タケちゃん - みる会図書館


検索対象: ノンちゃん 雲に乗る
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1. ノンちゃん 雲に乗る

そのとき、ノンちゃんはなんともいえない、ふしぎな気もちにうたれ、その字を見つめて、 じっとこたつによりかかっていました。 おかあさんの名まえ : ほんとならノンちゃんは、少しくらいの字におどろくような子どもではないのです。ノンち ゃんは、にいちゃんといっしょに絵本を見ながら、いつのまにか字をおぼえてしまったのです から、五つのお正月には、自分の名まえをお書きそめすることもできました。また、おかあさ んがきれいな箱へノンちゃんのリポンをしまって、なかに何がしまってあるかわかるように、 墨で「ノブ子リポン」と書いたとき、ノンちゃんはもっとよくわかるようにその下 ( 、クレョ かんじ くわ ンで大きく「バ子」とつけ加えることもできました。おはじきでならべるのなら、漢字で田代 信子という字だって書けました。 けれども、おかあさんに字で書く、りつばな名まえがあるというのですから、ノンちゃんは びつくりしたのです。 いま考えてみれば、ずいぶんおかしな話ですが、学校へあがるずっとまえのノンちゃんは、 それに気がっかなかったのです。なるほど、おじいちゃんやおばあちゃんやおとうさんは、と きどきおかあさんのことを「ユキコ」とよびます。けれど、ノンちゃんは、それにたいして気 をとめてはいませんでした。おかあさんは、ノンちゃんのおかあさんで、世界じゅう、どこへ すみ

2. ノンちゃん 雲に乗る

かね たりで、小使いのじいやさんが、チンカラン、チンカラン ! と始業の鐘をならし、わあツー ちょうれいじよう というときの声とともに、みんなが朝礼場に集まっていくところです。ノンちゃんのいない学 校がはじまるのです。 ノンちゃんは、むつくり起きあがりました。 「ど一つした ? ・ど - っした ? ・」 おじいちゃんが、びつくりしてききました。 「学校へいく : ノンちゃんは泣きそうな顔をして、井戸ばたで洗たくしているおかあさんのところ ( とんで いきました。 そして、ノンちゃんはとうとう、気もちがわるくなったらすぐ帰る、体操はやすむ、という やくそく 約束をおかあさんにし、おじいちゃんと手をつないで学校 ( いきました。 にいちゃ ノンちゃんが学校についたときは、もう二時間めの読み方がはじまっていました。 んが朝のうちに、おかあさんの手紙を先生におとどけしてあったので、ノンちゃんたちが教室 みちみち ( はいっていくと、先生はびつくりなさったようでした。けれども、おじいちゃんは、道々、 よくたのんだように、ノンちゃんのきたわけを、ちゃんと先生に話してくれました。 「どうしてもやすまんというものですから : せん 261

3. ノンちゃん 雲に乗る

7 にいちゃんつづきーにいちゃんのいしわる : 8 にいちゃんつつきーにいちゃんとエス にいちゃんのうそっき : 9 ノンちゃんのある日 : おじいさんのお話 1 ある日のにいちゃん : 2 ハナ子ちゃんの冒険 : 雲に乗って : 家 それから : ・ : 一一五九

4. ノンちゃん 雲に乗る

わす 空、青くないぜ、黒いよ。ぼくは、仕事のことなんか忘れちゃって、空ばかり見てた。 ( 死ん だら星になるんだ ) と思っちゃったなあ。それに、ふわふわ浮いてる雲がきれいでねえ。ぼく たち、すぐそばを通ったり、中をつきぬけたりしたんだよ。ヒッジみたいな、かわいいむくむ くしたやつなんかいて、喜々として遊びたわむれてるのさ。雲って、ほんとに乗れば、乗れそ 0 うだね。ひざぐらいまで沈んじゃうかもしれないけれど : にいさんは、あるとき、こういって、チラといみありげにノンちゃんを見ました。 ノンちゃんは、ハッとして、知らぬまに、別のことをきいていました。 ひ・ : フき じようしさっげんど 「にいさんたちに想像できる飛行機の上昇限度って、どのくらいのもの ? 」 むげん 「さあ : : : だから、ぼくは無限っていいたいんだよ。星になるまでさ。」と、にいさんは笑って 答えました。 せんそう けれど、かなしい戦争はかなしいおわりをつげ、星にならなかったにいさんは、ふたたび家 に帰ってきました。そして、またもとの学生生活にもどり、ときどきは、 「ちがうよ、その E s は da s s 以下をうけるのさ。」 というようなむずかしいことを、ノンちゃんに教えてくれます。 きゅうちょう ノンちゃんは、とうとう一度も級長にならなかったにいさんが、そのまるつこいからだで、 なんかんもくもく とつば 男の子を待っている難関を黙々として突破し、このごろでは、おとうさんに、 要 : フそ・フ しず わら 273

