アテナ 知慧の女神アテナ「ミネルウア ) は、ゼウスの むすめで、ゼウスの頭から、全身によろいを着た きドゆっ 姿で、飛びだしてきたと伝えられています。技術 のうぎようこうかいじゅっ の守り神で、男の仕事では、農業や航海術を、女 さいにう の仕事では、糸つむぎ、はたおり、裁縫などをつ かさどっていました。 アテナは、また戦争の女神でもありました。け れども、アテナがっかさどるのは、防ぎ守るほう いくさ の戦争だけで、戦の神アレス ( マルス ) のように、 さん ぼうりよく 暴力をふるったり、血を流したりするような、残 にん 忍なことは、好みませんでした。アテナイの町は、 このアテナのものと定められている町です。もと もとポセイドン ( ネプトウメス ) も、やはりこの 町をほしがっていたのですが、ふたりがちえくら べをして、それに勝ったアテナがこの町をもらっ たのです。アテナとポセイドンがアテナイの町を った 144
神アスクレビオスが、もう一度生き返らせてくれました。アルテミスは、腹ぐろい母親と、それ に迷わされている父親が手を出せないように、ヒッポリ = トスをイタリアへやって、エゲリアと ・よぶニンフに守らせました。 じんぼう いんたい テセウスは、とうとう国民の人望を失い、引退して、スキ = ロス王リ = コメデスのもとへ、身 しんせつむか うらぎ ・をよせましたリ = コメデスは、はじめは親切に迎えましたが、あとでは裏切って殺してしまい しようぐん いこっ ・ました。すっと後になってアテナイの将軍キモンが、テセウスの遺骨の埋まっている場所を見つ えいゅうきねん ・けて、それをアテナイへ持って帰らせました。そうしてこの英雄の記念のために、テセウムとい しんでん ・う神殿を建て、そこにこの骨をまつったということです。 テセウスが妻にしたアマゾンの女王は、ヒッポリ = テという名まえだったという説もあります。 れきしてき きろく ちほう テセウスは、半ば歴史的の人物であります。記録によると、アッティカの地方は、それまでい ぶらく とういっ くつかの部落にわかれていたのを、テセウスが統一して一つの国とし、都をアテナイにおいた、 きねん ・ということです。この大改革の記念として、テセウスは、アテナイの守り神アテナのために、パ ンアテナイアの祭りを始めました。この祭りは、ほかのギリシアの竸技とは二つの点でちがって ぎようじ いました。第一に、これはアテナイ人だけのお祭りでした。第二にその祭りの主な行事というの は、。へプロスというアテネの衣をパルテノンへ運んでゆき、アテナの像の前にかける、というお ぎようれつ " ごそかな行列でした。ペ。フロスには一面にぬい取りがしてありましたが、これはアテナイのもっ いちめん はら せつ ははおや
ほしがって争ったのは、アテナイの一番最初の王様ケクロプスの時代のことといい伝えられてい ます。神々は、ふたりのうち、どちらでも、人間に多く役に立つものをつくったほうに、 この町 せんげん を与えよう、と宣言しました。ポセイドンは、馬をつくりました。アテナはオリープの木をつく ゅうよう りました。神々は、馬とオリープでは、オリープのほうが有用である、というさばきをくだし、 アテナに、 この町を与えました。そして、この町は、アテナイとよばれるようになりました。 アテナは、またあるとき、 人間と腕くらべをしたこと きよらそらあいて があります。その競争相手 は、アラクネというむすめ でした。アラクネは、はこ 織りやシシュウがたいそう じようずで、ニンフたちま で、わざわざその仕事をな がめるために、森や泉から でかけてくるほどでした。 できあがったものが美しい きいしょ アテナ うで
姿が、あんまりものすごいので、だれでも一目見た人は、みんな石になりました。メドウサの住 んでいるほら穴のまわりには、人間や動物の形をした石が、たくさんありましたが、これは、な けもの んかのはずみにメドウサを見た人や獣が、石になってしまったものでした。さて、ベルセウスは、 アテナとヘルメスのお気に入りだったので、アテナは、自分の盾をかしてくれるし、ヘルメスは、 くっ つばさのある靴をかしてくれました。このふたりの神々に助けられながら、。ヘルセウスは、メド ウサが眠っているすきをねらって、そばに近より、その姿をまともに見ないように気をつけて、 手にもった盾にうつる姿をたよりに、メドウサの首をきり落しました。