ライフル 3 姿勢射撃のテクニ 28-36 秒 み″秒 安定化と 照準圏照準 -2 秒 た秒 精密照準 び -8 秒 深呼吸 2 ~ 3 回 みル秒 精密照準 < 図 253 > 発射をはたせなかったときに , 姿勢をくずさず据銃したままで休息して , 次の発射に移るようにする場合の , 立射における指導的射手の発射完成過程 る。そして , すべての発射における内容の 同一性を確保するためには , ある程度まで 体力 , 視力 , 反応速度等が保持されていな ければならず , 射手は , 動作の同一性を保 持するための前提として , 合理的で経済的 な精力の利用ということを要求されるので ある。 が生まれてくる。 か , 試行は何回ぐらいが適当かという問題 試行との間にどの程度の休息をとるべき 精力保存の見地から , 発射試行と次の発射 射を中止しなければならない。こうして , 増大と視力の低下をきたした場合には , 発 まして , 発射遅瀞におちいって銃の動揺の らずそれが完遂されるものとは限らない。 発射動作にはいったからといって , かな のである。 精力保存を語る場合に忘れてはならないも 長さ , つまり , 射撃のテンボとリズムも , ーズとシリーズとの間に設ける休息時間の をはかるために , 発射と発射との間 , シリ だけに限定されるものではなく , 力の回復 する要素は , 個々の発射のための使用時間 るとされている。しかし , 精力保存に関係 が 17 ~ 20 秒の間に終了するようなものであ 立射の場合 , 据銃から撃発完了までの動作 経験上からして , 最も合理的な発射は , 射撃のテンボとリズム 発射試行と次の発射試行との間に設ける べき休息として , 現に射手の間で採用され ければならない。 は , どうしても第 1 の方法を混用しな れ , それ以上の発射を試みるときに 試行が 2 ~ 3 回にとどまる場合に限ら けを採用することができるのは , 発射 果が少ない。したがって , この方法だ らないので , 休息という見地からは効 を長く空間に保持しつづけなければな しかにこの方法の長所といえるが , 銃 とのえることができるという点は , た 単な動作で次の発射に必要な条件をと たたび発射動作にはいる。きわめて簡 にしながら深呼吸を数回行なって , ふ フォームを保ち , 目だけ休ませるよう も , 射撃姿勢をくずさずにそのままの ・第 2 の方法ーーー発射を途中で中止して っている。 おさなければならないという短所をも 発射で関係動作を全部最初からやりな れば効果的であるが , その反面 , 次の 方法は , 筋の能力回復という点からす け , 楽な姿勢をとって休息する。この ら , 床尾を肩からはずして地面につ ・第 1 の方法ーー発射を途中で中止した ている方法には次の 2 つがある。 285 2 の方法である ( 図 253 ) 。すぐれた筋力と 指導的射手の多くが採用しているのは第
4 射撃姿勢の基礎知識 ければならない。 ためには , 重力線が支持面の範囲内を通過 以上 3 種の立位姿勢のそれぞれにおける しなければならないのであるから , 銃を保 筋の働きぐあいを比較すると , 身体の平衡 持したためにこの総合体の重力線が支持面 保持に必要な筋の緊張が最小ですむのは楽 の外に出るようであれば , 銃の重さと釣り な立位の姿勢であるとの結論に到達する。 合いをとるのに必要なだけ , 補償的に上体 したがって , 立射姿勢の基礎となるべき立 を転位させなければならない。そして , 位姿勢は , 当然 , 重心線が股関節横軸の後 の補償的な上体転位は , 射手のポーズに変 方 , 次いで膝関節横軸 , 足首関節横軸の各 化をもたらし , それにやや不自然で非対称 前方を通過するようなもの , つまり , 骨盤 的な形態をあたえることになる。この不自 を前に出し , 上体を後ろにひくようにした 然なポーズが , 身体の可動部位の固定にた 姿勢でなければならないことになる。身体 ずさわる筋と靱帯に対して , 大きな負担を の主要関節の固定は , 筋のほかに靱帯がそ かけることになるのは当然であろう。 