力い′、ん 小学校五年生の海人君のことを話そう ひきちがわなが 力しと 引地川が流れこむ海のそばで生まれたから海人。 力い A 」′、ん ちてきはったっしようがい 海人君はアスリートではない。つまり知的発達障害のある人ではない。けれども、 さんか スペシャルオリンピックスの卓球やバスケットボールのプログラムに参加している たっきゅう あいて たっきゅうだい 卓球ならば、アスリート 相手にポールを打ち合うラリ 1 をやったり、卓球台の むしと あみ たまひろ うしろにころがったポールを虫取りの網みたいなもので集めたり ( 球拾いだ ) 、そ さんか んなことをする。つまり、ボランティアとしての参加だ ハスケットボールならば、みんないっしょになって、パスやドリプル、シュート こんごう こ、つはくじあい の練習をしたり、アスリート・ボランティア混合の紅白試合に出たりする さんか そもそもはお母さんがボランティアに参加していて、いっしょについていったの ・刀い AJ / 、ん がはじまり。三年生のときだ。お母さんが、まだ三年生の海人君を家に置いて出か あんしん 、り・ゅ、つ けるより、いっしょにいったほうか安心だという理由 「はじめは、ぜんぜんつまんなかった」 れんしゅう たっきゅう 0 、つ 0 あっ 0 0 2
。 0 0 もくじ 0 0 。 はじめに しょ一つ 第①章アスリートたち : : : 7 しょ一つ 第②章川のほとりの体育館 しようがい しょ一つ 第 3 章障害ってひとくちにいうけれど・ しょ一つ 第④章大きなものを得る、それはなんだろう だい だい だい たいいくかん え 5
と、ものすごい へいこ、つ つまり、いつほ、つのゴ 1 ル、つら、とい スタンドはコ 1 トと平行になっていない ち ふきん う位置だ。だから、手前のゴ 1 ル付近でもみ合いがはじまると、スタンドの観客た み ました ちは身を乗り出して真下をのぞきこむ。 「あっ、あぶない」 しよ、つ、刀し 「わたし、障害のある子のお母さんが、あんまりパワ 1 があるんでびつくりした」 あおやま 昼休みとなり、スタンドのすみでおにぎりを食べながら、青山さんがいう 「わたしも」 泉さんが同意し、 思わす泉さんが声を出したほど。 いすみ いすみ の レ」、つい 0 かんきやく 3
力いレ」ノ、ん 海人君はふり返る たまひろ なんで学校が休みの日にわざわざ球拾いにいかなきゃならないんだよ、と思った。 つづ でも、二回目、三回目と続けていくと、帰るときには、 「来週から、もうくるもんか」 とはまったく思わなくなる。二カ月ぐらいすると、なんだかもうくるのがあたり まえのよ、つになった。 きゅ、つけいじかん 中学生のボランティアとも顔なじみになった。休憩時間にフロアに輪になってす わりこみ、話をすることもある ひとりの中学生がゆかいだった。 りゅ・、つ かれたっきゅ、つ 彼が卓球のボランティアにやってくるのは、はっきりした理由がある たっきゅうれんしゅう 「卓球の練習だ」 力い A 」′、ん かれ 海人君にそういった。でも、じつは彼は中学の卓球部なのだ。 「あの人、へた」 、らいしゅ、つ かえ 0 0 たっきゅうぶ わ 0 3 5
じしん 自分では、やったぜ、という自信のあったシュートだったのだろう、ずいぶんく 1 ) よ、つ A プ、ゆ、つ やしそうだ。ダウン症特有のくりんとした目で、ちょっとのあいだリングを見上げ くん あいて ている。ポールは相手にわたり、あわててマサキ君はドリプルしていくアスリート お を追いかける。 「もうひとつ、わたし、知らなかったなあ、と思った」 泉さんかい、つ かん 「あたりまえかもしれないけれど、わたしたちと、考えることや感じることは同じ なんだって、ほんとにあたりまえのことかもしれないけれど、そういうことを思い ました」 ふえ ミニゲームはなかなかおもしろい点の取り合いになっている。笛の音が鳴ると、 たいいくかんせんたい 体育館全体にひびきわたる。それがいっそうアスリートのようすをいきいき見せる れんしゅう あおやま 泉さん、青山さん、ふたりの女子中学生は電車の時間があるからと、練習がすべ お て終わる前に帰った。 いずみ いすみ 3
