7 照準 灰色の斑点 , ときには白い弦部をもった天 色の三日月状斑点となり , がんだ形として射手の目に映るようになる ( 図 217 ) 。 フィルター リング照星はゆ 228 のある各種のくもりガラスを準備し , 太陽 易にすることができる。とくに , 濃淡の差 させ , 照準時における目の働きを大いに容 り , 眼球透光組織における光の分散を減少 よる損失をおぎなって余りあるものがあ りガラスによって得られる利益は , それに ように作用するからである。しかしくも 等に吸収し , その光度をいっせいに弱める を低下させる。スペクトル各部の光線を平 して目を保護するが , 同時にいくらか視力 ( 中間色 ) のフィルターは , 強い光線に対 俗にくもりガラスと呼ばれている暗色 きく増大させるのである。 映像の輪郭の鮮明化を助長して , 視力を大 色のそれである。これらのフィルターは , 吸収できるフィルターは黄色 , 黄緑色 , 黄橙 する。スペクトル紫色部の光線を最もよく し , 網膜上に生じる映像をさらに不鮮明に スペクトルの他部の光線よりも大きく屈折 部の光線は , 眼球水品体を通過するとき , ルの紫色部のせいである。スペクトル紫色 響を及ばすのは , 主として , そのスペクト ぎらぎらした強い光源が , 人の目に悪影 きは , 次の点に注意しなければならない。 フィルターとくもりガラスを使用すると 必要である。 ものからなるセットを準備しておくことが らを利用するためには , 各種の色と濃度の して , そのときの照射条件に合わせてこれ もりガラスを使用しなければならない。そ いるときには , かならず , フィルターかく したがって , 太陽が強く標的を直射して の照度に応じて適当なものを選択するよう にすれば , きわめて照射の強い日でも , 曇 天のときとほぼ同様に標的を視認でき , リ ング照星やポスト照星を使用して正確な射 撃を行なうこともできるであろう。 1958 年の第 37 回世界射撃選手権大会に出 場した外国選手が使用していたフィルター は , 明黄色 , 黄緑色 , 暗褐色 , 褐緑色 , 暗 淡青色等のどれかに属するものであって , その大多数が低い濃度と中等度の濃度のも のであった。もちろん , このように比較的 低い濃度の色のものが用いられたのは , 大 会期間中を通じてほとんど毎日のように曇 天がつづき , 濃度の高いものを使用する必 要がなかったからである。 このように , 諸外国の射手の間では , プ イルターの利用が盛んに行なわれている が , その色と濃度の選定は , ただ特定の色 または濃度に対する信仰にもとづいて行な われているといっても過言ではなく , 明白 な理論的な根拠にもとづいて行なわれてい るものではないようである。もとより , 照 準条件に応ずるフィルターの色と濃度の決 定が明白な理論的根拠にのっとってなされ るに越したことはないしまた , そうあっ てしかるべきものである。しかし残念な この種のデータは , 諸外国はもと ことに , より , ソ連においてもまだ十分に整備され るにいたっていない。かといって , 射手各 人の無定見な好みにまかせておくわけには いかない問題であるから , 著者なりに の問題解決のための探求を試みてみたい。 ただし , それは , 諸外国の優秀射手とソ連 の一流射手の経験を土台とし , フィルター のもつ光学的特性を考慮に入れてつくり上 げた 1 つの提案にすぎないものであること をおことわりしておく。 まず , 最も多く利用されるフィルターを
正しい照準線の形成 引金を引く人 さし指の圧力 ll 川Ⅲ 引金から人さ・しを はなす時機と地域 右腕の移動速度 < 図 269 > 4 秒射シリーズで , 1 標的か ら次の標的へ照準を移動させるときの 発射要領 以上の要領を図解したものが図 269 であ る。この図によっても , 発射時間の短縮を はかるという点から , 上述した方法がいか に有利なものであるかを容易に理解される であろう。 射撃のテンボとリズム 射手の時間感覚とリズム感覚の発達度 が , 速射射撃種目における成否を直接左右 することは多言を要しない。時間感覚とリ ズム感覚はトレーニングによって養成し , 発達させることができる。