の仕事に参加することによって , はじめて 据銃における筋と靱帯の作用 可能となるばかりでなく , 靱帯が参加する 前述のように , 筋はたえず不随意的緊張 ことによって身体の可動部位の関節部にお ける固定が良好となり , 筋の努力を最小に ( トーヌス状態 ) をつづけているが , それ はそれとして , 筋の占める状態には , 収縮 とどめながら身体に最大の不動性をあたえ ( 興奮 ) と弛緩 ( 休息 ) の 2 つの基本状態 ることができるからである。 ところで , 実際の射撃姿勢では , 銃とい 上体の傾斜 う余分のものを保持しなければならないの で , 筋は身体を一定状態に保っこと以外に 銃の保持という仕事をも負わされることに なり , きわめて強度の緊張をよぎなくされ る。 しかも , 銃という荷物を余分に持っこと は , たんに重量の増加にともなう筋緊張の 増大を要求するばかりでなく , さらに筋の 重量負荷の様式を根本から一変させること になる。したがって , 銃を保持した射手の 姿勢の平衡については , 別個の観点からこ れを考えなければならない。 据銃姿勢の身体平衡 銃を保持した射手の身体は , 銃とともに 1 個の総合体を形成するので , その総合体 にはそれ自体の重心位置が存在することに なる ( 図 (1) 。 据銃したときの射手の身体が平衡を保っ 正中線 銃の重心 据銃した射手の 身体の重心 射手の体の重心 据銃した射手の 身体の重力線 据銃したときの射手の身体の重 く図 81 > 心位置 88
められる。 クッションの上に体重をかける度合 を大きくして , 左脚と左腕に対する 負荷の減少をはかること ・背を丸めて上体の固定をはかること ・両脚の間隔をせばめ , これによって 胸部の標的に面する度合を大きく し , 上肢帯右部の筋緊張を低めて , 頭部の保持を良好に保っこと ・身体を保持するために最小の筋緊張 ですむようなフォーム , 据銃したと きの射手の身体に自由なランスを あたえるための最良条件を保証する ようなフォームの選択につとめてい ること」 そして , この結論に含まれた内容は , 初 心者がそれに最も適した姿勢を探求するに あたって , 従うべき正しい方向を示してい るものというべきであろう。 並 射 ( スタンディング ) 立射姿勢は , 3 姿勢の中では , 最も安定 度の低い射撃姿勢である。伏射姿勢や膝射 姿勢では , 射手の身体は , 重心位置がそれ ほど高くないのに比較的広い支持面をもっ ているので , かなり高い安定性を獲得でき る。しかし , 立射姿勢では , 次の理由でそ のような安定度を期待するわけにはいかな いのである。 ・据銃したときの射手の身体の重心が支 持面の上方 , 高いところにあるばかり でなく , 支持面そのものが , 両足のあ いだに制限されて非常に小さいものと なる。 立射 ( スタンディング ) ・身体の各可動部位を固定し , 身体を垂 直状態に維持するために , 筋の大きな 緊張が要求され , その筋緊張にともな う筋の作用と反作用が , 身体に絶対的 な不動状態をあたえることをさまた げ , 大なり小なり , 身体を動揺させず にはおかない。 こうして , 立射は最もめんどうでむずか しい射撃種目となる。 141 ろう ( 図 131 の b ) 。そのうえ , 上体は大腿 て強度の緊張を要求されることになるであ 作用をいとなむ上肢帯と背の筋群はきわめ 対抗するために , 上体を股関節で固定する に作用する銃の重力の大きなモーメントに この場合は , 上体を側方に投げ出すよう ものとしよう。 すぐに保つようにして , 立射姿勢をとった の傾斜を最小にして , っとめて身体をまっ な状態に保つように いいかえれば , 上体 今かりに , 射手が身体をできるだけ自然 は一変することになる。 状態となり , 筋が受ける負荷の程度と様相 変化させられて , 射手の身体は非対称的な あたえれば , 当然 , 全体としてのポーズは が支持面内を通過するように上体に傾斜を の身体の重心からくだした鉛直線 ( 重力線 ) えなければならない。据銃したときの射手 に , 一定の補償転位 ( 傾斜 ) を上体にあた 持するには , 銃とのつりあいをとるため であろう。据銃した射手の身体の平衡を維 ことを考えれば , これは十分に理解できる いう余分の仕事を行なわなければならない な筋緊張が要求されるうえに , 銃の保持と 姿勢が不安定で , その維持のためには大き とはきわめてむずかしい。上記のように 自分に適したよい立射姿勢を選択するこ 立射姿勢の条件