さんか その活動には、さまざまな立場の人が参加する ちてきはったっしようがい せんしゅ いうまでもなく、ます選手。知的発達障害のある人たちだ。スペシャルオリンピ ックスでは、その人たちを〈アスリート〉とよぶ。 さんか かぞく アスリ 1 トの家族ももちろん参加する。その人たちは、〈ファミリー かつど、つしゃ の活動者だ。 さんか かぞく せんしゅ そして、選手でも家族でもない人も参加している。その活動者たちの名は〈ボラ ンティア〉。 アスリ 1 ト (athlete) フア、、、リ . (family) ボランティア (volunteer) ちょ、ってん さんかくけい それはちょうど三角形の三つの頂点のようになって、あるいは三脚いすの三本の かつどうぜん あし あせ 脚のようになって、それぞれが汗をかいたり、大声で笑ったりしながら、活動を前 しん 進させている かつどう 0 0 わら かつど、つしゃ さんきやく 〉という名
きようだん こくさいほんぶ 国際本部がアメリカにあるのは、この活動のはじまりがアメリカだったからだ。 し カっしゅうこくだいと、つりよ、つ はじめた人は、第五十三代アメリカ合衆国大統領ジョン・・ケネディ氏の妹さん。 しじようさいねんしよう ケネディ氏は史上最年少でアメリカの大統領になった人だ。 と 「国家が自分のために何をしてくれるかを問うのではなく、みなさんひとりひとり と か国家のために何ができるか、それを自分に問うてほしい」 だいと、つりよ、つしゅうにんしき わだい と語った一九 , ハ一年の大統領就任式のスピーチは、大きな話題になった。わか しんせん くてとても新鮮だった。 しゅうにん ゅうぜいとちゅう けれども就任三年目の一九六三年、不幸なことに遊説途中のダラスという町で 凶弾にたおれた。四十六歳だった。 その妹さんの名はユニスさん しん かのじよ ちてきはったっしようがいしゃ しせつ 彼女は、あるとき知的発達障害者の施設をたずねた。今からすると信じられない と しよう力いしゃ へんけん よ、つなことだが、 その時代、障害者への偏見は強かった。見えないところへ閉じこ 、かん、か′、 めるという感覚さえあった。 し 0 ふこ、つ かつどう にい ) 、つーり・よ、つ 4
む まなっ 青い空に向かって号砲が鳴る。真夏のマラソンのスタ 1 トだ。 ながのけんしず かいおぶせ おぶせちょう 長野県の静かな町、小布施町で行なわれた「第二回小布施マラソン」。町の人々 につほんかながわ が手作りでもり上げたというその大会に、スペシャルオリンピックス日本・神奈川 さんか くん ゅうすけくん から、三人のアスリートが参加した。マサキ君とユミちゃん、そして雄介君。 こと さんかしやむ 学 / し、力いカ・わ おぶせえきまえ せいれつ スタ 1 トは小布施駅前だ。整列する参加者へ向けて大会側の人からあいさつの言 さいご 葉がある。最後に、 「スペシャルオリンピックスからも選手が見えています。ようこそ ! 」 えんどうおうえん った さんかせんしゅ と、ひときわ高く伝えられると、参加選手からも、沿道の応援の人からも、わー は / 、 1 ) ゅ かんせい っという歓声と拍手があかった。 そのマラソン大会のおよそ七カ月後の、二〇〇五年二月すえから三月はじめにか ひら レ」、つ廿一、刀しにし、刀し けて、「第八回スペシャルオリンピックス冬季世界大会」が開かれる。場所は日本 ー刀し ご、つほ、つ せんしゅ ひとびと
