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検索対象: 人は影のみた夢 4 : マリオネット・アポカリプス
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1. 人は影のみた夢 4 : マリオネット・アポカリプス

天望一族の血と力が広がるのを防いでいるかのようだ。もしくは、彼らの力に異物が混じる のを。 多分、両方なのだろうと羽月は思った。一族には天から墜とされたという言い伝えがある。 まじわ そしてそのカゆえに人々に恐れられていた。交流らないことが、お互いのために良かったの 羽月は寒さで痺れ始めた肩をさすった。いま考えを巡らせるならば、現実的なものにしなけ れば。 絶望しているけれど、羽月は生きたい。せめてもう少し。あと少しだけでも。 望みが翼になればい、。 風が運んでくれるならいいのに。 『思うことはカです』 とりとめもなく考える羽月の耳に、由和の声が聞こえた。かって、彼がククリとシシンのカ 一みなもと の源を彼女に教えた時のセリフだ。 ねが み 思いはカ、希いも祈りも力。 の 影 ( あたし、どうやってここに来たつけ ? ) 人 力で、ではなかっただろうか。 同じことが出来るだろうかと、羽月は考えた。思い、願い、祈ることでこの体を飛ばせるだ ( 〈桜御前〉の家へ : : : ) ふせ

2. 人は影のみた夢 4 : マリオネット・アポカリプス

とどろ 胸が轟いた。 羽月は知らない。自分に双子の兄がいると。覚えていないのだ。 「なんてこった。兄君にそっくりだ」 耳を疑った。自分には兄弟がいるのか 「あたしには兄がーーー」 訊ねかけた羽月の声は、ふいにあがった声でかき消された。 「おまえ、ククリかつに」 反射的に羽月は右腕を隠そうとした。普通の人々に混じって生活していた彼女にとって、そ れは知られてはならない秘密だったのだ。 その必要はないと気づいて、途中でやめた。羽月は右腕をかざす。銀の爪に光を受けて、顔 夢を庇った。 み息を飲む気配が伝わってきた。彼らは以前の刺客同様に、彼女をただの能力者だとだけ思っ ていたようだった。離空に戻った刺客はおらず、情報が届いてないのだ。 人 羽月の中で、信じられないような早さで考えがまとまった。 「ククリよ。そう言ったら退いてくれるの ? 」

3. 人は影のみた夢 4 : マリオネット・アポカリプス

おう 「ああ、わかっているよ。これは一種の〈呼応〉だからね」 「〈呼応〉 ? 」 まゆね 女は訝しむように眉根を寄せた。彼らがその言葉を使う時、それはククリ同士の反発を指 す。 「いや。言い直そうか〈共鳴〉と」 「御前 一一 = ロ葉遊びをするような儀恵に、女が疑うようなまなざしを向けた。やはりおかしくなったの か、と一一 = ロ , つよ , つに。 「帰ってきたんだよ、姫が」 「羽月さまが ? 」 みは めぐ 女は目を瞠った。考えを巡らせるようにさっと視線を走らせる。 「ではこの揺れはその ? 」 夢「そのせいだと思うよ。恐らくはね」 女は絶句した。彼女はいまやっと原因を知ったのだ。 膨「案ずることはないと皆に言っておやり」 人 儀恵が言うと、彼女はうなずいた。彼女たち桜間の者は、〈呼応〉しないため、引きずられ たと感じてもなぜだかまではわからないのだ。何の前触れかと不安に思っているだろう。 いぶか