4 射撃姿勢の基礎知識 肩甲挙崩 とってきわめて重要な結論をひき出された ことと田う 「水平に上げてまっすぐにのばしたピス トルを持つ腕と反対の方向に上体を倒す ようにすれば , ピストルをもつ腕を水平 に保持するうえに , きわめてよい結果が もたらされる」 このようなポーズをとるときには , 肩甲 骨の下角の外方への転位が少なくてすみ ( 図 88 , 89 ) , したがって , 肩甲骨を回転 させ , 固定する筋群の緊張もより小さくて ド : - ト すむのである。 肩関節の固定肩関節は球関節で , 人 上腕骨を水平に維持するときに く図 87 > 体の中で最も可動性の大きい関節である。 行なわれる肩甲骨の固定 肩関節は烏口上腕靱帯という 1 個の弱い靱 るには , もはや三角筋だけの働きでは足り 帯しかそなえていない。しかも , この靱帯 ず , 肩甲骨全体を転位させ , 回転させる筋 は関節の固定にこれという働ぎをしないの 群の働きを借りなければならない。また , である。したがって , 腕を挙上して , それ 水平に挙上した腕をその状態に保っために を水平に保持するときの肩関節の固定は , は , 三角筋その他の諸筋の働きに加えて , 三角筋 , 棘上筋 , 棘下筋 , および大胸筋上 肩甲骨を固定する諸筋 ( 菱形筋 , 僧帽筋 , 束の働きによって達成される。そしてこの 前鋸筋等 ) の働きが必要である ( 図 87 ) 。 場合 , 主役を演じるのは三角筋である。 さて , 今までに述べたところから , 読者 角筋は , 前部 ( 鎖骨の外側端に結着されて 諸氏はすでに , 次のようなピストル射手に いる部分 ) , 中部 ( 肩甲骨の肩峰突起部に 三角筋 棘上筋 僧帽筋 棘下筋 菱形筋 前鋸筋 置 位 上体の傾斜角度 2 自 骨 甲 , 0 く図 88 > 肩甲骨の転位。 ( a) 上体を垂直に保った場合 , ( b ) 上体を側方に傾斜させた場合 , ( c ) 腕を挙上するときの肩甲骨の回転 94
5 ライフル射撃の射撃姿勢 度合をより大きくした。左手で銃床前部を クだけで銃床尾を支えるというきわめてゆ っかむ位置を手前に近づけて , 左前腕の傾 るやかな銃の保持法を採用しているのであ 斜をより垂直に近づけるようにした。体重 るが , このような条件下でも , 銃は左膝蓋 をより大きくクッションの上にかけるよう の上に肘をあてた左腕の上で , 自由なバラ ンスを保っている。頭部の保持には最善の にした。 要するに , ポグダ / フは , 左腕と上肢帯 注意をはらい , 照門 , 照星 , 標的を目の正 左部の筋緊張の軽減を非常に重視して , 左 面に注視して照準できるようにしている。 脚はもちろん , 左腕にかかる負荷を少なく アイ・リリーフ ( 目と照門との距離 ) は , するために最大の努力をはらっているので 使用する銃の種類に応じて , いくぶんそれ ある。こうして , もともとすぐれた膝射姿 を加減するようにしている。 勢であったものが , さらに完成されて , 今 こで一言注意しておきたいのは , ポグ では最良膝射姿勢の 1 つにかぞえられるに 応ノフの膝射姿勢が長期にわたるトレー ングを必要とする姿勢であるということで いたっている。 ある。彼自身も , シーズンの初めには , 左 エム・イッキス ( 名誉スポーツ・マスタ 脚にひどい痛み ( 左足を強く内方にまわし ー ) の膝射姿勢 ( 図 123 ) 脚が標準より こむことがその原困である ) を感じ , クッ もいくぶん長く , やや不均整な体格の持ち ションのあたる右足首関節部に急速なしび 主である。体重は最大限に右かかとの上に れを訴えたのであるが , トレーニングを重 かけている。右足の指はのばされていて , ねるにつれて , しだいにそれらを感じなく 上体の重みに対して抵抗する作用には直接 なり , ついにはその姿勢のままで全射撃を 関与していない。上体の重みを直接受けと 完了できる域に達するという過程をたどっ めているのは , 靴底とクッションである。 てきたのである。 中央に右脚のためのくぼみがつくれる程度 ポググノフは , 次のような修正を以前の のかたさにかんなくずや綿をつめたあまり 高くないクッションを使っている。左足は 姿勢に加えて , 前記の姿勢に到達した。 自然に地面につけ , むりに内方にひねるよ 頭部の保持をより自然なものとした。両 脚の間隔をせばめて , 胸部が標的に面する うなことはしていない。 朝。当蟻戛嗤咄げ翳第朝 壽顰 :. キ第笠、き。 . ル く図 123 > エム・イッキスの膝射姿勢 134
