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検索対象: 人は影のみた夢 3 : マリオネット・アポカリプス
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1. 人は影のみた夢 3 : マリオネット・アポカリプス

212 見つめる。 「ここが特別な資質を持っ子供を育てる場所だと、さっき言ったわよね ? 」 そう切りだした彼女に、羽月はうなずいた。 「聞いた。遠王のことも」 「その子供たちの特別な力は、特別な時にだけ使われることになっているのよ。一族の命運が かかった時だけ。おまえが生まれてから追われる以前に、そういうことはなかったわ。だか ら、現環島の子供が呼び寄せられるのもあり得ないのよ」 「現環島の子供たちのカって、何 ? 子供にしかない力なの ? 」 「ええ」 そむ 紫子がそう言って、言葉を濁すように顔を背ける。 じらされた羽月はむっと口を結んだ。睨むようにして言った。 「それはあたしに隠しておきたいことなの ? 」 「そうじゃないけれど。それは直接関係のないことだと思うのよ。これ以上余計な知識をいれ ても、おまえ、訳がわからなくなるだけよ」 一族の者が生まれてから大きくなるうちに、何年もかけて覚えてゆくことを、羽月はほんの 十日やそこらで飲み込まなければならなかったのだ。 「でもこれ、あたしのシシンのことかもしれないの」

2. 人は影のみた夢 3 : マリオネット・アポカリプス

紫子がはっとした。羽月の両肩をつかむ。 「シシンて、あなた思い出したの羽月」 「ま、まだわからないけど。でも、二人いるかも知れないって、そういうことでしか理由がっ かないから : ・・ : 」 しんぎ はやる紫子に、羽月は声をうわずらせた。紫子は真偽を確かめようとするように、目を細め て彼女を見つめ、ふいに肩の力を抜いた。 「そうね、ありえないわ、そんなこと」 つぶやきに、今度は羽月が目を瞠る番だった。これはシシンの記憶ではない ? 「二人とも、歳が若すぎるわ。あなたは二歳、向こうは四歳から六歳。どちらも、普通ならま はつろ だただの子供よ。あなたはいいにしても、他の子供でそんなに早い〈発露〉の例は聞いたこと がない」 まと 一族の子供が〈香気〉を纏い始めるのは、だいたい十五歳前後の思春期。その時期までは、 3 能力者もそうでない者も、どこにでもいる子供と変わらなかった。 み の 「それに、現環島から子供が一人でも消えたら、大騒ぎになるわ。事件になれば桜間に必ず情 影 報が入るけれど、それも知らないーー」 人 紫子の言葉は、途中で切れた。。 ひん、と周囲の空気が張りつめる。 「〈若桜木〉 ? 」

3. 人は影のみた夢 3 : マリオネット・アポカリプス

よみがえ 器を使えば、死ぬことはない。蘇ることが出来る。何度でも。 それを、羽月自身が施された。 この島に来る途中、遠王がしていた昔話だ。 ) そのために用意されたのが遠王だった。普通はそこで消されるはずの遠王の〈意識〉は、目 くらましのために生かされた。ひそかに連れてこられた離空ではなく、現環島へ戻ってから死 むえん ぎせい ぬのならばそれはかまわないと、さらに犠牲となる、一族とは無縁の子供がさらわれてきてい その子供にねじ込まれるはずだった遠王の〈意識〉は、羽月が移植されるまで放っておかれ た。彼は大事ではなかった。現環島で育てられた、総領家の器の意識だ。島へ戻されるまで正 気であれば、どうでも良かった。 、あれは、あなたなのね ? あなたで、あたしなのね : いつの間にか、両手は自由になっていた。 ずきずきと痛むこめかみを押さえ、羽月はうめいた。殺されるヴィジョンが、一本の糸でつ 3 夢 . ながつ、た。 み あれは、遠王の目から見た離空の景色と手術だったのだ。彼は現環島で他の子供たちと一緒 の 影 に、予備体として、何も知らずに体を明け渡すための練習をしながら育てられていた。 ぬがら 人 だからあの時も、その練習だと思って、空いていた羽月の抜け殻に飛び込んだのだ おの 目を開けた瞬間、斧が見えたのは ( それでだった。遠王は羽月の体の中で、その腕がはねと っ ) 0 スペア ほど

