みぢかせつ と一度も身近で接したことがないことに気づいた。 「どうやって、この輪の中に入ればいいんだろう、ととまどいました。そして、も っとびつくりしたのは : ・・ : 」 しぜんわら かた 奥さんはアスリ 1 トたちとごく自然に笑い合ったり、肩なんかたたいたりしてい しやこ、ってき おく る。ふだんはそれほど社交的と思っていない奥さんが むすこ さらに、息子だ。お母さんほどアスリ 1 トたちとすっかりなじんでいるふうでは ないものの、なんとも楽しそうにやっている 「こりやいかん、と思いました。いい、 おとなが輪に入れずにもじもじしていたら、 みつともない : じゅんびたいそう かる ふえ 練習がはじまる。準備体操、軽いランニングのあとは、コーチの笛に合わせてア 」よ、つい」、つ スリートたちと共同の動きをいくつか : 、刀十」 「まいりました。固まっちゃって、まったく動けないんです」 きようそ、つあいて お父さんは、大きな会社で何人もの部下の上に立ち、競争相手の会社との戦いを れんしゅう おく いちど わ 、つご ぶか 0 、つご 0 わ たオカ
「さっきの、電車の中のことだけど」 しよ、つ、刀し 電車の中で障害のあるわが子がさわいだときのことだ。 へいき 「さわいでいるのに、あんがいお母さんは平気な顔をしている。わたし思ったこと がありました、だれかがとめてくれるのを待ってるのかなあ、なんて」 お茶のペットボトルをひとくち飲んで、 「そうじゃないというのか、わたし、よくわかった。その子にとったら、ちっとも ド ) よ、つ 異常なことじゃないの、あのさわぎは。何かあらわそうとしているんだ。だから、 お母さんがおろおろしちゃったら、その子はどうしようもなくなっちゃう、だから」 しんらい たいど しめ お母さんがその子を信頼しているということを態度で示さないといけないのだ、 そうぞう いずみ と泉さんは想像する あおやま 子中学生のおどろきとして青山さんは、「すごい」とつぶやいたのだろう。 「わたし、わかったことがあります」 泉さんかいう いすみ
あおやま ほっりと、青山さんがいった。 かんしん つづ ー ) よ、つ、力し 何に感心したのか、続きはいわなかったけれど、きっと、障害のある子をさずか かぞく そうぞう った家族への敬意なのだろうと想像した。そうにちがいないと思う。 かすかず 自分たちにはとうてい思いもおよばない数々のことを乗り越える。もどかしさや ふあん かぞくひび 不安や、とにかくたくさんのことを乗り越える。そういう家族の日々を思ったのだ ろ、つ 乗り越えるといっても、歯をくいしばってではない。歯をくいしばってがんばる、 しよ、つ、刀し しよ、つ・刀し という「こわばり」ではなく、もちろん障害から目をそらすのでもなく、障害をふ じんかく そんちょう しよ、つ・カし くめてその人格すべてを尊重している。だからこそのあのパワーを、障害のない女 しよ、つ、刀し 「電車の中で障害のある子がお母さんといて、ものすごくさわいだりしちゃうと、 も、つこっちがドキドキする。お母さん、こまってないかなあって」 しばらくふたりはだまって、おにぎりをもぐもぐやり、何か考えているふうだ。 「すごいなあ」
力い′、ん 小学校五年生の海人君のことを話そう ひきちがわなが 力しと 引地川が流れこむ海のそばで生まれたから海人。 力い A 」′、ん ちてきはったっしようがい 海人君はアスリートではない。つまり知的発達障害のある人ではない。けれども、 さんか スペシャルオリンピックスの卓球やバスケットボールのプログラムに参加している たっきゅう あいて たっきゅうだい 卓球ならば、アスリート 相手にポールを打ち合うラリ 1 をやったり、卓球台の むしと あみ たまひろ うしろにころがったポールを虫取りの網みたいなもので集めたり ( 球拾いだ ) 、そ さんか んなことをする。つまり、ボランティアとしての参加だ ハスケットボールならば、みんないっしょになって、パスやドリプル、シュート こんごう こ、つはくじあい の練習をしたり、アスリート・ボランティア混合の紅白試合に出たりする さんか そもそもはお母さんがボランティアに参加していて、いっしょについていったの ・刀い AJ / 、ん がはじまり。三年生のときだ。お母さんが、まだ三年生の海人君を家に置いて出か あんしん 、り・ゅ、つ けるより、いっしょにいったほうか安心だという理由 「はじめは、ぜんぜんつまんなかった」 れんしゅう たっきゅう 0 、つ 0 あっ 0 0 2
よぶん かのじよ ら彼女らといっしょにプレイしていると、なんというか、一まい余分なシャツをぬ かん ぐような、そういう感じがだんだんしてきました」 そのうち、からだがやわらかくなる そうなってくると、アスリ 1 トのほうも変わってくる。お父さんの側につかっか しんよ、つ とよってきて、短く何かひと言いう。お父さんにはそれが、「あなたを信用してい あいず ますよ」の合図と思えてくる よろこ 力い A 」 / 、ん そのことを喜んで海人君に話すと、 「お父さんはいうことかオー かんたん 簡単にいわれておしまいだったけれど さんか 、かつい」、つ そのうちお父さんにとって、この活動への参加が、いつの間にか自分自身のリフ レッシュになってきた。 ボランティアを「奉仕」ということだけの意味とするなら、お父さんにとってポ ナいけん ランティアではなくなってきた。今まで経験したことのないリフレッシュかある みじか バーだ」 じぶんじしん そば
