全弾痕の 50 % る % 乃 % 公算誤差 25 % だ % 石 % 射弾の散布 な % 石 % 平均弾着点 の大きさ く図 51 > 公算誤差被弾面 多くの弾丸を発射すると , 各弾丸の描く 弾道の総集計は 1 つの“集束弾道”を形づ くり , この集東弾道が目標に衝突して , そ こに多少とも相互に離隔した 1 群の弾痕を 残す。この弾痕群の占める面積を。被弾面 積”という ( 図 5 の。 無数の弾丸を発射して , 被弾面積におけ るその弾痕配置の状態を観察すると , すべ ての弾痕は , いわゆる中心弾着点 ( 平均弾 着点 ) を中心にして , その周域に配分され る。集束弾道の中央に位置し , 平均弾着点 を通過する弾道を名づけて“中心弾道”と 呼ぶ。射撃間に行なうサイト修正などのた めに用いられる修正諸元表に記載されるデ ータは , すべてこの中心弾道を対象とした ものである。 銃と実包には , その種類 , 型式ごとに , 工場試験における合格基準としての射弾散 布にかんする基準があり , また , その銃の 標準偏差 ( 核心帯 ) 平均弾着点 核心部 ( 50 % 命中公算領域 ) く図 52 > 核心帯 ( 標準偏差 ) と核心部 性能判定に資するための射弾散布にかんす るデータもある。射手としては , これらの データを十分に分析理解できるだけの知識 と能力をそなえている必要のあることはい うまでもない。 無数に発射したときの射弾は , 次の法則 に従って散布する。 がある。 し , その範囲にはつねに一定の限度 ③被弾面は上下にのびた楕円形を呈 に対しても同一値をとるのである。 から偏移する確率は , いずれの方向 的に配分される。弾丸の平均弾着点 ②弾痕は平均弾着点を中心として対称 となるように配分される。 ず , 平均弾着点の周辺において濃密 ①弾痕は全被弾面に均等に分布され 51 ( 不均等性の原則 ) と法則② ( 対称性の原 発射された弾丸の全体は , 上記の法則①
2 腔内弾道学 弾丸の侵徹力は , その弾丸が命中時にも つ動力学的エネルギーによって決まる。銃 口から離脱する瞬間の弾丸が保有している 動力学的エネルギーを“銃ロエネルギー と名づける。弾丸エネルギーの測定単位は kg—m である。 1 kg-m とは , 1 kg のもの を lm の高さだけ上げる仕事に必要なエネ ルギーの大きさである。 ライフル銃から発射された弾丸は巨大な 動力学的エネルギーを保有している。たと えば 1891 / 30 年式アーミイ・ライフルから 発射される軽量弾の銃ロエネルギーは 360 kg—m である。ひと口に 360kg-m という が , これだけのエネルギーを発射以外の手 段で , 弾丸が銃腟内を進行通過する時間内 につくり出すには , 9600 馬力の発動機を 必要とするということによっても , このェ ネルギーがいかに巨大なものであるかがう かがい知られるであろう。 以上によって , 初速の大きいことと , そ れに関連する銃ロエネルギーの大きいこと とが , 現実の射撃にとっていかに重大な意 義をもつものであるかが , よく理解された であろう。初速が大となり , 銃ロエネルギ ーが大きくなるにつれて , ますます射程は のび , 弾道は低伸し , 弾丸飛翔中に外部条 件から受ける影響の度合は低減し , 弾丸の 侵徹力は増大することになるのである。 装薬が燃焼すると , 拡大する火薬ガスは それをとりまく全表面に対し均一な力でも って圧力を加える。そして , 銃腟壁に加わ る圧力は銃腟壁の弾性拡張をもたらし , 弾 26 銃の反動と反跳角 底に加わる圧力は弾丸を銃腟に沿って移動 させ , 薬莢の底部に加わる圧力は薬莢をへ て遊底 , さらには銃全体に伝わり , 弾丸の 運動方向と反対の方向に向けて銃を移動さ せる。つまり , 発射時の火薬ガスは , 銃と 弾丸とをそれそれ異なった方向に向けて投 げとばす作用をいとなむわけである。発射 時に火薬ガスの作用によっておこる銃の後 方に向かう運動を銃の“反動”と名づけ る。 銃の反動は射撃の命中性に大きな影響を あたえる。