そのあたりの呼吸をよくわきまえている竹内好は、共産主義北京政府を擁護するために周到な 論陣を張りめぐらします。そのためには、まず第一に、ヒ 」京政府は危機にさらされているのだと 言い募る必要があるわけです。 そこから、北京政府のすることなすことはすべて自衛のためなのだから、同情的に見なければ ちょうだい はや ならぬ、というお涙頂戴の論点が生まれます。可哀相なはこの子でござい、と囃したてるのと同 じ要領で、可哀相なは北京政府でござい、と沈痛な口上を高らかに述べたてるわけです。その皮 切りが、次のようなおどろおどろしい文言です。 紹介せねばなりませんが、それはともかくとして、時代がそう向いていると見て取ったゆえに、 竹内好は、言葉のうえでだけですが日本を見離して見せます。 わたしも絶望しちゃいまして、できれば、どこかへ亡命したい気持です。 折角そう思いたったのだったら、さっさと憧れのシナ大陸へ亡命してくれたらよかったのにと 思いますが、北京政府にとっては、この男がひとり亡命してきたところで、さしあたりなんの使 エージェント い道もないでしよう。それよりも、あくまで日本に踏みとどまり、北京政府の忠実な代理人とし て活躍してくれてこそ、シナの国益に多少とも利するところがあるわけです。 「日本は中国とすでに戦争をはじめた」という嘘八百 せつかく ⅢⅢⅱ きもち ( 同前 ) 210
と、つ とすばらしいことではありませんか。この論理からすれば、日本国民は北京政府ができるだけ強 力な核兵器を持ってくれるよう、ひたすら祈って声援をおくらなければならぬことになります。 いっとき共産主義者が唱えた迷文句に、「帝国主義国 ( 自由経済諸国を指す ) が核実験でまきちら す灰は黒く汚れているが、共産主義国が核実験で生みだす灰は白く清らかである」という抱腹絶 ひやくしやくかんとう 倒の珍論がありました。しかるに竹内好は百尺竿頭一歩を進めて、アメリカやソ連が保有する 核兵器は核戦争の可能性をはらんでいるが、北京政府が持つであろう核兵器は、これだけは例外 的に格別に、核戦争を防ぐ力になる、と保証したわけです。 竹内好のひそかに夢みるところ、アメリカもソ連も核兵器をすべて放棄し、北京政府だけが核 兵器を持つ状態こそ望ましいのかもしれませんね。 エトランゼ 中国の核実験に感動する異邦人 そうして、ついに北京政府は核実験に踏みだしました。待ってましたとばかり歓喜おくあたわ ざる声をあげます。いちおう日本の国民感情をおもんばかって悲しげな風をしてみせますが、そ シュガーコート れはご愛想の糖衣にすぎないので、この露骨に高らかな勝利宣言をご覧ください。 中国の核実験は、不幸な出来事でした。あってはならない、あらしめてはならない出来事 でした。人間として、わけても日本人として、この出来事を残念に思わぬ人は少いでしょ う。これは理性の立場です。理性の立場からは、私はこれまでも中国をふくめてすべての核 ふう ほうふくぜっ
「中国の核兵器だけが核戦争を防ぐ」という倒錯 こういう極端な妄想を高々と掲げてみせるその隠された意図は、明瞭でしよう。すなわち、日 本のシナに対する姿勢は戦争をしているのと同じほど理不尽である、と言い立てる論難です。悪 こと・」と いのはすべて悉く日本です。北京政府は気の毒な被害者です。哀れな被害者がわが身を守るた めには、そりゃあもう何をしても許されるでしよう。 つまり、北京政府が核兵器を持っという措置は、他国がそれをあえてするのとはまったく違っ て、北京政府にかぎっては格別であり、それは讃えるべきすばらしい善なる行為なのです。 おこな 将来中国が核実験を行い、核兵器を現実に持つようになったとき、それをどう使うかとい ひじよ、つ Ⅷうことは非常に問題です。アメリカとソヴェトは核兵器を独占することによって、他の国々 皿を押えていこうとしているわけですが、ソヴ〒トが中国の核開発に対し援助していないとい う状況で中国が独力で核兵器をもつようになれば、ある種の別の使いかたをするのではない 京 Ⅷかと思います。国力のシンポルとしての核兵器をもっことによって、共産陣営の中でソ連と Ⅷ対等になり、同時にそれが世界の核戦争を防ぐ力になる。中国のいままでの経路を延長して ( 昭和年 3 月『世界』〈討論〉「中ソ論争と現代」 ) 体 ~ 考えると当然そうなると思うのです。 アメリカやソ連が核兵器を持っていると、世界は不幸に核戦争の危険におびやかされるが、北 章 第京政府が核兵器を持てば、この場合は逆に「世界の核戦争を防ぐ力になる」のだそうです。なん 213
