マイクロソフトの社員はみんなそう思い込んでいました。 ればこの問題は収まらない。 そんなとき、ビル・ゲイツは困難を分割しました。 技術的問題はクライアントの怒りからは独立した間題だと。どうやらクライアントが 怒っているのは技術的問題よりも、担当者との性格の不一致に原因があったようです。そ うして担当者は替えられ、クライアントをとにかくなだめる任務に就くことになりました。 他方で技術的問題はエンジニアたちが全力で解決に向かってまい進していました。 こうしてクライアントとマイクロソフトの関係は、なんとか立ち直ったのです。技術問 ビル・ゲイツが「その 題と外務問題を切り分けることで、この事件は終息を迎えました。 問題とこの問題は独立している」とよく言っていたことを覚えています。こうした課題の 分割は、複雑な問題を効率的に解決するうえで重要なことだと思っています。 時間を制する者は、世界を制す
一方アメリカでは「なるはやで」などという指示はありえません。どんな仕事にも必ず 締め切りが設けられ、部下は締め切りを守るために全力で仕事を終わらせます。締め切り があるから効率化を考え、その結果生産性が上がるのです。 日本の職場にはそうした緊張感が欠けています。「 1 週間でできたら 1 週間でやってほし い」などというあいまいな指示では部下のモチベーションも上がるわけがありません。 日本人も「この仕事 2 週間で終わらせて」と言われたら 2 週間で終わらせるように努力 するはずです。なるはや病は、日本人の潜在的な能力を引き出さずに抑圧する、悪い病気 です。 なるはや病は何の意味も理由もない、ただの悪習慣です。ここで一歩立ち止まって、な ぜ「なるはやでなどというあいまいな指示が横行しているかを考えてみてください。 答えがわかりましたか ? きっと答えはないはずです。そうです、なるはや病は何の根拠もないただの形式的なも のにすぎないからです。本質的な意味はありません。 しかし一歩立ち止まって、本質的な意味を考えることは重要です。アメリカではそのよ
ある日、ビル・ゲイツがカレーライスを作ろうとしたとき、なんとカレールーとニンジ ンがありませんでした。これではいつものカレーライスが作れません。しかしよく考えて 、 0 、レヾ ) みてくださし ノーカないと絶対にカレーライスは作れないでしようか ? ニンジンが ないとカレーライスは作れないでしようか ? そんなことはありません。ルーは市販の カレー粉で代用できるし、ニンジンはなくても一応力レーライスにはなります。つまり、 ルーかないという間題と、ニンジンがないという問題は独立しています。だからここは慌 てず、「ルーをどうするか」「ニンジンをどうするか」という分割された課題に、別々に当 たればいいわけです。 ビル・ゲイツはその後、カレー粉とじゃがいもを使ってカレーライスを作っておいしく したたきました。 やや抽象的な話だったので、現実にあった事件を例に挙げます。 マイクロソフトがパソコンメーカーにソフトを依頼されたとき、ある技術的な問題によ ハソコンメーカーから苦情が来たことがありました。クライアントがたいそう怒って いるということで、社内は混乱していました。とにかく、原因の技術的問題を解消しなけ
①外部要因の締め切りが設定できる ②メールをチェックする必要がない ③話しかけてくる人がいない ①は疑似的な締め切りを意図的に作れるという理由です。朝 6 時に家族が起きてくるの が私にとっての朝の締め切りです。締め切りがあると、仕事をやらなければならないとい う気持ちになります。 また、朝の 2 時間半に 8 割を終わらせると言いましたが、その 8 割の仕事がどの程度か というのはタスクリストを参照すればわかります。詳しくは 6 章でお話ししますが、私の タスクリストには 1 日の仕事がすべて分刻みで記されているので、朝のうちにここまで やるという範囲を容易に決めることができます。 私は毎朝ゲームをしているのです。家族が起きる 2 時間後までに決めたタスクにすべて チェックを付けられるか、というゲームが始まるのです。こうした締め切りを意図的に作 るのはなかなかできることではありません。何時までにやる、と自分で決めることはいっ 181 今すぐ実践ロケットスタート時間術
のアイコンをクリックしたまま「ごみ箱」のアイコンの上に持っていけば、文書ファイル を削除することができます。 W 一 ndows95 はユーザーがパソコンに詳しくなくても簡単に操 作できるように、、 クラフィカルな設計がなされたのです。今の感覚からするとずいぶん当 たり前なことですが、当時としては画期的なことでした。 グラフィカルな設計といえば、ダブルクリックもそうです。文書ファイルのアイコンを ダブルクリックすると自動的にワープロソフトの編集画面が立ち現われ、音楽ファイルの アイコンをダブルクリックすると自動的にプレ 1 ャーが立ち現われて再生が始まります。 ファイルをシングルクリックした場合、その後ューザーが選択するコマンドは「ファイ ルの編集」「コピー」「転送」「再生」など、様々な種類が考えられます。しかしダブルク リックは、文書ファイルなら文書ファイル、音楽ファイルなら音楽ファイルといった対象 を選択したうえで、ダブルクリックという操作をするだけで、自動的に「編集する」「再生 する」といったコマンドが選択されるのです。 このように、何らかの対象 ( オプジェクト ) を先に選択したうえで動作を指定すること