したがって , 射手はこの現象を 十分に解明し , その本質をよく理解してお かなければならない。 物理学の法則によれば , 同一の力によっ てあたえられる物体の運動速度は , その物 体の質量に反比例する。したがって , 弾丸 のあとから噴出する火薬ガスの銃ロ断面に 対する反作用を無視して考えるときには , 反動による銃の自由後座速度は , 弾丸の初 速にくらべて , 銃と弾丸との重量比と同じ 割合だけ小さくなった値をとる , というこ とができる。 銃の反動は , 弾丸が運動を開始すると同 時に始まり , 弾丸が銃口からとび出す瞬間 に最大の力をもつようになる ( 実際には , 火薬ガスの銃ロ断面に対する反作用が加わ って , さらに大きなものとなるのである が , このことはいちおう無視して考察し ライフル射撃の射手は , 肩に対する衝撃 によって銃の反動を感知する。肩に感じる 衝撃の程度を弱め , 照準動作を容易にする ためには , どうしても銃床を採用すること が必要になる。これによって , 次に述べる ように , 衝撃力が減殺されることになるか らである。 反動をひきおこす火薬ガスの圧力は ,
銃身の堅牢性と耐用命数 銃身の弾性限界 5500kg / 2 1000 異物 遊底燃焼中の装薬 く図 5 > 銃身がその弾性限界を越えて拡大せざるをえなくなるようなガス圧の発 生によっておこる銃身膨張 て銃腟の点検を行なう習慣を身につけるこ ブレーキとなって弾丸の運動速度をにぶら とがとくにたいせつである。 せる。弾丸の運動速度が落ちるために , 弾 銃身膨張も , 銃身の後部または中央部に 丸に接して続行していた火薬ガスは弾底に 生じた小さいものであれば , その命中精度 衝突し , 押しのけられてあともどりする波 を形成する。一方 , 火薬ガスの主力は , い に及ぼす影響は大したことはない。しか し , このような銃でも , 弾丸が旋条をはず ぜんとして銃ロの方向に向かって前進をつ れるような場合がありうるので , これを竸 づけている。こうして 2 つの波の激突がお 技会で使用することは危険である。銃ロ近 こり , 銃身の抵抗力を越えるような強大な くに膨張した箇所のある銃は , 射撃竸技用 局部的圧力が発生する ( 図 5 ) 。そして , としてはぜったいに不適である。 この急激で著大な局部的ガス圧の増大が銃 銃身は使用しているうちにしだいに磨損 身を膨張に導き , ときには銃身破裂をまね して老朽化する。銃身の磨損老朽化を促進 くことになるのである。 するものとしては , 次のような物理的 , 熱 膨張をおこした銃身は , 注意深く銃腔を 的 , 化学的な原因があげられる。 見ると , 輪形に暗く見える箇所ができてい ・物理的原因による磨耗 るので , 容易にこれを発見することができ 弾丸が銃腔内を通過するときには強大な る。膨張度が大きくて銃身外部に輪状の隆 磨擦がおこる。このため , たびかさなる射 起が生じているような場合は , 手でさわっ 撃によって腔綫の角が丸くなって ( 図 6 ) , てみればこれはすぐわかる。 銃身内壁は磨減するにいたる。 膨張の発生を防ぐためには , 銃腟の綿密 ・物理的 , 熱的原因により銃腟表面に発 な拭浄と , 射撃まえに細心の注意をはらっ 23
3 腔外弾道学 則 ) に従って , 被弾面積内に分布される ( いわゆる正規誤差分布 ) 。したがって , 散布の中心点 ( 平均弾着点 ) を中心にして 対称に位置を占め , かっその幅を等しくす る地帯内には , つねに同数一定量の弾痕が 配分されることになる。 弾丸散布にかんする数値としては , 公算 誤差 , 標準偏差 , 半数必中界 , 全数必中界 等がある。 公算誤差平均弾着点を中心として , 全弾痕の半数を包含する地帯の % , つま り , 平均弾着点上に内側線をもち , 全弾痕 の 25 % を包含する地帯を , 公算誤差被弾面 とする ( 図 51 ) 。したがって , 公算誤差被 弾面には縦と横の公算誤差被弾面が存在す ることになる。公算誤差被弾面の全縦長ま たは全横幅は , 全被弾面の % である ( 正規 誤差分布法則による場合 ) 。