そして、それをアテナに おくりましたので、アテナは自分の盾のまん中に、メドウサの首をつけた、ということです。 ベルセウスとアトラス メドウサを殺してしまうと、ベルセウスは、その首をもって、海をこえ山をこえて、はるか遠 たいよう くまで飛んでいきました。そうして日暮れには、太陽の沈む西のはての国につきました。ベルセ ウスはここで朝までゆっくり休みたいと思いました。この国は世界一の大男、アトラス王の国で りようどあらそ した。ここには鳥や獸がたくさんいるうえに、近所に領土争いをするような国もありませんでし じまん こがね た。けれどアトラスが、なにより自慢に思っていたのは、その花園でした。そこには黄金の枝に、 黄金の木の実が、黄金の葉かげからのそいていました。ベルセウスは、アトラスにむかっていし たて たて
いっせいにうやうやしく身をかがめ、、 , ほかの をあらわしました。見物にきていた = ンフたちは、 人たちもみなをささげました。けれどアラクネだけはおそれませんでした。も 0 とも、思わ けっしん ず顔が。ハッと赤くなりましたが、やがてあおくなりました。けれども、決心はゆるぎませんでし た。おろかにも、自分の腕まえにうぬぼれて、自分から身をほろぼす道へ、突き進んでゆきまし た。アテナは、もうがまんがなりませんでしたし、それ以上、忠告もしませんでした。ふたりは まようそら 競争をはじめました。めいめいが席について、はた織機の糸まきに糸をつけました。やがて、ヒ たていと が縦糸のあいだをいったり来たりしはじめました。小さい歯のついたオサが、横糸をたたいて、 織物の目をつめてゆきます。ふたりは、たくみな手をすばやく動かしながら、どんどん織ってゆ あざや きました。競争で気がたっているので、それほど骨も折れません。鮮かなテ、ロス染の糸に、さ ぶぶん かい目をぼかして、うまくまぜあわされた、さまざまの色糸の部分があしらわれています。その 色糸は、ちょうど天を色どる = ジのように、集まれば一つの色になり、そこからまたしだいに、 さまざまの色に分れだしてゆきます。 アテナは、その織物の上に、自分とポセイドンが腕くらべをしたときの光景を、織り出しまし た。十二人の神々にかこまれて、ゼウスがおごそかな、神々しいようすで、すわっています。海 の王ポセイドンがいま、三つまたのホコで、大地を打ったところらしく、地面から馬が飛びだし たて てきています。アテナ自身は、カプトをかぶり、胸に盾をつけた姿にえがかれています。こんな うで おりき こうけい ぞめ
べ叱セウスとメドウサ ベルセウスは、ゼサスとダナ工のあいだに生まれたむすこでした。ベルセウスのおじいさんに あたるアクリシオスは、「おまえのむすめの子は、おま しんたく おどろ えに死をもたらすであろう。」という神託をうけて驚き、 グナ工とその子どもを箱に入れて、海に流してしまいま した。箱は、波のまにまにセリポス島に流れつき、そこ りようし でひとりの漁師にひろわれ、おかあさんとむすこは、そ の島の王さまポリデクテスのところへ連れてゆかれま した。王さまは、この母と子を、たいそう親切にせわを してやりました。ベルセウスがおとなになりますと、ポ リュデクテスはこの若者にいし 、つけて、国を荒らしてい ばものたいじ た、メドウサというおそしい化け物を退治させました。 じまん メドウサは ' もと、美しいおとめでした。ことに髪の毛がなにより自慢で、アテナと、その美し さをあらそうようなことをしたために、アテナにその美しさをうばわれて、美しいまき毛を、ヘ ビに変えられてしまいました。そして、とうとうおそろしい怪物になってしまいましたが、その メウサ かいぶつ しんせつ 152
クモが、プランと宙にぶらさが 0 ているようすは、アテナがクモに変えてや 0 たむすめが、百を つった姿を思いださせます。