見ものであろうと、今から楽しみですね。 うやうや 第二に、もし条約を念頭においていないのなら、謝罪文を作成してわが国の代表がそれを恭 たてまっ おもむ しく奉るために北京へ赴け、とでも言うのでしよう。それなら痩せても枯れても貴方は文筆の 人です。その謝罪文なるものを起草するだけの労をはらってもいいじゃないですか。 もっとも、そんな紙切れ一枚をもらって北京政府が喜びますかね。その間の事情は大江健三郎 だって百も承知、そこから出てきたのが賠償論だと思われます。 しかし第三に、ヒ 」京政府は絶対に賠償を受けとれないのです。それをいったん受けとったが最 チャイナ 後、北京政府は正統政権としての面目を失うことになります。日本と支那の二国間に賠償という 論行為は絶対に行なわれません。ありうるのは日本が自発的に献金することだけです。 補だから、ここに大江健三郎の企んだ嘘があります。彼が唱えているのは献金論であり奉納論な ト′ック . のです。それを賠償という言葉にすりかえたのが、彼一流の詐術なんですね。この場合、事柄が 賠償ではありませんから、相互に話し合うわけにもいかんでしよう。 え 弁したがって、金額は日本側で決めなければなりません。大江健三郎の案では、それはいくらな 原んでしようか。どれほど出したら万事解決ということになるかを、大江健三郎は算出し公表する の 義務があります。 国ぜひ一刻も早く明示していただきたい。日本国民一億二〇〇〇万余、そのうち働いている人を 章半数の六〇〇〇万と推定して、その六〇〇〇万にとって一人あたりいくらの支出になるのか、そ 第の金額を弾きだしていただきたいものです。 275
爆発に反対だったし、これからも反対するでしよう。けれども、理性をはなれて感情の点で は、言いにくいことですが、内心ひそかに、よくやった、よくそアングロサクソンとその手 下ども ( 日本人をもふくむ ) の鼻をあかしてくれた、という一種の感動の念のあることを隠す ことができません。 ( 中略 ) 中国の核実験の成功は、中国革命の有効性をこの上もなく雄弁に ( 昭和鬨年 1 月『世界』「周作人から核実験まで」 ) 世界に示すでありましよう。 いかにもわざとらしく持ちだされた「理性の立場ーうんぬんは、戦術的に偽装した前口上にす ぎません。そのあとで堂々と開陳されている本音が、「よくやった」という率直な「感動の念」 エージェントっと 人でありましよう。進んで北京政府の代理人を務めている竹内好としては、当然の感概でありまし 代よ、 . っ .0 実 ところで、ここには見すごすことのできない一句があります。竹内好の見るところ、日本人は 忠 府所詮は「アングロサクソンの手下ども」の一員にすぎないのですね。それは竹内好ならではの独 うけたまわ 京得な見下しの判断として、いちおう承りおきましよう。 しかし、北京政府が核実験に進みでることによって、「日本人ーの「鼻をあかしてくれた」と 体「感動」し歓喜しているとき、竹内好はその自己認識において、すでにもはや「日本人」ではな の 、という歴然たる事実が印象的です。もし彼が自分を日本人であると規定していたら、当然の そし 章こと″鼻をあかされた〃と記すところでしよう。そうではなく「日本人」の「鼻をあかしてくれ 第た」と讃えて、囃して、喜ぶ以上、彼は自分を「日本人」の外に位置する存在であると自己を規 たた はや 215
〈日本の伝統の徹底的な否定論者・竹内好への告発状〉 第九章その正体は、北京政府の忠実な代理人 たけうちよしみ 明治 43 年生まれ。東京帝大卒。専門 は中国近代文学。慶大講師、都立大 教授を歴任。シナに仕える筋金入 りの反日的日本人。昭和 52 年没。
「悪魔の思想」の誕生 一一 = 口論界を牛耳りつづけた売国奴たち 戦後五〇年です。その間、総体として一一 = ロえば、日本の社会的な風潮は、先の大東亜戦争のた め、多大の罪悪感を持つように、国民を引きずり回してぎました。 しかも、この傾向が一段と高まったのは、時間が進むにつれての″押しつけ〃だったのです。 すなわち、日韓基本条約 ( 昭和四十年 ) と日中平和条約 ( 昭和五十三年 ) によって、国際関係の諸問 題が解決し、国交がきちんと正常化したそのあとから、京城政府および北京政府に、平身低頭す べきであるという時流が強まったのです。まことに、おかしな根拠のない思い込みでした。 そのため、中華人民共和国や大韓民国などアジアの諸国が、先の大戦にまつわるさまざまな言 い掛かりを突きつけてきたとき、その言い分を無条件に受け入れるという習慣が生まれました。 それも、正規の外交ルートを通じての公式な申し入れではないのです。一方的な放言として、わ わめ が国を攻撃したり、 いわゆる不快の意を憎々しげに表明したり、新聞の論調で喚きたてたり、と どうかっ いう手口でした。すべて、近代国家としての正式な手続きを経ない非公式な恫喝だったのです。 それにもかかわらず、わが国のその時その時の政府は、それこそ無条件で頭を下げ、相手側の ーしき 言い分を全面的に認めて、拝跪する姿勢を通してきました。政府よりもっとひどかったのは、新 聞とテレビによるわが国の言論界だったのです。本来なら、国民の意向を反映すべきはずの言論 ぎゅうじ
