無煙火薬 - みる会図書館


検索対象: ターゲット・シューティング
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1. ターゲット・シューティング

1 爆発性物質 反応をおこさせるための点火剤 , 雷管剤と してである ( 図 2 ) 。ちなみに , 銃火器実 包の雷管装置に充填される点火剤として は , 雷酸水銀 ( 雷汞 ) , 塩素酸カリウム , アンチモンから成る混和物を利用する場合 が多いようである。 2 / 炸薬取扱いには比較的安全 であるが , いざという場合にはまちがいな く爆轟をいとなむような性質をそなえたも のでなければならない。炸薬は点火薬を充 填した雷管の作用によって起爆する。この 爆発反応速度は毎秒数千 m に達するもので ある。炸薬としての性質をそなえ , 炸薬と して使用される爆発性物質には , 綿火薬 , トログリセリン , ニトログリコール , ダ イナマイト , トリニトロトルエン , 芳香族 化合物などがある。 3 / 発射薬毎秒数 m の燃焼速度を もつ速燃性の爆発性物質で , あらゆる火器 において , 銃砲弾に運動を付与するのに必 要なエネルギー源として利用されるもので ある。したがって , これは射撃と最も密接 な関係をもつ爆発性物質であり , 射撃にた ずさわる者としては , その特性 , 性能につ いて , 少なくともその概要ぐらいは知って おかなければならない。 発射薬は , その成分 , 物理的特性 , およ び化学的特性によって , 黒色火薬 ( 物理的 混和物 ) と無煙火薬 ( コロイドー膠質物 質 ) とに大別される。 黒色火薬は , 現今における他の主要発射 薬とくらべると , 弾道学的には不利であり ( 爆発して火薬ガスとなった場合でも , そ の容積は固体のときの容積にくらべて 350 ~ 400 倍にしか増大しない ) , 生産的にはは るかに少量しか産出されていない。したが って , 現在では発射薬としての黒色火薬は 無煙火薬によって完全にとって代わられ , 16 自動火器の発射薬としても , ライフル銃の 発射薬としても , まったくその姿を没する にいたっている。 19 世紀も終わりごろには , すでに黒色火 薬の能力をもってしては , 射程増大に対す る軍事上の要求にこたえることは不可能で あることが明白とされるにいたった。 方 , 弾丸に付与する初速を増大させ , 同時 にその火器の口径を小さくすれば射程増大 の目的を達成できるという事実は , すでに 当時の専門家たちによって理論的に解明さ れ , 完全な承認を受けるまでになってい た。こうして , より強力な発射薬の出現が 強く要望されることになったのである。 強力な発射薬として当時すでに発見され ていた炸裂性爆薬 ( 炸薬 ) をそのまま利用 しようとする試みもなされたが , これは , 炸薬の爆発反応速度が極度に大きすぎるた めに , その目的を達成できずに終わるのほ かはなかった。その後 , 強力な爆発性物質 の燃焼速度の規整が可能の溶媒によって綿 火薬を処理する方法が考案され , この処理 法の成功により , はじめて時代の要求に たえうる発射薬の出現を見るにいたった。 無煙火薬の成分 無煙火薬の化学的な基礎成分は綿火薬 ( ニトロセルローズ , N C ) とニトログリ セリン CNG) であり , その本質的性格は 炸裂性爆薬つまり炸薬である。 綿火薬 ( ニトロセルローズ ) は , セルロ ーズの多い綿花 , 木繊維 , 大麻 , 亜麻など 無煙火薬