したがって , 公算誤差の値を知れば , 容易に被弾面積内 の公算命中弾比を算出することができる。 標準偏差平均弾着点を中心にして , 全弾痕の 70 % を包含する地帯を“標準偏 差”と名づける ( 図 52 ) 。標準偏差にも縦 の標準偏差と横の標準偏差とがある。縦お よび横の標準偏差 ( 核心帯 ) は , それぞれ 被弾面の全縦長または全横幅のおよそ % の 幅をもつ。したがって , 平均弾着点を通る 水平線まは垂直線を引き , 全被弾面の左右 または上下両端に画せられたその水平線 ( 被弾面の最大横幅 ) または垂直線 ( 被弾 面の最大縦長 ) を 3 等分し , 全被弾面をそ れそれ 3 個の縦横の地帯に区分すれば , 中 央の地帯には 70 % の弾痕 , 両側の各地帯に はそれそれ 15 % の弾痕が収容されることに なる。横の標準偏差 ( 核心帯 ) と縦の標準 偏差 ( 核心帯 ) とがまじわる中央の 1 区画 としては , 平均弾着点を中心とした 1 個の 長方形が形成される。この両核心帯によっ 大半径 小半径 弾着中心点 く図 53 > 半数必中界と全数必中界 て形成される長方形の部分を“核心部”と ーこには全弾痕の 50 % が収容される いい , ことになる。 半数必中界 , 全数必中界無数の弾丸 を発射するときには , 以上に述べたような 散布法則 ( 正規誤差分布法則 ) が完全に具 現されるが , 比較的少数の弾丸を発射した 場合には , かならずしもつねに散布法則ど おりの結果が現われるとはかぎらない。ま た , 竸技射撃の場合などにおいては , 円形 に近い被弾面となって現われるのをむしろ 通常とする。したがって , この場合の射弾 散布の数値としては , 全数必中界 ( 100 % の弾痕を包含する円の大きさ ) または半数 必中界 ( 50 % の弾痕を包含する円の大き さ ) が通常用いられることになる ( 図 53 ) 。 全数必中界を構成する円の半径の大きさ は , 半数必中界を構成する円の半径の大き さのおよそ 2.5 倍である。 なお , 工場試験としての試験射撃 ( 発射 弾数は 20 発を通例とする ) の結果を示す射 弾散布の数値としては , 全弾痕を包含する 円の直径が用いられることになっている。 射弾の自然散布は , 射手の意志や願望と
銃の反動と反跳角 く図 11 > 射手の姿勢と反跳角との関係 ( ライフル射撃の場合 ) , および銃把の握 り方と反跳角との関係 ( ビストル射撃の場合 ) 銃身の振動 弾性物体からなる細長い棒をたたくと , その棒は振動しはじめる。これと同じ現象 が銃身の場合にも発生するといわなければ ならない。つまり , 装薬が燃焼して火薬ガ スによる打撃が加えられると , 銃身は強く 張られた楽器の絃のように振動しはじめ る。細い銃身は太い銃身にくらべてこの振 動が大きい。振動現象においては , 銃身上 のすべての点が , もれなくなんらかの振動 をおこすことになるのであるが , 実験の示 すところによれば , その振幅の大きさは銃 身上において占める位置によって異なった ものとなり , なかにはほとんど振動しない 箇所 ( いわゆる節点 ) も存在する ( 図 12 ) 。 銃ロ部も , 銃身の一部である以上 , 発射に あたってしかるべき振動をおこすことにな る。そして , この銃ロ部の振動のどのよう な位相にあるときに弾丸が銃口をはなれる かによって , 弾丸の最終的な飛翔方向が決 定される。銃身の振動は , 弾丸の銃ロ離脱 に先立って , 弾丸が起動した瞬間から , 火 薬ガスの銃身に対する衝動により開始され るものであるからである。 弾丸が銃口を離脱するとき , 銃身の振動 により , 銃ロ部が撃発前の銃身方向よりも 下方を指向するときには負の反跳角が発生 する。しかし実をいうと , 反跳角の正負 は射手にとってはとくに重要な問題ではな く , 正であろうが負であろうが , とにかく 反跳角がつねに比較的一定していて , 射弾 の集中性が保たれていればそれでよいので あって , また , これが問題のポイントでも ある。 そのつど生起する反跳角をつねに一定に するためには , 銃身がつねに同じ振動をい となむように銃を改造整備しておく必要が ある。銃身の振動をつねに一定に保っため には , 銃床に接触させないとりつけ方をす るか , 詰めものを利用する 3 点固定式取付 け法を採用して , 銃身の振動に最良の条件 振動節点 く図 12 > 発射時に発生する銃身の振動 29
