響の大きさを見るには、その人がどれくらいその文化にどっぷり浸かってきたかを考えよう。 たとえば、ずっとスポ 1 ッと親しんでいる環境にいた人を考えてほしい。あなたの新しい恋人は 常になんらかのスポ 1 ツをやりながら育ってきて、今でもスポーツ好きか ? 彼も彼の友人も草野 球チームでプレ 1 しているか ? 熱狂的ファンか ? スポーツ番組を見たり、試合観戦をしている と、あなたも含めまわりが見えなくなるか ? もし答がイエスなら、スポーツ文化は彼にかなり強い影響を与えており、彼の行動全体を支配し ているだろう。他の特徴はそういうパタ 1 ンを示していないかもしれないが、おそらく彼は競争心 が強く、タフでマッチョ、集中力があるのではないか ? 私の知っている法律事務所は、新人リクル 1 トの時に、優秀なスポーツ選手だった弁護士に高い 得点をつける。競技場で有利な性格的特徴は、法廷でも同じように有利な場合が多いからだ。 日常の中にも文化的影響の例がたくさんある。どれも人を読む時に、文化的影響を考慮すること がどれほど大切かを教えてくれる。 最近、私が気づいた例をあげてみよう。 ふたりの男性が抱き合い、頬にロづけをしていたら、あなたは彼らがゲイだと思うだろうか ? もしあなたが、彼らはヨーロッパ文化の色濃い影響を受けており、親愛の情を堂々と表現する人た ちだと知っていたら、ゲイだからという結論には飛びつきはしないはずだ。 また、ある歳若い女性がものすごく短いミニスカートをはき、四インチの厚底シューズをはき、 おへそやプラジャーの紐が丸見えのプラウスを着て、爪を色とりどりに塗り分け、暗い色の口紅を 293 第九章見かけ通りではないこともある
ーのレジ そして、俄然好奇心がわき、眉ピアスをしている人に目が行くようになった。スー 係、銀行の窓口係、コーヒ 1 ハウスでたむろする若者たち。保守的な格好の人もいれば、芸術家タ イプもいる。ちょっとワイルドな人もいれば、知的で教育程度の高そうな人もいる。きちんとした 人、だらしない人、おかしな感じの人、いろいろいた。 以来、私は何百もの眉ピアスを見てきた。汚らしい格好をしたティーンエイジャーの男の子より も、中産階級の子女といった感じの若い女の子がつけていることが多いようだ。タトウーと違い 眉ピアスは簡単に外せるので、それほど反抗精神のあらわれではないように思った。眉ピアスをし た若者は、芸術家肌で個人主義的、表現者タイプで、政治的あるいは文化的な意志表示というより は、ファッションとして眉ピアスをつけているらしい ここ数年の間に眉ピアスについてかなりの知識を得た。この知識をそんなに年中引き出すことは ないだろうし、実際、ほとんど使わずじまいだろう。だが、もし私のオフィスに眉ピアスをつけた 若い女性が就職面接にきても、眉ピアスについてはオ 1 プンでいようと直感が働くはずだ。奇妙な ものをつけていると思われるかもしれないが、他のサインがちゃんとした女性であることを示して いたら、眉ピアスは警告サインにはならない。 もしあなたが今まで眉ピアスをつけた人を見て、不良だとか、ドラッグ中毒者だと決めつけてい ステレオタイ たなら、眉ピアスをした人を評価する時に直感は当てにならないと思った方がいい プを越えて警告サインを発するような、充分なデ 1 タベ 1 スができていないからだ。 今度あなたが髪を切りに行く時や、客に給仕をする時、街を歩く時、どうか立ち止まってよく目 305 第十章内なる声に耳を傾ける
やバックミラー、他の車に目を配れというのだ ? だが、数カ月も経っと無意識に手が動くように なり、ギアのことさえ考えなくなった。 を使って人や状況を読む練習をするうちに、車の運転のように上手になり、うまく即 断できるようになるだろう。何事もあきらめてはいけない。 時間がたつぶりある日常生活の中で「人を読む」ことは、人間関係を広げる役に立つだろう。し かし、おそらくもっと重要なのは、時間がない時に正しい決断を下せるようになることだ。 日常生活での「人の読み方」とは同じテクニックを使っている。それを学ぶことは人 生の様々な局面で大きな助けにもなるだろう。 ガソリンスタンドのことを思い出すたびに、私はあの若者たちを単に読み取るだけでなく、 を使って読むことができたことに感謝せずにはいられない。 349 応用編素早く決断するために
