見える - みる会図書館


検索対象: 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙
39件見つかりました。

1. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

147 祭りの灯 なげると、今回の裏がみえる気がしないか ? 」 工セラーシャなら、『エセラに属する者』。 ザクーシャなら、『ザ x x x に属する者』。 それならば。 トウザーシャは : 「あいつは、透緒呼とその『ザ』の男の両方に属する、ってことか ? 」 「そう。ちょうど中間をとった名前だと思わないか ? で、 亜羅写は九鷹を見上げた。 「 " ザクーシャ , の語源の男って、あの首に傷のあるヤツ、だったら」 つじつまが、あわないだろうか : 「たいしたもんだぜ、まったくよ」 九鷹が歯のすきまから声を押し出す。 これで、明解な絲が一本見えてしまった。透緒呼と〈人形王〉をつないでいるだろう絲が そしてさらに一一 = ロえば、今回の黒幕は完全にあのヤローだ。 「ちくしようが : : : 」

2. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

「女々し い、なあ : : : 」 トウザーシャはごち、かるく自分の頭をこづいた。 そういうところが、僕はナサケナイんだ。。 サクーシャのように、まえを見なけりゃならない けれど。 マイナス 出来の良すぎる妹にたいする負の気持ちは、つのってゆくようだった。 「キライじゃないよ、ザクーシャ。けれど」 僕は、いったい君に会って、どんな顔をすればいいんだろう 「 : : : かった」 つぶやき声に、トウザーシャは引き戻された。はツと、下を覗く。 通路館から、ずいぶん流れてきていたようだった。生活のにおいのする、使われている部 灯 の 空気が呼吸を伝えている。 祭「あれ ? 」 ばんやりと橙の光が部屋を照らしている。そのすぐそばに、 屋。

3. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

「九鷹、そこを出て右に行って」 透緒呼は空牙刀を握り、指示した。扉を開けて出ていく九鷹につづく ためらっているヒマはない。 『私はトウザーシャが好きなの ! 』 叫んだ真梛。その彼女のもとに人形が行ったのなら 先は見える気がした。ふたりが堕ちてゆくのが見える気がした。 それを、止めるのは透緒呼。止めなければならないのは、透緒呼。 いんねん ふせき 大事な姉と、因縁の〈人形王〉の布石が出逢 0 たのなら。どこがどうな 0 て、こんな運びに なったのだとしても。 それがどんな波紋を呼んだとしても。 ゲット ワタノ、 、、ノ、〈月徒〉、ダカラ : 「そう、〈月徒〉だから」 走りだす。 の真梛が二度と透緒呼のもとへ帰れなくなる前に。人でなくなる前に 「トオコのおかあさん。 : シッレイします」 祭 亜羅写が扉を閉める前に、筮音にかるく一礼した。 筮音は見送り、きつく眼を閉じて、組んだ両手を額にあてた。

4. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

えなかったのかしらね」 なんきん 婚約を強要された娘が、絶望のあまり軟禁された塔から身を躍らせる。 そんな発想は、浮かばなかったのだろうか ? たとえ、この窓がちいさく、 登るのに苦労するとしても ! 「あんまり情けなくて、涙が出るわ」 よろいまど 言って、真梛は重たい鎧窓を開けた。背伸びをし、両腕を前方にひらく。 祭りの世界が絵物語のようにひろがった。 ひ 小高い丘のあるこの城を中心に、うずを描くような祭りの灯が見える。 ひとつの銀が、西へのびている。あれは、破斬への街道。途中から枝わかれして南西にゆく のは、自治領・藤陣へつづく道だ。 エンゲットウ 。しったい何年ぶりだろう。まだ偃月島に行く前、透緒呼と城の屋 こんなながめを見るのま、、 根に登ったのが、最後だったろうか ? 「ああ、もったいないー こんなきれいなものを見ずに過ごしていた、なんて。 「そりや。偃月島からは、藤陣の海岸線の灯が見えたし。それも良かったけれど」 どっちにしても、状况的にはまったく嬉しくない。限られた範囲から出られないという、最 あしかせ 低の条件が、足枷のようについている。 トウジン ハザン 高いため、よじ

5. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

176 最初に見えたのは、女神だった。 銀の髪と瞳の女神。ジッとのそきこんで。どろだらけ。 : ナイテるの ? ときどきシズクが落ちている。 ばつん。ガラスの瞳に、あたたかい雫。 「マアナ」 つぶやいた。 おえっ 女神は顔をおおい、嗚咽まじりの声を出す。 「よかっ : : : 気がっ : やがて。仰向けになったまま、よけいな一一 = ロ葉とともに、記憶が戻りはじめる。 ぎんこく 僕は僕。それが、やっとわかった答え。けれど、それを打ち消す残酷な声。絶望に落下して

6. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

175 祭りの灯 え ? え 「トウザ : ・いやあ ぜっきよう 真梛は手を差し伸べかけて絶叫した。耳をふさぐ。 閉じてしまうことの出来なかった瞳が、落下してゆく彼を見た。 赤色の腰帯と黒髪が宙に舞う。 それはながく優雅な舞踏に見え、けれど、一瞬に砕け散った。 ・シャアン : トウザーシャが叩きつけられた地面に飛び散るよりも早く、真梛は跳んで窓枠を越えた。塔 の外に身を躍らせた ! ふわり。長い銀髪が、尾をひく : ・

7. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

結局、一睡もできなかった : あかるい緑の自室で、透緒呼はばんやりとしていた。すこし突き出された下唇が、不安と眠 気を表しているように見える。 彼女は居間の真ん中に。へたりと座って、充血した目をこすった。 ばらばらと床に崩れた、少年 くだ 砕けた〈陽使人形〉が、気になった。どうしても、どうしても。どうしてもい よちょう 灯 ・ ( あれは誰、私は誰 ? あれは、なんの予兆だというの ) ・ の 祭破裂しそうな頭で、なんとか考えられたのは、三つの可能性。 ひとつ。本当に、あれは私の兄弟。ゆえに、私も〈陽使〉、もしくは特殊な〈陽使人形〉。 いっすい

8. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

世界を飲み込む夜の空を、トウザーシャはすべるように移動していた。 カウスⅡルー王都・清和月。 だいだい 寝静まった都には、ばつり、ばつり、橙のあかりが見えるだけである。星が闇のなかに、 建物の影をさらに濃くうっす : そんななか、王都の中心部は火事になったように明るく照らされていた。前宮の半分以上の あかりが、ともったままになっているのである。 残業か、明日の打ち合わせをしているのだろう。 「ご苦労サマ」 通り過ぎながら、言葉を投げる。が、なかで忙しそうな官僚たちは、そんなことすら知らな いようだ。黙々と働いている 「ふ : : : ん」 ちゅうきゅう つうっと空をすべり、中宮の上に出る。

9. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

「姉さん ! 」 踏み込んだ北の塔は、無人だった。 かすかにふたつの残り香。真梛の香水と、 「〈陽使〉臭 : : : 」 いちばん鼻のきく亜羅写が、言って顔をしかめた。 「おそかったか」 九鷹が声をにがくした。清和月でも一度逃げられたことが、悔しさにつながる。 開け放された窓。透緒呼は近づいて外を見下ろした。 「ここから出たんでしようね」 の「だろうよ」 り請け合った九鷹は眼を凝らした。黒眼鏡の下では、まるで視界がきかない。外は夜とおなじ 「見えるか、透緒呼 ? 」 ふたりは、坂を下りきり、跳ね橋を渡って町へと歩く。 ◆

10. 祭りの灯 : カウス=ルー大陸史・空の牙

128 朝がたマーナに起こされただろ ? 」 「けつ」 面白くなさそうに、彼は横を向いた。 「どいつもこいつも真梛かよ」 「え ? 」 亜羅写は問い返し、窓の外の祭りのさわぎにピンと来る。 「クヨー トオコにふられたね。マーナがらみで」 「だったらどうした」 完全に彼はすねている。 それはそうである。せつかく一緒に出かけることを約束したのに、透緒呼はそれをひるがえ して、実家へ帰ってしまったのだから。 「そりや、ザンネンだったよね 思わず亜羅写は吹き出しそうになった。こらえる。笑ったら最後、鉄拳が飛んでくるのは、 目に見えていた。 「クヨー。もし、オレでよかったら、つきあうよ ? セラⅡニアには、こんな面白いコト、な かったからさ」 「おう」 てつけん