弾丸の初速 , 形状 , 断面荷重と弾道形状の関係 く図 45 > 各種弾丸の最大横断面積。 ( a ) 1891 / 30 年式アーミイ・ライフル用弾丸。 ( b ) ランニング・ディア射撃用弾丸。 (c)9rnme0 ストル用弾丸。 ( d ) 1895 年式リポ ルバー用弾丸。 ( e ) 5.6mm スモールボア・ライフル用弾丸 後に形成される準真空地帯が小さくなり , 空気渦動も少なくなることがわかるであろ 「弾丸にとって最良の形状は葉巻形の最 少抵抗曲線をもつ流線形である」 これが , 理論上からも , 実験上からも , 到達しえた現在における結論である。ちな みに , 実験値の示すところによれば , 弾頭 部の形状だけで空気抵抗係数の値が 1 ・ 5 ~ 2 倍も変わるとのことである。 「弾丸にとって最良の流線形は , 弾速の いかんを問わず′つねに一定しているも のではなく , それは弾丸の各飛翔速度に 応じて , それぞれ異なった形をとる」 これもまた , 弾丸形状の弾道に及ぼす影 響にかんする詳細な研究によって明らかに されている事実である。 初速のあまり大きくない弾丸で近距離目 標に対して射撃する場合には , 弾丸形状の 弾道形状に及ばす影響もあまり大きいもの にはならない。したがって , ピストルとリ ポルー用実包 , スモールボア・ライフル 初速大、断面荷重 小なる場合の弾道 射角 用実包に装填する弾丸としては , 鈍頭弾が 採用されている。射撃結果に大して悪影響 を及ぼすこともなく , 装填動作がいちじる しく容易となり , また , 被甲をつけなくて も弾丸の形状をそこなうことがないからで あろう。 弾丸形状が弾道形状に及ぼす影響はきわ めて大きいので , 射手は弾丸の変形を防 ぎ , その点検を慎重にして , かき傷 , へこ み , 打痕などのある弾丸を使用しないよう に心がけなければならない。 弾丸の断面荷重が 弾道形状に及ぼす影響 初速が同じならば , 弾丸重量が増せば増 すほど , 弾丸の保有する運動エネルギーは 大きくなり , また , 空気抵抗が弾丸飛翔に 及ぼす影響力は減殺される。しかし弾丸 の運動速度を維持する能力は , たんに弾丸 重量だけによって左右されるものではな く , さらに弾丸重量と弾丸の空気抵抗を受 ける面積との比の値によっても左右され 初速小、断面荷重 大なる場合の弾道 銃ロ水平面 ( 弾道基面 ) く図 46 > 弾丸の断面荷重と弾丸の水平射程との関係 45
3 腔外弾道学 ク七 = ェの 抵抗力 飛翔方向 空気の抵抗力 く図 22 > 飛翔を開始した瞬間における < 図 23 > 重力の作用を受けて下降しは 弾丸に対する空気抵抗の作用 じめた時機以後における飛翔中の弾丸に 対する空気抵抗の作用 丸の飛翔が真空中で行なわれるとしたら , 側面を空気抵抗にさらす度合はますます増 弾丸はその縦軸をそのままに保ちつづけ , 大する。しかしこの段階にはいっても , 弾頭を前にした状態で弾底から着地するこ 弾頭には , 弾底にくらべてはるかに大きい 空気圧力が作用する。この空気抵抗の作用 とになるであろう ( 図 (1) 。 は , 必然的に弾頭を起こし弾丸を後方に しかし弾丸に対して空気抵抗が作用す 転倒させようとする ( 図 24 ) 。 る場合の長弾の飛翔は , 真空中におけるそ こうして , 長弾に作用する空気抵抗は , れとはまったく異なったものとならざるを たんに弾丸の飛翔にフ・レーキをかけるばか えない。弾丸が銃口からとび出した瞬間に りでなく , 弾頭を後方に転位させるように おける空気抵抗は , 弾丸の運動に制動を加 働く。そして , この空気抵抗の長弾を後方 えるように作用するだけである ( 図 22 ) 。 に転倒させる作用は , 弾丸外形にもよる しかし重力の作用を受けて弾丸がひとた が , 弾丸速度と弾長とに応じて増大する。 