2. ターゲット・シューティング

に , 適当な方法で硫酸処理および硝酸処理 をほどこしたものを原材料として製造され る。綿火薬そのものは白色の物体で , 外見 からだけでは , その原材料との間に何の差 異も見いだせない。 ニトログリセリンは , 純脱水グリセリン と硝酸および硫酸との混和物から製造され る光沢のある無臭の液体である。 ニトログ リセリンには , ある種のニトロセルローズ を溶解させる能力がある。 炸薬から発射薬への変質は , その膠質化 によって達成される。綿火薬がある溶媒で 処理されると , まず , 同一性状の可塑物に 変わり , 次いで , 凝結して硬コロイド化し て , その物理的基礎条件を一変する。こう して , その爆発性化学変化は , 可塑性と粘 性のために , 速燃性の性格をもつようにな る。つまり , 発射薬としての性格をそなえ ることになるわけである。 無煙火薬の種類 膠質化のために用いられる溶媒の種類に よって , 無煙火薬はニトロセルローズ無煙 火薬とニトログリセリン無煙火薬の 2 種に 分けられる。 ニトロセルローズ無煙火薬爆発性を そなえず ( 揮発性のため ) , 綿火薬を膠質 化することのみを使命とする溶媒を用いて 製造され , 膠質化された火薬の中には溶媒 が残っていないもの ( 絶無とはいえないに しても ) 。シングル・べース無煙火薬とも ニトログリセリン無煙火薬溶媒とし てニトログリセリンが用いられ , 膠質化の あともニトログリセリンが綿火薬と固く結 合して火薬成分を構成しているもの。プ ル・べース無煙火薬ともいう。 ニトロセルローズ無煙火薬の長所は , 無煙火薬 トログリセリン無煙火薬と比較した場合 , 製造における安全性が比較的大きいこと , 燃焼温度がはるかに低いこと ( 摂氏 2400 度。これは , 銃身の命数をより長くするこ とになる ) , および長期保存する場合の変 質度が少ないことにある。 これに対して , ニトログリセリン無煙火 薬は , ニトロセルローズ無煙火薬にくらべ ると , 製造過程の迅速性においてまさる ( ニトロセルローズ無煙火薬の製造には 1 昼夜の日時が必要なのに対し , ニトログリ セリン無煙火薬のそれはわずかに数時間で ある ) , 生産費が安い , 威力がより強大であ る , 物理的堅牢性に富む , 燃焼条件に対す る順応性においてすぐれている , といった 長所をもっている。 これらの長所をもっ反面 , ニトログリセ リン無煙火薬には次のような短所がある。 爆発性化学変化のさいに生ずる温度が高 く ( 摂氏 3000 ~ 3500 度 ) , そのため銃身の 過熱を早めて銃身の命数を短くすること , 温度の急変にあうと火薬中のニトログリセ リンが汗をかき , 所期の弾道性に変化をき たすおそれがあること。 無煙火薬の性質 無煙火薬は角または指物用の糊に似た外 観をもち , よく膠質化されたものは , 薄く するとほとんど透明になる。色は明黄から 暗青までさまざまである。小粒の無煙火薬 を黒鉛でうまく処理すると ( この処理は火 薬の可塑性を向上させ , 火薬の粒と粒との 粘着を予防するために行なわれる ) , その 表面は暗灰色の光沢を帯びたものとなる。 無煙火薬は水に溶解しない。吸湿性は高 くないが , 長いあいだ湿った場所におく と , 火薬温度が 2 % 近く上がって , 弾道性 能の低下をきたす ( 水気には火薬成分中か 17