と、ものすごい へいこ、つ つまり、いつほ、つのゴ 1 ル、つら、とい スタンドはコ 1 トと平行になっていない ち ふきん う位置だ。だから、手前のゴ 1 ル付近でもみ合いがはじまると、スタンドの観客た み ました ちは身を乗り出して真下をのぞきこむ。 「あっ、あぶない」 しよ、つ、刀し 「わたし、障害のある子のお母さんが、あんまりパワ 1 があるんでびつくりした」 あおやま 昼休みとなり、スタンドのすみでおにぎりを食べながら、青山さんがいう 「わたしも」 泉さんが同意し、 思わす泉さんが声を出したほど。 いすみ いすみ の レ」、つい 0 かんきやく 3
力い A 」 さんか 「はじめは、海人と同じような参加の仕方でした」 おく むすこ 奥さんも息子も休みの日に出かけるようになった。よくわからないけれど、オリ おく ンピックのボランティアなどといっている。あるとき奥さんが、いつもお父さんひ とり置いて出かけるのを気にして、いっしょにいきませんかとさそった。 「いやあ、かんべんしてよ。うちでねてるよといっていたんですが、ふらっとバス 学 / ししノ、、カ′ル ケットボ 1 ルの体育館についていきました」 ちてきはったっしようがい 知的発達障害のある人のスポーツということだけで、くわしいことを何も知らす ちてきはったっしようがい に出かけたから、ちょっとおどろいた。そういえば、自分は知的発達障害のある人 いつも、仕事、仕事で帰りもおそく、休みの日も出かけ、出かけない日はくたく つか たのからだを休めるのに使う、そんなお父さんが、いったいなぜ ? くわ かぞく さんか そして、ちょっとだけ加わったのでなく、今では家族の先頭に立って参加してい る。いったいなぜ ? お父さんの話はこうだ。 しごと しごと しかた
ノ、 . り・、も、も む いえな しんしゅうやまやま とてもしっとりとした家並み。その向こうに信州の山々、たくさんとれる栗や桃、 なが ちくまがわおぶせ 近くを流れる千曲川。小布施はそんな町だ。 」よ、つ ちょ、つし 「今日の足の調子はどう ? わる ゅうすけくん 声をかけると雄介君は、うん、とうなずいただけで、だまって走る。たぶん、悪 くないのだろう . り ) 、じよ、つきよ、つ」 ゅうすけくん 雄介君はスペシャルオリンピックスの陸上競技プログラム以外にも、ふだんか れんしゅう ばんそう ら自主トレで走っていると聞いた。伴走はお母さんだ。なるほど、日ごろの練習の 成果で、たしかに足の運びがいい みんか コースは民家の路地をぬけて、田んばのあぜ道にさしかかる。緑がきれいだ。 ほ、つー ) まぶか ゅうすけくん 雄介君はもくもくと走る。帽子を目深にかぶって、少しうつむきかげん。なんだ てつがくしゃ かじっと考えこむ哲学者のように走る。 せいか じしゅ 0 し、力し みどり 100
金をください、というのでなく ) 奉仕活動をする人」 つか 0 といった意味に使われる しよ、つ、力し てつだ もちろん、障害のある人のお手伝いをすることばかりがボランティアではない。 ていきてきあっ 力いカんせいそう す たとえば、海のそばに住む人びとが定期的に集まって海岸清掃をする、あれもボラ ンティア。 を」、も いうまでもなく、大事なのは、その人の気持ちということになる お 力い′、ん 海人君にとって、意外なことが起きた。 きよねん くわ お父さんまでがボランティアに加わるようになったのだ。去年のことである ふく そのお父さんは、今では卓球プログラムの副コーチまでやって、だれが見てもバリ ぎようてん 力い AJ ′、ん リのボランティアだが、はじめたとき海人君はびつくり仰天した。目をうたがった。 だいじ し、力し たっきゅう ほ、つしかつど、つ 0 0 9
毎日くり広げている。わかい部下にも、「だめだよ、考える前に動くんだ。頭でつ ・カ学」 かちになるから、固まっちゃうんだ」とハッパをかけている自分が、今バスケット ポ 1 ルのコートで、かちがちに固まってしまっている 、力学 / アスリ 1 トたちとの接し方がわからないから、肩に力が入って固まってしまうの だ、と自分では思ったけれど、 むすこ 「息子にドキッとすることをいわれました」 海人君はこういった。 「お父さん、いつもエライ人だからだ、会社で」 力い′、ん 海人君はただふっと思いついたことをいっただけだったが、お父さんにはこたえた。 「自分では思いもよらなかったけれど、たしかに、どこかふんぞりかえるクセかっ いていたかもしれない、 そう考える かれ はつけん おい、おれのいったいどこがエライんだ。彼 「これは、大事な発見でした。おい、 力いとノ、ん だいじ せつ ぶか 、つご