事故 - みる会図書館


検索対象: 墜落 第1巻 驚愕の真実
100件見つかりました。

1. 墜落 第1巻 驚愕の真実

予想は外れたーー事故は多岐にわたる しかし実際は、必ずしも、そうではなかった。本稿執筆の時点ーー二五件の事例について、五〇ほ どの資料を読んだ段階ーーでは、事故の実態は、予想とは完全に違っていた。 航空機事故は、もっと複雑で多岐にわたる事象であった。胸締め付けられる見事な操縦もあれば、 恥ずべき怠慢による事故もあった。整備、油圧、計器などが、複雑にかかわる事故もあった。 さらに、驚くべき事故があった。単純な事故と考えて分類したものの中に、「予想を超える原因 , で起きた事故が含まれていた。 例えば、一九八五年のマンチェスターの事故、離陸走行中にエンジンが破損し、燃料タンクに引火 した。乗員、乗客五五名が死亡したが、惨事に拡大した原因は、風に対する航空機の停止姿勢であっ た。報告書は、「そのようなことは知られていなかった」と記していた。 もう一例あげれば、制御系の欠陥を知りながら、事故報告書が明確には指摘しなかった ( と私には 動化を礼賛する本を書いている。私の心に、無意識に変節が起きているのではないか。 表 2 を作り始めたとき、そんなことを考えていた。表 2 に選ばれた事故は、七〇年代以後の事故の 流れを示すはずであった。それは旅客機が設計、操縦、運航、保守などあらゆる面で、「神業、名人 芸の時代 , から「コンピューターによる管理、自動化の時代、へ移行していることを示すはずであっ

2. 墜落 第1巻 驚愕の真実

( 2 ) ( 3 ) しかし、それが例えば「エビエ 1 ション・ウィ 1 ク」で紹介されるとき、 0 記録は省略さ れている場合が多い。あっても、時刻が消えていたり、会話が簡略化されていたり、整理されて いたりする。 報告書原典をすべて入手すればよいのだが、できなかった。最大の理由は経済的事情である。 価格は、薄いレポ 1 トでも一冊一万円のオ 1 ダーである。このため「エビエ 1 ション・ウィー ク」に記事があるものは、原典の入手を控えた。 使用した事故例は、の報告書にーー米国で起きた事故にーー片寄っている。「エビエ ーション・ウィーク」の記事は、米国以外の事例も紹介しているが、限られている。 また一般に、事故報告書を入手しようとしても、当方の資料収集力が限られている。このこと は特に欧米以外の地域で起きた事故に当てはまる。 事故をーー報告書に従ってーーありのままに、しかもやさしく再現する。それが私の立場であ る。このため背景説明は、必要最小限に抑えた。しかしその最小限の説明ができない場合も多 このことは、機器に関しては特に当てはまる。 例えば QO ー川の南極 ( ロス島・エレバス山 ) の墜落 ( 一九七九年 ) では、山と航空機の相対 かぎ 位置が鍵となる。当時の ( 第三世代の ) ー川では、レーダーが山や積乱雲を映している。し かし普通の雲は必ずしも映らない。山も、レ 1 ダー照射面が上向いていれば ( 積乱雲を捕らえる 場合そうする ) 映らない。そういう詳細は、すでにわからないところが多い。そういう部分は、

3. 墜落 第1巻 驚愕の真実

体となる。 ただし対象とする事例の中には、第一世代の旅客機や旅客機以外の機種も、若干含まれている。ま た飛行力学的見地から、六〇年代の事例もいくつか含まれている。 事例を主に七〇年代以後に限ったのには、もう一つ理由がある。それは管制方式の変化である。主 要国の管制が、現用の ( ターミナル管制情報処理システム ) とよばれる方式に移行するの が、この時期である。これにより管制の自動化が進み、現在の方式が確立した。 さらに私は、代表的事故を選ぶ基準として、プロフェッショナルな人たちの興味を重視することに した。すなわち、彼らの雑誌に紹介される事故に注目することにした。 日本航空と全日本空輸は、それぞれ飛行安全に関する雑誌、「フライト・セイフティ」と「安全飛 行」を発行している。そしていずれも、ほば毎号、大きな航空機事故の抄録を掲載している。私はそ の一九七二年以後の紹介記事に注目した。ちなみに「フライト・セイフティ」は、七八年から始ま 両誌には、米国以外の事故の報告も載る。これも魅力の一つであった。また両誌の記事は、専門用 語、技術用語を日本語に移す際、非常に有用であった。 両誌を参考に、私は最終的に一〇二件の事故を選び出した。これが私の考えるーー主に七〇年代以 後を対象にした , ーー航空事故の代表的事例であった。