4. 人は影のみた夢 4 : マリオネット・アポカリプス

くら 絽 ( 遠王との共鳴なんか、較べものにならない ) 知っている痺れが針で刺される痛みだとすれば、これは腕を斬り落とされるようだった。腕 に何かがねじ込まれるような、、いがどこかへ持ってゆかれそうになるような、正反対のことが 同時に起こっていた。 その原因は、この森にある気がした。ここに、羽月に関する何かがあるのか、それとも森が 彼女を食らおうとしているのか : どちらにしろ、長くいたいとは思わない。 ざわりと森が揺れ、彼女は急をのんだ。誰か来たのだろうかと辺りをうかがう。 違ったようだ。木々はただ、葉を鳴らしたのだ。風もないのに。 虫が這い登ってきたかのように、羽月の背がざわっく。ぞっとした彼女は、もう一度、視線 を配った。 誰もいない。何もない。 なのに、なぜ森が揺れるのか。 ( 考えちやダメ ! ) まぎ 悪いもの、恐いものを想像しそうになる自分を、羽月は紛らわせようとした。こんな場所に が 一人でいると、恐怖が蛾のように寄ってくる。羽月はさっきから何度も、発作的にその手の想 像をし始めては、追い払っていた。その蛾に止まられたら、羽月の理性はたちまち食い荒らさ

5. 人は影のみた夢 4 : マリオネット・アポカリプス

囲 ( 話の先を読め ) 彼は自分に言い聞かせた。頭の回転が遅くないと証明しろ。 行き場がない。塔埜にはその思いが強かった。だからもともと、うまく立ち回ろうとしてい た。だが、今はそれ以上のエネルギーがいる。鶸子に仕えることは、ある意味でサバイバルな えんおう のだ。生きるために殺せ。そう言った遠王は、これを知っていたのではないだろうかと彼は思 う。側近として生き残るならば、すべてをフルに使わなければならないと。 レしししのだけれど」 「あれは今、あのうごめく森の中にいるわ。そこから出る前に始末がっナ、、 「桜間儀恵が助けると、お考えですか ? 」 「当然よ。あれも頼るでしようし」 たく ふきこ 羽月を託され育てたのが桜間富貴子、守るために遣わされたのが桜間紫子だという事実を考 えれば、たしかにそうだろう。 「わたしに、森へ行けと ? 」 初めて会ったときに「羽月をこの手で殺す」と約束したことを思い出し、塔埜は訊ねた。だ が鶸子が顔を上げる。 「許しません」 思いがけす強い調子の否定に、塔埜は面食らった。 ゆかりこ

6. 人は影のみた夢 4 : マリオネット・アポカリプス

それでも塔埜は素直に答えた。以前のように、あれこれ先を読み考えをめぐらせるだけの気 力がなかったのだ。 、しキしオし塔埜はすっとそう思っ 出来ることなら茶碗を奪い取ってトレイに返し、女を追、ム、こ、。 ているのに、鶸子はそれに気づかない様子で目を瞠った。 「あら」 「なにがで・ : したか いきおいこんだ塔埜は、舌を噛んでしまい顔をしかめる。慌ててピアノを弾きはじめたよう 、一一 = ロ葉が和音のように重なり、もつれるのが自分の耳にはっきりと届く。 何かがおかしい 気づいた塔埜は、ふいにめまいを覚え床に崩れた。体を支えようと両手をつくが、まるでカ が入らずに鶸子の足元に倒れる。 驚いた塔埜は立ち上がろうとしたが、体が言うことをきかなかった。手が動かない。足も、 ヒ日、も がくぜん なまり まるで彼の周りの空気だけが、鉛に変わったかのようだった。愕然として鶸子を見上げる かか かんばい と、彼女は茶碗を乾杯のように高く掲げた。 ( あのお茶 ! ) みは あわ

