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検索対象: ノンちゃん 雲に乗る
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1. ノンちゃん 雲に乗る

んなと話しはじめた。 近所のおばさんらしい人がいってる。 「ハナ子ちゃん、あなたのえらいのには、おどろきましたわ。うちのマリ子なんか、わたしが おっかいにいくとき、おるす番だってできやしないのよ。ひとりで、こわかったでしよう ? 」 ハナ子ちゃんは笑って、 「あら、おばさん、ちっともこわくなかったわ。ここらの海、フカもクジラもいないんですも 「だって、もしおとうさんがお迎えにいらっしやらなかったら、あなた、どうするつもりだっ たの ? 」 「あら : : だって、おとうさん、迎えにくるっていったんですもの : : : くるわ。おとうさん : うそっかないわ : なぜかしらん、あたりはシンとなった。 ハナ子ちゃんのおとうさんが、あやまるように、ふつふつふと笑いだした。 むカ 「でも、お迎えがくるまでに、くたびれちゃったらこまると思って、それだけ、あたし、心配 だったの。」 「だいぶ、流されてたね ? 」と、おとうさんがいった。 わら むか むか わら 227

2. ノンちゃん 雲に乗る

「エへへへへへ : ・」と、急ににいちゃんは笑いました。 わら みんなも笑いました。ノンちゃんも笑いました、なんにも知らないで : すると、また、 にいちゃんが笑いました。 わら また、みんなが笑いました。 それから : : : みんなが、ノンちゃんにとてもやさしくしてくれました。ノンちゃんは近ごろ、 ばん こんなにたのしく、こんなにうれしい晩はありませんでした。 ひく 話していくうちに、ノンちゃんの声は、だんだん低く、沈んできました。そして「こんなに ばん たのしく、うれしい晩はありませんでした」というところまできたとき、とうとうノンちゃん は、雲のおじいさんのひざによりかかって、顔をふせてしまいました。 「どうした、どうした ? 」おじいさんは、びつくりしてききました。「これ、気もちがわるくな ったのか ? 雲に酔ったのか ? 」 ノンちゃんは、首をふりました。 「にいちゃんが : おかあさんが : 「どうしたんだ ? にいちゃんとおかあさんがどうしたんだ ? 」 「あたしのこと、だまして : と、東京へいっちゃったの。」 わら わら わら しず 202

3. ノンちゃん 雲に乗る

「なんだい、おまえ、うそっきだなあ : : : 。」と、おじいさんがいいました。 ノンちゃんは、ハッとしておじいさんを見ました。 「タケシ君は、 こ、ちゃんじゃないか」 ノンちゃんは、急にはなんともいえないで、だまっていました。 : こんな遠くへ来てしまったせいか、 ふだんなら、ほんとにいやなにいちゃんなのです。でも : さっきから、なんだかしきりににいちゃんがなっかしいような、妙な気もちになっていました。 「でも : : : でも : : にいちゃん、とてもうそっき ! 知らないまに、うそっいちゃうの ! 」 しいました。 ノンちゃんは一生けんめい、自分の弱い、いにまけまいとしながら、 「ほうー」おじいさんは、またうれしそうな顔をしました。「知らないまにか ? ほう、おも しろそうだな。その話をしてくれ。」 にいちゃんのことになると、おじいさんは、まるで子どもです。 ノンちゃんは、にいちゃんが、知らないまにうそをついて泣いたお話をはじめました。 「うん、だから、元気になったんだよ。」 その日、にいちゃんは、ノンちゃんをおいてきぼりにしないで、仲よく学校まで話しながら いきました : よわ 169

