なかった。 ・シティ消防部の消防車が位置に着き、二 このためーの連結は解かれ、一六時一八分に、スー 車輛に水を補給した。 このときまでに、右翼部の火災は強さを増し、機体内部に広がった。火災は一七時〇〇分ごろまで 勢いを増し続け、墜落後約二時間制圧できなかった。小さい火災は夜まで燃え続けた。火災の鎮火に は、全部で一万五〇〇〇ガロン ( 約五七キロリットル ) の水と、五〇〇ガロン ( 約一一キロリットル ) の消火剤を要した。 油圧喪失の原因 陸 ・シティに進入中に撮影された写真は、第二エンジンと尾翼部分に損傷があったことを示して 着 跡いた。第二エンジンは残っていたが、右側のファン・カウリング ( ファンの覆い ) やティル・コーン 奇 ( 胴体後端の整形部 ) はなかった。水平尾翼にも三カ所穴が開いていた。 能そして後述するように、第二エンジンと尾翼構造部分の部品は、アイオワ州アルタ付近で発見され 御た。事故調査委員会によれば、事故は次のような順序で起こった。 まず第一段ファン・ディスクが破砕、分離した。これがエンジン回転部分の部品を強いエネルギー 四で飛散させた。それらが機体構造部分を貫通した。 エンジン破損直後、乗員は、油圧の作動液と圧力が、三系統ともゼロになるのを見ている。破損の 241
倒壊まで、長くて数秒程度と推測されている。 糸の切れた凧ーー油圧が死んだ 垂直尾翼が破壊されると、飛行能力はどうなるか。 123 便の場合、尾翼喪失は二つの結果をもた らした。 一つは、横の風見安定 ( 機首を左右に振ったとき、元に戻る性質 ) を失わせた。同時にヨー ( 機首 の左右の回転 ) 運動を減衰させる効果も失わせた。しかし、これらは必ずしも致命的ではなかった。 もう一つは、尾翼喪失に付随して起きたもので、このほうがはるかに致命的であった。すなわち、 油圧系統が破壊され、姿勢制御が実質不可能になった。 垂直尾翼の方向舵は、上下二つに分かれ、それぞれが別の油圧アクチュエーター ( 作動装置 ) で駆 動される。 7 4 7 の油圧は四系統ある。それぞれが独立していて、油圧の圧力は四つのエンジンか ら別個に得ている。 しかし四系統とも、垂直尾翼の方向舵の駆動にかかわっている。これはいずれかの故障に備えて、 バックアップの機能を持たせるためである。しかし垂直尾翼の喪失は、四系統の油圧の配管を、すべ て破断した。作動油はここから漏れ、約二分後には、あらゆる油圧系は機能しなくなった。 以後 123 便は、通常の舵面による操縦が不可能な状態にあった。いささか乱暴な例えだが、「紙 ヒコーキの飛行」あるいは「糸の切れた凧ーと本質的に同じ状態である。 たこ たこ
左右エンジン推力の同時増減 釣り合いと迎角静安定 推力増加の影響 推力で速度は変えられない 警報を疑う , ーー油圧操縦不能はあり得ない事態 全系統の油圧が破壊されて飛べるか加 生還の可能性 五〇〇年後に起こるべき事故 修理は製造より難しい 修理のチェック機構がなかった 第四章制御不能機、奇跡の着陸 油圧破壊からの生還ーー予想を超えた乗員の技量 油圧ゼロ スー・ゲ 1 トウェイ空港へ 非番の ( 訓練審査官 ) 機長 201 199 210 2 2 2 2 16
ける。この繰り返し荷重と無益な継ぎ板のため、隔壁に疲労亀裂が発生し、成長した。そして一万二 三一九回目の飛行で、隔壁は一気に裂けた。壊れた部分の面積 ( 開口面積 ) は二—三平方メートルと される。開口面積が大きすぎ、諸々のフェイル・セーフ機構は機能しなかった。 隔壁から噴出した空気は、尾部にある補助エンジン (<>) やその防火壁を吹き飛ばし、同時に 垂直尾翼の主要構造部分であるトルクボックスに流れ込んだ。このため垂直尾翼はほば瞬時に倒壊し 垂直尾翼の破壊は、方向舵を制御する油圧操縦系統のすべてを破壊した。 B747 は、独立した四 系統の油圧を持っている。しかし垂直尾翼の破壊は四系統の油圧管を破断し、作動液を流出させた。 落約二分後には、油圧による操縦は不可能になった。 この間、操縦舵面を動かせ 隔壁破壊後の迷走飛行経路は、パイロットの意思によるものではない。 山 鷹 ない 123 便には、航空機固有の運動が発生した。経路を波打たせて飛ぶフゴイド ( 長周期 ) ・モー 巣 御 ドや、横の傾きと機首の左右振りが連成するダッチ・ロール・モードが、特に顕著に現れた。 〇乗員は最後まで操縦操作を続けた。油圧が失われたことは、計器に表示される。乗員はそれを信じ 走なかったか、あるいはわずかな利きを期待したようである。乗員の操作で飛行制御上意味を持つの 迷 は、推力増減による上昇・下降だけであった。もし左右の推力を非対称に使えば、ある程度の旋回は 三可能であった。しかし、乗員がその手段に訴えた形跡はなかった。 修理のミスは、専門家がよほど注意深く見ないとわからない種類のものであった。一方、疲労亀裂 こ きれつ 149