これからは、パソコンやスマートフォンだけでなく、自動車、サイネージ ( 電子掲示板 ) 、 クレジットカード、照明器具、壁、道など、私たちの周りにあるあらゆるものがネットに 繋がり、それらが一体となった「—インフラ」が、駅、空港、ショッピングモールなど 様々な場所の「ユーザー体験」を作り出していくようになります。 日本では、そんな「—インフラ」の構築はいわゆる—ゼネコンと呼ばれる、巨大な —E* 企業が受注し、設計だけして開発は下請けに丸投げする、という形で作られるのが一 般的です。そして、下請け企業では、事前に満足なプログラムの教育を受けさせてもらえ ていない人たちが、過酷な労働環境でプログラミングをする、というとても非効率で非人 道的な方法で行われているのです。 しかし、そんな開発手法では決して良いものは作れないし、優秀なエンジニアが働きた いような環境は作れません。国際競争力のあるソフトウェア企業も、そんな業界からは決 して生まれてきません。 私は、 UIEvo 一 u ( 一 on を通して、優秀なエンジニアたちが自らコードを書いて構築した汎用 的なソフトウェアをライセンスする、というビジネスモデルで、旧態依然とした—イン はんよう 285 あとがき
しいます。スラックとはたるみ、ゆるみなどを意味する言葉で、転じて心理的な余裕の ことを化します。 スラックを持てない人というのは、たとえば睡眠不足であったり、もっといえば徹夜を している人だったり、それによって仕事に不安を抱えている人などです。 スラックがない状態が慢性的に続くと、人はどんどん生産効率が落ちていきます。 2015 年 9 月日付の米 OZZ の報道によると、「多くの研究で、一晩眠らないとー O は 1 標準偏差下がることがわかっている。つまり、一晩徹夜すると職務遂行能力は『学習障 害がある場合と同程度まで低下する』 ( スワート氏 ) 、ということまで言われています ( ス ワート氏はコンサルタント会社ジ・アンリミテッド O O 兼神経学者 ) 。 このような人たちは、もっと効率的な仕事の方法があったとしても、それに気づかずが むしやらに仕事にまい進することになります。それが誤った方向であることにも気づかず、 これを「トンネリング」といいます。 まるで暗闇のトンネルを行進するかのように。 トンネリングにはまった人は、処理能力が落ちているうえに、出口の光が見えていない ので疲弊していきます。結果、仕事は終わりません。
余裕があるときにこそ全力疾走で仕事し、締め切りが近づいたら流す」という働き方です。 仕事に対する姿勢を根本的に変えなければならないので簡単な話ではありませんが、確 実に効果があることを保証するので、なるべく多くの方におすすめしたいと思っています。 ロケットスタート時間術の概要をわかっていただけたところで、ここからは仕事術の背 景にある考え方まで踏み込んで、みなさんに深く理解してもらいましよう。 具体的な見積もりの仕方は、「最初の 2 日で仕事の 8 割を終わらせる」でした。 これが鉄則です。最初の 2 日というのは締め切りまでの期間によって適宜変わります。 締め切りが川日後の仕事なら 2 日間、 5 日後なら 1 日、 3 日後なら半日、 1 日なら 3 時間 というように、大体全体の 2 割程度の期間です。とにかく猛ダッシュのロケットスタート を切ることが重要です。 なぜそんなハードなスタートダッシュを切るのかというと、あなたのラストスパート志 向を矯正するには、そのくらいハードなことをしないといけないからです。人生を変えた いのであれば、今後あなたは、徹底的にロケットスタ 1 ト型に舵を切るべきです。 158
結局 2 週間努力しても問題は解決せず、「根本的な間題の解決のためにあと 2 か月くださ い」と言い出します。しかたがないのでスケジュールの変更を認めると、時間に余裕があ るので、また最初の 1 か月はのんびりしてしまいます。 そうして最後の 1 か月でラストスパートをかけようとしますが、再び同じような状况に 陥り、最後は徹夜の連続。再び寝不足のためにプログラムが汚くなり、バグが多発。結局、 新しく設定した締め切りも逃してしまいました : こんなことでは、プロの仕事とは言えません。この仕事の根底には「締め切りⅡ努力目 標」という考えがあり、「目標に向けて精一杯努力をすることが大切」という体育会的な姿 勢があります。そして最も良くないのが「ラストスパート志向」です。多くの人が、「最初 はのんびりしていても、最後に頑張ればなんとかなる」という根本的な誤ちを改めるとこ ろから始めないといけません。 ラストスパート志向の一番の欠点は、最後の最後までそのタスクの本当の難易度がわか らないという点にあります。どんな仕事でも、やってみないとわからない部分が必ずある のです。 今すぐ実践ロケットスタート時間術 151
大きな仕事と小さな仕事が 並行している場合 先ほど、長期的な仕事をどう進行していくかという話をしてきました。多くの方はこの 方法によって、時間をうまく使えると思います。 ただ、その方法にあてはめられない仕事をしている方もいるでしよう。それは大きな仕 事と小さな仕事を並行している、というケースです。 たとえば私もその部類に入ります。ソフトウェアの開発を長期的に進行するのと同時に、 週に 1 回メールマガジンを書かなければなりません。また、私の同僚もソフトウェアの開 発をする一方で、毎日いろいろと新しい技術の勉強をしています。 このように大きな仕事と小さな仕事が重なっている場合、どのようなスケジュールの立 て方が良いのでしようか。 200