , 接 照射好適 2.75 50m 標的 照射強し 照射極めて強し。 もしくは視度不良 300m 標的 照射強し 照射極めて強し。 もしくは視度不良 最も広く 用いられ るもの 1.25 3.25 曇天 , 接眼距離 小 , 照射強し , 接眼距離大 視度不良に して接眼距 離大 1.75 < 図 212 > 照度と使用すべきリング照星およびヒ。ーフ。照門との関係 ( ソ連製フリー ライフル用として準備されているインサートとディスク ) し , 1936 年に世界ではじめて 400 点満点の 400 点を撃ちあげたソ連のエヌ・アレクセ ーエフも , リング照星を用いてこの偉業を なしとげたのである。 ある特定の照星と照門の組合せだけで , 万人に適合し , あらゆる射撃条件のもとで 正確な照準が行なえるような万能ヒ。ーフ。・ サイトは存在しない。現代のターゲット・ ライフルには各種の孔径をもつフロント・ サイトとリヤ・サイトの各セットが付属品 として装備されているので , 射手は , この なかから射撃条件に最も適応したものを選 223
1 爆発性物質 らニトログリセリンを駆逐する作用がある なものである。無煙火薬は , その物理的性 ので ) ことになる。無煙火薬の比重は , そ 質として , 大きな堅牢性と弾力性をもって の種類によって異なるが , だいたい 1.55 ~ いるので , 運搬にさいし , あるいは振動を 1.63 の範囲内にある。 受けたために , 変形したり , 微粉化したり 無煙火薬を燃焼させるのに必要な温度 する心配はまずないものと考えてよい。 ( 着火温度 ) は摂氏 180 ~ 200 度の間にあ 無煙火薬の良否は , その火薬の粒の 1 つ る。装薬温度が高くなっていればいるほ 1 つがいかに正しい形状をもち , 全体とし ど , その装薬の燃焼速度はより大きなもの ての粒がいかに同一の大きさ , 形状のもの となる。着火温度にまで火薬の温度を高め として , そろっているかによって , これを 判定することができる。火薬の 1 粒 1 粒が るのに必要な熱量の消費が , それだけ少な 正しい形状を保ち , すべての火薬粒が正し くてすむことになるからである。 く同じ大きさ , 形状のものばかりでそろえ 無煙火薬は大きな作業力をそなえてい られていることは , 発射のさいに行なわれ る。無煙火薬 lkg はその爆発によって約 る火薬ガスの造成現象に同一性と法則性と 900 リットルの火薬ガスを発生させるが , を付与し , ひいては射弾に正確性をあたえ これはアーミイ・ライフルの装薬量と銃腟 るための重要な要素となるものである。 容積との関係からすれば , 銃腟内の圧力を 3200 気圧にまで高めることになるほど強烈 ソ連製ビッグボア・フリー・ライフル ( 7. 62mm) ( 上 ) ゼニット 3 ( 下 ) ゼ ニット 4 18
7 照 銃の垂直切断面 左右傾斜角 回転軸 銃ロ水平面 準線 射角 く図 222 > 銃の左右傾斜 とき , 発射線は銃の垂直断面と直角にまじ わる標的面上に AB の弧をえがく。弧 AB のもっ半径は線分 AA' である。 AA' の値 は , 弾丸が標的に到達するまでに重力の作 用によって下降する距離に相当する。重力 の作用による弾丸の降下量は , 射距離が同 照準のときに , 射手が銃を横に傾ける場 ーであるかぎり , つねに同じである。した 合がある ( 図 222 の a)o 不規則な銃の左右 がって , 銃が横に傾いたときの弾着点は , 傾斜は , 射弾の集中度を低下させ , 平均弾 つねに発射線と標的面との交点から垂直に 着点を偏移させる。 AA' だけ下降した点となる。図 222 につい ていえば , 発射線と標的面との交点 A , 銃が右 ( または左 ) に傾斜すると , 銃の B, c に対応して A ′ , B ′ , C ′がそれぞれ 垂直断面が射手の目と標的中心点とを結ぶ 線を軸にして右 ( または左 ) に回転して , の弾着点となる。 右 ( または左 ) に傾く ( 図 222 の b ) 。この こうして , 標的面上には半径の等しい 2 く表 9 > 7.62mm アーミイ・ライフル射撃 ( 軽量弾使用 ) における 5 。の左右傾斜 に対する騨着点の偏移量 ( ア・ゲルプコ氏のデータによる ) 傾斜関係円の半径水平偏移 垂直偏移 射距離 (m) 0 . 0 2 0 . 0 9 0 . 2 0 1 1 . 0 0 . 4 0 1 8 . 7 0 . 7 0 2 9 . 7 1 . 1 0 4 5 . 0 1 . 7 0 6 6 . 0 2 . 5 0 銃の左右傾斜 6 2 8 1 2 6 2 1 5 3 4 2 5 1 8 7 6 0 1 0 0 2 0 0 3 0 0 4 0 0 5 0 0 6 0 0 7 0 0 8 0 0 232