げることは禁物である。銃は , 指の上でな く , 手掌 ( 手のひら ) の上にのせなければ 左肘は , 銃の真下に近く , 射面のわずか がう。いつばんには , 角筋の部分に , 一様に , 力を加えずにあて バットプレートは < 右肩 > 左に位置させる。 < 左肘 > ならない。 “肩にあてる”とい , 右胸部の大胸筋と三 はほとんどないわけである。こうして , 右 であるから , 右腕で銃の保持を助ける必要 課してはならない。スリングを使用するの 銃を保持する支えとしての役割を右腕に く右腕 > ずれて , 正確な照準がむずかしくなる。 生じる頭部の動揺のため , 銃の安定性がく 筋に余分の緊張がおこり , その結果として 頭を極端に後ろにひいたりすると , 頭部の のばして頭を不自然に照門に近づけたり , ほをつけることが必要である。また , 首を は , コーム ( 床尾の上縁 ) に力を入れずにほ 固定されていなければならない。それに 一性を保ち , かっ必要にして十分な程度に ように , 頭部の姿勢と関係位置がつねに同 ならない。射撃ごとに同じ照準が行なえる たりすることは , ぜったいに避けなければ 保つ。頭を右に傾けたり , 極端に前傾させ り出すために , 頭はできるだけまっすぐに おける目の働きにとって最良の条件をつく 目の真正面に標的を見いだし , 照準時に < 頭 > ばならない。 じて , つねにリラックスした状態になけれ 角筋は , 撃発時はもちろん , その前後を通 右胸部にあてがうことである。大胸筋と三 従うことにするが , その意味はあくまでも っており , 著者も以下では , この慣用語に 伏射 ( フ。ローン ) 腕はただ引金を引くという基本動作に専念 できるし , またそうでなければならない。 安定性をそこなうような衝撃を銃にあたえ ないように , 右腕の筋肉をできるだけ弛緩 した状態におくことがたいせつである。 < 右手 > 右手は , ただ銃把にそえるだけにとどめ るつもりで , 力を入れずに , 銃把をつかむ ようにする。その場合 , 人さし指には銃把 の把持にぜんぜんタッチさせないようし , 銃床との間に適当なスペース ( 自由に引金 を引けるだけの ) を残すような関係位置を とらせるようにしなければならない。 < 右肘 > 右肘は胴体につけてもいけないし , むり して横にはなしておいてもいけない。右手 で銃把をつかんでから , そのまま自然に右 肘を地面におろせば , それが適正な位置に 近くなる。ただし , こうして右肘を地面に おろすとき , 筋に余分な緊張をあたえた り , 引金を引く人さし指の自由な動作をさ またげたりしないように , とくに注意する 必要がある。 < 身体の方向のチェック > 必中射撃を実現するためには , 安定性の ある適正な射撃姿勢をとるだけでは十分で はない。さらに , 銃の振動の大きさと性質 に悪い影響を及ぼすような筋の余分な緊張 を防ぐために , 照準と撃発の開始に先立っ て , 射撃姿勢をとった身体が標的に対して 正しく指向されているかどうかをチェック する必要がある。据銃したときの射手の身 体に正しい方向があたえられているかどう かをチェックするには , 目をつむり , 呼吸 をとめて , 銃を標的に指向してみるとよ い。目を開いたとき , 正しい照準線が標的 から横にはずれているようであれば , その 射撃姿勢には正しい方向があたえられてい 109
7 照 一定であること このようなフィルターは照星のリング孔 ・フィルターの取りつけが堅牢であっ をおおってはいないが , だからといって , て , 射撃中にフィルターが移動しない その使用が無意味であると考えてはならな い。照星座にとりつけられたフィルター これらの条件を満足させるには , 特殊め は , 次の作用をいとなむのである。 がねわく , 単眼式ガラス保持器の採用 , ラ ・標的黒点周辺の白地部分の大半を遮蔽 イフルまたはサイト上へのフィルターの取 し , 暗くして , 眼球の黄斑部とその周 辺にあたる網膜背層に到達する強い光 りつけが必要となる。 線の眩視作用から目を守る。 