3. ターゲット・シューティング

1 爆発性物質 らニトログリセリンを駆逐する作用がある なものである。無煙火薬は , その物理的性 ので ) ことになる。無煙火薬の比重は , そ 質として , 大きな堅牢性と弾力性をもって の種類によって異なるが , だいたい 1.55 ~ いるので , 運搬にさいし , あるいは振動を 1.63 の範囲内にある。 受けたために , 変形したり , 微粉化したり 無煙火薬を燃焼させるのに必要な温度 する心配はまずないものと考えてよい。 ( 着火温度 ) は摂氏 180 ~ 200 度の間にあ 無煙火薬の良否は , その火薬の粒の 1 つ る。装薬温度が高くなっていればいるほ 1 つがいかに正しい形状をもち , 全体とし ど , その装薬の燃焼速度はより大きなもの ての粒がいかに同一の大きさ , 形状のもの となる。着火温度にまで火薬の温度を高め として , そろっているかによって , これを 判定することができる。火薬の 1 粒 1 粒が るのに必要な熱量の消費が , それだけ少な 正しい形状を保ち , すべての火薬粒が正し くてすむことになるからである。 く同じ大きさ , 形状のものばかりでそろえ 無煙火薬は大きな作業力をそなえてい られていることは , 発射のさいに行なわれ る。無煙火薬 lkg はその爆発によって約 る火薬ガスの造成現象に同一性と法則性と 900 リットルの火薬ガスを発生させるが , を付与し , ひいては射弾に正確性をあたえ これはアーミイ・ライフルの装薬量と銃腟 るための重要な要素となるものである。 容積との関係からすれば , 銃腟内の圧力を 3200 気圧にまで高めることになるほど強烈 ソ連製ビッグボア・フリー・ライフル ( 7. 62mm) ( 上 ) ゼニット 3 ( 下 ) ゼ ニット 4 18

4. ターゲット・シューティング

1 爆発性物質 爆発性物質と爆発反応 14 1 0. 12 秒 銃内部における燃焼に要する時間一一 ・無煙火薬を成分とする装薬のライフル ば , 100 秒という短いものである。たとえ 1 1000 るが , 爆発性化学変化に要する時間は一一 性化学変化には遅速の差が生じることにな 爆発が行なわれるときの条件により , 爆発 ある。もちろん , 爆発性物質の化学成分と であるガス状態に移行する経過の迅速性で 体または液体の状態から , 変化の最終形態 1 / 過程の瞬間性爆発性物質が固 は , 次の 3 点にある。 爆発にその性格をあたえる代表的な特徴 爆発反応の特徴 。爆発性化学変化 " と名づける。 爆発のさいにいとなまれる化学反応を つに数えられる。 烈な音響も爆発にともなう顕著な徴候の 1 爆発の代表的な特色をなすものであり , 強 せるガスによってなされる。圧力の急増は よって爆発点の周囲の圧力を急激に増大さ は , みずから拡大しようとっとめ , それに 事に変える現象をいうのである。この仕事 にその潜在エネルギーを急速に物理的な仕 理的または化学的の変化をとげ , そのさい “爆発”とは , 物質がきわめて急速に物 物を。爆発性物質”と名づける。 ような能力をそなえた不安定な化学的結合 等の ) によっても急速にガス状に変移する 微弱な外作用 ( 打撃 , 摩擦 , 刺突 , 加熱 ・イナマイト lkg の爆発性化学変化 の完了までに要する時間一一 0. 00002 2 / ガスの造成爆発の産物として の拡張能力をそなえた大量のガス状化合物 の存在である。爆発性物質の爆発によって 発生するガス状物体の量は , いわゆる標準 状態 ( 0 ℃ , 1 気圧の状態 ) において 994 リットルの ・綿火薬 1 リットルーー→ ガス状物体 ・ニトログリセリン 1 リットルーー + 1121 リットルのガス状物体 の例によっても明らかなように , すこぶる 膨大なものである。 3 / 熱の分離爆発反応にさいして は多量の熱が発生し , これがガス状物体の 圧力をさらに増大させる。たとえば , ログリセリン 1 リットルの爆発では 24 , 000 ライフル銃用実包の装薬で 大カロリー は , 3 大カロリーという大量の熱量が瞬間 的に発生することになる。 爆発反応の種類 爆発性物質の化学成分と爆発が行なわれ るときの条件によって , 爆発反応の速さは 異なり , 速燃 , 爆発 , 爆轟の別が生じる。 1 / 速燃 1 秒間に数 m 以下の速 さで爆発性物質全体に爆発反応がひろがる 過程をいう。この反応過程が大気中でいと なまれるときは , 通常 , 小さな音響すらも ともなわない。たとえば , 毎秒 10 ~ 13mm の速さで進行する黒色火薬の大気中での燃 焼がこれである。しかしこの爆発性物質 が閉鎖された容器内で燃焼するときは , 大 気中で燃焼する場合にくらべてより高速と なり , 鋭い爆発音をともなうようになる。 たとえば , 銃腟内における無煙火薬装薬の 燃焼 ( 毎秒 10m 弱の速さで進行する ) がこ