7. 人は影のみた夢 4 : マリオネット・アポカリプス

しっそう おそらく不審感が人々に募れば、鶸子はそれを拭うための工作をするのだろう。失踪説をで っちあげるのかもしれないし、誰かが罪を背負って死ぬのかもしれない。 片づけが済むと、鶸子は電気を元通り消した。二人は手前の部屋に移動する。 「ところで。おまえ、この地震の原因を誰かに訊いた ? 」 鶸子は気に入りの籐の椅子に腰を下ろし、話題を変えた。返事を待っ間に足を組む。 「噂 : : : ですが」 「話してごらん」 「あれが、戻ったせいだと」 羽月の名を塔埜は伏せた。鶸子との間で彼女の名前を出すことはタブーに等しい 「僕、わたしははえぎわがざわっく程度にしか感じなかったのですが」 「桜間以外の一族中が知ったわよ。噂ではなく、事実よ」 「はい」 うかっ 夢塔埜はただうなずいた。この話がどこにゆくのか、見当もっかない。鶸子の前で、迂闊な発 み言をするのは、命取りだと彼は思った。以前からそう感じていたが、この一件で、その考えは さらに深まる。 人塔埜は全神経を鶸子の言葉に傾けた。彼女は従順なだけでは満足しない。ただうなすくだけ のでくの坊など欲しくもないはずだ。 つの ぬぐ

8. 人は影のみた夢 4 : マリオネット・アポカリプス

ひとっき 、。ししものではなかったのに、羽月には懐かしかった。一月ほど前まで 思い浮かべたシーノま、、 かざみどりなが は、都内に住む女子高生だった。それが今では夢のようだ。風で回る隣のビルの風見鶏を眺め て、ばんやりしていられたことなんて。 キ、 - う・と 今頃羽月のクラスメイトたちは、修学旅行で京都に行っているはずだった。どこを回ろう か、何を食べようか相談した。それが結局、彼女の「普通の毎日」の最後になってしまった。 ゆみえりこ 祐美と絵里子はどうしているだろう。羽月とナナ工とで四人グループだったのに、ある日を 境に二人が消えてしまったことで、何かが変わってしまっただろうか。 羽月は十日ほど前に京都にいたのだ。何か伝言が残せれば良かったと彼女は思った。たった 一言だけでも無事が伝えられたならば、と。 ( ばかみたい ) その考えを、彼女はすぐに打ち消した。身をひそめていた場所は、一般の観光コースから外 れすぎている。そんなところに、二人が来るわけがない。 それに、無事なのは羽月だけだ。「彼女たちの友人だったナナェ」はもういない。ナナ工は 自我を失くし、シシンとなってしまったのだから。 『あんたが殺したんだ』 耳元で祐美たちのなじる声を聞いた気がして、羽月は自分を責めるかすかな笑い声を漏らし た。そうだ。その通りだ。そんな自分が何様のつもりで、消息を伝えられるのか。彼女たちに なっ

9. 人は影のみた夢 4 : マリオネット・アポカリプス

な影のみた夢 登場ス留オな ' 彡第に 桜間唐埜 一族の力を加制す る能力を持つ間 の家の直系だか、 一族から出奔した 母の命令 0 、羽月 の兄として者の ように行動をとも にしてきた。自分 のス生を輌われた みから羽月を習 み、子のもとに くだるか・・。 あもうはづき・ 天望羽月 普通の女子高生だっ たか、実は磴殺者 の一族の領を天 望子の娘ごあり、 桁外れの力を持つ ガゆえ、実の母か ら命をわれてい ることを知り、街 撃を受ける。激し い逃避行の果てに、 故郷へ戻って真実 を知ることを決篇 するか・・

10. 人は影のみた夢 4 : マリオネット・アポカリプス

「あた、あたしたちは、あなたにとってはただの道具だったのそういうの」 「ええ」 ほほえ それが ? と鶸子は微笑んだ。ふいに顔つきを変える。 「でも、これはもう必要ないわね。おまえのシシンにされるくらいなら、処分するわ」 羽月はまろび出た。鶸子の手が、蒼司の頬を撫でる。ささやこうと口を開いた。 「さあ、愛しい蒼司。眠るのよ。おまえはわたしのみたーー・」 「夢なんかじゃない」 どう・もく ふいに近くでした声に、鶸子が瞠目した。。ハシンと乾いた音がし、彼女がよろめく。 そんなバカな ! 」 蒼司が立ち上がった。鶸子を見下ろし、つぶやく 「ずっと待っていた。この時を。羽月 ! 」 から 羽月は顔を上げた。視線がぶつかる。絡み合う。 ( ああ ) いまだー 二人は声をそろえた。ただひとこと天に放つ。