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検索対象: 朧月鬼夜抄 : <雨の音洲>秘聞
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1. 朧月鬼夜抄 : <雨の音洲>秘聞

都ヲ離レロ。 それはつまり。 「お別れってことなの : : : 」 少なくとも、桜姫にはそう聞こえた。あなただけお帰りと。 吹雪王は頷いた。 「そうだよ。桜、もうあなたには会わないーーー」 また、彼は笑う。 〈遅すぎたよ〉 〈声〉が聞こえた。それは、諦めと、苦笑に彩られていた。 なにが、遅いというのだろう。 その答えを知りたくなくて、桜姫は兄を見上げた。目をそらした隙に、彼は答えを口にしそ 遅すぎたよ。 抄 その答えは、この、髪の色なのだろうか : 夜 月「わたしのせい ? 」 鬼だからなのか。その考えは桜姫を打つように冷たかった。 、 , 男れなければならないのは、わたしが鬼だから ? 鬼になって 恐れから、そう訊いてした。リ いろど すき

2. 朧月鬼夜抄 : <雨の音洲>秘聞

まどろむような常磐が、乱れた衣装のなかに沈んでいる。見飽きた姿だ。あれは、昨晩は彼 のものだった。 ずいぶん遠いことのように思える。 しっと けんお 嫉妬を感じるはずも、嫌悪する気もなく、嵐王はそこにいた。何も感じぬのは、きっと心が 壊れているせいだろう。 「何か ? 」 かさねて訊いた彼に、帝はひたと目を合わせた。帝もまともではない。汗ばんだ額にはりつ いた髪をぬぐおうともしない。 この乱れた様子でも、帝の美しさは際立っていた。まるで、春の陽射しに溶けかかった氷の よ , つに、な十めかしい みやこうわさ 「都の噂を聞いたか ? 」 「噂、でございますか」 だいり わざとのように聞き返した。噂など、内裏にも都にも波のようにつぎつぎと寄せては返し、 抄女人の髪のようにあふれ返っている。多すぎて、どれのことやらわからない。 月 帝はかすかに笑った。あざけりか ? 「鬼の噂よ」 ひたい

3. 朧月鬼夜抄 : <雨の音洲>秘聞

月の光に、髪の色が応えるようにきらめいた。 都をにらみ上げる。 まも 都は四方を〈門〉に護られている。それをはからずも、桜姫は身をもって知ることとなった のだ。 あれはまことのことだったのだ。迷信や噂ではなく。 外から、鬼は入れない。 否、入れるのかもしれない。あの痛みをこらえ、護りをつらぬく心があれば。 可能であるとしても、むずかしい。あの痛みに耐えてまで、はたしてどれだけの鬼が都内へ 抜けることが出来るだろうか。 闇よりも海よりも深い哀しみと怒りを持ってしても、あの稲妻に耐えられるだろうか : 月の光が降りそそぐ。体を支えようと地についていた手を、桜姫はゆっくりと握りしめてい っ応。 「ここまで、来ているのに」 都には吹雪王がいるのに。 ま・ いまの桜姫には入れない。鬼は都には入れない。あの稲妻が彼女を咄む。 だから、吹雪王には、会えない : みやこうち

4. 朧月鬼夜抄 : <雨の音洲>秘聞

みじかく吹雪王は答えた。 「何にも。わたしは、わたしが生きてゆく道を決めたよ」 「変えられはしないの、お兄さま。わたしと一緒にいけないの ? もういちど会えたのに」 ついぶし むげん 違う場所で目覚めたときから、再会は夢幻と同じものだった。桜姫が都へ走り、追捕使たち の霊を見たのは、偶然からだ。 有りえないふたたびのめぐり会いがあったのだ。それならば。 「わたし、今なら一夜に千里も走るわ。きっとよ。〈尾〉の御領地にもすぐに行けるわ。〈ダザ イフ〉にだって、夜明けにはつけるわ。だから」 「桜姫」 つの 言い募る彼女は、彼の言葉にさえぎられた。鉄の固まりを落としたような重い声だった。 一瞬見交わした彼の目を、うっすらと光がよぎる。 みやこうち 「ならば、あなたはこの都内に、わたしとともに来ることができるの ? 」 抄 夜 鬼 ざあっ 月 生暖かい風が渡り、月が明るさを取り戻す。だが、薄墨のような雲の流れは続いていた。す