せんこくかくち スペシャルオリンピックスのスポーップログラムは全国各地で行なわ げんざいぜんこく しよおきなわけんふくしまけんあおもり ちくそしき れています。地区組織は、現在、全国 24 カ所。沖縄県、福島県、青森 けんやまなしけんとやまけんみえけんおかやまけんならけんとちぎけん しょ 県、山梨県、富山県、三重県、岡山県、奈良県、栃木県の 9 ヵ所では、 ちいき きよう せつりつじゅんびすす 設立準備が進んでいます。それぞれの地域の人たちが、今日も元気に およ お 走り、泳き、ボールを追いかけています。 00 00 ・ 2004 年 9 月現在 北海道 青森 000 千葉 000 ・・・ 宮城 イ′ 島 一口田 新潟 ん 栃木 ま奇玉 山梨 神奈川 東 山 長野 0 ・ ・・ 0 ・ 00 ー : に問い合わせ先一 NPO 法人スペシャルオリンピックス日本 ■本部事務局 〒 860-0845 熊本県熊本市上通町 1 -24 ビアーレビル 3F TEL 096-352-4000 FAX 096-352-1820 ー東京事務所 〒 1 05-0001 東京都港区虎ノ門 2-67 虎ノ門アネックス / F TEL 03-3501-4680 FAX 03-3501-4690 ・ホームページアドレス スペシャルオリンピックス日本 http://www.son. 0埼P バレー 卓球 バドミントン ポッチャ ポール
・著者略歴 植松ニ郎 ( うえまつじろう ) 1947 年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。『ペンフレ ンド」で第 40 回毎日児童小説最優秀賞、「春陽のべリーロール」で 第 12 回織田作之助賞受賞。著書に『人びとの走路』 (NHK 出版 ) 「き ようだいは 70 人 ~ まっすぐ生きろ ! 児童養護施設の子どもたち』 「げんこっ雲の空へ」 ( 佼成出版社 ) ほかがある。 かみやしん ( 上矢津 ) 1942 年、東京生まれ。「円」を考える抽象画家。自然と美術の関わ りをわかりやすく児童書にも展開。作品に「百年の蝉」 ( ポプラ社 ) 『みんなのいいぶん』 ( 岩崎書店 ) 『ゴイザキはみていたのかな』 ( 文 研出版 ) 『てをつないでごらん』 ( 佼成出版社 ) ほか多数。日本自然 保護協会の観察指導員でもある。 感動ノンフィクションシリーズ 今日もどこかでスペシャルオリンピックス 知的発達障害者たちの世界的なスポーツ活動 2004 年 10 月 30 日第 1 刷発行 著者 画家 発行者 発行所 K 0 5 e ー shuppan 印刷所 製本所 装丁 植松ニ郎 かみやしん 横田幸雄 株式会社佼成出版社 〒 166-8535 東京都杉並区和田 2-7-1 電話 ( 営業部 ) 03-5385-2323 ( 出版部 ) 03-5385-2324 振替東京 00170-2-761 株式会社佼成出版社 株式会社若林製本工場 赤松和美 + Kawabata Design Factory 本文レイアウト佐尾太一郎 落丁本・乱丁本はお取り替えいたします。 @Uematsu Jiro,Kamiya Shin 2004. Printed in Japan 旧 BN4-333-02104-9 C8336 NDC913 / 128P / 22cm ホームページアドレス http://www.kosei-shuppan. CO. jp/kodomonohon/ 本書の内容の一部あるいは全部を無断で複写複製することは、法律で認 められた場合を除き、著作者及び出版社の権利の侵害となりますので、 その場合は予め小社あてに許諾を求めてください。