「どうして全然気がっかなかったんだろう。ちょっと考えればわかったことなのに」 上司の思惑を読み外したり、友達に心を許し過ぎたり、ベビーシッターの常識にあきれたりした あとで、「またやってしまった」と後悔する。ほとんどの場合、冷静に反省してみると、何が間違 いだったのか、はっきりとわかってくるものだ。それなのに、なぜ同じ失敗を何度も繰り返してし まうのだろう。 「人を読む」ことが、スポーツみたいなものなら、弱点を認識し、それを克服するために練習をす よゝ。今度こそはと思いつつ、同じ人を相 れば上達する。けれど、人間関係はなかなかそうはいかナし 手に同じことを繰り返している。 私は何年も法廷で「人を読む」仕事をしてきたのだから、いつ、どこでもうまく人を読めるはず 第一章 準備が大切 「人を読むーには あなたの心がまえの見直しから
私たちは皆、いい人というイメ 1 ジを持ちたいと思っている。そのため、自分の長所に重きを置 き、短所を軽んじようとする。 たとえば、それほど美人ではないが優秀な頭脳の持ち主は、他人を評価する時にも、外見よりも 頭脳を重視しがちだ。スポーツ好きの人は強靭な肉体を重視するし、芸術的な人はセンスを重視す る。自分の手際のよさを自慢する人は、相手にも手際のよさを求める。勤勉な人は、結果よりも努 力を評価するが、大して努力もせずに結果を出せる人は、勤勉さよりも結果を重視する。 生活のどんな面を見ても、この公式は当てはまると思う。花をプレゼントするのが好きな人は、 自分が花をプレゼントされるのが好きなのだろう。電話で話す度に「愛しているわ」と言う女性 は、おそらくあなたにも同じように言ってほしいのだ。 どうかこのシンプルな原則を頭に入れておいてほしい。相手があなたに何を期待しているかが理 解できるようになるだろうから。 278
第七章 なせ、そういう = = ロい方をするのかーコミ。 = ケーンの背景 小さな鳥が地上の巣にとまっている。人が近づくと、その小鳥は人間を雛鳥から遠ざけるため に、羽が折れたふりをして足を引きずり、自分の方におびき寄せる。 雑草の上に凍ったように静かに横たわる蛇。餌となる次の獲物をおびき寄せようと、しつばの先 をわずかにびくびくさせる以外、微動だにしない。 テレビの自然番組にはこういうシーンがよくある。人間の会話、とくにデリケ 1 トな話題につい てのやりとりの中には、この小鳥や蛇を思わせるものがある。 私たち人間は、他のあらゆる生物と同じように、前に進んだり、後ろに下がったり、気をそらせ たり、気を引こうとしたりする。自分が避けたいものから他人も遠ざけ、自分の行きたい方向へ引 っ張ろうとする。社会の中で生き残るために作り上げられた、さまざまなコミュニケーション方法 201 第七章なぜ、そういう言い方をするのか
るのかわからないような話し方しかできない人もいる。 頼まれればはっきり話す人が、もごもごしゃべっているのは、注意散漫だとか、疲れていると か、ロにものが入っているとか、ドラッグやアルコールのせいだろう。あるいは、単なる一瞬のロ ごもりかもしれない。慢性的にもごもごしゃべりをする ( はっきり話してくれと頼まれても、うま く話せない ) 人には、次の可能性がある。 ・自信がない ・精神的に不安定である ・不安がある ・自分の考えをはっきり言葉に出せない ・自意識過剰である ・心配事がある 切 大 ・疲労している 方 ・病気である 話 で もごもご話す人はリ 1 ダーシップを発揮することはあまりなく、したいとも思わないようだ。落 内 ち込んでいたり、悲しそうに見えることが多い。元気で幸せそうな人がもごもご話すのは、私はあ 章 まり見たことがない。また、のろのろした動き、受け身的な行動、弱々しい握手、疲れたような素 ・ランゲ 1 ジも元気がないことが多いようだ。 振りなど、ボディ 1
