候補者 - みる会図書館


検索対象: この人はなぜ自分の話ばかりするのか
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1. この人はなぜ自分の話ばかりするのか

に評価するために、まずは情報を集めることに集中しよう。 恐怖に対抗するいちばんの武器は情報、つまりは知識だ。自分の恐怖をリストアップすれば、自 分自身や自分の動機が見えてくる。それから自分の決断に最終的な影響を与える人たちについての 客観的な情報を集める。 先ほどの例を使ってみよう。 まずは、上司が他の人に対してどう振る舞っているかを見る。もしかしたらこの上司は誰に対し ても批判的なのかもしれない。あるいは、他の人には優しいのに、あなたにだけ厳しいのかもしれ オし こういう観察をすれば、その上司の意図を正しく読み取ったり、行動を予測したり、自分に とってのベストなプランを考えることができるようになるだろう。 実はこれこそがまさに陪審選定をする時のプロセスなのだ。 陪審候補者一番を残して、候補者二番を落とすか、あるいは候補者二番のために候補者一番を落 とす方がいいのか ? 私たちはこういう決断を迫られる。たいていは「帯に短し、たすきに長し なので苦労するのだが。 陪審候補者一番は検察側に対して批判的になりそうだから、被告人を有罪だと思わないかもしれ ない。だが、死刑についてかなりはっきりした意見を持っているから、有罪判決が下されたら、被 告人に対してかなり厳しい刑を科すだろう。一方、陪審候補者二番は検察側の意見をそのまま受け 入れそうだが、死刑を科すことはなさそうだ : どちらを選んでもリスクはある。それゆえ私は「恐怖 , を感じてしまう。裁判が終わったあとで、

2. この人はなぜ自分の話ばかりするのか

果たして候補者一番を選んでおけば私のクライエントは無罪になっただろうか、いやもっとひどい 場合、もし候補者二番を選んでおけばクライエントはまだ生きていただろうか、などと眠れぬ夜を 過ごしたくない。そのためにも、自分なりにもっとも客観的で合理的な決断をしたいと思う。 では、どうすればいいゝ 恐怖ではなく、選択肢そのものに神経を集中させ、それぞれの選択肢が招くであろう最悪の結果 を頭の中でリストアップする。そうすることで、候補者たちの考え方を知るための質問事項が見え てくる。そのあとで、私が観察したことと、それぞれの候補者を選んだ場合のリスクについて被告 人側の人たちや弁護士と議論する。 最終的に誰を選ぶかを決めるのは被告人と弁護士だ。もし無罪放免になる可能性に賭けて、死刑 になる危険を冒そうとしても、それは彼らの決断である。私の仕事はその選択に至るまでのプロセ スにできる限りの客観性を持たせることにある。 切 自分の人生においてよりよい選択をするためにも、同じプロセスがきっと使えるはずだ。 大 備 準 4 自己弁護ーー言い訳はあとからでも遅くない 人から攻撃されたり、批判されたりするのは実にイヤなものだ。自分を守ろうとして、まるで包 人 囲攻撃された砦のように頑なになってしまい、その結果、客観性を失い判断力が落ちてしまう。 章 普通の状況でも、目を開き、耳を傾け続けるのはなかなか大変なのだから、攻撃にさらされてい 第 るならなおさらだ。だがこういう時こそ、冷静さを保ち客観的でなければいけない。上司や顧客に