老練な射手が , 0.1 ~ 0 ・ 2 秒以内の誤差で正確に時間をコン トロールして , 4 秒射シリーズを遂行でき る能力をもっていることは , すでに実証さ れている。このような正確な時間感覚とす ぐれた射撃技量とにより , 5 発の連射のた めに適正で合理的な時間配分が可能となる ことはいうまでもない。しかし人間の判 断に誤差はつきものであって , とくに竸技 会などの緊迫したムードにさらされた場合 はそれが顕著にあらわれるから , どんなに 時間感覚のすぐれた射手でも , つねに若干 の時間的余裕を残すように , いくらか速め の射撃テンポを採用することが合理的であ る。しかも , こうすることによって , 時間 ・・珊ⅧⅢⅧⅢ刪ⅢⅢⅧ冊 ラビッドファイア・ビストル射撃 切れによる失点を気にかけることなく , 平 静に自信をもって射撃を進めていくことが できるのである。 では , 具体的に , 指導的射手たちは初弾 発射のためにどのように時間を使い , どの ようなテンボでシリーズを遂行しているの であろうか。これを示したものが表 20 であ る。 速いテンボの射撃と遅いテンボの射撃に はそれぞれ一長一短があり , その利害得失 を検討してみると , 次に述べる程度の射撃 テンポを採用するのが最も有利のように思 われる。 間は 1.3 秒 , 全シリーズ発射の使用時 4 秒射シリーズーー初弾発射の使用時 間は 1.8 秒 , 全シリーズ発射の使用時 6 秒射シリーズーー - 初弾発射の使用時 間は 2.2 秒 , 全シリーズ発射の使用時 ・ 8 秒射シリーズーー初弾発射の使用時 間は 3.8 秒 間は 5 ・ 6 秒 間は 7.5 秒 317 もなる。 大きな変動の生ずる余地はなくなることに が固定し , 自動化されれば , 射撃テンボに になるのである。そして , その協調的動作 発の協調的な動作が自動的に行なえるよう い。また , そうしてこそ , 据銃 , 照準 , 撃 の変動を最小限におさえなければならな 不可能であるにしても , できるだけテンポ しかし , 同じ射撃テンポを維持することは ポを多少変更するのは当然のことである。 間内に連射を完了させるように , 射撃テン 残り時間を合理的に利用するとともに , 時 考慮し自分の時間感覚に照らしてみて , 可能である。初弾発射についやした時間を く同じものにすることは実際問題として不 もちろん射撃テンポを発射ごとにまった
に転を劇 立射 ( スタンテ・イング ) く図 134 > スタンダード・ライフルを使用した場合の立射姿勢における左手による 銃の支え方の成功例。 ( a ) エム・イッキス , ( b ) エヌ・メイティン . ( c ) イ・ノ ウオジーロフ , ( d ) ェス・ポグダ / フ い。しかし , 胴の長い射手や腕の短い射手 がスタンード・ライフルを使用して立射 膝関節の固定度が不十分であれば , 脚の を行なう場合は , 左上腕を胸部におしつ 他の筋に余分の緊張を要求し , 身体全体の け , 摩擦力を利用して胸上に左腕を保持す 動揺を増大させることになる。しかし , そ るような姿勢を採用するほうが有利であろ うかといって , 膝関節で反対側にそりかえ るようなむりにのばした状態を脚にあたえ う。 く左手 > ることも , また適当ではない。そのように 極端に脚をのばすと , 腓骨筋 , 前脛骨筋 , 左手による銃の支え方は , 伏射や膝射の 大腿直筋が強く緊張し , 関係諸筋の協調性 場合のそれとはまったく異なる。その方法 が乱れて , 長時間射撃における姿勢の安定 にはいろいろあり , その中のどれを選ぶか 性を悪くすることになる。 は , 自分の体格や体型の特徴 , 射撃姿勢 , 手首の構造的特徴に応じて , 各自が決定す < 左腕 > べきである。図 134 は , ビッグボア・スタ 銃に最大の安定性をあたえるためには , 左腕に支柱としての役目をはたさせる必要 ンード・ライフルを使用した場合の立射 がある。そして , 左腕がその役目を完全に 姿勢における , 左手による銃の支え方の成 はたすためには , 銃を保持しても左腕の筋 功例を示したものである。 肉に大きな緊張をもたらすことにならない < バーム・レスト > ような条件がそなわっていなければならな フリー・ライフル射撃では , パーム・レ い。