昇降舵アクチュエーター ( 4 個 ) 日 ev 0 「 Actuator ( 4 per airplane) 奮 FWD 結破 第 = 、第 、金 れ間 、烈 F * に ム管 。飛 圧 , れ統 。録 で第 。イ本 。統 金、 、イ吏 面定 壊圧 油圧 3 Hydraulics 3 油圧ー Hydraulics 1 ファン・ディスク Fan Disk 油圧 2 HydrauIics 2 工ンジン・ナセ丿レ Engine NaceIIe 切断部分 Severed Line Hydraulics 1 由、圧ー HydrauIics 3 冫由 . 圧 3 行方不明部分 Area Missing From AirpIane CIosure Spar 端桁 Rear Spar 後桁 Front Spar 前桁 Hydraulics 2 油圧 2 Not to Scale ジ ン 工 第 は プ ン ポ 圧 油 の 統 系 アクチュエーター 右内側昇降舵 左内側昇降舵 右外側昇降舵 左外側昇降舵 図 4 ・ 6 水平安定板における油圧損傷 ( 注 10 ) 硎 さ た 員 の に 散 し た 破 片 切 崟斤 さ た と 第 第 の 油 圧 は 工 ジ ン の ン は 使 わ れ て い な い と か ら て し ) る そ し て 周 の 機 構 迴 に チ タ く つ か も そ オど カゞ チ タ ン が わ オし イ ス ク に は 、工 ン シ ン 主 要 構 音 5 ロロ の しゝ 6 は 第 フ ア ン プ レ ド と フ ア ン チ タ ン 金 付 着 し い た 図 4 で 油 圧 が ゞ破油 断 さ て た 破 断 に 第 系 0 ま 右 。水 * 平 安 板 は 猛 か つ 突 然 で あ た 油圧 2 & 3 破 の 圧 油 系 た め 止 を き 動 る よ に ダ D 記 で は 舵 面 は 冫由 242 分 は フ フ イ ト 1 タ レ コ
航空機関士「 O ( ピッチ・トリム・コンペンセ 1 ター ) 」 機長「オー 1 ライド」 ( スイッチをオー ーライド・オフの位置へ。 O をオフにする ) 航空機関士「油圧システム、チェック」 機長「油圧と油量をチェックせよ、 航空機関士「はい、 油圧と油量チェック、チェック・オーケー」 航空機関士「ピト 1 ヒ 1 ター」 ( ピト 1 管のヒータ 1 ) 機長「機長の ( 側の位置 ) 」 航空機関士「地上装置ー 機長「スタンバイ」 ( まだ繋がっていると誤解 ? ) 航空機関士「スタンバイ、地上装置ー ( 復唱 ) 運「滑走路 --l へタクシーせよ」 馭・〇六時一七分〇一秒 7 水平安定板が動く音、七回。 酔 機長「一三七」 章 副操縦士「一五一、一六 第 機長二五一」
強度については、十分なデ 1 タがない 事故報告書によると、飛行シミュレーション試験に参加したすべての機長は、滑走路への着陸を断 念し、海面への緊急着水を決心した。 また報告書は「事故機と同じ故障形態を仮定すると、クル 1 が初めて異常状態を体験するという前 提の下」では、「着陸は不可能であった」としている。 さらに着水についても、同じ前提のもとでは、たとえ「着水海面を全く指定しなくても、接水時の 対気速度を二〇〇ノット ( 時速約三七〇キロ ) 以下に下げることは不可能」であるとし、「沈下率・ としている。 姿勢等も大きくばらっくため、生還可能性はほとんど期待できない 五 00 年後に起こるべき事故 123 便の場合、全系統の油圧が死んだとき、なぜ舵面を動かせなかったか。 理由は、油圧をバックアップするものがなかったからである。なぜバックアップがなかったか。そ わぎ れは、あのクラスの大きさになると、もはやタブ ( 舵面についている小さい可動翼 ) でさえ、人間業 では動かせないからである。だからこそ バックアップがないからこそーー油圧は四系統独立のも のが用意されていた。 操縦系統にバックアップがない場合、もし全系統が故障すれば、それは直ちに墜落を意味する。こ れだけは絶対に避けなければならない。