4. 人は影のみた夢 3 : マリオネット・アポカリプス

のなのだと。 狂い死にをしてもかまわないと思われた子供は、遠王として生き延びた。ってでも生きる と思った子供は、何一つ忘れずに、たくみに鶸子の庇護下へ入り、今日まで至った。 「俺はおまえが生きていると信じていた」 信じて、それだけを頼りに生きてきた。いっか体を奪い返す、その日のためだけに。 遠王が、熱くしやがれた声で言った。 ぎけい 「あんたは、たいそう大切な姫なんだな。あの儀恵のババアが、しやしやり出てくるほどだ。 けれど、俺には関係ない」 彼は顔を寄せた。羽月の涙をなぜか吸い取り、抱き寄せる。 「これは俺の体だ」 全身が反応した。待っていたというように。 「返してもらうーー・」 3 「その手を離せ」 ふいに第三者の声が割り込み、遠王の後ろに男が現れた ! 影 人 ククリたちの〈香気〉が呼応しそうになったが、すぐにそれは抑えられた。近くにいる紫子 もの ひご

5. 人は影のみた夢 3 : マリオネット・アポカリプス

ていた。 糸かい矛盾や疑問はとりあえず置いておくとして、もしそうならば、〈その人〉は現環島の 出身である可能性が高かった。この島へ来て、急に思い出し始めたのだから、それは間違いな いだろう。 そして、ヴィジョンのほとんどに共通するキーワードから、少なくとも、四歳の時点までは ここにいた人のはずだった。 あと、おそらく。 ( 男の人、だと思う ) しかし、羽月の前をよぎってゆくヴィジョンから、そうではないかと これには確証がない いう気がした。 気配、というより匂いだろうか。 羽月の見るそれは、映画のようではなく、自分の視点からのものだった。格闘ゲームなど で、あたかも自分が体験したように思えるあれと似ている。 それでゆくと、物の見方や感じ方が女性と少し違うようなのだ。羽月が消極的な子供時代を 過ごしたせいもあるだろうけれど、それだけではない何かがあった。 ( 四歳まで現環島で育ち、そのあとおそらく現環島を出た男性 ) 力いとう 果たして、それに該当する者がいるのだろうか。

6. 人は影のみた夢 3 : マリオネット・アポカリプス

紫子がかすかに笑った。塔埜を見る。 さくらごぜ 「わたしもまた、羽月のように早熟な子供だったのよ。だから初めから〈桜御前〉の元で育て られたの」 「・ーーそれで、あたしは諦めながら生きてきた、とでも一言うんですか」 はつ、と塔埜は吐き捨てた。そんなのはおためごかしだ。 「そうね。ある意味は」 こうてい 肯定され、塔埜はさらに語気を荒らげた 「じゃあ、自棄になったこともないと」 と。ふいに紫子の顔つきが変わった。 「いいえ」 いど 紫子が低い声で答え、そこでびたりと口を閉じた「挑むように塔埜を見て、ふい ? と目を逸 夢らす。 しいえ。あるわ。一度だけ。 : : : 十三の時に」 の それは彼女が〈若桜木〉の位を正式に継いだ年齢だった。 紫子が黙り込んだため、塔埜は次の言葉をためらった。やりこめてやろうとする成り行きで 出した言葉に、そんな顔をするとは思ってもいなかったのだ。