6 ピストル射撃の射撃姿勢 0 物、第レみ、 : ー、ヘ 1 ト疇をいニ、一一、ン 41 く図 154 > 指導的射手が採用しているフリー・ビストルの把持去。 (a) エム・ウマロフ , ( b ) ア・グシチン , ( c ) ア・ザポリスキー ( d) ア・アンプロセノク , ( e ) べ・クリへリ 図 154 ~ 155 は , 指導的射手のビストル精 その主な原因であると思われる。 密射撃姿勢における銃把の握り方の要領を 銃身と前腕が同一垂直面上にあること , 示したものである。この図でも明らかなよ つまり , 前腕の延長線と銃腔軸が一致する うに , 彼らは極限まで下方に手首を傾斜さ ような関係位置に右手首をおくことも , 正 しい銃把の握り方の不可欠な条件の 1 つで せてはいないが , さらに下方に傾けること ができる余裕の度合は , 射手によってそれ ある。右手首と拳銃がこのような位置にあ るときは , 発射にともなう銃の反動に対す ぞれ異なったものになっている。この余裕 る右腕の反応はきわめて良好で , かっ均一 の最も少ない握り方をしているのはア・ア なものとなるであろう。 ンフ乍セノクである。彼の成績に波がある ピストル精密射撃姿勢では , 身体の可動 のも , 実は , 銃把の握り方にこのような欠 部位を諸関節で固定するために , 多くの筋 点があり ( 新しい拳銃を初めて使用すると 群の緊張と靱帯の使用が要求される。両脚 きにこれがあらわれる ) , また , 彼が採用 の筋群 , 殿部の筋群 , 上肢帯右部の筋群 , する銃把の構造が手に窮屈であることが , 170
、 : 引社アまにを 爆発性物質 13 の中をいかに運動するかを研究対象とする学問である。 別 ( 液体 , 土砂 , コンクリート , 木材 , 鋼板等 ) に応じ , そ " 侵徹弾道学 " は , 弾丸が目標に命中したあと , 目標の種 である。 抛出しなければならないかという問題の解決を主とする学間 弾丸を , いかなる射角 , いかなる初速度をもって , 銃腔から し , 目標に命中させるためには , 特定形状 , 特定重量をもつ り , 銃腟からとび出したあとの弾丸の運動をその研究対象と 。腟外弾道学 " は , 火薬ガスとの関係を絶ったあと , つま という問題の解決を主とする学間である。 をとどめながら , いかにして弾丸に最大の速度をあたえるか 銃腟内における許容圧力を越えない範囲内に火薬ガスの圧力 運動とそれにともなうあらゆる現象とをその研究対象とし , “腔内弾道学 " は , 火薬ガスの作用にもとづく弾丸の腟内 学”および“侵徹弾道学”に分けられる。 丸に作用する力の性質によって , 。腟内弾道学”“腟外弾道 弾丸の運動を研究する学問を“弾道学 " といい , それは弾 続する。 ら空中にとび出した弾丸は , 慣性によって今までの運動を持 その速度を増しながら腔内運動をつづける。ついで , 銃腟か が一定の大きさに達すると , 弾丸は運動を開始し , しだいに 装薬は燃焼によって高圧高温のガスに変わる。ガスの圧力 の銃腟内から外方に向けて抛出することを“発射”という。 装薬が燃焼するときに生じるガス圧により , 弾丸を銃火器
8 呼 吸 通常呼吸 深呼吸 発射の為の呼吸停止 0 ー 2 3 4 5 6 7 6 9 ″だ石〃 20 2 2 幻 24 25 26 27 28 2930 時間 ( 秒 ) < 図 224 > 発射に関連した呼吸実施要領 人の肺臓には 1 回の吸気によって約 500 cm3 の空気が流入する。これを“呼吸量” と呼んでいる。 力を入れて吸気すれば , さらに約 1500 cm3 の空気 ( 補気量 ) を流入させることが できる。次に , 力いつばい呼気しても , な お肺臓内には 1000 ~ 1500Cm3 の空気が残存 する。。残気量”と呼ばれるものがこれで ある。 発射時の呼吸停止 自然な呼吸休止間隔と肺臓の換気過程と は , 射撃遂行に重要な関係をもつ。 人は , 特別に苦労しなくても , 自然な呼 吸の休止間隔を何秒間か延長させて , 楽に 12 ~ 15 秒間の呼吸停止を行なうことができ る。この 12 ~ 15 秒という時間は発射に必要 な時間としては十分すぎるほどのものであ る。いつばんに , 熟練した射手は , 発射に 先立って 2 ~ 3 回の深呼吸を行ない , 最後 の吸気につづいてゆっくりとした呼気を行 ないながら , しだいに呼吸を停止させ , 全 神経を照準と撃発の上に集中させるように している ( 図 224 ) 。このような発射に関連 した呼吸停止にかんする原則は , 圧倒的多 数の射手 ( とくにピストル射撃の場合はほ とんどすべての射手 ) の採用するところと なっているものである。 しかし最近になって , ライフル 3 姿勢射 撃の立射と膝射の場合に , 吸気段階で呼吸 胸部動揺の 記録線 深呼吸 61 秒 呼吸停止 深呼吸 呼吸停止 27 秒 0 5 IO 石 20 25 3 クお 55 川乃 0 5 ?0 25 お 時間 ( く図 225 > 同一射手による最大呼吸停止時間。 ( a ) 吸気段階で呼吸を停止した場合。 ( b ) 呼気段階で呼吸を停止した場合 236