やから 界が、一部の国を売る輩に乗っ取られていました。 これら言論界を牛耳っている連中が、北京政府や京城政府の立場に立って、彼らの言い分を増 幅してがなりたてる代理人となり、日本にだけ非があると囃し立てたのです。彼らは日本の国益 を代弁するという、当然そうあるべき使命を投げ捨て、その逆に、相手側の国の利益になるよう に言論を組み立てました。 他国の利益を重んじて他国の代弁者となり、自分の国の大切な国益を損なう行為に突き進む 者、これを「売国奴」と呼ぶのが正当でありましよう。 このようにして、国を売る輩が言論冫 こよる圧力を加えたため、新聞とテレビにたいへん弱いわ いっしやせんり が国の政府は、新聞論調の言いなりになって、世にも卑屈な恥ずべぎ謝罪外交へと、一瀉千里に 傾いていきました。健全な良識を持つわが国民は、これはどうもおかしいな、雲行きが変だぞ、 と思いながらも、発言の機会がないものですから、首を傾げながらも、事態を黙認しているしか たなかったのです。 し きわ じゃっかん カ とにもかくにも、謝罪外交は屈辱の極みでした。若干の例を挙げてみましよう。 古くは、「日 誰 ふじおまさゆき ひめん 韓併合は韓国側にもいくらかの責任がある」と発言した藤尾正行文部大臣は、ただちに罷免され 家 おくのせいすけ 甅ました。奥野誠亮国土庁長官は、国会で「日本に侵略の意図はなかった」と答弁したため、辞任 こに追い込まれました。最近では、「南京大虐殺はでっちあげ」と、事実を事実のとおりに表明し ながのしげと 章た永野茂門法務大臣が職を辞するに至りました。 第念を押して申しますが、これらの発言には、客観的な歴史認識として、いささかの間違いもなⅡ ぎゅうじ はや
次 目 ス。 ( イ行為を肯定する売国奴 かとうしゅういち 〈進歩的文化人の麻酔担当医・加藤周一への告発状〉 第八章祖国をソ連に売り渡す″級戦犯〃 売国奴の極みーー「日本はソ連の従属国となるべきだ」 ソ連がフィンランドを恐れた理由 無傷で逃走できるための用意周倒な狡猾さ たけうちよしみ 〈日本の伝統の徹底的な否定論者・竹内好への告発状〉 第九章その正体は、北京政府の忠実な代理人 「日本はすでに中国と戦争をはじめた」という嘘八百 エトランゼ 中国の核実験に感動する異邦人 ぶげん シナ文化の受容を「隷属、と呼ぶ侮言 さきさかいつろう 〈マスコミを左傾化させた放言家・向坂逸郎への告発状〉 第十章最も無責任な左翼・教条主義者 ひとつお・ほえの教条的マルクス主義者 なぜ、スターリンは革命を「輸出ーしたのか こうかっ ジェント 210 191 207 223
定しているはずです。 そうそっ この一節は、座談会での発言を採録した怱卒の言辞ではなく、十分に意を用いて執筆された文 章なのですから、ここの箇所を不注意による書き誤りと見ることはできません。 ここで竹内好は、日本国民全員に対して、どうだ、見事に鼻をあかされたじゃないか、ざまあ みろ、と高笑いしているのです。身も心も北京政府に売り渡して、日本民族をひそかに敵視し、 エトランゼ 軽蔑している異邦人の本音がついに出たというわけでしようね。 もちろん、以上はわざと試みた極言でありまして、竹内好がそれほどまでに肚を据えていた豪 傑であるとは思えません。彼は生涯を通じて、しだいに国力が増進し豊かになりつつある日本国 民としての社会的処遇を満契していました。 そして日本国民の中で最もススンディル先覚者であり、高度の智者であると思い上がった倨傲 にあぐらをかいて、優越者の自覚を楽しんだわけです。 何に対しての優越であるか、もちろん一般国民に対する見下しの舞いあがった優越感です。そ の根性をちらりと露呈したのがさきほどの一節だったわけです。芥川龍之介の『或阿呆の一生』 ( 三十三英雄 ) に、彼一代おそらく最高の名句が残されていますね。 誰よりも民衆を愛した君は 誰よりも民衆を軽蔑した君だ。 ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅱⅢ ある きょ・」、つ 216