び落下しはじめると , 空気の分子は弾頭だ つまり , 騨丸の飛翔速度が大きければ大ぎ けでなく弾側に対しても圧力を加えはじめ いほど , また弾丸の長さが大きければ大き る ( 図 23 ) 。 いほど , 空気抵抗による転倒作用はより強 弾丸の落下が進むにつれて , 弾丸がその 空気抵抗力の 着力点 弾丸重心 飛翔方向 偶力のうで 空気抵抗力 0 ' 00000 。 0 空気抵抗力と同し大きさを 持つ、空気抵抗力に平行する弾丸を後ろに顛倒さ 力と反対方向を指向する仮想カせようとする偶カ < 図 24 > 弾丸を後方に転倒させる空気抵抗の作用 36
3 腔外弾道学 音波 0 速速 弾音 5 f 2 3 4 く図 42 > 音速と同じ速度で弾丸が飛翔 するときに形成される音波のひろがり いちじるしく増大させる弾頭波は , 弾丸が 音速と同じかまたはそれ以上の速度で飛翔 するときに発生する。弾丸速度が音速より 小さい場合は , 弾丸が音波の先端に密接し て追随飛翔することになるので , その弾丸 く図 44 > 者種形状の弾丸が飛翔するとき はあまり大きな空気抵抗を受けない ( 図 に発生する弾頭波と弾丸背後の空気渦動 42 ) 。しかし弾丸の速度が音速より大き い場合には , 弾丸がその前方に発生するす 図 44 に示した各種形状の弾丸が飛翔す べての音波を追い越して進むことになるの るときに発生する弾頭波と空気渦動の形状 で , 弾頭波の発生をひきおこし , 騨丸はこ を比較観察すれば , 弾頭部が尖鋭であれば の弾頭波のために大きな制動を受けて , 急 あるほどそれに加わる空気圧力が減少し , 速にその運動速度を失っていく ( 図 43 ) 。 弾尾部が狭窄されていればいるほど弾丸背 音波 弾速 音速 く図 43 > 超音速で飛翔する騨丸によって 形成される音波のひろがり 44
3 腔外弾道学 る。 弾丸重量の弾丸最大横断面積 ( 図 45 ) に 対する比の値を , その弾丸の“断面荷重” という。断面荷重は , 弾丸の重量が大きく なり , かっ弾丸の口径が小さくなるにつれ て , いよいよ増大する。したがって , 弾径 が同じであれば , 弾長の大きい弾丸のほう が , 弾長の小さい騨丸よりも大きな断面荷 重をもっことになる。大きな断面荷重をも つ弾丸は , 小さい断面荷重をもっ弾丸にく らべて , 他の条件が同じであるかぎり , よ り大きな水平射程 , より低伸性に富む弾道 をもつのである ( 図 46 ) 。また , 相似の弾 丸どうしでは , 弾径が大きくなるほど水平 射程は増大する。弾丸重量は弾怪の 3 乗に 比例するのに対し , 最大横断面積は弾径の 2 乗に比例し , したがって , 重量対横断面 積の比は弾径に比例することになるからで ある。 以上のように , 断面荷重の大きい弾丸が すぐれた長所をもっとはいっても , その断 面荷重の増大には一定の制約がともなうこ とを知らなければならない。 まず , 断面荷重の増大は , 弾丸総重量の 増大 , ひいては銃の反動の増大をもたら す。さらに , 弾長を大きくして断面荷重の 増大をはかるときには , 弾頭部から後方に 弾丸を転倒させる空気抵抗モーメントの作 用の増大をきたす。こうして , 現用弾丸の 断面荷重の大きさは , 断面荷重の増大にと もなう利点と弊害とを調和させ , 総合的に 見て最大の利益が得られるように決定され ている。たとえば , 1891 / 30 年式アーミイ ・ライフル用軽量弾 ( 弾丸重量 9 ・ (g) の断 面荷重は 21 ・ 1g/cm2, 同じく重量弾 ( 弾丸 重量 11 ・ 75g ) の断面荷重は 26g/cm2, ス モールボア・ライフル用弾丸 ( 弾丸重量 2 ・ (g) の断面荷重は 10 ・ 4g/cm2 である。 46 800m / 秒の初速をもつ重量弾の最大射 程が 5100m であるのに対し , 865m / 秒と いう大初速をもつ軽量弾の最大射程がわず か 3400m にとどまっていることは , 断面荷 重の弾道形状に及ぼす影響のいかに大きい ものであるかを実証するよい例であろう。 