団地 - みる会図書館


検索対象: インコのボンコがにげだした
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1. インコのボンコがにげだした

やせいか 「野生化していることも考えられるよ」 「ひょっとしたら、死んじゃってるかもね」 りゅうた くみ さいた さくらだんちたんていきよく 竜太と久美は、斎田さんからあずかった五枚の写真をならべて、考えこんだ。桜団地探偵局の めいよ 名誉にかけて、見つけだしたいが、さしあたって、どこをさがしたらいいのかわからない。 こうこく 「学級新聞に広告を出してみよう」 じよ、つほう 「それがいいわ、二人でさがすより、クラス全員でさがしたほうが情報がいつばい集まるもの」 そうだん むらやま さくらだんちごうとう とうとだい 二人は、このことをエリ先生に相談した。村山エリは、桜団地三号棟の五〇六号に住む東都大 カくり・カノ、ぶ 学理学部の女子学生だ。子どもずきで、同じ棟の竜太や久美の勉強をときどき見てくれる。つまり、 かていきよ、つし そんざい そうだん 半分家庭教師で、半分お姉さんのような存在だった。しかも、〈桜団地探偵局〉ができると、相談 やく 役を引き受けてくれた。 さくらだんち じちかい 「桜団地の自治会ニュ 1 スにも、広告をのせたらどう ? そちらのほうは、あたしが手配するわ」 じよ、つほうしゅうしゅ、つわ とエリ先生は、情報収集の輪をさらに広げてくれた。 三日後、まず学級新聞のほうに〈たずね鳥〉の広告が出た。 ふめい 「キボウシインコ。名前は『ポンコ』。成鳥。体長四十センチぐらい。メスオス不明。おしゃべり とジェスチャーがとくい 『ポンコちゃん』と呼びかけると、左足をあげて、『ハーイ』と答える。 ていきよ、フ としよけん 三年前に家出。見つけた人あるいは有力な情報を提供してくれた人に、お礼 ( 図書券 ) をさしあ げます」 ねえ せいちょう と、つ よ てはい 2

2. インコのボンコがにげだした

めだ」 さくらだんちたんていきよくこもん さくらだんちごうとう 二人は、桜団地探偵局顧問のエリ先生をたずねた。二人の家は桜団地三号棟の二〇三号と二〇 むね べんり 四号で、エリ先生の家は同じ棟の上の階だから、こういうときは便利だった。 「おや、二人とも五万円に目がくらんだようね」 りゅうた くみ エリ先生は、竜太と久美の顔を見くらべてわらった。 しようきんさくらだんちたんていきよくしきん 「先生、大賞をとれそうななぞなぞを教えて ! 賞金は桜団地探偵局の資金にするわ。 と久美がたのむと、エリ先生は顔を横にふった。 しんさいん 「だめ、だめ。あたし、今年のなぞなぞコンク 1 ルの審査員をたのまれたの」 り・ . かけ . い エリ先生は理科系の学生だが、小説やことばあそびなどもくわしいのだった。 れ 、カ ま 審査員が出場者に手を貸してはまずい す ぬ 「そのかわり、あんたたちにこの本をかしてあげる」 ぶあっ 円 エリ先生は、本棚から分厚い本をひつばりだした。それは『世界なぞなぞ全集』だった。 万 と、つさく 「盗作はいけないけど、ここに出ているなぞなぞをヒントにして新しいなぞなぞをつくりなさい」金 たしかにエリ先生のいうとおりだった。 さんかしゃ きばっ コンク 1 ルの参加者は、みんな自分で新しくて奇抜ななぞなぞを考えてくる。 第 はんのうしんさ その上、参加者が自分のなぞなぞを発表したとき、会場に集まった人びとがしめした反応も審査 たいしよう 5 の対象になるのだった。 たいしよう ほんだな = 一口

3. インコのボンコがにげだした

「イラッシャイー 黒っぱいくちばしから人間そっくりの声が出た。 「いい子だ、いい子だ」 主人は、キボウシインコにヒマワリの種をあたえた。 「このインコは、 ) しつ店に来たんですか ? 」 りゅうた と竜太は、たずねてみた。 「もう、二年半ぐらい前になるかな。お客さんが持ってきてくれたんだよ。お店のペットにいいだ ろうってね」 そのお客さんは、去年、病気で死んだという。 「コウちゃんがポンコかどうか、決め手はないな くみ 竜太は、久美をうながして花屋を出た。 「セキセイインコは、つばさの色がちがうから見わけやすいけど、キボウシインコは、みんな色が おんなじでなにがなんだかわかりやしない」 こんどの〈たずね鳥〉には、久美も手を焼いているらしい さくらだんち ′」、つと、つ 桜団地にはいると、三号棟からエリ先生が出てきた。 じちかい へんしゅうちょう れんらく 「あら、ちょうどよかった。自治会ニュースの編集長から、 いま連絡があったの。この団地の北 やせい の林にときどき野生のインコの群れがあらわれるんだけど : : : その中に、キボウシインコが一羽、