4. ノンちゃん 雲に乗る

「ふうん、そりや、おもしろそうだな。一度みんなを招待してくれ。」 「ウン : けれども、にいちゃんは、とうとう一度もノンちゃんたちを、その物おきへつれていきませ んでした。 にいちゃんは、そういうふうに、とてもうそっきです。 みよう 話が、なんだか妙なほうへそれてしまったので、ノンちゃんはわけがわからなくなり、ぼん やり考えました。いま、なんの話してたんだっけ ? おじいさんも息をつきました。 「ああ、おもしろかった : : : ええと : : : わしたちは、なんの話をしておったのかな ? おまえ のにいちゃんの話か ? 」 「ちがうわ、おじいさん ! 」ノンちゃんは急に思いだして、元気にさけびました。「おかあさ んのお話 ! 」 「そうだった、そうだった ! 」と、おじいさんはうなずき、「ああ、 ノンちゃんは、につこりしました。 「ときに・ : 」と、おじいさんは首をかしげ、「さっき、おまえのおとうさんがにいちゃんを、 ムサシとよんだようだが、タケちゃんかい、ムサちゃんかい どっちがほんとじゃ ? 」 いいおかあさんだ :

5. ノンちゃん 雲に乗る

「あふつ、あふつ ! 」とあえぎながら、これはたまらないなと、ノンちゃんは思いました。ど っちが上で、どっちが下なのかわかりません。頭をどっちへむけて落ちて ( またはのぼって ) いったらいいのでしよう。あっちかなと思うと、頭がくるっとそっちへまわり、こっちかなと 思うと、またそっちへ頭がまわります。このときのノンちゃんのまごっきようは、みなさんに けんとう もおよそ見当がおっきでしよう。 「あふつ、あふつ ! 」ノンちゃんはもがきました。 それに、まぶしいこと、まぶしいこと。上も下も右も左も、はてしない青の世界らしいので す。目をあいてもいられません。 「あたし、空におちちゃったんだ : : もう東京へはいかれないのかしら : こんなことを考えながら、ノンちゃんはいつのまにか、両手、両足でやたらに空中をひっか いていました。すると : : : それが知らぬまに、りつばな大かき泳ぎになっているのですー の上 およ

6. ノンちゃん 雲に乗る

「あたし : : : また病気 ? 」 コっ一つん、 , も一つ しいとさ。おまえがねてるあいだに、また田村先生がきてくださってね、この ままなら、あしたは、そろそろ起きてもいいそうだ。」 ノンちゃんはうれし泣きに泣きました。 「おと - っさん、けさ : : ごめんなさい」 おとうさんは、笑いました。 「なあにいってるんだ。。 こめんは、おとうさんかいうんだ。」 そのとき、おとうさんのうしろに、ごそごそ、音がして、にいちゃんのくりくり頭がのそき ました。 にいちゃんは、とてもおそれいったような顔をしていました。 ノンちゃんは声をたてて笑いました。 おとうさんがふりかえって、 「すわれ。」というと、にいちゃんは、やつばりおそれいったように、寝まきのひざをそろえて、 おとうさんのわきへすわりました。 「東京、おもしろかった ? 」ノンちゃんはすぐききました。 「うん : : : でも、すぐ帰ってきちゃったんだよ。電話かかってきたから。」と、にいちゃんは、 あな ノンちゃんの顔を、穴のあくほど見つめながらいいました。 わら わら たむら 254

7. ノンちゃん 雲に乗る

なみだ ひらいたあの目から、大きな涙が、ころがりおちるところでした。 「ご、ごめんなさい ぼ、ぼく、知らなかったんだ : こんどからよく気をつけるの。何かするときは、まえに考 「だから、泣かなくてもいいの , えてからやるのよ。わかったわね ? 」 にいちゃんは、うなずきました。 おかあさんは、おおいそぎでそのきれをまるめて、奥へ持っていきました。 ああ、そのとき、ノンちゃんは、どんなににいちゃんをかわいそうだと思ったでしよう。ノ ンちゃんはくちびるをかみ、心の中でにいちゃんのために泣きました。自分では知らないでい て、ひょっと気がついてみると、おかあさんがたいせつにしているきれを、どろだらけにして しまってるなんて : そのことがあって以、にいちゃんは生まれかわったように「いい子」になり、おかあさん のいうことをきくようになったと、みなさんはお思いですか ? ところが、ちがうのです。だから、ノンちゃんはあきれるのです。にいちゃんは、またつぎ の日から、まえとおんなじようにあばれまわりはじめました : ノンちゃんは話しおえると、そっとおじいさんの顔をうかがいました。シャクシジョウギに 177