象条件と弾道形状の関係 しかし横風となると , 射弾をいちじる を無視してさしつかえないことになる。 ては , 通常 , 向かい風と追い風による影響 ずかに 4cm である。したがって射手とし も , これによる平均弾着点の高低偏差はわ 秒速 10m の向かい風または追い風があって ば , 射距離 600m で射撃しているときに 響はきわめて僅少なものであって , たとえ 向かい風と追い風の命中精度に及ばす影 風の弾道に及ほす影響 と極端な気温の変化による影響である。 関係の深い気象条件は , 主として風の影響 れを無視してさしつかえない。竸技射撃と 本質的な影響を及ぼさないものとして , えば空気密度の変化などは , 弾丸に対して る。したがって , 気象条件のなかの , たと に必要な時間はきめてわずかなものであ 的短く , 弾丸がその空間距離を通過するの 標的射撃で定められている射距離は比較 大きく減殺することもできる。 ば , 命中精度に及ぼす気象条件の悪影響を これにかんする必要な知識と経験があれ 期の方向から偏移させる。しかし , 射手に 丸の飛翔に大きな影響をあたえ , 弾丸を所 たえず変化してやまない気象条件は , 弾
3 腔外弾道学 円錐形表面 部す 頭押 ・丸にる 弾方す は上用 抗ら作 気下う 空をよ 飛向 弾丸重心 旋転のため弾頭は く図 28 > 弾丸頭部の円錐状回転 歳差運動 ( プレセ ッション ) により るが , 要するに , この場合の弾丸は規則正 右転作用を受ける しい振動運動を行ない , 弾頭でもって弾道 < 図 30 > 2 個の回転モーメントが合成 のまわりに円を描くように運動する ( 図 される結果新しく発生する弾頭を右に偏 28 ) 。したがって , このときの弾丸縦軸は , 移させる歳差運動 弾道のまわりに円錐形の就跡面を構成しな なって弾頭部が弾道接線のまわりに円を描 がら , たえず弾道を追いかけるような運動 くような歳差運動 ( プレセッション ) がお 形態をとることになる ( 図 29 ) 。 こる。この結果として , そこに , 弾頭を射 既述のように , 弾速の増大と弾長の増加 面 ( 銃腟軸を通る垂直面 ) から側方に偏移 にともなって , 弾丸を後方に転倒させる空 気抵抗の力が増大することは , 力学の法則 させる新たな運動が発生する ( 図 3 の。つ にもとづく当然の帰結であるから , 実包の まり , 弾丸の 1 側面に対する空気圧力は他 の側面に対する空気圧力よりも大きくな 型式に応じて , それそれの弾丸にはそれぞ れ異なった回転速度があたえられなければ る。 ならないことになる。 1891 / 30 年式アー このように弾丸の両側に加わる空気圧力 ィ・ライフルから発射される弾丸が毎秒 の大きさが異なるために , 必然的に , 弾丸 3604 回転の回転速度をもつのに対して , ス は射面から側方に偏移するようになる。そ モールボア・ライフルから発射される弾丸 の縦軸を軸として回転する弾丸が , 飛翔中 がわずかに毎秒 830 回転の回転速度しかも にその射面から側方 ( 通常 , 銃尾から見た たないようになっているのも , この理由に 旋転方向と同名の方向 ) に偏移していく現 よるのである。 象を“定偏 " 現象という ( 図 (1) 。 このように , 飛翔時の弾丸に安定性をあ 弾丸が銃口から遠ざかるにつれて , この たえるのに不可欠の要件である弾丸の回転 定偏の値は急速に増大する。アーミイ・ラ 運動にも , その利点の反面 , 有害な側面が イフルの場合 , 定偏量は射距離 300m で 2 存在する。以下に述べる定偏現象の発生が cm, 射距離 600m で 12cm であるから , 近 これである。 距離射撃や中距離射撃の場合は , それほど その縦軸を中心にして迅速に回転してい 問題とする必要はない。 る弾丸に , その弾丸を後方に転倒させるよ しかし , 遠距離射撃 , とくに正確性が強 く要求される場合の遠距離射撃にあって うな空気抵抗の偶力が働くと , これにとも く図 29 > 縦軸を軸とする回転運動をあたえられた長弾の空中飛翔図 38