顔 - みる会図書館


検索対象: まぼろしの犬
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1. まぼろしの犬

ひとりは手にビデオカメラを持ち、も、フひとりは、長いレンズをつけたカメラを首から ぶらさげている。ふたりは住民たちをかばうようにして立つ、ボクらを見て声をあげた。 なんとっ ! すごいことじゃないか ? なんて感動的なシーンなん 「こ、これはー いちおう 結局、兵士たちはだれも銃を撃たなかった。部屋にいた人間たちは、一応調べられたけ むきず ど、結局みんな無傷で解放された。もちろん動物たちもだ。 ボクらは、飼い主を守りつづけた大たち、ということで、大々的なニュースになったら さっそく、ビデオカメラをまわし始める。 これは、世界で話題になるぞ ! スクープだっ」 「戦場で、飼い主を守る大たちかー むちゅう もうひとりも、カメラのシャッターを夢中できっている。 じゅ、つこ、つ その横で、ボクに銃口を向けたままだった兵士が、苦にがしげに銃をおろすのが見え だいだいてき まばろしの大 -6

2. まぼろしの犬

「よせよっ」 かれ ボクをジョンとよんだ兵士が、彼のうでをつかむ。 「大たちは何もしていないしゃないか。それにほら見ろよー ころ ってない。 一般人まで殺すつもりなのか ? 」 「ふんつ、この弱虫やろうがー うるさいんだよっ」 「なんだとっ ! 」 彼らがにらみ合うのと同時だった。ふたりの男性が、部屋の中にかけこんで来た。 そのことにやっと気づいたかのように : いつの間にかおだやかになっていた。 ( 良かった、助かるかも : : : ) ホッとしたのもっかの間、 冫ししょ 「何やってるんだ ? たかが大じゃないか、こんなもん、おれが排除してやるつ ! 」 じゅ、つこ、つ さっき、ボクに銃口を向けた兵士が、ヒステリックにさけび、ふたたびボクをねらっ 0 いつばんじん だんせい さっきだ : 。殺気立っていた、めがねの奥の目も、 一、この住民たちは武器も持 おく 6

3. まぼろしの犬

知っている〃ジョン〃という大に似ているらしい。しめた、と田 5 った。シッポをふりなか ひとみ ら「くう ーん」と鼻を鳴らしてみせた。めがねの向こうで、兵士の瞳がゆれる すると、今度はちがう方向から、 「リック ? 」 という声かした。かと思うと、別の兵士か 「ラッキーにそっくりだ : とつぶやいている。みんな、ボクを見て言っているのだ。ボクはふしぎに感しながらも、 あいそ、つ 愛想よく、ひとりひとりにしつばをふってやった。 ざっしゅ そんなにボクっていろんな大に似ているのだろうか ? 雑種だから、たくさんの大の血 がまじっているのかもしれない。彼らはボクを見て、自分が知っている大のことを思い出 しているのだろう。 じゅう 何人かの兵士が、ボクを見て、何かしら名前をつぶやいたあとに、次つぎと銃をおろし た ていった。まるで、雪の重みに耐えかねた木の枝が折れるみたいに、兵士たちのうでがは たり、はたりと下に落ちる。今まで、重たすぎる荷物を、がまんして持っていたように れ えだ まばろしの大

4. まぼろしの犬

くつおと やがて、けたたましい靴音が近づいて来たかと思うと、数人の兵士がとびらをけやぶり、 ひめ 飛びこんできた。子どもたちが小さな悲鳴をあげた。 すないろ 兵士たちは、みんな砂色の軍服を着て、ヘルメットをかぶり黒いめがねをし、ものもの じゅう しい銃をこちらに向けてじりしりと近づいてくる。 「どうしたら、 ボクのとなりで、アリサがふるえる声でつぶやし ) た。ボクの体もガタガタとふるえてい さっき る。近づく兵士たちの体から、殺気がたちのばるのが、見えるようだ。 ( もう、だめかもしれない : あきらめかけた時、ボクの耳に、ある言葉がよみがえった。 『大は撃つなっ ! 』 そう、ボクかアリサを助けた時に、兵士たちの方から聞こえた言葉だ。こうなったら、 かのうせい 少しの可能性にでも、かけてみるしかない。ボクは意を決して立ち上がった。 「みんなっ、兵士たちの前に立つんだー 飼い主たちを守るぞっ」 ボクの言葉に、他の大たちもはじかれたように立ち上がる。シーダもさけんだ。 ・いし ) 6 まばろしの大

5. まぼろしの犬

しほ 詩穂さんのよぶ声が、だんだん遠くなり、そしてやがて聞こえなくなった : 気がつくと、ボクは大きな木の下にいた。すぐ近くの地面に、大が一匹、倒れている。 あの、サクラにそっくりの大だ。 なか 見ると、お腹がゆっくりと上下に動いていた。 「生きてる ! 」 むがむちゅう 思ったとたん、勝手に体が動いていた。ボクは無我夢中で、木の根元から飛び出すと、 たおれた大のもとにかけより、首のうしろをくわえた。 大きな音がして、耳元を何かがかすめた。近くの地面で、土のかたまりがはねる。 じゅ、つ 今度は、足元の土がえぐれた。ボクが銃でねらわれているのだ。 あまりのこわさに、足からカがぬけそうになったけれど、サクラ似の大をどうしてもほ っとけない。あごに力をこめて、けんめいにひつばりつつけるボクの耳に、意外な声か聞 いっぴきたお 0 まばろしの大