航空機関士は「ハイドロ・クオンティがオール・ロスしてきちゃったですからなあ」と言った。四 系統フェイルの警報が出た場合、乗員はどう考えるか。当時私が取材した全員が、「警報のほうを疑 う」と答えた。 油圧がなければ舵が利かない。 これは B747 の乗員なら誰でも知っている。しかし油圧がなくて も、ほんのわずかながら舵が利いていると思うのは、むしろ自然のようである。風や、左右エンジン のわずかな非対称などから生ずる擾乱は、舵の利きと区別できない。そもそも乗員には、「尾翼がな い」ということがわからなかった。 しかしあえて個人的見解を述べれば、乗員は、舵が利いていないことに気づいてほしかった。緊急 時こそ、パイロットが真の力量を発揮すべきときである。彼らはこのために高給を食んでいる。私は そう思っている。 全系統の油圧が破壊されて飛べるか 123 便は、隔壁爆発後、操縦できたか。これについてはいろいろな議論がある。ここでは事故調 査委員会の考えを要約する。 事故機の操縦は、練習すれば上達する。しかし最初は制御できず、必ずひっくり返す。 飛行は空気抵抗が大きいほど、すなわち空気密度が大きいほど、容易である。早く降下させたほう が、フゴイド運動もダッチ・ロ 1 ル運動も、減衰が大きくなり制御が容易になる。
デンバ 1 のステ 1 プルトン国際空港を離陸した。途中ィリノイ州シカゴに着陸し、ペンシルべニア州 フィラデルフィアに向かう予定であった。乗客二八五名、乗員一一名が搭乗していた。 畠操縦 離陸して予定の巡航高度三万七〇〇〇フィ 1 トに上昇するまで、飛行は平穏無事であった。リ 士が操縦していた。オ 1 トパイロットがエンゲ 1 ジ ( 作動 ) され、オ 1 トスロットルはスピード・モ ードの二七〇ノット ( 速度を指示対気速度二七〇ノットに保持する ) で使用されていた。フライト・ プランではマッハ数〇・八三の巡航速度で飛行することになっていた。 離陸して一時間七分後の一五時一六分一〇秒、乗員は大きな、ドンという爆発音を聞いた。振動が 始まり、機体がぶるぶる震えた。乗員は、エンジン計器を点検し、後方の第二エンジン ( 尾部搭載の △印の地点 ) 。 エンジン、図 4 ・ 2 参照 ) が機能停止したことを知った ( 図 4 ・ 3 の右上、 陸 機長はエンジン停止のチェックリストを命じた。チェックリストを行っている間に航空機関士は、 着 跡機体の油圧系統の圧力計と油量計が、ともにゼロを指しているのに気づいた。 奇 副操縦士は「航空機を制御できない。右旋回で降下している」と言った。機長が操縦を代わり、航 機 空機が操縦入力に応答しないことを確認した。 ム月 御機長は第一エンジン ( 左翼のエンジン ) の推力を減じた。航空機はロールして、翼を水平にする姿 勢に戻った。 四乗員は空気駆動発電機を展開した。これは第一補助油圧ポンプに動力を供給する。そして油圧ポン プのスイッチをオンにした。しかし、油圧は回復しなかった。
的に一定に保たれる。これによって釣り合い飛行 ( 例えば巡航 ) が持続する。 厳密に言うと風見安定は、航空機と飛行方向 ( 重心の速度 ) のなす角を、自動的に一定に保つ。こ 2 の角度を航空機の対称面内で測ったものが、先に述べた釣り合い迎角である。 また、この角度を対称面に対して測ったものが、釣り合い横滑り角である。釣り合い横滑り角は、 通常ゼロか、ゼロに近い。 釣り合い迎角を変えるには、すでに述べたが昇降舵を動かせばよい。 これによって水平安定板を動 かし、胴体の姿勢 ( すなわち迎角 ) を変え、飛行速度が変化する。 一方釣り合い横滑り角を変えるには、方向舵を動かせばよい。 これによって左右エンジンの推力が 非対称な場合や、横風がある場合に対処できる。言いかえれば、機首を右や左に振って飛ぶことが可 北になる。 左右エンジン推力の非対称操作 さて油圧操縦系統が機能しなくなると、どうなるか。 便の飛行を理解するには、次の一点を理解することが重要である。すなわち、「昇降 舵と方向舵が固定された場合、釣り合い迎角と釣り合い横滑り角は、唯一に定まってしまう。これを 変えることはできない」ということである。 ー川は、すべての舵面を油圧で動かしている。フラップ・スラットも油圧で駆動される。水平