それには , 銃を支える左腕は , その前 ストの使用が許される。このパーム・レス 腕になるべく垂直に近い状態をあたえるよ トは , 高さと回転角が変えられるような構 うに , 肘のところで鋭角にまげられていな 造で , 銃の保持に好適な条件をあたえるよ うなものでなければならない。 ければならない。 左腕の支柱としての働きは , 左肘が必要 このパーム・レストの使用に成功し , し たがって , 左手による銃の保持にも成功し な支持力をそなえた支台をもっときに , は ていると思われる実例を示したものが図 じめて十分に発揮される。したがって , 銃 135 である。この図にあげた左手による銃 を安定させるためには , 胴体のどの部位に 左肘を托すべき支点を求めるかが大きな問 の支え方では , 主として靱帯の緊張 , 一部 筋肉の緊張によって手首関節の固定が行な 題となる。左肘は , 腸骨稜 ( 図 54 参照 ) われ , さらに , 銃の重力が適当に作用する の上に托すか , または腹斜筋に托しながら ことによって , 左腕全体の固定にも最良の 腸骨稜のわずか右にあてるようにするとよ 145
るような性質の乱視をもっ射手は , ポスト 型の照星を避けて , リング型の照星を使う ようにしなければならない。 近視 , 遠視 , 乱視などの欠陥のあること がわかったときは , たとえそれが微細なも のであっても , 射撃にあたって , かならず 矯正のためのめがねを使用するようにしな ければならない。さもないと , 照準のとき に , 余分な遠近調節の努力をしいられて , 目は疲労し視力がますます低下すること になる。もちろん , そのめがねは読書用と してではなく , 射撃用として処方されたも のでなければならない。そして , めがねが できたならば , ただちに射場でそれをテス トしてみる必要がある。 くもりめがねも含めて , およそめがねを 使用する場合は , 視線がレンズの表面に直 角に , しかもレンズの中心を通るようにし なければならない。それには , 図 219 に示 すような特殊のめがねぶちまたは単眠鏡を 使用するとよい。 マスター・アイ 片方の目だけで見ることを“単眼視 " と いい , 両方の目で見ることを“両眼視”と いう。人には 2 つの目があるからといっ て , 両眼視だけしか存在しないというわけ ではない。 一方の目の視力が他方の目の視力よりも 劣るために , 悪いほうの目が注視行為から 除外されて , 事実上 , よいほうの目だけが 使用されている場合もあれば , 両方の目が 同じ視力をそなえているのに , 一方の目に 優越性があたえられている場合もある。い ずれにしても , 主として使用されるほうの 目は“マスター・アイ ( 優越眼 ) ”と呼ば れる。 両方の目が同等に使われているか , ある 目の構造と照準時における目の働き 211 もなう。 に初心者にとってやっかいな緊張をと ・目を閉じることは , 多くの射手 , とく のである。 研究によって明白に証明しつくされている な大きな欠陥のあることが , すでに医学的 もなうことになる。片目照準には次のよう でなく , かえってそれには大きな弊害がと 段階に進めば , その必要はなくなるばかり な手段をとる必要もあろう。しかし , 次の は , あるいは左目を閉じて照準させるよう 初心者に対する手ほどき教育の段階で る。 目だけを使って照準する射手にもあてはま 位を占めるようになる。これは , 当然 , 右 と , しだいにその目がマスター・アイの地 に , 片目を使う仕事を長くつづけている つねづね顕微鏡をのそいている人のよう 人では , 右目がマスター・アイである。 うの目がマスター・アイである。大部分の 輪の中にあるようであれば , 開いているほ ックする。両眼で見たときと同様に目標が えるか , 輪の外に偏移して見えるかをチェ を閉じ , その目標が指の輪の中に残って見 で注視する ( 図 195 ) 。そのまま順番に片目 っくり , その輪を通して小さな目標を両眼 右手か左手を顔の前に出して , 指で輪を るには , 次のような簡単な方法がある。 いは , どちらの目がマスター・アイかを知 く図 195 > マスター・アイの発見法 ク心、