5. 朧月鬼夜抄 : <雨の音洲>秘聞

囁きが、吹雪王をからめ捕る。 「ののしれはしまいよ。おなじ穴のむじなだ。そなたも、わたしも」 欲しいものは、ただひとつ。 嵐王の手が、彼の髪をわし掴みにした。 「死んではならぬ。生きよ、わたしのもとで安らがせてやる」 魔の声が、体に、いにしみてゆく。 わななく吹雪王の髪を、兄はぐいと引いた 「さきほど、はじめて人を殴った。長年の澱みが洗われるようであったよ」 心のままに振る舞ったのは、あれが初めてだったのだ。幼いころから、嵐王はうまく立ち回 ることだけを気に掛けつづけてきた。 くつくっと嵐王が笑う。彼は愉しみを見つけ出したのだ。 哀れな小鳥。 それが自分だと吹雪王は知った。従わねば、ひどい仕打ちを受ける。だが従えば ? いられる。 生きて 鬼 月 そう思っていたはずだった。今も、ここに心はない。吹雪王は、かっ 斬り殺されてもいい ) ての彼はあの川で死んだのだ。 それでも、生きていたいのか ?

6. 朧月鬼夜抄 : <雨の音洲>秘聞

くちなししゃ 内裏。梔舎ーー こうきゅう 後宮の外れにあるここは、ながい間住む者がなかった。 梔舎には鬼が出るという : うわさ それは、後宮の女たちの間で、ひそやかにささやき交わされる噂の一つだった。 梔舎には、女の鬼が出る。皆が戸を開け放して眠る夏の夜に、豊かな黒髪をもつれさせた美 姫が、すすり」泚き、さまよ , っとい , つ。 - りう・じよく 見た者は語ったという。美姫はまるで、凌辱されたかのような身なりであったと。 つぼね その噂のせいか、女たちは梔舎に住まうのを嫌がった。定められた局を替えてほしいと、帝 じきそ に直訴する者までいたという。 さきのみかどちょうあい ここのえのないしのすけ 梔舎に住んだ最後の妃は、晩年の前帝に寵愛を受けた九重典侍だった。彼女は前帝の皹 もや 靄が動き、ふっと目がのそいた、ようだった。 血走った、赤いもの。憎しみをこめた視線。 それが : : : 通りすぎた : ・ 誰もいない〈鴉邸〉の鏡を、母屋の鏡を。 だれかが、のぞいた。 0

7. 朧月鬼夜抄 : <雨の音洲>秘聞

172 ちぎれた葉が、はかなく舞う : その花を気に止めることも愛でることもなく、桜姫は走りつづけた。 息は、わずかも乱れていない。立ち歩くことさえ稀だった貴族の姫君が、こんなにも走れる ものなのだ。ただ、 鬼になるだけで。 以前の桜姫を知るものが見れば、そのたくましい足だけで、肝をつぶすのに十分だろう。だ が、彼女はほかに幾つも、人々を恐れさせるものを持っている。 この髪、この目 胸が切り裂かれる。 痛みをこらえ、桜姫はのどを鳴らした。体ではなく、こころが痛い。これほどまでにー それでも彼女は駆けている。血を流すほどに傷ついているのに。 ふえな 生まれたときから今まで、桜姫はどれだけ傷ついてきただろうか。″笛鳴りの姫〃と呼ばれ、 とうぐう まわた 真綿にくるむように : : : 母から遠ざけられ、愛しい兄と引き裂かれて、東宮に手渡されて。 〈御児方〉であるから。気んとして生まれついたから。 だから、自由はないのだろうか。こころから望む、ただ一つのものさえ取り上げられて。 しんく 桜姫の魂は、自らの流した血で真紅に染まっているだろう。けれど、桜姫はまだ動いてい る。生きている。 鬼を生きていると呼ぶならば。 まれ