4. インコのボンコがにげだした

さくらだんちたんていきよく 竜太と久美は桜団地探偵局のメンバーだ。桜小学校の下級生が家出をしてゆくえがわからない と聞いたら、知らん顔ではいられない。 よ、フすけ 「これまで家出したとき、洋介くんはどんなところへ行ってましたか ? しつもん 第一探偵の竜太は母親に質問をはじめた。 「近いところでは、市内の公園とか、丘とか : 「そんなところで、一晩じゅう、なにをしているんですか ? 」 ゅつ、かい 「まさか、誘拐では ? 」 やきん しいえ、家出だと思います。あの子は、あたしが夜勤のとき、ときどきふらりとどこかへ出かけ けいさっ ひとばん て、一晩ぐらい帰ってこないことがよくあるんです。だから、きようじゅうに帰らなければ、警察 にとい」け - よ一つと田 5 一つんお」け・ど・ 初めてのことではないが、母親としては心配で、いても立ってもいられないというのだった。 さくらだんち りゅうた くろぬまようすけ さくらしようがっこう 黒沼洋介は、桜小学校の五年生だし、桜団地の子どもではないので、竜太と久美は顔を知って いる程度だった。 よ、つすけ いえでじようしゅうはん 「洋介ったら家出の常習犯なんて、下級生のくせにやってくれるじゃないの」 久美は竜太の耳もとでささやいた。 ノした おか 728

5. インコのボンコがにげだした

すいり とくい りゅうた ぐうぜんせい 推理の得意な竜太は、クイズこよ ) ゞ、 冫冫弖しカ〈くじ〉のような偶然生の強いものには弱かった。 たから さんか ぐうぜん 「宝くじだって、買わなきや当たらないわ。偶然だろうと、二人で参加すれば、当たるチャンス が二つできるってことでしよう ? 」 そんとく くみ ろんりてき 損得のことになると、久美の頭もすばやく論理的にはたらくのだった。 「とにかく出てみよう。だめでもともとだから : : : 」 と竜太はうなずいた。 さくらだんち こんなわけで、二人はつぎの日曜日の午後、桜団地第一集会場へ出かけた。 会場には、団地の子ども会にはいっている小、中学生が七、八十人集まっていた。 しようひん 「いい賞品が出るって聞くと、ふだん知らん顔をしている子までのそのそ出てくるのよ。みんな口 ガメッイわねえ 久美は、自分たちのことをわすれて竜太にささやいた。 ゅうびん 入場者には入口で郵便はがきぐらいのカードが一枚ずつくばられる。竜太のカードと久美のカーが ドは、つぎ ( 一三九ページ ) のようなものだった。 「竜太くんのナンバーが『浦』で『ゴーゴー、行け行け』。あたしのナンバ 1 が『料』で『ヨショ話 シ』。どっちも、わるくないわ」 久美は強気だった。 ・ふきそく 本物のビンゴゲームは、カ 1 ドのマスの中に二けたまでの数字を入れて、不規則にならべる。こ

6. インコのボンコがにげだした

さくらだんち くみ はつくっげんば 竜太と久美は、発掘現場を出て桜団地へ向かった。 くろぬま しんぶんはんばいじよ とちゅう やしき かわまた 「途中に、川又さんの屋敷と、黒沼さんがアルバイトしている新聞販売所があるよ。ついでだから、 たずねてみようか ? 」 「当然よ」 たんてい さくらだんちたんていきよく 二人は、もうただの小学六年生ではなかった。桜団地探偵局の第一探偵と、第二探偵だった。 もんがま * 、ゆ、つか かわまたけ 川又家はこの土地の旧家で、どっしりした門構えの屋敷だった。 二人が門をくぐると、川又老人が植林の手入れをしていた。かなりの年だが、左手に持ったはさ きよう あしこし みをまるで植木屋のように器用に使い、足腰もしつかりしているようだった。 どき じよ、つもんどき 「ばくたち桜小学校の六年生ですけど、縄文土器の勉強をしています。川又さんの土器のコレク ションを、見せていただけないでしようか ? 」 ) ま はんにんふかばちどき りゅうた たてあな 竜太は深さ六十センチほどの竪穴にはいり、犯人が深鉢土器を掘りだした場所をたしかめた。 「このかべぎわですね」 ) よ 「そうよ。小さいシャベルで掘ったみたい」 すいちよく かんだふじん 神田夫人は、垂直な土のかべにめり , 、んだシャベルの跡を指さした。 ひだりがわ それは、かべに向かって左側から掘りこんだものがほとんどだった。 ろうじん あと 0 、 4