く図 211 > 早朝 , 薄暮 , 降霧時などの視 度の低い場合における標的黒点とリン グ内縁との間の円形白線の映像 これをはっきりと視認できるように , ゆる やかなリング照星を使用する必要がある ( 図 211 ) 。 標的が太陽に直射されている晴天時に は , リング照星の効果は大きく低下する。 強く太陽が照りつけているときに , きつい リング照星を使って照準することはほとん ど不可能であり , ゆるやかなリング照星を 用いても正確な照準ができない場合が多 い。こういうときには , フィルター , くも りガラス , あるいはリング照星に代えてポ スト照星を使用することが必要になる。 ビーフ。照門のピーフ。の直径を選ぶ場合 も , リング照星のときと同様に , 照射条件 と射撃姿勢の特性を考慮に入れなければな らない。 フリー・ライフル用のヒ。ープ照門には , 0 ・ 75 ~ 1.75mm の範囲で各種の直径のヒ。ー プをもつディスクのセットが準備されてい る。この中から , 可視条件の悪いときには 直径の大きいビーフ。を選び , 可視条件のよ サイトの選定 いときには直径の小さいヒ。ーフ。を選んで使 用すべきである ( 図 212 ) 。 射手の目が接眼筒から遠くに位置するよ うな射撃姿勢をとる場合は , その接眼距離 の増大につれて , 直径の大きいピープ照門 を使用する必要がある。 表 5 は , ヒ。ーフ。・サイトを装着したライ フル銃による圏的射撃で , 指導的射手が使 用しているサイトの型式と大きさにかんす するデータを収録したものである。 この表によると , 指導的射手の圧倒的多 数の者がポスト照星を採用し , わずかに一 部の者がリング照星を採用しているようで ある。しかしこの事実だけから , ポスト 照星がリング照星にくらべて , 本質的にす ぐれており , 有利であるなどと即断しては ならない。いやむしろ , 人の目がもつ光学 的不完全性 ( とくに回折現象と光滲現象 ) に着目するときは , 本質的に見て , リング 照星のほうこそ , より有利であって , より 正確な照準を可能にするといわなければな らない。このリング照星の利点にかんする 著者の見解の正当性を裏づけるものとし て , 次の事実をあげることができる。 1958 年の第 37 回世界射撃選手権大会 ( モ スクワ ) では , スモールボア 3 姿勢種目に 出場した 65 名の外国選手のうち , 60 名まで がリング照星を使用し , アーミイ・ライフ ル 3 姿勢種目に出場した 45 名の外国選手の うち , 36 名までがリング照星を使用してい た。そして , 注目すべきことには , リング 照星を用いた選手の大部分の者が , 伏射 , 膝射 , 立射の 3 姿勢を通じ , 一貫してリン グ照星を使用しつづけていたのである。 また , 1936 ~ 1939 年の国際通信競技のス モールボア伏射種目では , 毎回ソ連の射手 が勝利をおさめていたが , そのソ連射手の 大部分の者がリング照星を使用していた 221
7 照 一定であること このようなフィルターは照星のリング孔 ・フィルターの取りつけが堅牢であっ をおおってはいないが , だからといって , て , 射撃中にフィルターが移動しない その使用が無意味であると考えてはならな い。照星座にとりつけられたフィルター これらの条件を満足させるには , 特殊め は , 次の作用をいとなむのである。 がねわく , 単眼式ガラス保持器の採用 , ラ ・標的黒点周辺の白地部分の大半を遮蔽 イフルまたはサイト上へのフィルターの取 し , 暗くして , 眼球の黄斑部とその周 辺にあたる網膜背層に到達する強い光 りつけが必要となる。 線の眩視作用から目を守る。 外国射手の間で最も普及しているめがね ・標的の白地部分を暗くして , 標的黒点 わくは , スイス式のものであって , これに と照星リング孔の内縁との間に形成さ はライフル射撃用とビストル射撃用の 2 種 れる円形白線の網膜上における映像を 類がある ( 図 219 の右 ) 。めがねわくには , 明瞭にする。 中央に小孔をもっ黒い円板が付属してい このようなフィルターの組合せとして る。この小孔っき黒円板は , フィルター上 は , めがねわくか照門に暗色または中間色 の 1 点を定め , 視線がつねにその 1 点のみ のフィルターを , 照星に黄色 , 黄緑色 , ま を通過するようにし , また , オーフ。