4. 墜落 第1巻 驚愕の真実

この本は、「予想を超える原因」で起こる事故について、事例を四つ示したものである。 航空機はいろいろな原因で墜ちる。原因は例えば乗員、機体、保守、天候、空港 / 管制、その他、 などと分類される。 私は事故を、第一印象に基づき、一〇種類のキーワ 1 ドで分類した。それらは、予想を超える原 因、新しいシステム、機体異常、火災と爆破、エンジン、風と雨、衝突とニアミス、離陸、着陸、人 間のミスである。この本は、それぞれの事例を解説するシリ 1 ズの一冊である。このような一〇の分 類をするに至った経緯を序章に示す。 大事故の多くは、予想もしない、あるいは予想を超える原因で起こる。私はそう考えていたが、必 にずしも大事故とは限らないようである。また「予想を超える」とは主観的なもので、思い浮かぶ事故 め じは、人によって異なると思う。私は紙幅の許す範囲で、次の四つを選んだ。 はじめに

5. 墜落 第1巻 驚愕の真実

八〇年代になって、さらに第四世代機が登場する。最新の技術を結集し、経済性だけでなく、騒音 などの公害対策も考慮した機種である。制御や航法の中心にコンピュ 1 タ 1 を据え、 (--)X+ ( プラウ ン管 ) や液晶ディスプレイを駆使して計器類をデジタル化した。一九八二年就航のボーイング 76 7 、八三年就航のエアバス A310 以後の機体がこれに当たる。 代表的事例を絞り込む 私は最初、航空機事故の歴史、あるいは事故の流れのようなものを追うつもりでいた。しかし次第 について、興味を失った。飛行の様子 に古い事故、特に六〇年代の事故ーープロペラ機が多い が、現代の民間主流機とかけ離れていた。 せば 私は考える範囲を、現代機の「事故の流れ」に狭めることにした。しかしそのとき、どのような事 類 分 故を「事故の代表ーと考えるべきか悩んだ。 と 趨事故の数はあまりにも多い。すでに述べたが、一九五九年以後でも、その数は六〇〇〇を超える。 故だからこそ、その中から、約三〇〇件を選んだ。 機しかし、私にはまだ多すぎた。この中には、類似のものも多い。また死傷者の多寡、機体の大小 空 航で、インパクトが異なる。もう少し代表的事例を絞れないか。 章私はまず対象とする事故を、主に七〇年代以後に限ることにした。主たる理由は、対象を現在飛ん でいる機種に限りたかったからである。こうすると登場する機種は、主にポ 1 イング 727 以後の機

6. 墜落 第1巻 驚愕の真実

はじめに 序章航空機事故の趨勢と分類 歴史を追う 事故に連続性はあるか セイフティの記事 記事が減り、大事故が現れる 「エビエーション・ウィーク」の良さと限界 zecon の事故報告書 データ・ソースーー。・約三〇〇件の「興味ある」事故例町 六〇年代と七〇年代の違い 8 航空機の四つの世代 代表的事例を絞り込む 一〇二件の事故を一〇種類に分類する 最初の予想ーー神業から自動化へ 「エビエ 1 ション・ウィ 1 ク」ーー専門誌を調べる すうせい

7. 墜落 第1巻 驚愕の真実

データ・ソースーー約三 00 件の「興味ある」事故例 これ以外に、自分で集めておいた資料があった。私は航空学科に在籍した間、教科書や便覧の著 作、編集にかかわった。また自分自身、興味ある事故については、若干資料を収集していた。 以上が、このシリーズを書くもととなった基礎資料である。改めて整理すると、次のようなもので ある。 類 分 一九六〇年以後の「エビエーション・ウィーク」の記事、約二〇〇。 A 」 勢 文献抄録からピックアップしたの事故報告書、七〇年代以後の約一五〇。このうちほ 趨 の ば半分が、①の「エビエーション・ウィーク」の記事と重複した。 故 は、⑦と重複があった。 機③かねて収集していた国内外の事故報告書、約六〇。これらも、当然 ) 空 航以上の資料から、重複を除くと、私が選んだ「興味ある」事故例は約三〇〇件であった。 章ちなみに一九五九年から一九九五年の三六年間に、民間機は六〇〇〇件以上の事故を起こしてい 序 る。したがってこの三〇〇件は、その五パ 1 セント程度の事例である。 ト程度に減った。その中では、「ポトマックへの墜落。や「オヘア空港の墜落 , が自についた。 七〇年代に遡ると、さらに小型機の事故が増えていた。報告書の数も、古い時代ほど増える傾向に あった。この中から、私は新しさを感ずるものを選んだ。それも全報告書の三〇パーセント程度であ っ一」 0