8. ノンちゃん 雲に乗る

はないのですけれど、もうおとうさんになってしまったおとうさんが、子どものときの歌をど皿 ら声でうたうのは、とてもおかしなものでした。 わら ノンちゃんは、縁がわでひっくりかえって笑いながら、それでも一生けんめいうたいました。 にいちゃんも、からだじゅうの声をふりしぼって、負けずにうたいます。 「ただいさぎよくキソヤマジィー うて かねてきたえし腕をいまア しさいざためさんもろともにイ ! 」 ノンちゃんは、また、おや ? と思いながら、おわりまでいくと、小声でにいちゃんを誘導 しながら、三度、一ばんにもどりました。 「待ちに待ちたる運動会」 ちょうし 調子にのってしまったにいちゃんは、屋根もぬけそうな声で、 「あけゆく空に雲晴れてエ 日もかがやきぬキモチョシッー 「ちが - つ、ちが - っー・」ノンちゃんはどなりました。 「なんだい ? 」ーし こ、ちゃんが、またにらめました。 「キモチョシじゃないよ。キモキヨシ ! 」 えん ゅ・フい」よノ

9. ノンちゃん 雲に乗る

ノンちゃんの目とロカノ ; 、。、ツとあきました。「おかあさんは ? 」 おばちゃんは、またチラとおとうさんを見て、こまったように、 「あの : : : おかあさんね、ちょっとご用ができて、東京へいらしったの : ノンちゃんは、目をまるくしたまま、しばらくじっとしていましたが、やがて、少しふるえ よっや る声で、「四谷で : : : だれか病気 ? 」 わら おばちゃんは笑いました。 でもね、ノンちゃんたち、どんどん大きくなるでしよう ? だから、買いもの 力しつばいたまっちゃったんですって。でも、おおいそぎですまして、あかるいうちに帰って きますって : : ちゃん : : : は ? 」と、聞いたノンちゃんの声は、まえよりもふるえていました。 「タケちゃんもいったの : ノンちゃんはうつむいて、ごはんをたべはじめました。 おばちゃんはなぐさめました。 くら 「おかあさんね、ノンちゃんがちょっとあそんでるまに帰ってきちゃうんだって。暗いうちに、 お茶づけたべて出てらしったのよ。だから、おばちゃんと何かしてあそんでましよう。 0 、、 てしょ ? ・」 7 ケちゃんだけお泊まりして、あした、おじいちゃんに送ってきていただくの

10. ノンちゃん 雲に乗る

「だいじようぶ、だいじようぶ ! 浜にチラチラあかりが見えだしたぞ。それ、たき火もはじ まったぞ ! 」 ハナ子ちゃんは、ハッとして立ち泳ぎになり、あたりを見まわした。 だれもいないのに : : : あたし、あんまりくたびれて、頭がへんになったのかしら。 出かかった涙を、ざぶり、波があらった。 わしは、がまんできず、大声でわめいた。 「ちがう、わしじゃよ ! わしじゃよ ! 」 そして、わしはひげと雲をかきのけ、ハナ子ちゃんの目の前へ、 この顔をつきだした。 「ああ : : : 」と、ハナ子ちゃんも、声にだしていった。「いま何かいったの、おじいさん ? 」 「あいよ ! 」びつくりさせぬよう、わしはできるだけ、やさしくいった。 「おじいさん : : : どこからきたの ? 」 「水の中の空の上からよ。おまえがさびしかろうと思ってね。ほれ、もちやげてるそ。らくに なったろ ? またおやすみ。」 、、こ丿こ、また横になっこ。 ハナ子ちゃんはにつこりして、やれやれと > 「ありがと - つ」 「さっきから、おまえを見とったのさ。おとうさんがお迎えにくるまで、何かお話をしようか むカ