ン・サ たは橙色のフィルターをとりつけたものが イトを使用する場合は , 標的黒点 , 照星 , 照門の網膜上における映像を大いに鮮明に 最良ということになろう。 フィルターを使用する場合 , 照準の同一 する。このスイス式めがねわくの長所は , 性を保証するためには , 次の条件をみたす フィルター用ガラスの固定が堅牢な点にあ るが , ガラスがわくに固定されているため 必要がある。 フィルターが照準線に対して直角に配 に , ガラスの傾斜角の変更ができず , 照準 線に対してガラスを直角に保つには , 頭部 置されていること の回転度 , 傾斜度を変えなければならない 視線がフィルターの中心部を通るよう のは大きな短所といえる。そして , この欠 になっていること 点のために . ライフル 3 姿勢種目における 目とフィルターとの間の距離がつねに ビストル用 ライフル用 く図 219 > 特殊めがねわくと単眼式レンズ保持器の 1 例 230
2 腔内弾道学 装薬の完全燃焼に先立って弾丸の腟内進 ある。 行運動が開始されることになるため , 銃腟 弾丸が銃口から離脱する瞬間の腟内ガス 内のガス圧は時機に応じて異なる値をと 圧を“銃ロガス圧”という。銃ロガス圧の 大きさは , 1891 / 30 年式アーミイ・ライフ る。当初の弾丸の移動速度がまだ小さい時 ルで 416kg. / cm2 , スモールボア・ピスト 機においては , 弾丸背後の空間 ( 銃腟内の ルで 500 ~ 600kg / cm2 ( 銃身長によってこ 弾底と薬莢底との間に存在するスペース ) の差が生まれる ) である。ライフル , ピス の増大率にくらべて , ガス量の増加率がは トル , リポルーにおける銃腟内のガス圧 るかに高いものとなるため , 銃腟内におけ と弾速の変化状況を曲線グラフで示すと , るガス圧はしだいに大きくなる。しかし 図 3 , 4 のようになる。 ガス圧の増大は弾丸の移動速度の増加をも なおここで指摘しておかなければならな たらすことになるので , 次の段階では , ガ いのは , 腟内ガス圧の変化状況と装薬の密 ス量の増加率が弾丸背後の空間の増大率に ついていけなくなる時機が到来し , この時 度との間に密接な関係が存在するというこ 機を境にして , 腟内のガス圧はしだいに低 とである。つまり , 装薬の密度が増大する 下しはじめる。 につれて , その燃焼速度は急激に増加し , ときとしてはガス圧の増加速度も爆轟のさ 装薬が燃焼し終わった時機を過ぎても , 火薬ガスはなお多くのエネルギーを保有し いのそれに近いほどに大きなものとなると いう事実である。したがって , これに原因 ( これはその圧縮性にもとづく ) , 膨張運 する偶発事故を防止する意味からも , 弾底 動をつづけ , 弾底に作用して弾丸の運動速 部が薬莢内に深くはまりこんでいるような 度を増大させる。その後も , 火薬ガスは弾 実包は , これを使用しないようにしなけれ 底に作用して弾丸速度を増大させつづけ , 弾底に作用するガスの圧力と大気の抵抗力 ばならない。 とが同じ値をとるにいたって , 弾丸速度の 火薬の湿度が高まると火薬の燃焼は緩慢 増大はやむ。このガス圧そのものが弾丸速 となり , したがって , 火薬ガスの増加も緩 度を増大させる作用をやめる時機は , だい 慢となるので , 湿った装薬を使用すると遅 たい弾底が銃口から 20cm ほど手前に達し 発の現象を招くおそれがある。装薬の湿度 たときである。したがって , 弾丸は , 銃腔 が高く , 雷管の性能も落ちているときに 内を進むにつれてしだいにその速度を増大 は , 雷汞爆発による陷は装薬の全火薬粒を し , 銃口から数 cm 手前の付近で最大の速 同時に発火させることができず , 装薬はま ず点火剤に近い部分 , 次いでその次の部分 度を保有するにいたる。 というぐあいに , 徐々に燃焼に移ることに 火薬ガスの圧力は , 起綫部から数 cm 進 んだ付近で最大となる。 1891 / 30 年式アー なるため , 撃針が雷管を打ってから発射音 ミイ・ライフルの腟内最大ガス圧は , 軽量 を聞くまでの間に , 若干の時間間隔を生ず 弾を使用した場合 2850kg / cm2 , 重量弾を ることになる。したがって , 撃針が雷管を 使用した場合 3200kg / cm2 弱である。ス 打ってもただちに発射にいたらない場合 , つまり遅発の現象が生じたことを知った場 モールボア・ライフルとスモールボア・ビ 合 , 射手は急いで次の装填を行なわずに , ストルの腔内最大ガス圧は 1300kg / / cm2 , 数秒間はそのままの状態を持続して , 遊底 1895 年式ヒ。ストルのそれは 1100kg. / cm2 で 20