8. 朧月鬼夜抄 : <雨の音洲>秘聞

119 。彼東こす都妃あ よ連 つあ は にんわれ こな の女 わそ男わ しれだ房 思妃 ん い痩 か衣 、かてせ 昨と いた 夜帰 にた買官 つ神 て官 し考 ま でぬ は やた いた れただ幸 御ら いび 狂だ の妃 る色 かを け縫 ? 抱 せた をば 封そ のあ 込て でた 朧月鬼夜抄 △恐も らう そく遅彼 、い は 。度 ら だ 、ろ だ が は 東 妃 姫 の 望 み 知 し、 の ま 何 で も て た そ つ は を宮こ 拒は 苛し、 ね立だれ く く と も つを神 っ て は ま も て は く れ を れ れ 、ばわ と 0 よ ん だ い い を 追はな れ カま ら オよ か っ の に つ も 不 。せす に な だ と い っ に よ し く を い 出 黄 の 取 り の る 。服 着 て だ た だ ばちば と も ん 良 も の を が そ 0 ま 日 の と は が 燃 え る と 時 を 同 て 消 ん 兄 だ と 神 官 か た こ年け も だ独ば た寝彼 。をは の が な れ 孟う 妃強し心、 た 所れま い っ ら の 田 ツじ、 め ク ) が そ れ な よ の ま に て い た の ぜ 夫 ま れ ね ば ら な

9. 朧月鬼夜抄 : <雨の音洲>秘聞

ふるい話でごめんなさいね ? それで、やりました「ときめきメモリアル」。 あつれはねー。だめだわ、わたし。才能ないです。卒業するころには、すべての女の子に嫌 われまくってます。前に「エターナル・メロディ」というファンタジー育成シミュレーション をやった時も、全員が激怒マーク ( 顔が真っ赤になって湯気が出ている ) になってしまった し。 ひもお 攻略本を見ていて、出来ないとは何事 ? ちなみにその後「ときメモ」は紐緒嬢をクリアし ましたけど、「あと一年、お願いだからあたしを嫌わないで ~ 」というプレッシャーから胃炎 になりそうだったので、それきりになってしまいました ( ソフトを返した ) 。ほんとはねえ、 こしき かたぎり 片桐と古式も好きだったんだけど。エンディング知ってる人、教えてくださいね ? わかるひとには、わかるなー、わたしの女の子の趣味。ちなみに「ヴァンパイヤ ~ 」ではフ エリシア ( 猫 ) はぜっつったいに使いません。わたしはモリガン使いなのさ。たまにデイミト きょにゆうみこ リに浮気するけど。「戦国プレード」だと巨乳巫女のおねーちゃん。もっと新しいとこだと、 誰だろう。 要するにタカビーでナイスパディのおねーちゃんしか選ばないのね。男性キャラなら「熱血 体育会系」でないこと。怒りで鼻血を吹きそうな、正義な馬鹿は嫌いなんだもーん。 言いたい放題しましたが、も一度「ときメモ」話題を。じつはわたし、視力が悪くて、時と 場合によってはメガネなんですが。先日、髪を二つにしばって縦ロールにして、メガネで車を

10. 朧月鬼夜抄 : <雨の音洲>秘聞

絽「はい」 彼は顔を上げる。立ち上がり、行くばかりになった父と、視線を交わした。 父。もうすぐ、それは皆の知るところとなる もう、帝の顔になまめかしいものはなかった。 「都の、鬼のことだが」 「はい」 「あれを討ち取る法はないものか。あまり騒ぎが長引くのはどうであろう」 「はい」 れいい きんじよう 霊威がおさまらねば、やがて人々は今上帝の徳を疑いはじめるだろう。 「 : : : ふ。そなたらが、あのようにむごい最期を迎えさせるから。鬼がよく哭きよるわ」 「わたくしのせいだと申されますか、鳥親さま」 不満げに、常磐が訴える。彼女としては、長年の恨みを晴らした毒殺だったのだ。 「そうは申さぬ」 まるで幼子にするように、帝は手のひらを彼女の頭に滑らせた。 「あれはあれで興があった。だが、そろそろ一月だ。法はあるか、嵐王」 「さて : : : 」 期待されているのだろうか ? さい′】