5. ターゲット・シューティング

目 原著者まえがき 訳書改訂版発刊に寄せて / 安斎 実 訳書改訂版編集者より I . 発射の原理と現象 1 / 爆発性物質 爆発性物質と爆発反応 無煙火薬 2 / 腟内弾道学 銃身の堅牢性と耐用命数 弾丸の初速と銃ロエネルギー 銃の反動と反跳角 3 / 腟外弾道学 弾道の形成 長弾に対する空気抵抗の作用 縦軸を軸とする長弾の回転運動 弾道を構成する要素 弾丸の初速 , 形状 , 断面荷重と弾道形状 の関係 気象条件と弾道形状の関係 射弾の散布 -1 -4 LO 00 4 1 1 1 0 ) ワ 1 tO 《 0 ・ー 1 人 0 ー っ 0 っっ 0 00 00 00 0 6

6. ターゲット・シューティング

腔内弾 道 子 引金が引かれると , 撃針が雷管を打ち , これによって点火 甲弾を用いた場合 ) の間にある。 ・ライフルにおけるこのガス圧の値は 250 ~ 500kg / cm2 ( 被 るのに必要なガス圧の値を“強嵌ガス圧”という。アーミイ その腟内進行運動を開始する。弾丸を完全に旋条に嵌入させ る抵抗力 ) に打ち勝てるだけの力をもつにいたると , 弾丸は 対する抵抗 ( 薬莢ロの抜弾抗力と弾丸の旋条への嵌入に対す にともなって火薬ガス圧も急増する。ガス圧が弾丸の運動に 火薬の燃焼が進むについて , 火薬ガスの量は増大し , それ の過程が , 実に 0.0015 秒の間に終わってしまうのである。 年式アーミイ・ライフルでは , 撃発から弾丸の銃ロ離脱まで る。これは一瞬の間に完了する現象で , たとえば , 1891 / 30 い銃腔軸の延長線方向に向かって銃口から外部に抛出され し , 回転しながら銃口に向かって銃腟内を前進して , だいた 火薬ガスに圧迫された弾丸は , 旋条の中に嵌入しながら移動 かって拡大することになり , 弾丸を銃ロの方へ押し進める。 して膨張を妨げられた火薬ガスは , 抵抗の最も弱い方向に向 もって四方に圧力を加える。薬室の堅固な壁と薬莢底に衝突 のとなる。そこで , 火薬ガスは拡大しようとして , 同じ力を が進むにつれて , 火薬ガスにとっては薬室がせまくるしいも はじめ , 圧縮性の火薬ガスを大量に発生させる。装薬の燃焼 する。装薬は , そのすべてをあげて , ほとんど同時に燃焼し 表面に四方から火をつけ , 次いで , 燃焼は装薬粒内へと侵透 剤に一瞬の爆発がおこる。点火剤の強い燼は , 装薬の火薬粒