色によって分類してみると , 次のようにな る。 低い濃度および中等濃度の黄色と橙色一 ースペクトル紫色部の光線をよく吸収し て , 網膜上における標的黒点 , 照星 , 照門 の映像の明確化を促進するという特色をも 暗色ーーー低い濃度および中等濃度の褐色 味をおびた灰色のフィルターであって , ス ペクトル各部の光線を平等に吸収するが , いくぶん黄色味がかった色のおかげで , ス ペクトル紫色部の光線をいくらか多く吸収 するという特色をもつ。 中間色ーー緑色がかった灰色のフィルタ ーであって , スペクトル紫色部の光線を吸 収するという点では , 暗色フィルターにく らべてわずかに劣るが , 目にあたる感じで ははるかにこれにまさる。 曇ってはいるが明視度の高い日 ( うすぐ もりの日 ) には , 低い濃度の黄色フィルタ ーが適している。 太陽が照ってはいるが照度の強くない日 中における射撃 , および太陽光線が横から 標的を照らしている朝夕の時刻における射 撃では , 黄色 , 橙色 , または濃度のいくぶ ん高い黄色のフィルターを使用する。中間 色と暗色 , つまり , 通常のサングラスに近 い濃度の緑色がかった天色フィルターと , 同じく褐色味をおびた灰色フィルターの利 用もまた効果的である。 太陽が射手の背後にあって強烈に標的を 直射しているような場合には , きめて濃度 の高いフィルターを使用する必要がある。 具体的にいえば , 黄緑色 ( 比較的濃度の高 いものを使用すれば目に快適な感じをあた える ) , 橙色 ( 黄褐色 ) , 中間色 ( 青緑がか った灰色 ) , 暗色 ( 褐色味をおびたもの ) などが適している。なお , その濃度はいず 照射条件不良時の照準 有機硝子から 成る円板 リング照星 リング孔 3. 5 ~ 4. 0mm 229 は灰青色 ) というぐあいであった。 ュは黄緑色 ( 照門にとりつけたフィルター フィルターは暗青色 ) , イギリスのパリシ のオークリーは明褐色 ( 照門にとりつけた りつけたフィルターは明黄色 ) , イギリス イン , カーターは暗橙色 ( めがねわくにと も , たとえばアメリカのライト , ェ只ーワ 選手権大会に出場した選手について見て ざまのものがある。これを第 37 回世界射撃 色 , 橙色 , 暗褐色 , 不透明の無色などさま ようである。有機ガラス円板の色は , 黄緑 なるが , だいたい 0.5 ~ 2. Omm の間にある リング・サイトの厚さは , 射手によって異 描いたものである。この場合に使用される かわりに , エナメルか絵具で黒くリングを もの ( 図 218 ) か , または金属製リングの スの円板に薄い金属製リングをはめこんだ りつけられるフィルターは , 着色有機ガラ この組合せの構成部分として照星座にと さめている。 たフィルターの組合せを利用して成功をお めたフィルター , またはサイトにとりつけ 使用して射撃する場合に , めがねわくには 最近における外国選手は , リング照星を は無用である。 る。暗くなりすぎるであろうなどとの心配 て高い濃度のフィルターを使用すべきであ 標的に対して射撃する場合には , 思いきっ いつばんに , 太陽に強く照射されている 同じ程度のものでなければならない。 れも , 一般のサングラスの最も暗いものと く図 218 > 組合せ式フィルターの構成