6. まぼろしの犬

今日も、朝から戦争のニュースをやっていた。ボクはいつもの位置にすわり、ばんやり とそれを見ていた。こういうのも、毎日見ているとなれてきてしまうものなんだなあ、な んて考えながら。 しほ まど 詩穂さんは、となりのテープルで、仕事をしていた。窓からは、ハチミッ色の日の光が は十つ、つ せなかやさ 差しこみ、ボクの背中を優しくなでてくれている。べランダの鉢植えのプルー へいおん 今年も真っ赤にそめた葉を、風にのんびりゆらしている。いつもの、平穏な午前中の風景 ネ / ネ / も、フひと眠りしよ、フかとあくひをしなから、なにげなくテレビに目をやったボクは全身 さかだ の毛が逆立つのを感じた。 あ また、いたんだ。サクラにそっくりな大が、荒れ果てた町の中を走って行く。あと少し で、大きな木の根元にたどり着こうとした時だった。はじかれたように、大の体がはね、 そして倒れた いた そのしゅんかん、ボクの胸をはげしい痛みがつらぬし 「ポンタッ、ポンタッ・ たお むね ) こ。鳴き声もあげたかもしれない。 2

7. まぼろしの犬

新日本出版社 「子どもの読書離れ」がいわれる今日、子 どもたちの心をつかむ児童文学はどのよう にしたら生み出せるのか ともと 明日 日本児童文学者協会一編 “代表ー古田足日 魅力ある児電文学を口る 子どもと本の明日 魅力ある児童文学を探る 日本児童文学者協会・編 編集代表・古田足日

8. まぼろしの犬

絵 / 北見葉胡 ( きたみようこ ) 1957 年生まれ。絵本に『さは、てん』『タマリンとポチロ ー』『カノン』、挿画に『金色の象』「安房直子コレクシ ョン」 ( 全 7 巻 ) 『ヒットラーのむすめ』など。 おはなしのピースウォーク・一 しゝぬ まぼろしの犬 2006 年 5 月 20 日第 1 刷発行 NDC913 156P 22cm 編者 画家 発行者 発行所 印 刷 日本児童文学者協会 北見葉胡 小桜勲 株式会社新日本出版社 ください。 希望される場合は、日本複写権センター ( 03-3401-2382 ) にご連絡 著作権法上での例外を除き、禁じられています。本書からの複写を 本書の全部または一部を無断で複写複製 ( コヒ。ー ) することは、 ISBN4 ー 406 ー 03265 ー 7 C8393 Printed in Japan ONihon Jidobungaku 2006 落丁・乱丁がありましたらおとりかえいたします。 光陽メディア製本小高製本 infO@shinnihon-net.co.jp / www.shinnihon-net. CO. jp 振替 00130 ー 0 ー 13681 TEL 営業 03 ( 3423 ) 8402 編集 03 ( 3423 ) 9323 〒 151 ー 0051 東京者 5 渋谷区千駄ヶ谷 4 ー 25 ー 6

9. まぼろしの犬

「新しい戦争児童文学」委員会 奧山恵 川北亮司 きどのりこ 木村研 西山利佳 はたちよしこ 古田足日 最上一平 巧 6

10. まぼろしの犬

ふるたたるひ 古田足日 岡田依世子 中原光 島村木綿子 最上一平 おかだいよ なかはらひかる しまむらゆうこ もがみいつべい 木村 きむら 研 けん 川北亮司 にしやまりか 西山利佳 かわきたりようじ 執筆者紹介 ( 掲載順 ) 1927 年生まれ。著書に『大きい 1 年生と小さな 2 年生』 『新版宿題ひきうけ株式会社』『児童文学の旗』他。日本 児童文学者協会前会長。 1965 年生まれ。著書に『霧の流れる川』。「辛子入り汁か け飯」は第 2 回応募作品。 1952 年生まれ。作品に「どんどこおじゃ」 ( 「ごちそう大 集合」 4 巻 ) 他。「六月うさぎの会」所属。「しゃもしい」 は第 1 回応募作品。 1961 年生まれ。著書に詩集『森のたまご』。作品に「かわ うそ洗濯店」「うさぎのラジオ」他。「まは、ろしの大」は 第 2 回応募作品。 1957 年生まれ。著書に『銀のうさぎ』『ぬくい山のきつね』 『おばけパッタ』『ビーズのてんとうむし』「ちいさなはた け」シリーズ他。 1949 年生まれ。著書に『一人でもやるぞ ! と旅に出た』 『 999 ひきのきようだい』『手づくりおもちやを 100 倍楽し む本』他。 1947 年生まれ。著書に「マリア探偵社」「ふたごの魔法っ かい」「パルサー宇宙戦記」「超カンタン将棋入門」各シ リーズ他。 1961 年生まれ。「わたしたちのアジア・太平洋戦争」編集 委員。児童文学評論研究会。著書に『もしもしあたし RICA ちゃん 2 』 ( 仮・近刊 )