外国射手の間で最も普及しているめがね ・標的の白地部分を暗くして , 標的黒点 わくは , スイス式のものであって , これに と照星リング孔の内縁との間に形成さ はライフル射撃用とビストル射撃用の 2 種 れる円形白線の網膜上における映像を 類がある ( 図 219 の右 ) 。めがねわくには , 明瞭にする。 中央に小孔をもっ黒い円板が付属してい このようなフィルターの組合せとして る。この小孔っき黒円板は , フィルター上 は , めがねわくか照門に暗色または中間色 の 1 点を定め , 視線がつねにその 1 点のみ のフィルターを , 照星に黄色 , 黄緑色 , ま を通過するようにし , また , オーフ。ン・サ たは橙色のフィルターをとりつけたものが イトを使用する場合は , 標的黒点 , 照星 , 照門の網膜上における映像を大いに鮮明に 最良ということになろう。 フィルターを使用する場合 , 照準の同一 する。このスイス式めがねわくの長所は , 性を保証するためには , 次の条件をみたす フィルター用ガラスの固定が堅牢な点にあ るが , ガラスがわくに固定されているため 必要がある。 フィルターが照準線に対して直角に配 に , ガラスの傾斜角の変更ができず , 照準 線に対してガラスを直角に保つには , 頭部 置されていること の回転度 , 傾斜度を変えなければならない 視線がフィルターの中心部を通るよう のは大きな短所といえる。そして , この欠 になっていること 点のために . ライフル 3 姿勢種目における 目とフィルターとの間の距離がつねに ビストル用 ライフル用 く図 219 > 特殊めがねわくと単眼式レンズ保持器の 1 例 230
5 ライフル射撃の射撃姿勢 図 149 に見られるとおり , ソ連選抜青年 チームのメンバーたちの立射姿勢は , 次の ような方向に向かって変化の歩みを進めて きている。 ・背の弯曲 , 上体の傾斜をより大きくす る。 ・頭部の保持をより自然なものとし頚 部の筋の緊張をより軽減する。 ・上肢帯右部の諸筋の緊張をより軽減す る ( このためには , パットフ。レートの フックを大きく下方に下げ , 右肘を下 げてよりリラックスした据銃法を採用 するようにしている ) 。 このような改善方向に , もう 1 つ , 左前 腕により垂直な状態をあたえるという方向 をつけ加えるならば , そこに , 指導的射手 の立射姿勢に現われた最近における変化の 方向の指導原理がすべて集約されることに なる。 いうまでもなく , 指導的射手に見られる 立射姿勢の改善は , これで終りを告げるわ けではなく , こんごもひきつづき , たえず 展開されていくであろう。より良いものヘ の探求のないところに進歩はありえないの である。 射手が自分の姿勢を分析し , 自分の射撃 技術に検討のメスを加えれば , かならずそ こに射撃成績の向上をさまたげる何物かの 162 善の努力が傾注される。 らない点が発見されれば , それに対して改 存在を認めるはずである。こうして , いた こに射撃技量の 向上が保証されるのであって , 射撃姿勢 , 射撃テクニックの変化が止まることは , 射 撃の進歩の停止を意味するものであって , こんごの変化を必要としない完全無欠な射 撃姿勢などはこの世に存在しないものと知 るべきである。 分析の結論 さて , 指導的射手が採用している立射姿 勢のいくつかについて個々に検討を加え , 最近において行なわれてきたその変化のあ とをたどってきたわれわれは , その結果を もとにして , 次の結論を導き出すことがで きる。 「現在至当とされている立射姿勢は , 次 の諸条件を特色とするものでなければな らない。 ・せまい両足間隔と射面に沿った両足 の関係配置 ・骨盤の推進による背の顕著な弯曲と 上体の右方への大きな傾斜 ・腰部における顕著な身体のひねり 垂直に近い左前腕 ・頚部の筋の緊張度を最小限に保った 自然な頭部の保持 あまり強くない肩づけ ・上肢帯右部の諸筋のリラクセーショ ン」 そして , この結論は , 初心者が自分に最 も適した立射姿勢を探求するにあたって , その指導原理とすべきものである。