7. ターゲット・シューティング

2 腔内弾道学 弾丸の侵徹力は , その弾丸が命中時にも つ動力学的エネルギーによって決まる。銃 口から離脱する瞬間の弾丸が保有している 動力学的エネルギーを“銃ロエネルギー と名づける。弾丸エネルギーの測定単位は kg—m である。 1 kg-m とは , 1 kg のもの を lm の高さだけ上げる仕事に必要なエネ ルギーの大きさである。 ライフル銃から発射された弾丸は巨大な 動力学的エネルギーを保有している。たと えば 1891 / 30 年式アーミイ・ライフルから 発射される軽量弾の銃ロエネルギーは 360 kg—m である。ひと口に 360kg-m という が , これだけのエネルギーを発射以外の手 段で , 弾丸が銃腟内を進行通過する時間内 につくり出すには , 9600 馬力の発動機を 必要とするということによっても , このェ ネルギーがいかに巨大なものであるかがう かがい知られるであろう。 以上によって , 初速の大きいことと , そ れに関連する銃ロエネルギーの大きいこと とが , 現実の射撃にとっていかに重大な意 義をもつものであるかが , よく理解された であろう。初速が大となり , 銃ロエネルギ ーが大きくなるにつれて , ますます射程は のび , 弾道は低伸し , 弾丸飛翔中に外部条 件から受ける影響の度合は低減し , 弾丸の 侵徹力は増大することになるのである。 装薬が燃焼すると , 拡大する火薬ガスは それをとりまく全表面に対し均一な力でも って圧力を加える。そして , 銃腟壁に加わ る圧力は銃腟壁の弾性拡張をもたらし , 弾 26 銃の反動と反跳角 底に加わる圧力は弾丸を銃腟に沿って移動 させ , 薬莢の底部に加わる圧力は薬莢をへ て遊底 , さらには銃全体に伝わり , 弾丸の 運動方向と反対の方向に向けて銃を移動さ せる。つまり , 発射時の火薬ガスは , 銃と 弾丸とをそれそれ異なった方向に向けて投 げとばす作用をいとなむわけである。発射 時に火薬ガスの作用によっておこる銃の後 方に向かう運動を銃の“反動”と名づけ る。 銃の反動は射撃の命中性に大きな影響を あたえる。したがって , 射手はこの現象を 十分に解明し , その本質をよく理解してお かなければならない。 物理学の法則によれば , 同一の力によっ てあたえられる物体の運動速度は , その物 体の質量に反比例する。したがって , 弾丸 のあとから噴出する火薬ガスの銃ロ断面に 対する反作用を無視して考えるときには , 反動による銃の自由後座速度は , 弾丸の初 速にくらべて , 銃と弾丸との重量比と同じ 割合だけ小さくなった値をとる , というこ とができる。 銃の反動は , 弾丸が運動を開始すると同 時に始まり , 弾丸が銃口からとび出す瞬間 に最大の力をもつようになる ( 実際には , 火薬ガスの銃ロ断面に対する反作用が加わ って , さらに大きなものとなるのである が , このことはいちおう無視して考察し ライフル射撃の射手は , 肩に対する衝撃 によって銃の反動を感知する。肩に感じる 衝撃の程度を弱め , 照準動作を容易にする ためには , どうしても銃床を採用すること が必要になる。これによって , 次に述べる ように , 衝撃力が減殺されることになるか らである。 反動をひきおこす火薬ガスの圧力は ,