られているのを見て、美の神アプロディテは、たいそう腹をたてました。そして、よいかおりの かみ する髪の毛を怒りにふるわせて、叫びました。「わたくしが人間のむすめに負けてよいものか。 ひつじか それでは、あのゼウスの羊飼いが、わたしを一ばん美しいときめたことが、なんにもならなくな る。わたくしは、。ハラス ( アテナ ) やヘラのような神々にくらべても、一ばん美しいということ にきまったのだし、そのことをゼウス自身もみとめたのだ。いや、しかし、あんなむすめにそう・ やすやすと、わたしの各誉をうばわせはしない。いま に、あのむすめがそんなけしからぬ美しさを持ちあわせ 、たことを、後悔するようにしてやるから。、 ( ゼウスの羊 シ飼いというのは、ス。〈ルタの王子。〈リスのことです。。 ( 。フ リスがあるとき、アプロディテとヘラと。ハラス ( アテナ ) の三人の女神の品さだめをして、そのなかでア。フロディ テが一番美しいときめたことは、トロイア戦争の章にでています ) そこでアプロディテは、むすこのエロス ( クピド ) をよびました。そして、いろんな不平をい ってぎかせて、もともといたずらずきのエロスを、そそのかしました。「いい子だから、あの思 めんまく いあがった女を罰しておやり。おかあさんの面目を、まるつぶれにしたのだから、そのうらみを こうまん 思うぞんぶん晴らしておくれ。あの高慢ちきなむすめに、だれかいやしい、つまらない人間を恋 ばっ こうか、 こい
てかくれていたということです。ゼウスは牡羊の姿になりましたから、のちにエジプトではアン モンとい 0 て、まが 0 た角をも 0 た神として、おがまれています。アポ 0 ンはカラスに、ディオ 一一ソスはヤギに、アルテミスはネコに、 ヘラは牝牛に、アプロディテは魚になり、〈ルメスは ・島になりました。またあるとき、巨人たちは天上へよじのぼろうとくわだてました。その足台に ナるために、オ ' サの山をつかんで、べリオン山の上につみかさねました。けれど、とうとうか たいヒ みなりのために、退治されました。このかみなりは、アテナが発明して、〈。 ( イストスと〈。 ( イ トスの工場に働く一つ目の巨人たちに教えて、ゼウスのために、こしらえさせたものです。 てんば 天馬ベガンスとキマイラ ベルセウスがメドウサの首をきり落したとき、その血が地面にしみこんで、。へガソスという、 のはえた馬になりました。アテナがこの馬をつかまえて、よくならしてから、ムーサの女神た おくりもの ちへの贈物にしました。ムーサの女神たちの住んでいる、〈リ「ン山の上にあるヒ〉ボクレネの わ 泉は、この馬がひずめでけった割れ目からわきだしたのだ、といわれています。 かいぶつ キマイラというのは火を吹く、おそろしい怪物でした。その体の上半身は、ライオンとヤギの りゅう あいのこで下半身は竜の尾でした。あるとき、リキアの国がこの怪物のために、さんざん荒らさ れましたので、王様のイオバテスは、それを退治してくれる勇士がいないかとさがしていました。 おびつヒ めうし しめん はつめい
ばかりでなく、仕事をしているところが、また美しいのです。このむすめがヒッジの毛を玉にし たり、それを指でわけて、軽いふわふわの雲のようになるまで、すいたり、手ぎわよく糸車をま わしたり、はたを織ったり、織りあがった布にシシ = ウをしたりしているのを見ると、これは、 と思うようでした。けれどアラクネは、そ アテナからじきじきにおそわったものにちがいない、 んなことはないといって、女神の弟子と思われることさえ、いやがりました。「わたしに、アテ ばっ ナと腕くらべをさせてごらんなさい。もし負けるようなことがあったら、罰を受けてもよござん すドアテナはそれを聞いて、おもしろくありませんでした。それで、おばあさんに姿をやっし けいけん しんせっちゅうこく て、アラクネのところへゆき、親切に忠告しました。「わたしは、いろいろ経験をつんでいるので にんげんどうし すから、わたしの忠告を、ばかにしないでお聞きなさい。人間同士なら、けんかをふきかけるの もいいでしうが、神さまとはりあわないほうがよろしいよ。そして、あんなことをい 0 た無 めぐ わび 福を、女神さまによくお詫び申しあげるがよい。恵みぶかい神さまでいらっしやるから、きっと アラクネは糸をつむぐのをやめて、こわい顔をして、おばあさんを ゆるしてくださるでしよう。 しいました。「そんなことは、おまえさんのむすめか、女中にでもいっておやりな にらみつけて、 とりけ さい。わたしは、ちゃんとわけがわかっていて、ああいったのです。いまさら取消したりは、し ません。女神なんか、ちっともこわくない。腕くらべができると思うのなら、やってみるがいし のです。」「女神はいまくる。」とアテナはいいました。そして、かりの姿をすてて、女神の本 めが かる