8. 墜落 第1巻 驚愕の真実

第一話は、「酔っぱらい運転、の話である。航空機ではまさかと思ったが、現実には起きた。幸い 貨物便で、犠牲者は少なかった。しかし酒酔い運転は、航空機でも自動車でも、同じように起こる。 第二話は、「急病による発作」の事例である。これも航空機と自動車で、同じように起こる。ただ し操縦者が一人の場合、航空機では致命的である。いや、必ずしもそうではない。予想を超える場合 もある。 第三話は、修理のミスが引き起こした悲劇である。これこそ、予想を超える大事故の典型であろ う。満員の乗客を乗せた大型機が「操縦不能」に陥った。このようなことが現実には起こる。 第四話は、「もう一つの操縦不能」事故である。機種は違うが、操縦不能という意味では同じ事故 が四年後に起きた。そして乗客の三分の二を生還させた。この機の乗員の技量は、まさに予想を超え このシリ 1 ズで航空機事故のいろいろな姿を、一般の方に知っていただきたいと考えている。記述 は事故報告書に従うが、細部は省略した。また論評を加えることは、できる限り控えた。記述のもと になった文献は、巻末に示される。 各話の最初の一項 ( 最初の小見出しのもとの記述 ) が、その事故の要約である。主要文献もそこに 示される。その次の小見出しから、事故機の飛行の概要が始まる。そして原因の記述に移る。各話こ ういう構成になっている。

9. 墜落 第1巻 驚愕の真実

あるところにポスト・イットを張った。そしてセイフティの記事の多さに、まず驚いた。 私はマイナーな事故、例えばインシデント ( 事故に至らなかった出来事 ) のようなものは無視する ことにした。それでも一九六〇年だけで、一五カ所にポスト・イットが張られた。ポスト・イットの 数は六一年は二〇、六二年は一六と続く。 その数は、年によって激しく動く。例えば一九六七年は三だが、六八年は一六となる。結局六〇年 代 ( 一九六〇—一九六九年 ) は七一カ所にポスト・イットが張られた。 このころの「エビエ 1 ション・ウィークー誌は、一つの事故報告書が一誌 ( 一冊 ) に全部載ってい る。稀に、長い報告書が二週に分割されて載る。当時は報告書も現在ほど長くなかった。 七〇年代に入ると、事故の記事が急に減った。最初は編集方針が変わったかと思った。必ずしもそ うではなかった。「航空機事故が減っている」という主旨の記事が、二度ほど目についた。 類 分 思うに、旅客機の乗客数は、時代とともに増加している。一方事故に遭遇する人間の数のほうは、 と 。この事情が、事故件数の減少として現れているのであろう。最初 趨技術の進歩で、急激には増えない 故そう思ったが、軽率だった。 機七〇年代後半から、セイフティの記事は急増した。またそれと時を同じくして、事故報告書が二 空 航週、あるいは三週に分割されて掲載されることが多くなった。 章したがってポスト・イットの数が、報告書の数を示さなくなった。結論を言えば、「エビエーショ 序 ン・ウィーク」に現れた記事で私が注目したのは、七〇年代は七四件であった。 まれ

10. 墜落 第1巻 驚愕の真実

か。そこに何か、共通項があるのだろうか。あるいはそれは、単にランダムな ( 不規則な ) 事象なの であろうか 事故でもう一つ思い浮かぶのは、時代の流れを映す事故である。その一つは、「制御系を信頼して」 起きる種類の事故である。私はこのことを、一九九〇年に『墜落ーーハイテク旅客機がなぜ墜ちるの か』 ( 講談社刊 ) に書いた。これは、時代の技術水準を映す事故といってもよい しかし少なくとも昔ーーサンⅡテグジュペリ ( フランスの作家・飛行家。『星の王子さま』『夜間飛 行』の著者 ) のころーー飛行機は風で墜とされた。これは確実である。これも時代の技術水準を反映 すると考えてよい。では「風」と「制御系への信頼」の間に、別の何かがあるのであろうか。 歴史を調べて、もう一つ知りたいことがあった。それは航空機が、「情けない理由、で墜ちる場合 についてである。 類 分 例えば飛行機は、「不注意」、「怠慢」、「規則の無視」などで墜ちる。またパイロットの「頑張りす と 趨ぎ」でも墜ちる。この種のミスは、内容が時代とともに変わるのであろうか。あるいは本質的に、同 故じ種類の事故が続いているのであろうか。 事 機 空 航「エビエーション・ウィーク」ーー専門誌を調べる 章こんなことを知りたいと思い、古巣である東京大学工学部航空学科の図書室を訪ねた。幸い勤務先 と大学は、地下鉄南北線で四区間の距離にあった。仕事の合間を見つけては、本郷ー四谷間を往復し