8. ターゲット・シューティング

2 腔内弾道学 装薬の完全燃焼に先立って弾丸の腟内進 ある。 行運動が開始されることになるため , 銃腟 弾丸が銃口から離脱する瞬間の腟内ガス 内のガス圧は時機に応じて異なる値をと 圧を“銃ロガス圧”という。銃ロガス圧の 大きさは , 1891 / 30 年式アーミイ・ライフ る。当初の弾丸の移動速度がまだ小さい時 ルで 416kg. / cm2 , スモールボア・ピスト 機においては , 弾丸背後の空間 ( 銃腟内の ルで 500 ~ 600kg / cm2 ( 銃身長によってこ 弾底と薬莢底との間に存在するスペース ) の差が生まれる ) である。ライフル , ピス の増大率にくらべて , ガス量の増加率がは トル , リポルーにおける銃腟内のガス圧 るかに高いものとなるため , 銃腟内におけ と弾速の変化状況を曲線グラフで示すと , るガス圧はしだいに大きくなる。しかし 図 3 , 4 のようになる。 ガス圧の増大は弾丸の移動速度の増加をも なおここで指摘しておかなければならな たらすことになるので , 次の段階では , ガ いのは , 腟内ガス圧の変化状況と装薬の密 ス量の増加率が弾丸背後の空間の増大率に ついていけなくなる時機が到来し , この時 度との間に密接な関係が存在するというこ 機を境にして , 腟内のガス圧はしだいに低 とである。つまり , 装薬の密度が増大する 下しはじめる。 につれて , その燃焼速度は急激に増加し , ときとしてはガス圧の増加速度も爆轟のさ 装薬が燃焼し終わった時機を過ぎても , 火薬ガスはなお多くのエネルギーを保有し いのそれに近いほどに大きなものとなると いう事実である。したがって , これに原因 ( これはその圧縮性にもとづく ) , 膨張運 する偶発事故を防止する意味からも , 弾底 動をつづけ , 弾底に作用して弾丸の運動速 部が薬莢内に深くはまりこんでいるような 度を増大させる。その後も , 火薬ガスは弾 実包は , これを使用しないようにしなけれ 底に作用して弾丸速度を増大させつづけ , 弾底に作用するガスの圧力と大気の抵抗力 ばならない。 とが同じ値をとるにいたって , 弾丸速度の 火薬の湿度が高まると火薬の燃焼は緩慢 増大はやむ。このガス圧そのものが弾丸速 となり , したがって , 火薬ガスの増加も緩 度を増大させる作用をやめる時機は , だい 慢となるので , 湿った装薬を使用すると遅 たい弾底が銃口から 20cm ほど手前に達し 発の現象を招くおそれがある。装薬の湿度 たときである。したがって , 弾丸は , 銃腔 が高く , 雷管の性能も落ちているときに 内を進むにつれてしだいにその速度を増大 は , 雷汞爆発による陷は装薬の全火薬粒を し , 銃口から数 cm 手前の付近で最大の速 同時に発火させることができず , 装薬はま ず点火剤に近い部分 , 次いでその次の部分 度を保有するにいたる。 というぐあいに , 徐々に燃焼に移ることに 火薬ガスの圧力は , 起綫部から数 cm 進 んだ付近で最大となる。 1891 / 30 年式アー なるため , 撃針が雷管を打ってから発射音 ミイ・ライフルの腟内最大ガス圧は , 軽量 を聞くまでの間に , 若干の時間間隔を生ず 弾を使用した場合 2850kg / cm2 , 重量弾を ることになる。したがって , 撃針が雷管を 使用した場合 3200kg / cm2 弱である。ス 打ってもただちに発射にいたらない場合 , つまり遅発の現象が生じたことを知った場 モールボア・ライフルとスモールボア・ビ 合 , 射手は急いで次の装填を行なわずに , ストルの腔内最大ガス圧は 1300kg / / cm2 , 数秒間はそのままの状態を持続して , 遊底 1895 年式ヒ。ストルのそれは 1100kg. / cm2 で 20

9. ターゲット・シューティング

、 : 引社アまにを 爆発性物質 13 の中をいかに運動するかを研究対象とする学問である。 別 ( 液体 , 土砂 , コンクリート , 木材 , 鋼板等 ) に応じ , そ " 侵徹弾道学 " は , 弾丸が目標に命中したあと , 目標の種 である。 抛出しなければならないかという問題の解決を主とする学間 弾丸を , いかなる射角 , いかなる初速度をもって , 銃腔から し , 目標に命中させるためには , 特定形状 , 特定重量をもつ り , 銃腟からとび出したあとの弾丸の運動をその研究対象と 。腟外弾道学 " は , 火薬ガスとの関係を絶ったあと , つま という問題の解決を主とする学間である。 をとどめながら , いかにして弾丸に最大の速度をあたえるか 銃腟内における許容圧力を越えない範囲内に火薬ガスの圧力 運動とそれにともなうあらゆる現象とをその研究対象とし , “腔内弾道学 " は , 火薬ガスの作用にもとづく弾丸の腟内 学”および“侵徹弾道学”に分けられる。 丸に作用する力の性質によって , 。腟内弾道学”“腟外弾道 弾丸の運動を研究する学問を“弾道学 " といい , それは弾 続する。 ら空中にとび出した弾丸は , 慣性によって今までの運動を持 その速度を増しながら腔内運動をつづける。ついで , 銃腟か が一定の大きさに達すると , 弾丸は運動を開始し , しだいに 装薬は燃焼によって高圧高温のガスに変わる。ガスの圧力 の銃腟内から外方に向けて抛出することを“発射”という。 装薬が燃焼するときに生じるガス圧により , 弾丸を銃火器