適度に身を入れて聞く 自分にとって重要なことを話す時、私たちは相づちが欲しくなる。相手がちゃんと聞いているか どうか知りたいからだ。うなずいたり、「わかるなあ [ とか「そうだね」などと、時たま言っても らいたくなる。相づちによって、話が中断されることはない。逆に、完全な沈黙の方が気まずいも のだ。 相手に話をさせるには、こちらが一言も発しないのがいちばんだ、と信じているコンサルタント と一緒に仕事をしたことがある。沈黙されると気まずくなり、相手は自然に何かしゃべるというの だ。たしかに、短い間ならこの方法でも いいだろうが、そのうちに相手は自分ばかり話しているの がいやになり、やがて話すのをやめるに違いない だからと言って、あまりにも熱心すぎる態度も困りものだ。まじまじと見つめられるのは、嬉し くないどころか恐ろしいものだ。アイコンタクトは親密さや信頼を育てる素晴らしい行為ではある が、やりすぎると逆効果だ。 同じことが、同情的な相づちにも言える。あなたが子供時代のひどい体験を話そうが、昨日のタ 食の話をしようが、あまりにも心配されたり、同情されすぎると困ってしまうだろう。熱心すぎた り、同情されすぎるのは、わざとらしく感じていやになってしまうものだ。 172
子供の頃、よく母親に「何を言うかじゃなくて、どう言うかが大切なのよ」と言われたものだ。 それから何年も経った今、気がつくと私は自分の子供に同じことを言っている。実際、子供を毎日 見ていると、確かに言葉そのものよりも話し方の方がずっと大切だということがよくわかる。 どんな会話の中にも、二つの対話が存在する。一つは言葉によるもので、もう一つは口調など声 そのものによるものだ。両者が一致することもあるが、たいていは食い違う。 「お元気ですか ? 」と尋ねて「元気です」という言葉が返ってきても、「元気」という言葉をその まま信じる人はあまりいないと思う。むしろ声の調子などから、相手が本当に元気なのか、落ち込 んでいるのか、不安なのか、興奮しているのか、などの感情を感じ取る。口調、声の大きさ、早さ など声からわかる特徴から、言葉ではない会話の流れをキャッチし、真実をつかみ取るのだ。 第五章 内容てはなく 話し方が大切 言葉以上のものを聞き取るために 141 第五章内容ではなく話し方が大切
えば腰の具合が悪い ) や一時的な精神状態 ( たとえば、いらついている ) を反映しているだけの場合 も多い ボディー・ランゲージは状況を追って変化していくので、これをもとに性格を判断するのは危険 だ。たとえば、誰でも緊張することはあるが、だからと言って私たちが皆、神経質だということに はならないだろう。 だが、ある女性があなたと会う時にいつも緊張しているようだったら、それは一時的な状態では なくて、神経質な人だということになる。 つまり、ボディー・ランゲ 1 ジを解釈する上で、大切なことの一つは、「いつもーそうするのかどう か、という一貫性である。だが、その人のいつもの行動がどんなものかわからなければ、今あなた が見ている行動が「いつも」のことなのかどうかはわからない。だから、その人の性格が少し見え 出した時にはじめて、ボディー・ランゲージが意味をなしてくるのだ。 明るい挨拶はアテにならない 一般的に言って、感情にはネガテイプなものとポジテイプなものの二種類がある。 正直ではない、腹を立てるなどはネガテイプな感情だとされ、幸福感などはポジテイプな感情だ とされる。中には、驚きや注意深さのように、状況によってポジテイプな感情になったり、ネガテ イプな感情になったりするものもある。