7. インコのボンコがにげだした

′」うとう さくらしさくらだんち ほんだくみ いまいりゅうた 今井竜太と本田久美は、桜市の桜団地に住んでいた。しかも三号棟の二〇三号と二〇四号のと なか なりどうし。どちらもひとりつ子で、兄妹のように仲がよい たんてい しゆみ 二人には、共通の趣味が二つある。一つはテレビゲーム。もう一つは〈探偵ごっこ〉だった。二だ じけんかいけっ さくらだんちたんていきよく 人で〈桜団地探偵局〉をつくり、身近におきた事件の解決にとりくんでいる。 りゅうた すいりりよく うんどうしんけい からだ まるまるとふとった体で、運動神経はにぶいが、頭の回転が速く、推理力のすぐれた竜太が、第 そうさたんとう たんてい 一探偵として、おもに捜査を担当。 じよ、つコ 推理力はいまいちだが、すばしこくて、だれとでもすぐ仲よくなれる久美が、第二探偵で、情ン 報集めを担当。 第一探偵と第二探偵は、息のびったり合った名コンビだった。 「にげてから三年もたつインコが、見つかるかなあ」 「だれかが、つかまえて飼ってるかもしれないわ」 〈キボウシ〉の部分は、年をとるにしたがってだんだん広くなる。 「あら、きれいな色 : : : 」 くみ ポンコがつばさを広げた写真を見て、久美は大きな声を出した。 はね つばさのうらには、濃い赤や青の美しい羽根が見えるのだった。 こ なか = 一口

8. インコのボンコがにげだした

りゅうた さくらだんち しようひん 「竜太くん、桜団地子ども会のパーティに出てみない ? 動物ビンゴの賞品は最新式のコンパク トカメラだそうよ」 じようほう 久美が新しい情報をつかんできた。 「ほ 2 ル A 」一つ、かい ? ・ しりったんてい 竜太が目をかがやかせた。二人は以前から自分たちのカメラがほしかった。私立探偵なのに、カ メラぐらい持っていないとかっこうがっかない。 「でも、ビンゴはクイズとちがうよ。勝ち負けがほとんど運、不運できまるから、いくらがんばっ てもだめだ」 第七話カメラが缶ジュースにばけた かん 736

9. インコのボンコがにげだした

さくらだんち さんか 桜団地では、毎年夏祭りに子どもから大人まで桜市の市民ならだれでも参加できるコンクール がおこなわれる。 今年は、〈なぞなぞコンクール〉だった。 たいしよう 「大賞は五万円だよ。出てみようかな」 「あたしも出るわ」 りゆ、った くみ しようきんみりよく しようがっ 竜太と久美には賞金が魅力だった。小学六年生の二人にとって、五万円といえば、お正月にお としだま きんやか′、 年玉でもためなければ、手にできない金額だった。 「でも、大賞はむずかしいよ。新しくて、しかも、みんなをうならせるようななぞなぞでないとだ 第三話賞金五万円がぬすまれた しようきん なつまっ さくらし

10. インコのボンコがにげだした

ドンドコドコドコー あかまつじんじゃだしさくらだんち 威勢のよい大だいこの音をひびかせながら、赤松神社の山車が桜団地にはいってきた。 「あっ、おかあさんたちが手をふってるわー くみ 久美はばちをにぎる手に力をこめた。 ドドン、ドコドコドコー うんどうしんけい 運動神経がいいせいか、久美はがたがたゆれる山車の上でさっそうと大だいこを打ちつづけた。 なつまっ そういう久美には夏祭りのそろいの〈はっぴ〉と、ねじりはちまきがびったりだった。 りゆ、った 一方、竜太のほうは、同じように〈はっぴ〉とねじりはちまきのすがただが、山車の前でジャン 第五話あ祭りをねらったどろばう 702