5. ノンちゃん 雲に乗る

おかあさんは、とても声がいいのです。ノンちゃんとふたりきりのとき、ノンちゃんがうた ってちょうだいというと、ずいぶんいろんな歌をうたってくれることがあります。きれいな歌、 たのしそうな歌、かなしそうな歌、とてもたくさん知っています。 ノンちゃんの家では、いちばんたくさん歌を知っているのが、おかあさん、そのつぎがノン ちゃん、そのつぎがにいちゃん、そのつぎがおとうさんです。ノンちゃんがおかあさんについ にいちゃんもう て、おかあさんが子どものときにならった歌をならってると、いつのまにか、 ろおぼえにおぼえ、ひょろひょろながらついてきます。 「なぜでもっていうの。だから、あたし、だれにもいわないんだけれど、おじいさんになら、 だいじよぶでしよう ? 」 ちょう 「ああ、だいじよぶだとも。わしはご近所じゃないし、おしゃべりでもないからな。これ、長 さん、おまえも家へかえって、しゃべるんじゃないぞ。」 「うん、しゃべんない。オンガクガッコって、どこだ ? 」 「知らなければ、それでいいことだ。では、ノン子ちゃん、ひとつ、おかあさんの声のいいと ころをやっとくれ。」 そこで、ノンちゃんは、おかあさんの話をつづけました。 101

6. ノンちゃん 雲に乗る

う「プリズム」のことも知りません。けれども、雨が降っても、雲の上には、おてんとうさまた がちゃんと照っててくださるということ、またそのおかげで、お天気の日には見られない、 んなきれいなものが、道のあちこちにでき、ノンちゃんたちをたのしませてくれるということ は、ほんとにふしぎでありがたいことだと思いました。 こんなふうに、おとうさんは毎朝、ノンちゃんたちにいろんなお話をしてくれて、とてもい い人です。ノンちゃんは、おとうさんがだいすきですー けれど、おとうさんのお仕事のことや、お金をどのくらい持っているかというようなことに ついては、ノンちゃんはちっとも知りませんー ノンちゃんのお話は、ここまでくると、フッとゆきづまり、 づいて出てきませんでした。 「そ一つかし・ : それでおとうさんの話はおしまいか : ・。」おじいさんは、しばらく待ったあと ざんねん わか で、ちょっと残念そうにいし 、ました。「おまえのおとうさんは、なかなかえらいな : : : 若いに 似合わず、なかなかえらいよ。」 ノンちゃんは、おとうさんのことをほめられたので、ニコニコしながら、 「おとうさん、そんなにえらくないわ : いくらいきばっても、あとがっ

7. ノンちゃん 雲に乗る

ノンちゃんは、おとうさんのことを : : : よく知っていそうで : : : よく知っていません。 しけん 学校の試験や遠足でまい子になったときなど、 「あなたのおとうさんは ? 」と聞かれたら、どう答えたらいいのか、ノンちゃんはちゃんと知 っています。おとうさんの名まえや、家の場所や、おとうさんのいっている会社の名まえをい えばいいのです。けれども、おとうさんが毎日毎日、ああして会社へ出かけていって、どんな お仕事をしてくるのか、ノンちゃんはちっとも知りません : そうそう、釣りがとてもすきです。おじいちゃんは、おとうさんのことを、よくノンちゃん たちに、「おまえの家のタイコウボウ」といいます。「タイコウボウ」というのは、大昔、中 国にいた人で、やはり釣りがたいへんすきだったとのことです。そういうわけで、おとうさん はお休みの日にも、たいてい家にいないで、釣りに出かけるのですが、それでもジャガイモを 植えたり、とり小屋をなおしたりするようなときは、釣りをやすんで、みんなといっしょに働 ノンちゃんのお話 ( おとうさん )