3. この人はなぜ自分の話ばかりするのか

陪審候補者が法廷に呼ばれ、陪審員席に座って最初の質問に答えようとする頃には、私はすでに 彼らについて最初の印象を固めている。彼らが弁護士の質問に答えるのをよく観察しながら、大体 いつも最初の印象が正しかったとの確信を得ていく。 そこには何も神秘的なものはない。単純に候補者たちの外見や行動、話し方が、それまでに私が 法廷で見てきた人のパタ 1 ンのどれかに当てはまるというだけの話だ。 もちろん、ある人の特別な印象が何を意味するのか、よくわからないことも時々ある。しかした いていの場合、その候補者を陪審員として受け容れるかどうかを決める頃には、自分の直感のもと になっているものを見つけ出しており、弁護士に論理的に説明できるようになっている。 この章のはじめに登場した陪審候補者の話に戻ろう。 主任弁護士は彼女を二日目の質疑応答まで残すことに渋々同意した。この若い白人女性は、私た ちのクライエントにとって、いい陪審員になるだろうという私の直感に揺るぎはなかった。どうし てそういう気持ちになるのかは、まだその時点では自分でもよくわかっていなかったのだが しかし、二日目の午後には、自分の潜在意識が彼女について「何」を感じ取ったのかがわかった。 その法廷の内部は、他と同じような配置だった。 陪審員席が部屋の片側にある。被告人と弁護士、そして私が座る弁護団席は部屋の真ん中あた り、傍聴人席の真ん中を突っ切り、外の廊下へつながる通路へと続く低い扉まで数フィートのとこ ろにある。 302

4. この人はなぜ自分の話ばかりするのか

愛する人の死を償うことはできない」と答えた。これを聞いた原告側の弁護士は、この男性は実質 的に無限度の損害賠償額を裁定するだろうと思ったようだ。確かにこの陪審候補者の「言葉。はそう 言っていた。 しかし、この弁護士は彼の口調を聞き逃していたので、この陪審候補者が本当はどういうつもり で、そう言ったのかを読み違えてしまった。かなり批判的で、皮肉つばいと言っていいほどの口調 だったのだ。この口調から、おそらくこの男性は人の死に値段をつけようとする原告側の弁護士に 怒りを抱いたと判断できた。またこの男性のコメントは明解で的確だったので、この事件について かなり客観的になっていると思われた。 これらのことから、この陪審候補者は人の死に値段をつけるのはよろしくないと感じていると理 解し、私たちは彼を陪審員として残した。もちろんそれは正解だった。 さまざまな声や口調がどういう意味を持つかを理解し、それが聞き分けられるようになると、そ のトーンに含まれる重要なメッセ 1 ジをつかめるようになる。 次にあげるのがそのためのコツだ。 ・会話の合間に、言葉ではなく声そのものに注意を傾けるようにする。 ・声が本人の選択的 ( 意識的 ) 、あるいは非選択的 ( 無意識的 ) 特徴をあらわしているかどう かを聞き分ける。 ハターンを見つける。その声や口調はいつも通りか、いつもとは違うかを聞き分ける。 ( っ まり、パターンから外れるものや、極端なものを聞き分けるということ ) 144

5. この人はなぜ自分の話ばかりするのか

誰にも何の質問もできないし、質問する側である私たち関係者は、自分について何も話す義務はな 。あくまで弁護側が、候補者を一方的に見抜くための場である。 法廷の場以外では、こんなことはめったに起きないだろう。 矢継ぎ早に質問する相手にていねいに答え、自分からは相手に何も聞かない、なんてことはほと んどあり得ない。あなたが相手のことを読もうとして質問すれば、相手もあなたを読むチャンスを 欲しがるのが普通である。相手に率直に答えてほしいなら、日常会話を交わす相手は、陪審候補者 ではないので、まず自分から率直に話をして相手から信用してもらわなければならない。 法廷の場でも、優秀な弁護士ならこの日常会話の原則を使う。陪審員を選ぶ時点から自分につい て話をし、陪審候補者との間に信頼関係を築き上げ、裁判に有利になるようにもっていく。本来、 弁護士は自分のことを陪審員に知らせる義務はないのだが、陪審選定の質疑応答の際に、わざわざ 自分のことを話して相手の心を開かせようとするのだ。 法廷のような緊張を強いられる場でこの努力が実るなら、気軽なランチの場でならもっとうまく いくはずだ。 相手に求めているものをはっきりさせる ロ 1 レンス・・ピータ 1 は『ピータ 1 の法則』の中で「自分がどこへ行こうとしているのかを 知らなかったら、結局どこかほかのところへ行き着いてしまうだろう」 ( ャ 田中融二訳い ) ) と述べてい 25 第一章「人を読む」には準備が大切

