一一 - みる会図書館


検索対象: 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙
90件見つかりました。

1. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

ひびきの・かな 1972 年 11 月 20 日、埼玉県生まれ。痒、 Q 型、法政大学文学部史学科 ( 通信 ) 存学中。コパルト文庫に『誘いの刻』「太陽の工セラ』がある。 好きな作家はバーカー、クーンツ、タニス・リーなど。趣味は古本屋め ぐり。『疑心暗鬼』をベットにし、そのせいでよく疑いすぎの勘違いを 起こす。 祭りの灯 COBALT-S ERIES 1 的 3 年 1 月 10 日第 1 刷発行 著者 発行者 発行所 OKANA HIBIKINO 1 的 3 印刷所 ☆定価はカバーに表 示してあります 響 若 株式 会社 〒 101 ー 50 野 夏菜 正 集英社 東京都千代田区ーツ橋 2 ー 5 ー 10 ( 323 の 6 2 6 8 ( 編集 ) 電話東京 ( 3230 ) 6 3 9 3 ( 販売 ) 凸版印刷株式会社 ( 3230 ) 6 0 8 0 ( 制作 ) 本書の一部あるいは全部を無断で複写複製することは , 法律で認められ た場合を除き , 著作権の侵害となります。 落丁・乱丁の本はご面倒でも小社制作部宛にお送りください。送料は小 社負担でお取り替えいたします。 I S B N 4 ー 0 8 - 61 1 71 9 -5 C 01 9 5 93 コ . &

2. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

114 と駆けだし、部屋を飛び出した。怒ると走り去るのが、彼女の 反論して、透緒呼はバツー くせである。 皐闍は溜息をついてみおくり、実娘の困った顔をのそきこんだ。 こころね 1 一うじよう そうめい 「真梛。殿下は、ご聡明な方だよ。強情なところもあるが、心根はよいかただ。父様はおま えが殿下の婚約者になったことを、誇りに思うよ。な、真梛。父様はお妃になるところが、見 たいな」 王妃姿が見たい。父親にそう言われ、真梛はようやく納得した。嬉しそうに笑う。 そしてその日から、蒼主の姿絵を見てはどきどきする恋が、はじまる ・ : その時のことを思い出し、真梛は時々ばからしくなる。 結局、丸めこまれたんだわ。あれは。 蒼主と真梛の婚約。それは、〈命〉同士だという政略結婚以外の何でもなかった。 ミカヅキ モチヅキ 『 " 望月 , の真梛と、 " 三日月。の蒼主。現存する〈命〉三人のうち、二人が夫婦にふさわしい 年齢差、階級に生まれたことは、カウス日ルー世界にとって好都合だ、より良い血統が残せる ではないか』・ それだけの理由しかなかった。 その証拠に、はじめて会った蒼主の吐き捨てた一一 = ロ葉。母のあいさつを無視し、真梛を一度だ 0 きさき 0

3. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

161 祭りの灯 【知る】。わかるコト。認めるコト。 「やめろ ! そんなことは知りたくない ! 」 【知りたくない】。キチヒする 「やめろったら ! 」 混乱が霧のようにまわる。なんなんだよ , 考えたくても考えられない。頭のなかで、べつの誰かの一一 = 〔葉が勝手に渦をまいている、気が する。 ( しゃあん : : : ) 陶磁器の声。あざける。 ザマアミロ。おまえはおまえであって、おまえでない。おまえは、おまえを知らない , いた ! あっ ! 」 するどいセリフに、トウザーシャは眼をあげた。何度か視界がばやけ、ようやくすっきりす る。おどろいた顔の、若い二人の男性。 「ク・ヨーと、アラシャ : 「倒されたんじゃなかったのかよ」 九鷹の方がうなる。手にしている武器に、少年は本能的におびえた。 「マタコロサレル : : : マアナ ! 」 もの

4. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

116 マガナ も、世界でいちばん嫌いだ。凶名、おまえがあの島から出てこなければ、わたしは一生楽しい 気持ちで生きてゆける。妃にするなど、まっぴらごめんなのだからな、 いまになれば、あの頃の蒼主はすさんでいた。当たり散らす場所がなくて、自分に八つ当た りしたのだと思える。 きとく しんか 前王が危篤になり、早くもいやらしい臣下たちが、おべつかと賄賂の攻撃を開始していたの だから 「だからと言って、許せるものではないけれど」 七歳の彼女の最初の恋は、あの時点で終わりをむかえてしまったのだ。四年のあいだ慕いっ づけた、十歳上の王太子みずからの手によって。 引き裂かれるよりもーー残酷に。 三つでののしられ、七つで打ちのめされた、私。 「十七のいま、おとなしいと思うのは間違いだわ。あんなことの後に カイザ 「界座に帰るから」 扉を叩きもしないで入ってきた真梛は、着替え途中の透緒呼を見るなり、ひとこと言った。 ◆ わいろ した

5. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

まろ′がい ーラは「害してやる」と他人ごとのように言い 息子の威圧などみじんも感じないのか、ハ 放った。 「おまえは、特別な方法で私が産んだのです。いずれは、相応のことをなす身。だれが、ぶよ ぶよした生き物などに渡すものか」 ザカードはあやしい笑みを見せた。 「あの空牙のザクーシャが、わたしの娘だとしても、か ? 」 どうもく ラに、彼は一一 = ロった。 瞠目したハー 「あなたがご丁寧にも潰してくれた、十七年ほど前のあれ。あのときの恋の相手は、黒髪に銀 の瞳の女。そして、今わたしの恋うザクーシャの母も、黒髪に銀 : 眼をえぐる〈金〉も、胸をえぐる〈銀〉も持たぬこの空牙の娘、いったい父はたれそよ ? 」 女王ののどが、ケイレンするように動いた はら 「そのような。ああ、おまえは特別な息子ゆえに、人を孕ませることは、それは可能 : かし、まさかそのよ , つな 馬鹿なことがあるものか。と続きそうだった言葉は、途切れた。 「ありうる、こと」 いあっ ひと し

6. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

。第亜凹 コノヾノレト ノベル大賞 『 COBALT 』編集部では、「コノヾルト・ノベル大賞」を募集し ています。この賞は、才能ある作家志望のかたを、新人作家と して世に送り出すためばかりではなく、小説を書くことの楽 しさ、創作することの喜びを広く若いかたたちにも味わって いただきたい、という願いもこめて設置されたものです。 ロマンの新しい時代を切りひらく、あなたのフレッシュな カ作 100 枚前後 ( 400 字詰原稿用紙 95 枚以上 105 枚以下 ) を、お 待ちしております。 く人選作〉正賞の盾と副賞 IOO 万円 く佳作〉正賞の盾と副賞 50 万円 応募要項は「月刊℃ OBA 」に毎号掲載されています。 恋を劈みる乙女のための小説誌 ! [ コバルド 18 日発売 ! 7 月、 9 月、 11 月の 1 月、 3 月、 5 月、 ・「コノヾルト短編小説新人賞」「ショート・ショート」を毎号募集しています。 隔月刊ですので、お求めになりにくいこともあります。あらかじめ書店にこ吊約をおすすめします。

7. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

カウスりト大陸図 界座城 ①真梛の出生地。真梛と透緒呼の実家。彼女らは 6 歳までをここですこした。 清和月宮 ②蒼主の出生地。筮音の実家。現在はく空牙衆〉 の本拠地および政府の所在地。 唐木自治領府 ③九鷹の出生地。彼は 18 歳までをここですこす。 透緒呼の出生地 ④筮音の逃亡先の貧しい木賃宿。 獅伊菜のいた貧村の診療所 ⑤彼はそこから唐木自治領府へ向かい、街道を通 って王都入りする。 ハ騎城 ⑥「誘いの刻』で陽使に占領された。 心の工セラ』 C-±シャーナらが出現 した地点。 アールシアカセラ = ニアえた地点 ⑧九鷹はここで爆風による大ケガをした。 く月徒軍〉士官学校 ⑨透緒呼、真梛が 6 歳 ~ 16 歳までの 10 年間をすこ した所。

8. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

148 ふかくうなだれて九鷹は考え込み、やがて言った。 ト僧。透緒呼には、しばらく一一 = ロ , つなよ 返事がかえらない。九鷹は顔を上げた。 「なんだよ」 亜羅写はロ許を押さえ、あたりをうかがっていた。追われるもの特有の、本能的な感覚がピ リピリしている 「ーー・おい ! 」 少年の体に、緊張がみなぎった。警告。 しようき 「瘴気だ。この近くに〈陽使〉がいる : : : 」

9. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

176 最初に見えたのは、女神だった。 銀の髪と瞳の女神。ジッとのそきこんで。どろだらけ。 : ナイテるの ? ときどきシズクが落ちている。 ばつん。ガラスの瞳に、あたたかい雫。 「マアナ」 つぶやいた。 おえっ 女神は顔をおおい、嗚咽まじりの声を出す。 「よかっ : : : 気がっ : やがて。仰向けになったまま、よけいな一一 = ロ葉とともに、記憶が戻りはじめる。 ぎんこく 僕は僕。それが、やっとわかった答え。けれど、それを打ち消す残酷な声。絶望に落下して

10. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

67 祭りの灯 瞳をゆがませて、それでも口答える。 矢禅が言い添えた。透緒呼の肩を叩いて。 「これは、なんらかの罠だ。そう考えるべきですよ、透緒呼。素直に受け止めてしまったら、 相手の思うつばです。ね ? 」 「うん」 泣き出しそうになって、彼女はキッと顔を上げた。振り切る。 「わかってるわ ! わかっている、わかっている。大丈夫、大丈夫 不安と戦うことには、なれていた。だから、きっと : ・・ : 平気・ 少年の言いかけた一一 = ロ葉。『ザクーシャ』、『父上』。そんなの : : : 気にしない・ 気にしない 夏の前夜。 彼らにとって重苦しい夜が、明けようとしていた。