8. ノンちゃん 雲に乗る

・フしわカまる 「オノレ、コ・シ・ヤ・ク・ナ : ・」と、ノンちゃんは読みました。 どうぐ 「オノレ、コシャクナ。」と、庭でひっこし道具のあと片づけをしていた、おかあさんがなおし ました。 「オノレ、コシャクナ。」と、ノンちゃんは、ちゃんと読みました。「コ・ワ . ツ・パ 「コワッ。ハメ。」と、おかあさんがなおしました。 「ノンちゃん、その本、むずかしいねえ。」 「そうお、おかあさん ? 」 わら すると、おかあさんは笑って、「ノンちゃんにはむずかしくないの ? でも、ムサシ坊弁慶、 牛若丸にほんとにそういったかもしれないねえ。」 そこで、ノンちゃんは、一だんと声をはりあげて読みました。 「オノレ、コシャクナ、コワッ。ハメー・」 「一つまいー・」 生けがきのそとの畑で、ニワトリにやるマメの虫をとっていたおばあさんが、だしぬけに、 大きな声でほめました。 えん ノンちゃんは、うれしがって、縁がわまで出かけ、 「おばあさん、そんなこといっちゃいけません ! あなたは先生ですか ? 」としかりました。 かんしん おばあさんは、そのときのノンちゃんのきつばりした態度にひどく感心し、それ以来、ノン ばうべん 182

9. ノンちゃん 雲に乗る

およ こ ! 何かにズドンとぶつかって、 そうだ、泳ごう、泳ごう、にいちゃんにおさったみたいー むちゅう ノンちゃんは夢中で、あてもなく空中を、あ それつきりになっちゃうとたいへんだから : およ っちこっちと泳ぎまわりました。 と : : どこか遠くから声がするようですー 「オーイ ! オーイ ! 」 ノンちゃんは、いそいで目をあけ、キョロキョロあたりを見まわしました。 たしかに声です ! どこでしようー あ、あの雲です、あの雲 : : : ノンちゃんが池のはたから見た、寝いす型の雲が、はるか上 ( か まね 下 ) のほうに浮かんでいるのです。ああ、むこうがわにだれか立って、しきりにこっちを招し ています。 ノンちゃんは、その雲めがけて、いのちがけでスワン・ダイブを一つこころ みました。それから、もうひとっー ノンちゃんは、まだ泳いだことも、とびこみをしたこともありません。けれど、こうなって は、何かしないわけにはいきません。にいちゃんの話を聞けば、スワン・ダイプは、とびこみ のうちでも、わりにかんたんで、形もとてもきれいなようです。だから、ノンちゃんはそれを

10. ノンちゃん 雲に乗る

ったら、ど一つする。」 「なりませんようー もう学校へいってから、お休みしたことなんかありませんようー」 「それは、みんなでおまえのことを気をつけてるからだ。」 「うそだあ ! にいちゃんなんか、気をつけてくれたことなんかないやあ : おとうさんは、あきれたように横をむきました。 「そんなにわからないやつは、泣いてろ。」 「泣いてますよう、あああああ。」 そして、ノンちゃんは泣いていました。 お勝手で朝ごはんのあと片づけをしていたおばちゃんが、それからしばらくして出てきたと き、おとうさんのだまりつくらとノンちゃんの泣きつくらは、まだつづいていました。おばちゃ なみだ んは、ノンちゃんのそばへしやがむと、またはなをかみ、涙をふいてくれたうえで、 もうおかあさん、とっくに四谷へついち 「ね、ノンちゃん、そんなに泣くの、およしなさい やってるのよ。泣いてもどうにもならないわ。ね ? それより、おばちゃんとどこかへ遠足に しきましょ - つよ」 「それは、 いいな」と、おとうさんが、あい・つちをうちました けれど、ノンちゃんは泣きつづけました。 よっや