7. 人は影のみた夢 3 : マリオネット・アポカリプス

みんなヒトカゲをありがとうー ポケモンのヒトカゲがわからない ( てゆうか間違えて覚えてた ) とかちらっと書いたら、 、くるわくるわ、シールやら写真やらプリクラやら。 わかった。もうわかった。あたしが悪かった ( 笑 ) 。 まー、それはさておき。こんなに関連商品が出てんのねー、ポケモンてば。さすが人気アニ メだけあるねえ。長寿番組だしね。 なんて感心しているわたしは、当然ピカチューくらい しかわかりません。たまに友人の子供に「ポケモンの歌一緒に歌おう」とか言われると、ヒジ ヨーに困ります。だってあれ、モンスターの名前だけで構成されてんじゃんよ ! ( しかしそれ も結構前の話だから、いまは歌変わってるのかもしれないわね ) とどうしてそういうこと、未婚のあたしにいうかなあ。ていうか、あんたのママだって必死に あ 覚えてんだよと、首をしめながら教えて差し上げたい。年寄りは横文字の早ロ言葉が苦手なん だよ ! ( 笑 ) あとがき

8. 人は影のみた夢 3 : マリオネット・アポカリプス

( いや ! ) 羽月は頭を振った。この会話と遠王のささやきが共鳴する。 「やめて : : : 」 泣き声が、自分のロではない遠いところから漏れたように頼りなく聞こえた。両腕をもぎは ふさ なそうと身をよじる。耳を塞ぎたい。 ほっさ 発作のような荒い呼吸を、羽月は繰り返していた。苦しさから涙がにじむ。 自分の中で何が始まったのかを、羽月は知った。ぎしぎしと、体の中のどこかわからない部 3 きし 分が軋んでいる。 の ( 封印が ! ) 影 解けかけているのだ。かみ合わない記憶と、幻の声と、遠王の体温。それらが激しく羽月を 人 揺さぶっている。 かんだか 甲高い悲鳴を羽月は上げた。足下が抜け、奈落に堕ちてゆくイメージが、繰り返しフラッシ 現環島から ? でもそれではすぐに。 もう一人、よそから子供を連れてこさせよう。それを使えばよい。 ならくお

9. 人は影のみた夢 3 : マリオネット・アポカリプス

きょ 走り出した羽月に、紫子は小さな悲鳴を上げた。虚をつかれたため立ちつくしたのは一瞬 で、すぐに追いかけ始める。 だが、羽月は思いのほか足が速かった。その薄い体型で、紫子をどんどん引き離してゆく。 距離はあっという間に、叫んでも届かないほどに広がった。紫子の靴はヒールがある。この差 はもっと大きくなるだろう。 あかまっ 紫子は来た道を戻り、赤松の屋敷に飛び込んだ。離れの扉を叩く。 たかやしき 「高屋敷、高屋敷 ! 」 3 返事はない。 み 「高屋敷」 の 影 「あんだよュカリコサマ」 人 ふいに扉が開いた。不機嫌な顔つきの遠王が、ぬっと姿を現す。 彼の背中越しに部屋の中が見えた。古い子供服や本が、そこいら中に積み上げられている。 ☆

10. 人は影のみた夢 3 : マリオネット・アポカリプス

118 ですか ? 」 「そうじゃないわ、わたしーー」 「じゃあ、・久巳の息子だから ? 僕はついこの間まで、その名前も知らなかった」 「ちがうわ塔埜」 「僕は一族の育ちじゃない ! 」 彼は言葉を叩きつけ、紫子のロを封じた。 おきて 「あなた達の掟は知らない。はじめからノーといえない選択なんてするものか。〈若桜木〉さ よっ。 , つん 、と田 5 ってる。 ま、あなたはあの女にそっくりだ。人の頭を押さえつければいし ざりですよ、そのやり方には ! 」 ばん , 乾いた音がした。床を蹴った紫子に殴られたと気づき、塔埜は頬に血を上らせる。 「とんだ子供ね。姉さまの息子が聞いて呆れるわ」 塔埜は右手を思い切りうち下ろしていた。初めて、一女性の頬を叩いた。よろけた紫子が、金 切り声をあげる ! 「図星を突かれたら暴力おまえはさそや羽月のいい兄だったことでしようよ ! 」 「 , つるさい ! 」 あき ほお