カイザ - みる会図書館


検索対象: 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙
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1. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

カイザ 銀の灯が、徐々に界座にも渡り始めている。 ひ

2. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

ソウシュ 「蒼主」 ャゼン 矢禅は主の部屋に入りなから、国王を呼んだ。蒼主は椅子に座って、彼に背を向けている。 「やはり、真梛はいませんでした」 出て行ったようです。声はそう響き、蒼主は手のなかの書き付けを握り潰した。 くしゃ。たよりない音がする。 「透緒呼が同伴したもようなので、危険はないかと。行ーー」 カイザ 「行き先は界座。知れたことだ」 蒼主は、短く言った。書き付けがどんどんつぶれてゆく。 『親愛なる陛下】いまなら、筮音様のお気持ちがよオくわかります。ごきげんよう』 馬鹿丁寧につづられた、真梛の文字。最大級のイヤミ。 4

3. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

私が生まれたとき、母は泣いたという。 髪も未だ開かない瞳も純銀、二十の指にちいさな爪まで〈銀聖色〉の宿った娘。 『〈ミコト〉・ かんべき ッキカケ 月蝕時にだけ力を出すことが出来た、 " 月蝕夫人。と呼ばれた自分よりも、完璧なものを具 えた、具えてしまった娘。 モチヅキ 『望月の〈命〉・ 母は、そう言って泣いたという。私がこの先背負うだろう運命を見て。 カイザたいこう せいれいけいやく 〈命〉。億に一人の力。特殊な〈精霊契約〉。そんなものが何になるのか。界座大公の娘として あしかせ 生まれてしまったら、それがどんな重い足枷になってしまうのか それを思って、母は泣いたという。 サカンゲッ 叉幻月。私はあなたにお尋ねしたいことがあります。 やど

4. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

「お熱が、下がりませんねえ」 カイザたいこうせいひうば 今年七十になる界座大公正妃の乳母は、しわの目立つ手を額にあて、そう言った。 ショウウン セイネ ただし、その手を額にうけているのは、筮音ではない。彼女の長男・晶雲である。筮音の 降嫁に付き従ってこの城にやってきた小柄な老夫人は、公子の乳母でもあったのだ。 「こまったわね」 まゆ 息子の寝ている寝台の横に立った筮音は、少し眉をひそめた。 「もう、かれこれ五日になるわ。主治医はなんともない、などと言うけれど。ねえ、本当はな やまい にか悪い病なのではないの ? 熱はそれほど高くはないが、晶雲はずっとうなされ続けている。それは、重病の前触れでは ないのだろうか ? 筮音、透緒呼、晶雲と王家に連なる人間を三人育てた乳母は、娘のような大公妃を見上げ ひたい

5. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

116 マガナ も、世界でいちばん嫌いだ。凶名、おまえがあの島から出てこなければ、わたしは一生楽しい 気持ちで生きてゆける。妃にするなど、まっぴらごめんなのだからな、 いまになれば、あの頃の蒼主はすさんでいた。当たり散らす場所がなくて、自分に八つ当た りしたのだと思える。 きとく しんか 前王が危篤になり、早くもいやらしい臣下たちが、おべつかと賄賂の攻撃を開始していたの だから 「だからと言って、許せるものではないけれど」 七歳の彼女の最初の恋は、あの時点で終わりをむかえてしまったのだ。四年のあいだ慕いっ づけた、十歳上の王太子みずからの手によって。 引き裂かれるよりもーー残酷に。 三つでののしられ、七つで打ちのめされた、私。 「十七のいま、おとなしいと思うのは間違いだわ。あんなことの後に カイザ 「界座に帰るから」 扉を叩きもしないで入ってきた真梛は、着替え途中の透緒呼を見るなり、ひとこと言った。 ◆ わいろ した

6. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

29 祭りの灯 たが、この部屋を作るには、そのかけらをごっそりと使ったにちがいない。 「ザクーシャのためなら、惜しげもなくやるだろうケド」 かけふ すねた気持ちで、トウザーシャは床の掛布を拾った。 ザクーシャ。カウス日ルー名では、トオコ。生まれてすぐに引キ離サレタ妹。 カイザ そのカノジョを、父はたいそう気に入っている。界座城に連れていかれることなく、捨てて いかれたトウザーシャのことは、仕方なくザカードの居城にひきとられた自分のことは、あま り好いてはいないようだった、けれど。 ザカード 。父上・ : いちどだって振り向いてはくれないつめたい横顔に、彼は苦しくなった。 あなたのソバにいるのは、僕、です。僕です , 僕らは同じ顔をしています、ただ性別がちがうだけ、で。 あやっ 僕には〈クウガ〉が操れないだけ、で。 僕だって、特別なジアフです。あなたがヒトだった母との間にもうけた、子の一人、です トウザーシャは、彼ら自身のことを指す「我々ーという呼び名をつかった。その言葉は、カ ョウシ ウスⅡルーでは『〈陽使〉』という意味になるだろう。 彼はかなしくためいきをついた。ここで、いくら父を想っても、あの人は振り向いてはくれ

7. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

恨みの声が、不安を駆り立てる。 「ーー僕は、だれ ? 」 彼は声に出した とたんに、ぶつりと回線がかわった。そんな気がした。 「僕は、 な すべて 失くしたと思った記憶が、セキを切ったように流れはじめる。 僕は、トウザーシャ。この秋で十七になる。性別は男。家族は八人。四人姉弟。 カイザ コウジャせいひ セイネ カリョウ 「実父がザカード。義父は、界座大公・皐闍。正妃が僕の実母・筮音。第二夫人が花涼。それ ザクーシャ から : 、イチバン上の異父母姉が・真梛。次が、僕。スグ下が、双子の妹・透緒呼。いちば . ショウウンおじ ん下が、異父弟・晶雲。叔父が、コクオウの蒼主。 : : : 」 知っている顔が、つぎつぎと出てくる。ちょっと思いを馳せればすぐに浮かぶ、カウス日ル ーの景色に、彼はほッとした。 よかった、忘れちゃったわけじゃなかった。 うえ この異様な部屋に動転しただけ、なのだ。それはそうである。前後左右・天井を、失敗した 灯人形のつぎはぎに囲まれていたのではだれだって一瞬は我を忘れてしまう。 の 「そうだよな」 あわ 祭 慌ててしまった自分が、馬鹿みたいだ。 気を取り直して、トウザーシャは最初の疑問にもどった。 ソウシュ