姉 - みる会図書館


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1. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

141 祭りの灯 かしゅ。 かしゅ。 だれかが何かを磨いている。 かしゅ。 かしゅ。 かしゅ。 あわい茶の髪の人 ? あ ! あいつだ ! 僕の首をしめたあいっ ! どうしよう ・よに、してるんだろう。 手の中の白いもの。みおばえが、ある ? 母上 ? でも、あねうえ ? 母上の顔みたい 姉上の方に、似てる。 人形が、姉上。姉上が、人形・ : 〈ョウシ〉。 そんなことない。ちがうよ、姉上は , 『姉上は、僕の姉上だよ ! 〈陽使〉じゃない ! 』

2. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

140 笑い声。笑い声。笑い声。 ささやき。おとなの人の声。こそこそと響く、いやらしい音。 だれ、だあれ ? そこにいるのは。 に・よかん 女官 ? 知っている、これはふるい女官たちの声。 くすくすわらう顔。軽蔑した目つき。 やめて。やめてよ ! また、姉上のこと。また、母上のこと ? ョウシ 〈陽使〉。 そんなことないちがうよ、姉上は , 姉上は、僕の姉上だよ ! けいべっ

3. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

〈陽使〉。 だれかのゆびさした先に、姉上。 ちがうよ ! 僕の姉上は、〈陽使〉じゃない , ( 〈陽使〉 ) 絶望の声、声のない悲鳴、こころにはいるひび。 なにかが姉上を押し潰そうとしている , やめてーーーやめてよ ! 姉上を殺さないで ! きらめく刃、つき刺さる矢、とびちる朱。 悲鳴 ! ショウウン 絶叫が、晶雲の意識をもみくちゃにする : まだ、おわってはいない。 ( しゃあらり・・ : : ) ョウシ ◆

4. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

さい。よろしいですね」 「母、上ーーー」 きずな トオコ トウザーシャと自分をつなぐ血の絆を、否定する一一 = 〔葉。なによりも確かな。 座り込みそうになる。 三つの可能性の、半分が消えた・ : 「はい そう、顔をあげてゆくこと。たとえ自分が何者であろうと。 透緒呼は思わず歩み寄り、母の肩に頭を押しつけた。 「ありがとう母上。忘れるところだった : : : 」 「ばかね」 筮音はひとこと言い、娘の頭に腕をまわす。 「う・ : : ・師・上 : : : 。姉上いやだよ、姉上はーー」 弟のうわごと。意味があるのかないのか、それは彼自身にしかわからないだろう。 「大丈夫なの、晶雲は ? 」 顔をあげ、透緒呼は眉をひそめた。ずっと、うなされつばなしなんて。 「らしいわね。わたくしには、どうも信用できないのだけれど」 とう 「だめ ! 父上、姉様を塔に閉じ込めないでよ ! そこは、あ

5. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

155 祭りの灯 「強情な・ : ・ : 」 一刻におよぶ空牙のすぎた後、界座公・皐闍はそれだけ言って椅子に沈み込んだ。 どうどうめぐ 堂々巡りの口論を終わらせるため、「婚約は解消する、もう二度と清和月などに戻らない」 なんきん の一点張りの実娘は、塔のなかへとりあえず軟禁した。 はやく改心してくれればいいのだが。 「若様」 花涼が水を差し出す。筮音より三つ若いこの婦人は、昔のくせが抜けず、未だに夫を『若 様』と呼んでいる。ひとつに束ねた茶銀の髪に、質素な衣服が、なごやかな銀の瞳に嫌味なく 合っていた。 かわ 皐闍は水をひったくるようにして、一気に飲んだ。一杯では足りないくらい、のどが渇いて まわないよ , つに。 びく。晶雲がケイレンし、ロが動いた。声はなく。 、姉上を : : : ころさないで』 母と姉はその叫びに、気付かなかった。 ◆ しっそ

6. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

熱にうかされ体をそらす晶雲に、筮音らは眼を合わせた。 ( : : : なものか , 恥を知れ ! ) ( : : : でしようつ ! ) かきよう 口論は佳境に入ったようだ。。 となりあう父娘の声がわずらわしい 筮音は頬に手をあてた。 みやくらく 「閉じ込める ? ますます脈絡がなくなってきたようね。 : どうなるのでしよう」 「母上、真梛が閉じ込められたことなどあったつけ ? 」 おなじことを考えていた透緒呼が、たすねた。晶雲の『姉上』は透緒呼で、『姉様』は、真 梛のことである。 「 : : : わたくしの記憶では、ありません。透緒呼、おまえもないわよね ? 」 ・ : ないわ。そういう気のながい罰をあたえる人じゃないじゃない。どんなに悪いことをし たとしても、お尻を叩いておしまい、でしよう」 言わない名詞は、皐闍をさしている。 灯 「ええ」 の 、ったい、晶雲はなにを見ているのだろうか。現実、非現実 ? 過去、 祭 それとも ふうらいし 「まさか、風来視 ? 」

7. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

1 彼は機嫌よくうなすいた。頭をなでる。 「よくわかるね。 そうなんだよ、真梛」 不安そうに眉を寄せている娘に、皐闍は視線を向けた。 「そうしゆさまって、だあれ ? 」 真梛が、やっと尋ねた。混乱しているのか、泣きそうである。 「あら、透緒呼の母さまの弟よ。こないだ教えたじゃない」 こまっしやくれてすかさず言った妹に、姉は破裂しそうな顔をした。彼女自身は、蒼主に会 ったことはない。 「私いや。透緒呼の母さまはいじわるなんだもん」 きようだい 真梛は妙なことを言った。血がつながっている姉弟は、おなじ性格だと思えるらしい 「母さまはいじわるじゃないわ ! 」 透緒呼が真っ赤になって怒る。 「おやさしいわ ! それに、叔父さまもお優しいわ ! 透緒呼はこないだ首飾りもらった ムキになって叫ぶ義娘を、皐闍はなだめた。 「透緒呼、怒鳴らなくてもいいんだ。真梛は、少し怖いだけなんだから」 「だってほんとだもん ! 」

8. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

恨みの声が、不安を駆り立てる。 「ーー僕は、だれ ? 」 彼は声に出した とたんに、ぶつりと回線がかわった。そんな気がした。 「僕は、 な すべて 失くしたと思った記憶が、セキを切ったように流れはじめる。 僕は、トウザーシャ。この秋で十七になる。性別は男。家族は八人。四人姉弟。 カイザ コウジャせいひ セイネ カリョウ 「実父がザカード。義父は、界座大公・皐闍。正妃が僕の実母・筮音。第二夫人が花涼。それ ザクーシャ から : 、イチバン上の異父母姉が・真梛。次が、僕。スグ下が、双子の妹・透緒呼。いちば . ショウウンおじ ん下が、異父弟・晶雲。叔父が、コクオウの蒼主。 : : : 」 知っている顔が、つぎつぎと出てくる。ちょっと思いを馳せればすぐに浮かぶ、カウス日ル ーの景色に、彼はほッとした。 よかった、忘れちゃったわけじゃなかった。 うえ この異様な部屋に動転しただけ、なのだ。それはそうである。前後左右・天井を、失敗した 灯人形のつぎはぎに囲まれていたのではだれだって一瞬は我を忘れてしまう。 の 「そうだよな」 あわ 祭 慌ててしまった自分が、馬鹿みたいだ。 気を取り直して、トウザーシャは最初の疑問にもどった。 ソウシュ

9. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

皿眼をすがめていた彼女は、首を振った。 ここから見えるようなところに、真梛は逃げやしないと思うわ 「まるで。だいたい、 ダテに透緒呼の姉ではない。とろそうで、頭の回転は結構はやい。 とうひこう 「恋の逃避行、かよ」 九鷹はごち、前髪に指をつつこんだ。 「こりや、えらいことになるな」 〈命〉と〈陽使〉の恋。それが、真実に恋なのか、それとも取り憑いた状態なのか。 おおやけ どちらにしても、公になったら波紋を呼ぶ。 『〈陽使〉は敵。〈陽使〉は邪悪。その魔物と、我らが〈聖女〉は恋に落ちたか そんな声が、一般人から聞こえたとき。 大陸に大きな波紋が広がる まさか、それが目的じゃなかったろうな、クソジジイが ちがうと知りつつも、九鷹はそう考えた。そういう常識を打ち破るバニックは、さぞかし大 陸征服の味方になるだろう。 っ

10. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

と、それにかさなるように晶雲が叫んだ。 「姉上 ! やめてよ ! 」 びく。非難する弟の調子に、透緒呼はふるえる。意味がわからなかった。 私に、なにをやめろというのだろうか。 「 : : : 気にしないように。この子は、もう一週間もうなされているのですから。おまえのこと した ばかり口に出すけれど、それは、おまえを慕っているからです。悪くなど、考えないように」 くちょう 口調はそっけないが、けれどそれは筮音の優しさだった。 透緒呼は黙ってうなずいた。気配を察して、筮音がかすかに眼をふせる。 「 : : : 透緒呼」 呼ばれ、彼女は返事した。燭台の銀の炎がゆれる。 「十い ?. 「あちらでなにがあったのか、おおよそのことは聞きました。 : : : 大変だったわね」 の彼女はうつむく。母のセリフがなにをさしているのか、わかった。 「顔をあげてゆくこと、忘れてはいけませんよ」 「わたくしの空牙はたったひとりだけ、なのですから。 まど 惑わされず、迷わずに、お生きな