10. ターゲット・シューティング

2 腔内弾道学 を開いたときに爆発がおこって射手を傷つ けたり , 銃の破損をまねいたりすることの ないように行動する配慮が必要となる。 こうして , 不完全な包装のままで乾燥不 十分な場所に長いあいだ保管されていたよ うな実包を用いて射撃する場合には , 細心 の注意をはらわなければならないのであ る。 装薬はその燃焼にあたって , 銃腟内にき わめて高いガス圧を発生させる。弾丸が銃 口からはなれる瞬間における最低ガス圧で も , それは数百気圧に達する ( 工学単位と しての 1 気圧は lkg / cm2 としてよい ) 。 このように強大な圧力に銃身が抵抗でき るためには , 銃の製造にあたって銃身の堅 牢性について大きな考慮をはらう必要があ る。銃身の堅牢度を左右する要素は , 銃身 の肉厚とその材質である。銃身は , ガス圧 曲線の性格に適応させて , 銃身後部では肉 厚を厚く , 銃ロ部では肉厚がより薄くなる ように作られる。 銃身の肉厚は , 標準ガス圧よりはるかに 大きいガス圧にも耐えられるように , 堅牢 性に安全度をもたせて決定される。これ は , 実用の場面で発生するかもしれないあ らゆる事態に対する配慮にもとづくもので ある。こうして , 現実の銃身肉は , 通常実 包の発射のさいに形成される火薬ガスの標 準圧力よりも数百気圧から数千気圧も高い 圧力に対して抵抗できるだけの厚さをもっ たものになっている。たとえば , 1891 / 30 年式アーミイ・ライフルにおける腟内最大 銃身の堅牢性と耐用命数 22 ガス圧は 2850 ~ 32g 気圧であるが , その銃 身にはさらに 2650 ~ 2300 気圧に耐えられる だけの安全度をもたせて , 約 5500 気圧とい う高圧にも耐えられる堅牢性があたえられ ているのである。 発射時には , 銃身の内部は火薬ガスの圧 力に抵抗しつつ拡張する。この場合 , 銃身 肉の拡張がその材質のもつ弾性限界の範囲 内にとどまって , ガス圧を受けると拡張す るが , ガス圧がなくなるともとの状態にも どるようであれば , その銃身には所要の堅 牢性がそなわっているといえる。これに反 して , 銃身肉の拡張が弾性限界の範囲を越 えるようであれば , 銃身の堅牢性が不足し ているのであって , 銃身肉は永久ひずみを おこし銃身は膨張して ( 図 5 ) , ときに は破裂することもある。 1891 / 30 年式アー イ・ライフルについていえば , 腟内ガス 圧が 5500 気圧以上に達した場合に , このよ うな事態をまねくことになる。 射撃竸技の場において銃身破裂がおきる ようなことはきわめてまれである。とくに 肉の厚いへビ ー・バレルをもつフリー・ラ イフルで銃身破裂がおこることは絶無であ るといってよい。しかし銃身膨張はかな りしばしば発生する。ことに , 射手に対す る初歩の指導が行なわれている射場などで は , 銃身膨張をおこしたスモールボア・ラ イフルを発見することが多い。このとカ らも察しがつくように , 銃身の膨張は , そ のほとんどが , 射手の不注意と取扱い上の 無知によってひきおこされるものなのであ る。 しかし銃身膨張の直接原因は , 発射の さいの銃腟の弾丸進路上における異物 , つ まり , 手入れ後に残されたポロ , 麻くず , 火薬の粉 , 滴状になった濃厚油脂 , 雪片 , 泥 , 塵埃などの存在である。異物は一種の