6. この人はなぜ自分の話ばかりするのか

見逃していたことに気づくこともある 初対面の人に対して、何か強い気持ちを抱くのは珍しいことではない。 しかし、時にはこういう強い気持ちが、何週間、何カ月と経ってから、つまり、その人について の情報を充分に得たあとにわき起こることもある。第二章「行動パタ 1 ンの発見」でも述べたこと だが、第一印象に頼ることなく、常に新しい青報にオープンでいることが大切だ。たとえその人を 知ってから何カ月も経っていたとしても、ある人への直感的な思いは、新しい情報として無視せず にきちんと取り扱おう。直感に注意を払うことで、それまで見逃していたことを見つけられ、より よい決断ができるようになる。 マクマーティン保育園裁判での話を例にしよう。 陪審候補者は皆、法廷での陪審選定の何週間も前に質問状に答を書き入れて返送してきていた。 アフリカ系アメリカ人女性の候補者が、質問状にびっしりとコメントを書き連ね、いかに自分が検 察側に賛同しているかを強調していた。裁判についての報道もたくさん見聞きしてきた、この事件 についての報道から判断すると被告人は有罪だと思う、とも書き記していた。私を含む被告人チ 1 ムは全員、候補者リストの彼女の名前の上にバツをつけた。 質問状が返送されてからおよそ二週間ほどして口頭質問が行われた。例のアフリカ系アメリカ人 女性は、質問状に書いた内容をほば取り消すような答弁をした。この事件についてさらに考えてみ 3 14

7. この人はなぜ自分の話ばかりするのか

ある裁判については、高収入で大卒の若い独身女性が、被告人側に好意的な態度を取る傾向が見 られる一方で、プルーカラーの既婚中年男性は検察側に好意的だ、という結果が出るかもしれな 他の事件では、これとは正反対の結果になるかもしれない。 模擬陪審員から得られた情報を検討してから、本物の陪審候補者への質問事項を作る。この質問 事項は彼らがどんな特徴を持っているかを見る助けになるものだ。 前もって彼らにその裁判についてどういう判断を下すかを聞くことはできないが、似たような特 徴を持った人たちが、どういう判断を下したかがわかっていれば、かなり確実な予想ができるはず そして、弁護士が面と向かって陪審候補者に質問している間、私たちは彼らがその裁判について どう判断するか、手がかりを探しながら、それぞれの陪審候補者の性格があらわれるような質問に 焦点を絞る。これが陪審員を選ぶプロセスの中でいちばん重要な部分だ。 プルーカラーの既婚中年男性のほとんどが検察側に好意的だからといって、その人がそうとは限 らない。口頭質疑をしている間に、その男性が以前、ある犯罪の容疑者に仕立てられたことがあ見 の り、警察や検察に不信感を持っていることが発覚するかもしれないのだ。 私は、それこそあらゆるタイプの裁判について、このプロセスを何百回も経験してきた。刑事事 行 件のみならず、ケガをしたことについての損害賠償や契約不履行、労働紛争、映画の著作権をめぐ 章 。どんな事件についても、陪審員の態度を細かく る争い、家庭内争議など、あらゆる民事訴訟 第 検討しなければならない。