9 撃発 ( 引金の引き方 ) ピストル射撃のための 引金機構とその調整 センターファイア・ピストル精密射撃 二段引きの引金の採用が適当とされ , 撃 発に要する人さし指の圧力が第一段で % , それ以後に % の割合で配分されるように その引金は調整されなければならないので ある。 シルエット的射撃一段引きの 3 ~ 5 mm の歩みをもったやわらかい引金の採用 を適当とする。据銃のための右腕挙上の途 上 , および標的から標的への照準移動の途 上で引金のしぼりを開始することがでぎ , また , 人さし指の運動によって発射時機の 到来を察知することが可能だからである。 フリー・ピストル射撃セット・トリ ガーを使用する場合には , 15 ~ 60 グラムと いったなるべく張力の小さいものを採用す る必要がある。これによって人さし指の運 動が右手掌部全体を運動にひき入れる危 険 . したがって , 撃発時にピストルの安定 性の破壊される危険が大きく排除されるこ とになるからである。 現在採用されている引金機構の型式およ び撃発の要領はきわめて多岐にわたってお り , その被利用度も , もちろん , それそれ について異なったものになっている。以下 に紹介するのは , 主として , 最も困難な射 撃種目であるライフル立射とヒ。ストル射撃 にかんするものである。 262 指導的射手が採用してい る引金機構と撃発要領 ライフル立射 表 11 は立射において安定した高度の成績 をおさめている指導的射手が採用している 引金機構の型式 , 張カ , および撃発要領を まとめたものである。本表によって判断す るとき , ビッグボア・スタンダード・ライ フル立射のために有利なのは , 一段引きの ドライな性格の引金の使用と段階的漸圧法 または円滑漸圧法の採用との結合であると いえるのではなかろうか。 原則として , 指導的射手たちは , 自分の 使用銃の引金の性格と張力との解明に最大 の努力を払い , 引金の歩みと人さし指の受 ける抵抗の感じとによって正確に発射時機 を判定できる能力の養成につとめて , その 目的を達成するにいたっている。したがっ て , 彼らは照準圏照準時にあらかじめ引金 張力の一部を克服し , 精密照準時には , わ ずかの力と時間を使用して撃発完成に導く ような撃発の進め方を採用している ( 図 241 ) 。このような態度の妥当性について は , もとより異論はないであろう。 セット・トリガーっきのフリー・ライプ ルを使用する場合には , 表 12 に見るよう に , 指導的射手の多くが , 鼓動式撃発法を 採用して撃発を行なうようにしている。も ちろん , ひとしく鼓動式といっても , その 内容はさまざまであって , たとえば , 迅速 に人さし指を動かす者もあれば , 緩慢に人 さし指を動かす ( 1 秒に 1 ~ 2 回の鼓動周 期をもつような緩慢な動かし方を採用して いる ) 者もあり , 人さし指を撃発用引金か ら明瞭にはなしている者もあれば , 外見で は認識できない程度に振動の小さい鼓動運 動を人さし指にあたえるようにしている者 もある。 いずれにしても , 鼓動式撃発法の長所
照射条件不良時の照準 く図 216 > 太陽が強烈に標的を照射して いるときの射手の網膜上に生じる標的 黒点 , 照星 , 照門の映像 後から標的を直射している場合には , 標的 の白い部分が強烈に照射されて , それが強 力な光源と化したかのように射手の目に映 く図 215 > 強い直射日光から目を守るた る。目の透光組織に発生する回折現象と強 めに用いられる日よけ用ひさし帽 烈な光の分散現象のために , 照門ばかりで なく照星までが二重になって目に映り , 照 を塗るか , 銃身上に布製のテーフ。をはるか 門や照星はもとより標的黒点までがぼやけ ( 図 214 の上 ) , あるいは絶縁性のテーフ・を て見えるようになる ( 図 216 ) 。 銃身にまきつけるか ( 図 214 の下 ) すると このような条件下で , ヒ。ーフ。・サイトを よい。 使用しても , よい結果は得られない。とく 直射日光から目を守るには , 日よけ用の にリング照星を使用して正確な照準を行な ひさし帽を利用する ( 図 215 ) 。 直射日光の過度に強い日中に , 何の保護 おうとしても , それはほとんど不可能であ る。強く照射された標的が発する輝光のた 手段も用いずに , 悪条件の克服に悪戦苦闘 するのは愚の骨頂である。太陽が射手の背 めに , 標的黒点は輪郭のぼやけた不明確な く図 217 > 太陽が強烈に標的を照射しているときの射手の網膜上に生じるリング照 星と標的黒点の映像。 ( a ) きついリング照星 , ( b ) ゆるやかなリンク照星 227