6 0 ピストル射撃の射撃姿勢 ・ビスト / レとセン ターファイア・ビストル ピストル精密射撃 ( フリ ピストル ( リポルーを含む . 以下同じ ) 射撃の射撃姿勢 には , ライフル射撃の射撃姿勢とは原則的に異なる点がいく つかある。ライフル射撃では , 銃を保持する腕を地面 , 膝 , または上体に托して銃の安定をはかることができるのに対 し , ピストル射撃では , そのような腕のための支えを利用す ることが許されず , 空間にのばした 1 本の腕で銃を保持しな ければならないし , また , ライフル射撃では , 左右の腕を使 って銃の保持と撃発を行なえるのに対して , ピストル射撃で は , 右腕だけでこの両動作を行なわなければならない , とい ) 基本的相違があって , 当然そこに両姿勢の特質的な差異が 生まれてくることになる。 ピストル射撃では , 拳銃を把持してのばした右腕を空間に 保持しなければならないのだから , 筋の大きな緊張をともな う。この緊張した筋の作用と反作用により , 拳銃を把持した 右腕に完全な不動性をあたえることがむずかしくなり , 拳銃 はつねに大なり小なり動揺することになる。そのうえ , 拳銃 を把持している腕と同じ腕の人さし指で引金を引かなければ ならないため , 右手の各指の屈筋に余分の動きをあたえ , 拳 163
5 ライフル射撃の射撃姿勢 くり出すことにつとめなければならない。 いいかえれば , 左膝の上に加わる重量の作 用方向と左下腿の方向とが一致しないよう な関係位置 , つまり , 左膝の上に加わる重 量が左脚の方向を偏移させるように作用す る関係位置を避けることが必要である。 く肩 > ットフ。レートを右胸部 ( 大胸筋と三角 筋の部分 ) に軽くあてるようにして肩づけ する。その場合 , 上肢帯の諸筋を緊張させ たり , 肩を前に押し出したりすることは禁 物である。射撃の命中性は , これらの諸筋 をリラックスさせる能力によって大きく左 右されるのである。 く上体 > 胸部がある程度まで標的に向くように上 体を配置する ( 左側腹は標的に正対させな い ) 。胸部を標的に向けるための上体の方 向変移は , 右膝を左足に近づけることによ って行なわれる ( 図 119 参照 ) 。上体をこの ような状態におくと , 上肢帯右部の諸筋の 緊張が緩和されるだけでなく , 頭部の保持 が効果的に行なえる。 く頭部 > 頭部の保持は自然なものでなければなら ない。頭がいくぶん前に傾くのはやむをえ ないとしても , その傾度はできるだけ小さ くする必要がある。頭を後ろにそらした り , 首を前にのばしたりすることは , 頚部 の筋緊張をまねいて射撃姿勢の安定性を乱 すことになるので , もちろん避けなければ ならない。 < 右腕 > 引金を引くことがその基本任務であるか ら , 右腕の筋はっとめてリラックスした状 態におかなければならない。右腕の筋が緊 張していると , 銃に振動や衝撃が伝わっ て , 銃の動揺を大きくすることになる。 124 く右手 > 伏射姿勢の場合と同様に , 銃把を軽く握 るようにしなければならない。銃把を握っ た右手の人さし指と銃把との間には , 人さ し指の引金を引く動きをさまたげないため に , 適当な間隙をおく必要がある。 < 右肘 > 右手で銃把を握ったら , 右肘を自然に下 げ , 上体との角度が 10 。 ~ 20 。になるように それを保つ。右肘をもち上げたり , 上体に 押しつけたりしてはならない。上肢帯の筋 に余分の緊張をあたえて , 銃の安定性をそ こなうことになるからである。 < 身体の方向のチェック > とり終わった射撃姿勢が標的に正しく指 向されているかどうかのチェックは , 伏射 姿勢の場合と同じ原則に従って行なわれ る。膝射姿勢をとり終わったときに銃身が 標的の右または左に指向されている場合 は , 上体の向きに変更を加えて , 正しい照 準線を照準点に導くようにしなければなら ない。そのためには , 身体をわずかにもち 上げて , 左足 , 右膝 , 右つま先の 3 支点を同 時に移動させるようにする必要がある。正 しい照準線が照準点の上方または下方に指 向されているときは , 右脚の位置はそのま まに保ちながら , 左足をわずかに前後させ るか , 銃床前部に対する左手の関係位置を わずかに移動させるか ( スタンダード・ラ イフルの場合 ) , あるいは , パットフ。レート を上下させて ( フリー・ライフルの場合 ) , その矯正をはかる。 体格的特徴による膝射姿勢 以上は , 均整のとれた体格をもっ射手の 膝射姿勢に対する解説であった。次は , く せのあるからだっきをもっ射手を対象とし た膝射姿勢の研究に移ろう。