撃発時における銃の動揺 筋の疲労にとも なう振幅の増大 照準圏照準 時に於ける 銃の動揺 据銃姿勢の定着化と照準の精 密化にともなう動揺の沈静 銃の動揺の振幅 / 2 3 み 5 6 7 6 9 ル〃 / 2 13 だ〃 / 9 幻 2 / 2 時間 撃発遂行に適 戔長すぎる照準 ( 秒 ) した時機 く図 229 > 照準撃発時における銃の動揺状態 が , それそれ , その性格および程度を異に まったく予測がつかず , 発射に適した動揺 するのは当然である。 の少ない時機は瞬間的に経過し去るとい 伏射の場合には , 原則として銃の動揺が う , まことに不都合な動揺が発生する。以 きわめて微弱で , しばしば , 肉眼では認め 上の各姿勢における銃の動揺を移動テーフ。 にくいほどのものとなる。これは伏射姿勢 上に記録してみれば , 図 230 のようになる。 のもつ高い安定性によるものである。膝射 すでに明らかなように , 撃発の完成に好 適な銃の動揺の少ない時機の時間間隔は , における銃の動揺も , これまたそう大きい ものではなく , 性格的には , 脈拍の影響に 短いものである。とくに , ライフル立射 , よるリズミカルな小振幅をともないつつ , ヒ。ストル射撃の場合はそれがはなはだし 高い頻度で振動しつづけるようなものとな い。一方 , スムーズな撃発動作の完成のた る。姿勢が安定性に乏しい立射の場合に めには少なくとも 1 ・ 5 ~ 2.5 秒の時間を必要 は , 銃の動揺がはなはだしく , しかも無秩 とする。この 2 つの事情の存在は , 必然的 序な性格を帯びたものとなる。 に射手に対して , 撃発完成の時機を銃の動 すなわち , 振幅の増大する時機も方向も 揺の最も少ない時機に合致させるように , 銃の動揺の振幅 立射 6 7 8 9 ル″ 時間 ( 秒 ) く図 230 > 射撃姿勢と銃の動揺との関係 5 7 2 0 4 241
5 ライフル射撃の射撃姿勢 く図 106 > 男女優秀射手の伏射姿勢に見る身体の角度と脚の関係位置。 ( a) べ・モイセ ーエフ , ( b) ア・ヤコーーユク , ( c ) シャ・クウェリアシウィリ , ( d) イ・ビャリク , ( e ) テ ・ロモワ , ( f ) 工ル・ゼレンコ , ( g ) イエ ・ドンスカヤ , ( h ) ゼ・ゼレンコワ , ( i ) イエ ・ - ノ、ノレチェンコ ち主であったという事実の存在することを ェ・メリウャリの伏射姿勢 ( 図 105 の j ) は代表的なエストニア型である。既述のよ 見落としてはならない。この前提条件を忘 れ , 彼らがおさめた射撃成績のみをもっ うに , ェストニア型伏射姿勢は多くの長所 て , この姿勢を批判することは大きな誤り をもつ反面 , いくつかの欠点をともなう。 である。著者としては , 初心者がこの型の とくに膝をまげた右脚を大きく右方に開く ために , 左側腹上に臥せざるをえなくな 伏射姿勢を採用するには , きわめて慎重な り , その結果 , 銃の大きな重量を負担して 態度と周密な配慮とが必要であるといわざ いる左腕にさらに大きな負荷をかけること るをえない。 は , その欠点の最大のものである。もっと 同じェストニア型に属するが , イ・ノウ も , メリウャリをはじめ , この型の姿勢を オジーロフ ( 図 1 05 の h ) , ゲ・クルイロフ 採用した若干の優秀射手は , 3 姿勢射撃の ( 図 105 の i ) , ア・ペフテレフ ( 図 107 の ような長時間にわたる射撃種目の終始にわ e ) の各伏射姿勢は , ェ・メリウャリのそ たって , 銃の安定性を保持しつづけること れにくらべると , はるかに良好なものにな に成功している。しかし , この成功の陰に っている。つまり , 射面に対する身体の角 は , 多年にわたるトレーニングと , 彼らが 度はより小さく , 左腕にかかる負荷はいく いずれも非常によく筋肉の発達した腕の持 ぶん小さい 114