8. この人はなぜ自分の話ばかりするのか

ぞなぞは解けないように、人について判断する時も同じだ。きちんと人を読むには早計な判断は禁 物。人読みを成功させるには忍耐が必要なのだ。 情報収集をする 凶悪犯罪者が捕まって、近所の住人がインタビューを受ける場面をテレビでよく見るが、たいて ゝ人に見えたんですけどねえ」と答える。だが、いろいろ質問されてい いの人はまず、「すごくいし くうちに、「そういえば、あまり他人とかかわらない人でした」などと言う。実は、自分はあまり 犯人のことを知らなかったと気づくのだ。この犯人がそれほど「いい人」ではなかった、というサ インはたくさんあったのだろうが、誰もそこまで注意を払っていなかっただけなのだ。 判断材料となる情報は、判断そのものと同じくらい重要だ。当たり前のことだが、間違った情報 は間違った判断を招いてしまう。的確に人を見抜くには、まずその人について信頼できる情報を集 めなければならない。視覚や聴覚、時には触覚や嗅覚まで使って情報を収集しよう。重要なサイン を見落として、大きな後毎を招くことがないように。 まずは自分が率直に話し、相手の心を開く 陪審選定の時、陪審候補者は、原告や被告、弁護士の前に座らされ、個人的な質問の猛攻撃にあ う。さらにそれらの質問に正直に答えると宣誓しなければならない。候補者は質問されるだけで、

9. この人はなぜ自分の話ばかりするのか

質問に質問で答える 「ねえ、新しい営業の人、どう思う ? 」 「わからないな。君はどう思う ? 」 「うーん、あなたは昨日彼と一緒にランチに行ったんでしょ ? 」 「どうして聞くの ? 」 自分の正直な気持ちを言いたくないために、質問に質問で答えようとする人がいる。そうやって あなたからもっと情報を引き出し、自分の答をあつらえようとしているのだ。 新しい営業の人はあまりいい人じゃないと思っているかもしれない同僚に、「彼はいい人だと思 う」と率直に言っていいものだろうか ? 昨日一緒に昼食をとったと認めたら、この同僚はどう思 うだろう、と相手の出方を読んでいるのだ。 法廷ではこういうやりとりがよく行われる。 弁護士が「死刑についてどう思いますか ? 」と質問すると、陪審候補者が「どう思う、とはどう いう意味ですか ? 」と答える。 こ青報集めをしたいのだろう。私たちがどうい この陪審候補者は、自分の意見をはっきり言う前。↑ う答を望んでいるのか、社会的に受け入れられやすい意見は何かなどを探り、それがわかってか ら、自分が安全だと思う答を口にするつもりだろう。 質問に質問で答える人がいたら、要注意だ。必ずしも言い逃れをしようとしているのではないか 211 第七章なぜ、そういう言い方をするのか

10. この人はなぜ自分の話ばかりするのか

しかし、私がある男性と交際しようかどうか迷っているとしたら、話はまったく違ってくる。 交際相手に自分が何を求めているかを考え、その男性についてわかることすべてを検討し、本当に しい相手かどうかを判断しなければならない ここで、私が誰かを理解する時のプロセスについて説明しようと思う。このプロセスは、法廷の 中でも外でも変わらない。陪審候補者であろうと、タクシー運転手であろうと、人は人。みんな同 じなのだ。 順を追って書いていくが、内容さえ全部押さえておけば、この順序にこだわらなくてもいし のプロセスを練習しているうちに、あなたなりの順序ができてくるだろう。 いちばん目立っ特徴は何か 私が陪審候補者について集められる情報量は、日常生活の中で、ある人について集められる情報 量とは比べものにならないほどわずかだ。 日常生活において、私たちはひとりの人を、カジュアルな場、フォーマルな場、仕事関係の場、 社交の場といったさまざまな状況で見ている。また、相手を知るまでにたいてい何カ月、もしくは 何年も時間をかけることもできる。実際、よほど焦点を絞っていないと、あまりの情報量の多さに 圧倒されてしまうことも珍しくない。 ジグゾーパズルをやったことがある人ならわかると思うが、何らかの段階的なアプローチを取ら 47 第ニ章行動バターンの発見